お仕事終わって苺プロに帰りますと、部屋に居たのは本を読んでいるアクアだけでした。珍しい事もありますね、普通は二人以上か誰もいないって感じなんですけど。
「アクアさんだけなんですね」
「ああ」
「何の本読んでるんですか?楽しい本です?」
「お前には理解できない本だ」
「かっちーんときました!見せてください!」
アクアの横に移動して本を見てみます。これは…これは…?なんかお医者様系の本ですね。
「何ですかこれ?解体新書?」
「いつの時代の人間だよ」
「お医者様系のなのはわかりますけど…」
「だから理解できないって言っただろ」
「むー…」
むむむ、言い返せないです。外科医になるのが夢なんでしたっけ?ああいえ、それはゴローの夢でしたね…。アクアの夢とは少しズレてるかもしれませんけど、外科医になるという選択肢を捨てない為の勉強ですかね。最終的に監禁なりそれに準ずる事になる予定ですので、意味がない可能性もありますけど。
そんな事をしていたら事務所の扉を開けてかなさんが帰ってきました。今日のかなさんは確か、何かの撮影だったような気がします。
「ただいま…あ…」
「おかえりなさい!ってどうしました…?」
「…」
かなさんがいきなり黙ってしまいました。目線は…私の背後、アクアの方を向いてますね。
アクアが何かしてるんです?とそちらの方に視線を向けたら、アクアは立ち上がって部屋を出て行く所でした。…もしかしてアクアがかなさんを避け始めましたかね…?
「…っ!」
かなさんも何も言わずに部屋を出て行ってしまいました。今の反応的に、アクアがかなさんを避けたのはこれが初回ではないみたいですね…。いつからかはわかりませんけど、私が気が付かなかっただけですね…。
でもこれ、アクアがかなさんに避ける理由を伝えたら万事解決のはずです。素早く解決すれば、かなさんがアイドルに向いていないって事を自覚せずにB小町に居続けてくれる可能性もあります。私が先に抜けてるので、面倒見のいいかなさんが抜けるという選択肢を取るとはあまり思いたくありませんけど…。
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私がかなさんに、アクアはかなさんの事を心配してですね…って説明したところで、はいそうですかとなるような話ではありません。アクアが直接説明する必要があります。
というわけでやってきましたアクアの部屋の前です!斧があったらドアに穴を開けてコンニチハ!ってするんですが、あいにく持っていません。アクアは中々運がいいみたいですね。
ドンドン!開けてください!当然開きませんね。ドアの鍵はしっかり掛かってます。じゃあアクアに電話しまして…。よし、電話には出てくれましたよ!
『アクアさん!あなたは完全に包囲されています!速やかに投降してください!』
『…一人しか居ないだろ、包囲って言うのか?』
『なんで私しか居ないってわかるんですか?』
『扉からお前の声しか聞こえてこないからな』
『あ、ドア越しに聞こえてるんですね…。ところで、鍵開けてくれませんか?』
『…今は一人になりたい気分なんだよ』
『私は二人になりたい気分です!』
『有馬と二人で居ろよ』
『…かなさんどこか行っちゃいましたよ。…理由は勿論お分かりですね?』
『…』
『どうしても開けないって言うのなら…私にも考えがあります』
アクアはマルチタレントです。世間様に妙な情報が流れたら困りますよね?ルビーも言っていましたが、良くない情報のリークは基本同業者から行われます。つまり…。
『アクアさんのある事ない事、適当に私のSNSアカウントで流しちゃいますよ?』
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「現役アイドルが男の影をチラつかせようとするな」
「影…?よくわかりませんけど、鍵開けてくれたのでしませんよ?」
こいつマジか、みたいな表情のアクアが鍵を開けてくれたので部屋に侵入しました。もうこっちのもんですよ!
