転生者と幽霊と   作:霧マッシュ

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愛されるには

 

私が簀巻きにされて地下室に転がされて絶望していた日から数日が経ちまして。

 

私の卒業ライブが2ヶ月ほど後にあるので、それが終わったらB小町MVを公開する事になりました。ルビーがメインのMV、楽しみですね!でもアイさんに似た顔で真っ黒な目をされると普通に怖いです…。

 

ルビーはそれ以降、私に演技を教えて欲しいと言ってきたり壱護さんにもっと仕事が欲しいと言ったりと、芸能界で上り詰めるために頑張り始めました。アイさんとゴローを殺したカミキを見つけ出すためですね。

 

その関係でアクアとルビーの家の近くに部屋を借りる事になりました。ルビーに教えたり、その他の理由で夜遅くなると終電が無くなる事があるのでその場合はそっちに泊まる事に。といってもそんなに頻度は高くないですけど。

 

それはそれとして、宮崎旅行のお土産を皆さん別々にくれたんですよ!すごいいっぱい貰えましたよ!わーいってしながら受け取って全部お守りだった時は困惑しましたけど。なんですかこれ、誰か一人くらいお守り以外買ってくれてもいいじゃないですか。さらにミヤコさんからは問題を起こさないように口酸っぱく言われました。そんなに…?

 

それとは別に見守りGPSみたいなのも渡されました、これはお土産じゃないような…?苺プロ関連の事をしている時は絶対に、それ以外の時も出来るだけ持っておくように言われました。あれ、もしかして子供扱いされてます?私、社会人ですよ?大人ですよ?プライバシーとかどこいったんですか?

 

 

ーーーーーーーー

 

現在、15年の嘘の公開には問題があります。アクアと監督さんが書いたっていう台本が必要なんですけど…。台本を書き始めたのはたぶんアクアが15歳の頃です。DVDが契機になって書いてるっていう事なので、復讐状態のアクアはこの一年でそれなりに書いたり監督さんに修正されたりしたんじゃないでしょうか。

 

ただ、時期的に完成まではしてないと思うんです。もしかして詰みました?台本作り終わったのをどうにか確認してから復讐止めればよかったですね…。

 

ちなみに私が台本を書いた場合、15年の嘘はアイさんとカミキが戦闘力(お金)で殴り合う札束バトル映画になります。これではいけませんね。いやほら、DVDの中身とかアイさんの本心とか知りませんし…?

 

復讐劇の中心人物のはずだったアクアがいないと何も出来ません!アクアか監督さんのハウスに突撃!台本はどこですか!ってしても完成してない物が出てくるはずがないですよ!

 

ここで私はある事に気がつきました。復讐についてですが、拳銃欲しいって言った時はなんとなく誤魔化しましたけど別に伝えてもよかったのでは?アクアとルビーも壱護さんとかに復讐する事を伝えて手伝ってもらってましたよね。

 

つまりアクアやルビー、壱護さん辺りは私のお手伝いをしてくれるに違いありませんね!自分が復讐するのはしんどいけど、それはそれとして犯人には死んで欲しいと思っているはずなので!ふふーん!流石私、頭いいですね!アイさんも一人で抱え込むのやめようって言ってましたし!最終的に私が手を下せばいいんですよ!

 

ちなみにアイさんにはB小町を抜ける事やカミキを行方不明にする事といった、私が今から行う事について何一つ伝える予定はありません。アイさんは何も心配せずにいてください、私がなんとかしますので。

 

 

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思いついたら即行動です!仕事後、私の家に帰らずにアクアとルビーの家に突っ込みますよ!

 

というわけで、現在私が居るのは星野家ハウスのリビングです。ここに居るのは私とアクアだけ、テーブルを挟んで向かい合わせです。ルビーはいません、今日はかなさんとMEMさんと合わせの練習をしてるはずなので。

 

「私が今日来たのはですね?アイさんを殺した人に復讐したいので、そのお手伝いをお願いできませんかと聞きにきました!別に一緒に復讐して欲しいってわけじゃないですよ!あくまでもお手伝いです!」

 

私は笑顔で伝えたのになぜかアクアは眉根を寄せ始めましたよ。あれ、応援してくれないんですか?

