「…無理に止めようとしたら、サヤちゃんはきっと…」
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何故か監督さんの記憶が一部無くなっていたり、撮影に監督さんのお母様がついてきたりといった出来事はありましたけど、概ね恙無く撮影は終了しました。平和が一番ですね!
恐怖の一夜を過ごした事で忘れかけていましたが、愛を知る為に子どもを授かる必要があるんでしたよね。勿論アクア向けの作戦も用意しています、その名も愛は返報性作戦です!
子どもさえ授かれればなんでもいいので、行為に愛がなくても嘘の愛でも構いません。嘘の愛をアクアに囁いて、嘘でもいいから愛を返してくれないかなーという感じですね。
嘘の愛を作るために選んだのはお金(諭吉)への感情です。アイさんにお説教されるくらいお金を愛しているので間違いありません!
ちなみに他の作戦案が二つありまして、アクアは年上が好きらしいので大人っぽいことをしてみる、と言うのがありました。コーヒー飲みつつ(苦い)パソコンしながら(意識高い)メガネクイッ(インテリアッ)ってするみたいな…?でも私、苦いの苦手だし意識低いしメガネかけてませんし…。
もう一つはアクアにも性欲がある(本人談)らしいので、素っ裸で突撃してみよう、という案です。しかしアクアはアイさんと一緒にお風呂に入っているはずなので、なんか見覚えが…とか言われて想い出に浸られそうで…。
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苺プロの部屋に帰るとなんとアクア(諭吉)がソファに座ってます!他に人いないんですけど!?アクアを一人で放置するなんて!盗まれたらどうするんですか!?…もしかして偽物?見間違い?
アクアの横にスライド移動してしっかり確認。ふむ、間違いなくアクアです。頬擦りしたり匂い嗅いだり抱きついたりしてみても間違いなくアクア。この私が間違えるはずありませんからね。
「…」
無言のアクアの横に座って、アクアの肩に頭を乗せました。やはり一万円札は安定感も安心感も違いますね、高額紙幣なだけはあります。ただ横にあるだけで幸せ、心が落ち着きます…。これに並ぶのは100ドル紙幣くらい…。
「…おい」
「…?」
「今度はなんだよ?」
「別に何も無いよ?いつも通りじゃん」
「いつも通りではねぇよ」
この感じは…。監督さん、記憶を失う前にアクアに要らないことを伝えましたね…?あいつ様子おかしいから注意しろ的な感じで…?
チラッとアクアの顔に視線を向けると、探るような目線ではありますが少し頬に赤みが差してるようにも見えます。私の好意(嘘)でも、多少は嬉しかったり恥ずかしかったり…という事ですかね…?
念の為に確認しておきしょう。勘違いだったら怖いです!
「私って、どうかな?」
「どうって…」
「かわいい?」
「…」
返事はありませんでした!でも否定もしてません!目を少し逸らしたりもしてるので、なんとかなりそうですよ!素早く仕留めましょう!先手必勝、横からアクアに飛びつきます!
「えへへ、アクア!好きだよ、愛…」
してる子ども作ろ!と言おうとしたんですけど、背筋に寒気がしてきました。これは間違いなくアクアを慕う人の生霊の気配(?)です!私は幽霊の気配には敏感なのです!このまま続けると殺される予感がします!
かなさんはわかりませんが、ルビーとあかねはヤンデレ気質があると思いますし!確認をしていないので曖昧ですけど、アクアとあかねは今付き合っているはずですから、もし私とアクアがお付き合いを始めたら
「絶対コロす」
こんな感じの無慈悲なキリングマシーンになること間違いなしです。どこに逃げようとも必ず追い詰められてコロされそうですね…。ルビーも将来、アクアがゴローであるとわかった後に私とアクアが付き合っていたら
「お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!」
キリングマシーン二号機の誕生です。(アクアと付き合えないなんてもう)死にたい、(でもやっぱり)死にたくない、(なら私がアクアと付き合うために)お前が死ねの三段論法で殺されそうですね…。
かなさんは抱え込んでしまうタイプなので…。私に実害は無さそうですが、かなさんがしょんぼりしっぱなしになりそうなので、なんとかする必要がありますね…。
…子どもを授かるだけなら、私は親だとバレますけど相手を明かさなければアクアの子どもだとバレない、セーフ!…だといいなって思うことにします!
