カミキプロダクション。わー聞いたことなーい。…という体で、両親からなんか情報聞き出せないかな。
「社長さん!どんな人!?お金持ち!?」
「どんな人か…。顔はサヤと同じ事務所の…星の泉君だったか…?」
「星野アクアマリンさんですよ、あなた」
「おぉ、その星野君にそっくりだ」
「へーそうなんだ。顔には興味ないけど」
そりゃそうだよ、親子(未確認)だし。…アクアはカミキとのDNA鑑定はしてないのかな。鑑定用の髪の毛とか取りに行くのも危なそうだから?
「金はそれなりに持っているはずだが…」
「お金持ち!で、私に興味あるんだよね!?なら頑張ってその人と結婚してニートしよっかなー!」
元気よく言ったけど、勿論そんな気はさらさらない。何が悲しくてあんなのと結婚しなきゃいけないの?あれと結婚しようとする人がいたら、かわいそ過ぎて止めに入るよ。
「待て…金は俺の方がある!だから結婚するなら父さんとしよう!」
「何言ってるの…?」
父と結婚する娘って、現実に存在しないでしょ…。こういうのはなんていうコンプレックスなんだろ。チャイルドコンプレックス?こわ…。
謎に胸を張ってる父に冷たい視線を送る。母も私と同じような視線を父に向けていた。ここで母が同調してたら色々終わってたけど、よかった母はまともなんだ…。
「あなた、離婚よ」
「ほらお母さんこんな事言い出したじゃん。お父さんが変な事言ったせいだよ!」
「サヤと結婚するのは私よ、あなたはすっこんでなさい」
「母さんが相手とは…!中々の強敵だ、だが俺も譲れない!」
「えっ…お母さんもそっち側なの…?」
まともじゃなかった。なんなのこの両親は…。そういえば、アイさんが両親を観察して真似るのはやめた方が良いって言ってたね…。この両親が外ではしっかり働いているという事実。冗談だよね…?
ふと思ったけど、この家そんなにお金あるの?お金に困ってはいなさそうだとは思ってたけど。もしくはカミキって意外と貧乏だったりする?お金に困ってるカミキ…うん、全然かわいそうじゃないね!
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階段を上がっていくサヤの後ろ姿を眺めるのは、リビングに残されたサヤの両親。
父親は眉根を寄せ、母親は眉尻を下げている。
「相変わらずあの調子なのね…。アイドルになるのを許可したのは失敗だったのかしら…」
「そうかもしれんがな…」
「前に言ったけれど、サヤは恋煩いよ。母たる者、子供の悩みは手に取るようにわかるわ」
「そ、そうか?俺の目測だとアイデンティティ…」
「間違いないわよ、私の目は誤魔化せない。あの調子のサヤをただ眺めてるだけなんて親の名が廃るわ、多少強引でも口を割らせないと」
「何か案があるのか?」
「もちろん。私に良い案があるわ」
ニヤリと笑うサヤの母。それを見て嫌な予感でもするのか、冷や汗を流すサヤの父。
「…なんだ?」
「サヤの本音を引き摺り出すために…」
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階段を上がっている時に気づいたんだけど、カミキについて何の成果も得られてないじゃん!両親とアホな話をしただけ!
カミキと父がどんな関係なのとか、聞くこといっぱいあるはずなのに何も頭に浮かばなかった!終わった後にこう言えばよかったなってなる事多いよね!
とりあえずカミキと会う予定ができる事をアクアに連絡しよう…としたけど、今日の事(子作りどうでしょう)がチラついて指が止まる。他人じゃないから迷惑かけてもいいとはいえ、辛い事を思い出させてしまったので面倒ごとを増やすのは気が引ける…。
…よし、カミキと会うのは秘密にしておこう。そもそも私の復讐にアクアを巻き込んでるんだし、こういうのは一人でやらないと。でも会いたいと言ってきたということは、向こうは準備万端のはず。そのまま殺される可能性もないわけじゃない。こっちはアイさんの願いで映画を撮らないといけないのに、向こうはナイフ刺し放題って卑怯過ぎない?誉とかないの?
ここはアイさんに倣ってビデオレターでも撮ってみようかな。カミキに会う話とか証拠になりそうな話を入れておいて、私が殺されちゃったらアクアの手に渡るように誰かに頼んでおくとか。私が殺された場合は映画は放り出してもいいからカミキを私殺害の犯人として逮捕してもらえれば、私の命は最低限の仕事はしたと言えるんじゃない?
さて、そろそろ部屋に入るので私の出番です!とはいえ、今日は疲れたので早々にお休みさせて欲しいですけど。色々考えたので頭が痛いです…。
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お仕事の休憩時間中、日経平均株価と東証株価指数を眺めるためにスマホを起動します。この瞬間を待っていたんですよ!さて、今日はどんな感じですかね?