 

「俺の代わりに復讐してやるって言いたいのか?」

「代わり…?いえ別に。アクアさんとは関係ないです」

「…俺の復讐は止めておいて自分は復讐したいは無理があるのわかるよな?」

「アクアさんは復讐に疲れてましたよね。私は違いますよ!今のトレンドは復讐なのです!」

 

アクアと私、復讐したいのは同じです。しかしアクアが復讐心を抱いたのは13年前、私が抱いたのはここ半年という違いがあります。感情には鮮度があるんですよ、長くはもちません。

 

「何がサヤをそこまで駆り立てるんだ?アイを尊敬してるってだけだろ、相手を殺せば人生を棒に振る事になるのわかってるのか?」

「それはまあ…別にいいんですよ。私はそれくらいアイさんを尊敬してた、アイさんの事が好きなファンって事で」

 

実際のところはアイさんを殺したカミキを生かしておけないのと、私が抱いた罪悪感の分を命で返して欲しいって感じですけど。

 

「いいわけないだろ…。アイはもう死んだんだ、復讐したところでアイは何もしてくれない。俺に言ったように、お前も自分の幸せを掴むために生きた方がいい」

 

アクアは私を見つめながら諭すように言ってきました。アイさん見えないアクアには過去の話ですが、見える私には今の話なので復讐への考え方が違います。

 

何もしてくれないっていうのは…どういった意味なの?アイさんが私を愛することはないって意味?やめてよね…冗談になってないよ?その辺は私の心の中でも特にデリケートな所なんだ。あまり触らないで欲しいな。

 

「今のところ、復讐するのが私の幸せなんですよ」

「アイがお前に復讐を望むと、本当にそう思うのか?」

 

…そんな事、私にわかるわけない。アイさんが気持ちを言葉にしてくれなきゃわかんないよ。でもアイさんは私に何も伝えてくれなかった。

 

「わかりません。私はアイさんではないので」

「お前が言ったんだろ、アイは復讐を望まないって」

「アクアさんとルビーさんには、ですよ」

「お前にも望まないだろうな」

「…」

 

やめて…。私はもう、復讐するしかないんだよ。今はアイさんに愛されてないかもしれない、なら努力して愛してもらうしかない…!でもアイさんがして欲しい事なんて私にはわからない!私に思いつくのは、自分を殺したやつは憎いだろうなって事くらい!復讐したら、15年の嘘を公開したら嬉しいだろうなって!カミキを殺せば私は愛されるはずだし、罪悪感の借りも返してもらえるはずなんだよ!

 

アイさんに許されたあの時、幸せとか嫌われたくないとか嬉しいとか、色々な気持ちがごちゃ混ぜだった。私はこの色々混ざった気持ちを人を好きになるって事だと定義した。人間に対してそんな複雑な感情を向けたのは初めてだったから。

 

好きって気持ちは愛に進化するらしい。好きって気持ちがどうなれば愛になるの?私はアイさんに愛されてる?私はアイさんを愛してる?わかんない、わかんないよ…。

 

最初からアイさんに愛されるために産まれ、最後はしっかりと愛を伝えられたアクアに私の気持ちがわかるわけない。DVDだって残されてた訳だし色々知ってるんだよね。いいなぁ、愛されてて…。羨ましいなぁ…。

 

アイさんはどうして私には何も教えてくれないの…?どうして助けてくれないの…?私を愛することはない、私は要らないって事なの…?やだ、やだよぉ…。

 

涙が出てきて視界が歪む。感情がうまくコントロール出来なくて、外面を維持できなくなる。とっさに俯いて顔を隠しつつ、涙声になるのを堪えた。

 

「サヤ…?」

「…じゃあ、私に何を望んでると思う…?」

「…?アイはお前を知らないだろ。望む事なんてあるか?」

「そうだよね…。所詮、私は赤の他人だよ…」

「それをわかってるなら、アイがお前に復讐を望まない事だって…」

 

何も望まれてない、要らない私が必要とされるにはなんらかの役割が必要なんだ。しかもこのままカミキを放置すれば、アクアとルビーは殺されると思う。原作ではアクアが復讐するはずだったのを止めてしまった。私の価値の為にも、私が愛される為にも、アクアとルビーの為にも、絶対に15年の嘘を公開してカミキを殺す。

 

涙を拭ってアクアの方を向く。今の私はどんな表情をしているのかな。アクアが驚いているので、見せた事のない表情をしているのはわかるんだけど…。

 

「…もう後には引けないんだよ。私は復讐しなきゃならない。全ての責任は私が負うし、犯人は私が殺す。アクアには出来るだけ迷惑かけないようにするし、私の持ってる物ならお礼になんでもあげる。だからお願い、手伝って。私を助けて…」

 

 

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