転生者と幽霊と   作:霧マッシュ

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2話同時投稿です。一度でいいからしてみたかったのです。


決別

 

特番でテレビに初登場した私たちB小町ですが、これ以降の私の仕事は壱護さんが取ってこなくても勝手に山のようにやって来ました。

 

主な取引先になっていたのはその昔アイさんが関係、というか仕事をした事がある所です。アイさんに仕事を振ってた事があって、それで売上や評判が良かった所は軒並み何かしらの仕事を振りたい、と言ってきた感じですね。

 

もはやこの時点で私を見ているわけではないのがほぼ確定してますが、これは仕方のない事です。アイさんの影法師を見ているのはわかりますけど、仕事は仕事。お金をくれるならなんでも構いません。

 

テレビ、雑誌、映画、広告、その他・・・。アイさんが出ていた媒体、ほぼ全てから何かしらの仕事が来ていたという話でしたので、アイさんの影響力のヤバさを感じ取れます。

 

私は来た仕事はやれるだけやります、と壱護さんに伝えました。役者の演技が一応できる事も一緒に伝えましたよ。壱護さんが絶対要らないと思った仕事なら別ですけど。

 

なぜかというと、アイさんは早くアクアとルビーに会いたいに違いないからです。仕事を沢山してお金稼いで、時間をできるだけかけない方がいいに決まってます。

 

 

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私が思っていたより、ファンというのは正直なものでした。

 

私に来た仕事は、私を見ているわけではないです。生放送から異様に増えた、SNS等のフォロワーも同じです。どういう事なのかというと、誰も私を見ていない、プライベート以外で『私』は要らない、という事です。

 

ファンは影法師を見たいわけではありませんでした。私に『アイ』を見たいのです。

 

必要なのはアイさんです。12年前に殺された、誰もが信じ、崇めていたアイドル様。ファンが求めたのは、弱点など見当たらず、弱い所を見せず、知りたくない事も見せず、それでいて唯一無二の一番星を宿してるアイさん。私がアイさんの生き写しなので、それが求める心に拍車をかけているんでしょう。アイさんというと少し語弊があるかもなので、アイさん(外面)を必要としている、という所ですね。

 

私は最初、自分というものを出そうとしていました。批判されたので自身を修正しました。純粋無垢、孤高で強い、そういったものを求められました。他の人から見た私。求められている私。修正して調整して・・・。

 

受けた仕事でも当然同じで、求められているのは私ではないです。しかし仕事はしなければなりません。しかも一回ではなく、今後に続いていく仕事をする必要があります。つまり、仕事先が求めている私になる必要があるということです。

 

また、出来るだけ多くの仕事を処理しないとお金になりません。星野家幸せ計画は出来るだけ早く進行する必要があります。今の状態は私だけがアイさんに許されて、アクアには言葉が伝わっていないので自分自身を責めている状態です。こんなの、不公平だと思いませんか?

 

だから撮影でも収録でも、できるだけ早く終わらせられるように頑張って努力しました。嘘の愛を歌い、嘘の愛で積むキャリア。より早く、より先へ、より上を目指して。

 

 

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生放送から数ヶ月が経った頃。

 

少し前に壱護さんが、仕事しすぎじゃねえか?と心配してきた事がありました。弱音は吐いていないはずですが、実際の仕事量を知っている壱護さんだからですね。無理はちょっとしてますよ?表情や雰囲気には出しませんけど。

 

最初に言いましたけど、生放送で増えたのは私の仕事がほとんどでした。B小町自体に来た仕事もいくつかありましたので、壱護さんが私の予定を調節して全員でこなしました。

 

B小町の予定が私の予定中心に組み立てられ、撮影や配信、ライブに至るまできっちり決められた日々。

 

今の状況が旧B小町とほとんど同じというのは、私が一番わかっています。アイさんの人気で旧B小町は大きく躍進しました。今のB小町も私・・・というか、アイさんの人気で引っ張られているようなものです。かけだしアイドルユニットなのに、数千人くらいなら確実に埋まりますし。

 

私は最近、そんなにB小町のレッスンに参加できていません。ライブの時も私がセンターで、3人には合わせてもらう形です。仕事のしすぎで高校も留年するかもしれません。B小町のメンバーであるルビー、かなさん、MEMさんは皆いい人たちです。私の予定に振り回されても、嫌そうな顔は見せませんでした。これが旧B小町なら、雰囲気からしてギスギスしていたのは想像がつきます。していないのは3人の人徳ですね。

 

でも、かなさんとMEMさんからは僅かながら壁を感じるようになりました。ルビーからは壁・・・は感じないのですが、どう接したらいいかわからない、みたいな雰囲気を感じます。

 

アイさんが旧B小町を離れられなかったのは、なんだかんだ言ってメンバーが好きだったからです。仲直りしたいと願っていたからです。アイさんレベルなら、ソロデビューしたってなんの問題もなかったでしょう。だって、旧B小町の人気は殆どアイさんによって支えられていたんですから。

 

私は・・・どうなんでしょう。もちろん今のB小町のメンバーは好きですよ。出来る事なら最初に合った頃のように、仲良くしたいと思っていますが・・・。

 

でも今のままでは良くないです。壱護さんはルビー、かなさん、MEMさんに仕事をとってきていますが、現状のB小町は私(アイさん)の影に隠れているのと同じです。この現状をどうにかするには・・・?

 

・・・あぁ、わかりました。この状況をどうにかする方法。だいたい、原作のB小町は3人で活動していたんです。それが私の加入でこうなってしまっているわけですよね。

 

つまり、B小町に私は要らないんです。

 

ついでにこれを利用して、ルビーに発破を掛ければ・・・ルビーがトップアイドルになるのも早くなりそうですね。ルビーはアイさんの子、強い子なので大丈夫でしょう。

 

この際ですし、ルビーに発破かけた後にアクアにも何か言いますか・・・。うーん?誰よりもすごい役者になれたら、何かしてあげますとか?アイさんとの関係を匂わせて、それで釣るとか?まぁ、適当にいい感じの事言いますかね・・・。

 

アイさんに相談しようか悩みましたけど・・・。万が一、ちょっと疲れたんだよね、しばらくお休みしよっか、とか言われた日には甘えてしまいそうな予感がしました。そんな事をしている暇は、私にはないんです。

 

 

・・・B小町から離れたくない。辛い。苦しい。仲良くしたい。甘えたい。アイさんではなく私を見て欲しい。私は、本当は・・・

 

 

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壱護さんとルビーを会議室に呼び出しました。アクアにはこの後、電話します。この声、聞き覚えがありますよねって。

 

なぜ呼ばれたかわからなさそうな顔の二人組に向けて、私は言葉を放ちます。

 

「私は、B小町を抜けます」

 

 




拙作を書き始めた時の目標だったUAを達成できました。
誠にありがとうございました。
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