「…わかった、手は貸す。だが条件…」
「ほんと!?ありがとアクア!じゃあ早速、アクアには15年の嘘の続きを書いて欲しいの!復讐とか考えなくていいからね、そこは私がなんとかするから!」
「…なんで15年の嘘の事を知ってる?まだ監督としか話してないぞ」
「え…そうなの?いやほら、こう、アクアから電波が届いててさ?」
「そんな怪電波を送った覚えはない」
「ちょ、ちょっと待ってね?今理由を考えるから!」
「手を貸す条件があるって言ってるだろ。お前、何を知ってるんだ?正直に吐け、これが条件だ」
わー今のままだとほぼストレートに喋っちゃうからとってもヤバい。アクアはさっきまでの驚きの表情がまた仏頂面に戻っちゃったし。
「すーはーすーはー。深呼吸、深呼吸…」
こんばんは、私です。ここで全部正直に話したら何もかもおしまいですね。でも15年の嘘の公開は未来の出来事ですので、未来を知っている事は言いつつしかし嘘を吐いてアイさんの事とか最初から知っていた事とかは隠さねばなりません。えーと、待って下さいね…。
「ヨシ!準備完了です!」
「正直に話せって言ってるだろ。なんの準備だよ」
「心の準備ですよ!この話をするのはアクアさんが初めてなんですから。…私、14歳の時に何故か未来が見えたんですよ。それもアクアさんとルビーさんの周りの未来だけ。最初は夢かと思ったんですけど、異様にリアリティがありまして。二人がアイさんの子供だと知ったのもその時ですね。アイさんのファンの私が見た夢、これは二人を助けて欲しいというアイさんの願いに違いないと…」
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ある程度ぼかしつつ、しかし未来を知っていることは伝えました。当然アクアは考え込んでますね。荒唐無稽な話なので簡単には信じられないのはわかりますが、アクア自身が転生というファンタジーを経験しているので一概に嘘だと切って捨てる事はできませんよね。
「行動のタイミングが不自然だから何かを知ってるとは思ってたが…。そんな白昼夢みたいなものに人生を賭けたのか?」
「思いついたら全力投球なので!」
「…そうだよな、お前はそういう奴だよ…」
アイさんが幽霊になってなければ人生賭けたりしませんでした。アイさんのいない場合の私はどんな人生を送るんでしょうね。
「ちなみに私が見た未来だとアクアさんはしたくもない復讐を頑張ってましたよ」
「今はお前がしたくもない復讐を俺の代わりに…」
「私は復讐したいんです。私とアクアさんの違うところですね。私がアクアさんに手伝って欲しいのは未来のアクアさんが真犯人、カミキヒカルって言うんですけど、その人を苦しめて殺す事が出来るって言っていた方法が15年の嘘の映画公開だからです!」
「カミキヒカル…」
今明かされる衝撃の真実です!犯人はカミキヒカルです!たぶん!
アクアは何かしらを考え込み始めましたが、名前だけでは何も分かりませんよね。変な人ですよ、人を命の重さだけでしか見てないんじゃないでしょうか?私は人を価値でしか見てませんけど。
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その後に多くの質問、例えばいつまでの未来を見たのか、アイの願いは知っているのか、復讐の結末は知らないのか、手を貸さなかったらどうするのか、映画の公開が失敗した場合どうするのか、などなど様々な事を聞かれました。もちろん嘘を混ぜて回答しましたよ、私の主観なので嘘混ぜ放題ですし!
アクアはそれはもう延々と考えてましたけど、私には何を考えているのか分かりません!偏差値70の人の考えてる事が私にわかるわけがないですよ!
まぁ手伝ってくれるそうなので万事オッケーです!そろそろルビーが帰ってくる予感がしますのでお暇しましょう!玄関まで行ってアクアとお別れです!