結論として、アクアと私の命が惜しいならお付き合いをしてはならない、という事ですね!愛してる、まで言うと行き過ぎでしょうか…。確実に無いとは思いますけど、俺も愛してる、付き合おう…みたいになったら三分後には剥製にされる予感がします!
しかしもう止まれません!言いたい事だけ詰め込んで、突っ込みますよ!ごーごー!
「…(アイ)さんの方がもっと好きだけど!子ども作ろ!ワンナイトラブで!」
最初は何を言われているのかわからなさそうだったアクアの顔が…赤くなって…紫になって…青くなって…?
「…子どもっていうのは、そんな気軽に作っていいものじゃない」
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アクアの話はいくつかあったけど、その内2つを抜粋してみる。途中からアクアが喋ってるのかゴローが喋ってるのかわからなかったけど。
一つ目は、産んだとしても面倒を見れないだろ、ということ。アイさんの場合はミヤコさんに預けていたけど、あれはアクアとルビーが転生してたからまだ良かった。してなかったらミヤコさんがストレスでおかしくなった時点で終わってるし、ストレスの溜まる速度も段違いだっただろうし。普通の子どもは物凄く手が掛かるものらしいから。
この言い方は良くないと思うけど、もしアクアとルビーが転生していない子どもだった場合、アイさんは子どもを愛することが出来なかったかもしれない。どこで愛を認識したのかはわからないけど、普通の赤ちゃんはサイリウムを振ったりしないよね。
私の場合、産まれてくる子は転生してないと思うし誰に預けるのという話でもある。アイさんと同じようにミヤコさんに?そもそも預ける前提なの?
もう一つは子どもを幸せに出来るのか、ということ。望まれて産まれた子ども、親の愛を目一杯受けることができる子どもがいる一方で、その逆の子どもだっている。
アクアの脳裏にあったのはさりなのことだと思うけど、私が思ったのはアクアとルビーのこと。
私が産んだ場合の子どもの立ち位置はアクアとルビーと同じ、アイドルの子ども。じゃあ、二人は幸せだったかな。
アイさんは二人を幸せにしようとしてたし、きっと幸せだったと思う。でもアイさんが死んじゃった後の二人は…。
私は子どもを幸せに出来るの?愛を知るため、という理由で子どもを授かろうとしたのに?それとも、子どもは愛を知る為の道具だから後はどうでもいいって思ってた?
愛がわからなかったら、もしくは愛がわかった後の子どもは用済みなの?私は自分を必要として欲しいのに、自分の子どもにあなたはもう要らないって言うの?
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内心しょんぼり…って感じで家に帰ってきました。私は子どもを授かるのに向いていないのかも知れません…。前世の親を思えば、当然と言えばそうかもしれませんけど…。
アクアには謝りました。ごめんなさい、考えなしで…。ごめんなさい、辛いことを思い出させて…。
リビングの扉を開けると両親がテレビを見ていました。遅い時間なのに二人ともいるのは珍しいですね。
適当にただいまーってしながら手洗いうがいを済ませて部屋に戻ろうとしてたら、ちょっと悲しそうな顔の母に声をかけられました。
「サヤ、アイドルは楽しいかしら?」
「楽しいけど?なんかあったの?」
「そうねぇ…あると言えばあるのだけど…」
…妙ですね。いつもの母ならなんの躊躇いもなく言ってくると思うんですけど…。
「…今はいいわ。でも、これだけは覚えておいて。親はね、子どもが思ってるよりも、子どもの事をよく見ているものなのよ」
…えっと、私のライブの映像をたくさん見てるよ、という事でしょうか?それとも私が出てる番組は見逃してないよ、みたいな感じでしょうか?よくわかりませんけど。
これで終わりかと思ったら、父の方も何かあるみたいです。
「サヤに会いたいって人がいてな。予定が無い日を教えてくれ」
「えー?私、一応人気アイドルだよ?暇な日なんてないもーん」
「まあそう言うな。そこそこコネを持ってる人だ、会って損はない。どうしても会いたいらしいからな」
「ふーん…」
断ると父の顔に泥を塗る事になりますし、会うだけで相手に恩を売れるので会わないっていう選択肢はないんですけどね。
「わかったよ、後で送っとくねー」
「頼むぞ」
「で、相手って誰?」
父を通してくる時点で私が知らない人だと思いますけど、とりあえず誰かは聞いておきたいですよね。変な人に会わせるようなことは無いと思いたいですけど。
「相手か?神木プロダクションという芸能事務所の社長だ。何処かで会ったことがあるかもしれんな」