「かなさんを避けるのは何か理由があるんですよね?」
「…理由、わかるだろ?」
「アクアさんがかなさんの事が好きなので意地悪して…」
「…アイドルに男が出来たらファンはキレるよな」
「無視されました…」
「未来の事を考えるなら、距離を置くべきなんだよ」
「ならそれをかなさんに説明して欲しいのです。私が説明しても意味が有りませんので」
「…こういう話に口を挟まない方がいいぞ。お前、男女の色恋を理解してなさそうだしな」
「はー?めっちゃ理解してますしー?私大人ですしー?」
「じゃあ説明してみろよ」
…ふむ。そういった事はアイさんから習ってないんですよね。何で口車に乗っちゃったんでしょうか。たぶん男性と女性がお洒落なカフェに行く、みたい感じなのだと思うんですけど、女の子モドキの私にはそれ以上よくわかりませんし興味もありません。女の子レベルが上がったらアイさんが教えてくれる…といいなって思いますね。
「…男女の恋愛ですよね!」
「まるで理解してないのはわかった」
「…むむ…」
やばいです、このままではアクアに丸め込まれてしまいます。ほかに何か…あ、そういえば。
「なんで距離を置くのはかなさんだけなんですか?MEMさんとか私とかルビーさんとかは…」
「ルビーは兄妹だから距離を置く必要ないだろ。MEMとは適切な距離を取ってる。お前は…」
「…?」
「…距離を取るとそのままどこかへ消えそうだからな…」
「消えませんけど…?」
私は霧とか霞みたいなものだったりするんですか…?儚すぎません?それとも何処かに突撃して行方不明になるみたいな意味ですかね?
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結局アクアにつまみ出されてしまいました。やはりかなさんが追い詰められて、直接アクアに心の内をぶつけないと駄目みたいですね…。アクアもかなさんも意固地なので、私がどうこうっていうのは難しいと再確認しました…。
しかし今のかなさんはアクアに避けられても仕事があるので、そちらに意識を割いてアクアについて考えないようにする事もできます。スキャンダルになるほど追い詰められる事はなさそうな気がしますね。なんかいい感じにアイドル辞めない方向にお願いできませんか…?
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…まあ、アイさんにすら本心を伝えられない私に言われたくないよね。他人様に何かを言う前に、まず自分の事をどうにかすべきだよね。
私がアイさんに愛される日は来るのかな。愛してくれる人を愛したいんだっけ?じゃあ私が先に気持ちを伝えたら愛してくれるかな…。でも、愛がわからないのに愛を伝えて、もしこの気持ちが愛じゃなかったら…。それをアイさんに見抜かれたら…。
私もナイフで刺されたら本当の愛を伝えられたりしないかな…?伝えて拒絶されたらそのまま死ねばいいし、許容されたら満足して死ねるし、返事がなくても伝えたって事実だけで満足できるかもだし。…アイさんに愛を伝えて目の前で死ねたら、きっとアイさんは私の事を…。
あーダメダメ、私はまだ死ねないんだった。星野家幸せ計画があるし、カミキ殺してないし。まだまだやる事はあるよ、頑張っていこー!
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「コスプレですか?」
「そう!みなみも誘ったんだけど、サヤもどうかなって」
「予定がまだわかりませんけど、空いていたら参加しますよ」
「やった!撮影日はね…」
レッスンの合間の休憩中に、ルビーからコスプレの話が出てきました。もうそんな時期なんですね。
私の事をコスプレイヤーとして紹介しようものなら炎上しそうなので、それはやめてほしい所です。みなみはギリギリコスプレイヤーと言えなくもないらしいですが、私は箸にも棒にもかかりませんので…。
一応、壱護さん辺りに確認はした方が良さそうです。なんとなく賑やかし程度にしとけと言われる予感がするので、尺稼ぎのお手伝いはたぶん出来ませんけども。
最初は東京ブレイドのコスプレの予定でしたが、権利者(鮫島アビ子先生)への確認に時間が必要で東京ブレイドっぽい何かのコスプレになるんでしたよね。…どうしましょう、あってもリポーターの周辺でお手伝いするだけだと思うのでルビーと同じコスプレでもしますか…。ウィッグを被って髪色も揃えたらいい感じにルビーが二人!みたいになって話題になったりしませんかね?
「みなみに言われたんだけど、この企画って嘘っぽい?」
「嘘っぽくても面白い番組になるんでしたら、気にしなくてもいいと思いますよ」
「…そうだよね!気にしなくていいよね!」