ルビーや壱護さんに伝えてもいいと思ってましたけど、よく考えると光堕ちする前に教えたらカミキに突撃されて私の功績が奪われそうなのでやめておきます…。
「じゃあアクアさん!よろしくお願いしますね!」
「…サヤ」
「なんですか?」
「さっき泣いていたお前と今のお前、どっちが本物なんだ?」
「アクアさんが望む方でいいですよ」
アクアが少し暗い表情になりました。なんでです?お好みでいいって言いましたのに…。
「…お前にも、本当の願いがあるのか…?」
「願い…?ありますけどアクアさんには教えませんよ?では、また明日会いましょう!」
外に出ると、当たり前ですが空は真っ暗です。街灯があるので星は見にくいですね。
私の願いはもちろんアイさんに愛されたい、ですよ!アクアには言えませんけど!…本当の願い、ですか…。
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アクアとの話し合いがあった数日後、仕事が終わってに苺プロに帰って来たら何故かあかねとアクアが苺プロを練り歩いてました。ひぇ…怖…近寄らないらようにしましょう…と思ってたらこっちに二人が来ました。来ないでください…。
「サヤちゃん、お仕事お疲れ様。ちょっと話があって…」
「あ、私を待ってたんですか?すみませんお待たせしまして…」
やばいですよ、私はあかねに対して殆ど何もしてません。アクア繋がりで偶に会ってしまう事があるので、その場合は不自然じゃないように動きをずらしたりしてるんですけど…。それなのに私を待っていたという事は、何かに気付いたに違いありませんね…。真剣な表情のあかねが何を言ってくるのか想像もつきません。
「…今のサヤちゃんには精神障害の症状が出てる。カウンセリングを受けよう?放っておくのは良くないよ」
「はい?」
突然何を言い始めるんですかこの人は?アクアの表情は仏頂面から特に変化してないので先に話を聞いてたんですよね?止めて下さいよ!
「突発的言動、自身への無関心、強い思い込み、演技してる時としてない時の…いや、とにかく受けよう?」
「カウンセリング受けてるアイドルなんて表に出せるわけないじゃないですか!嫌ですよ!私は正常です!」
「駄目だよサヤちゃん。病気はしっかり治さないと。取り返しがつかなくなってからじゃ遅いんだよ?」
なぜかあかねの押しが強いです。アクアがあかねを後押ししてるような気がしますね。もしかしてアクアも私が病人だと思ってます…?
というかあかねがそう思うのなら、まずはアクアを病院に連れて行った方がよかったのでは?間違いなくPTSDでしたよね?
「あかねさん!アクアさんを連れて行ってください!あっちの方が重症です!私は放っておいて下さい!」
「…確かに、念のためアクアくんも受けた方がいいかな…」
「いきなり俺を巻き込むなよ。行かないからな」
「じゃ、私もそういう事で!」
「どこに行くの?サヤちゃんもしっかりカウンセリング受けなきゃ」
こんなところにいられません!私は家に帰らせてもらいますよ!と思ってあかねから身を翻したのにまだ目の前に目の光ったあかねがいるんですけど…?座標でワープでもしてるんですか…?
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結局、来週末にカウンセリングを受ける事になりました。このまま絡まれ続けても面倒ですし、ここはガツンと私はまともだってところを見せつけましょう!
つまりアイさんに普通の精神なるものを教えてもらうしかないですね!いえ私は普通の精神構造してますけど念のためですよ?万が一がありますので!
「えーん、アイさーん…」
「どうしたの?また何かやらかした?」
「まだ何もやらかしてませんよ…。でもなぜか精神病院にぶち込まれそうなんです…」
「あちゃー、サヤは格好を取り繕っただけの女の子モドキだからね…。頭おかしいってバレちゃったか〜」
「…私って頭おかしかったんですか…?」
「マトモだと思ってたの?」
「えっ…。…心折れました…うぅ…」
アイさんの割と容赦ない罵倒が私を襲います。愛の鞭ってやつだったりしますか?もしかしてこれが愛…?
「はいはい、こっちおいでー」
「ぴぇーん…」
「よしよし…。今日は人間になるための勉強しようか。普通の人間になるって大変なんだよ?」
まさか私は外見だけでなく精神までモドキだったなんて…。人間って何ですか…?人の形をしてれば人間…?精神?魂?いやもっと普遍的な…?形而上…?人間は哲学的な生き物だった…?あ、頭が…。