「な…」
めっちゃ下がってます…。ファ○ストリテイリ○グ(ユニ○ロ)とかの下げ幅がとんでもない事になってますよ…?わ、私の今のポジションはどんな感じでしたっけ…?
何故か嫌な予感がするので薄目でチラッとだけ見る事にします。し、信用取引に手を出してなければ大丈夫なはずです。現物ならアプリ消して気絶すれば…。
「あっ」
信用3階建の買いポジ…!?いやおかしいこんなポジションとるはずが…!でも実際とってるし…。ひええ維持率が…!追証!強制決済!えーんアイさん助けて!
なんて言ってる間にもチャートは直滑降。これがナイアガラ…。機関のせいでどんどん減っていく私のお金に、重みを感じる…。
…そんな事言ってる場合じゃない!やばい本当に素寒貧になる!わかった、これは全部カミキの仕業なんだ!カミキ許せない!殺してやるぞカミキヒカル!
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「うーんうーん…」
「…?」
サヤが寝言を言うのはかなり珍しい。理由としてはそれだけだったが、耳に飛び込んできた寝言にアイが興味を示すにはそれだけで十分だったようだ。
素早く、それでいて寝ているサヤを起こさぬように忍び寄る。無音で移動するのはニンジャではない人には難しい。しかし幽霊ゆえに足音すらしないアイにとっては、物音を立たずに近寄るのは難しい事ではなかった。
アイが寝ているサヤの顔を覗き込んで見ると、何かから必死に逃げているような、何か大切なものを失いそうになっているかのような苦悶の表情を浮かべていた。
「…アイさ…」
寝言を呟きながら苦しそうにサヤが身を捩る。目の前にいるのがサヤではなかった場合、アイにはどうすることもできない。アイが何をしても、相手は何も思わないし何も感じないのだから。
「サヤ…」
心配そうな表情のアイが手を伸ばし、サヤの頭を撫でる。アクアもルビーもアイが生きている間は悪夢に魘される事は殆どなかったため、こういった時にどうするのが正解なのかアイにはわからない。なのでとりあえずサヤが喜ぶ、頭を撫でるという行為をしてみるしかなかった。
「安心して、私はここに居るよ…」
アイが暫く撫で続けると、少しずつサヤの表情がふにゃっとしたものに変わっていく。
「ふへへ…激リバ…新高値…大儲け…」
完全にふにゃふにゃになった辺りでアイの手が頭から離れ、そのままサヤの頬を軽く突っついた。大儲け、の辺りでサヤがどんな夢を見ているか気がついたのだろう、アイの表情には呆れが混じっていた。
「はぁ…。ほっぺつんつん…」
「ふにゅ…」
「ふふっ…つーんつん…」
突っつかれたサヤは少し頬を膨らませたが、すぐにふにゃふにゃに戻る。その反応が面白いからなのか、心配させたくせにまた金かと思って虐めようとしているのかは定かではないが、アイは暫く頬をつつくことにしたようだ。
アイがサヤの頬を突っつくのに夢中になっているその背後で、一羽のカラスがぬるりと闇から姿を表した。
「やあ、仲睦まじいようで何より。私も君を導いた甲斐があったというものだよ。でも、いいのかな。もう気がついているんでしょ?」
アイからすれば突然誰もいないはずの背後から声をかけられた事になるのだが、驚いたり振り返ったりしなかった。しかしカラスはその対応を気にもせずに言葉を続ける。
「君はいつまでも存在できる訳ではない。時が来れば君の魂は崩れ、星と海に還ることになる。君の役目を果たすべき時が来たのかもね」
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いい夢を見た気がします。具体的には、最初は酷い目に遭うんですけど最終的に愛と勇気とお金を模った3人の私が、トリプルパンチでカミキをお茶の間にお出しできないような姿にしちゃう夢です!
まあ楽しい夢の話は置いといて、部屋の鏡の前でウィッグつけて髪の毛縛って…後は目の雰囲気もルビーに合わせて準備おっけー!ウィッグって結構高いんだね、まあ話題のための先行投資みたいなものだし?
ここほれ…じゃなかった、深掘れワンチャン撮影日まであと数日だから、その前にルビーの真似事の練習タイム。外見だけでもある程度似せないと話題性に欠けそうじゃん?審査員には当然アイさんをお呼びしておりまーす!
「じゃーん!どう?ルビーに似てる?」
「似てないよ、ちゃんと鏡見た?」
「辛辣ぅー」
アイさんは家族愛からか既に顔が怖いし、感想も容赦ない。なので今からこのダメな出来のルビーをまだ見れるルビーにしなきゃいけないんだけど。
「…」
アイさんの目が私にルビーを語らせたら最後だよって言ってる。本気の目だ…。アクアとルビーも家族について語らせたら長そうだし、もしかして星野家って厄介ファンみたいな気質の人の集まりなの…?