我が家の土曜日は、11時頃に朝昼兼用のご飯を食べて、その次は夜ご飯、というスタンスである。
アイさんは私が家族と会っているときは必ず、席外すね〜と何処かへ行ってしまう。私の家族には見えないアイさんと話していると、私が精神病院に担ぎ込まれそうだから?
元々頭弱いのに、もっとおかしくなっちゃって、昔は天才だと思ったのに、とか病院で両親に私の目の前で言われたら泣いちゃう自信がある。そんなこと言わないと信じてるけども。そういう意味でも、姿も見せないっていうのはありがたい配慮と言える。不意に視界に映ることもないので、反応することもないし。
今日の兼用ご飯は冷やし中華。冷蔵庫の奥にあった賞味期限的には普通にアウトなやつらしい。消費期限は書いてないので、お祈りですね。サイコロがいい目を出すことを祈ろう。なんでそんなもの食べているかというと、もったいない精神である。フードロス、SD・・・なんだっけ?
(心理学・・・多少、覚えた方がいいのかな?今後、まだしばらくは会わないだろうけど、アクアとあかねに会う可能性があがったってだけで怖い・・・。今度こそ、見てる途中で寝ないようにしないと)
ご飯を食べながら、心理学教本たちを暇な時に読み直そうかと考え中。お年玉やらでちょっとずつ買ったものだが、元々はそこまで使う予定はなく、保険的な意味で買った本たちだった。だって、そう言った本から得られる知識を使う人に会う予定なんてなかったし。突発的、偶発的に会うことがあるかも、程度の気持ち。でもやっぱり怖いのだろう、心理学の本が増えていくと、防壁が厚くなった気がして少し安心していた。頭に入っていないから、意味のない安心だったのだけどね。
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ご飯が終わって11時半過ぎ、部屋に戻るとアイさんはいなかった。アイさんの移動速度自体は生前と変わらない、普通に徒歩みたいなものだと言っていた。壁はアイさんの意志で好き勝手に貫通出来るので、この辺で何か見て回ってるのかな?そんなに遠くには行けないだろうし。
ベッドに座って脚を触る。
(足いったー。超筋肉痛だよこれ・・・。湿布でも貼ろっかな?)
さっきまで限界を超えて、アイさんに私の可能性の輝き(?)を見せるべく走っていたので、筋肉痛がやばい。しかもアイさんは私が限界超えてた時、家の前から動いていなかったので、最後3分の内、2分くらいの限界を超えた私の可能性の輝きを見ていないかもしれない。ついてきてくれてると思ってたのに・・・。
最初の45分間走の時なんて、始めは並走してきていた。アイさんは、最初は頑張れ〜と応援してくれていたんだけど。私がへばってきたらスッと暗い雰囲気に変わって、私にしっかりと聞き取れるように語句を区切りながら、
「今の私、星野アイは、幽霊なんだよ?もしかしたら、本当に・・・」
「へぇ、へぇ、ほ、本当に・・・?」
「・・・サヤのこと、・・・呪い殺せちゃうかも?」
「えっ?・・・い、いやぁぁぁぁぁーーーー!」
「まだまだ走れるじゃん!その調子っ☆」
とかしてきたのに。鬼?悪魔?違うね、無敵のアイドル幽霊様ですね・・・。こんなことに主演俳優としても活躍してた経験を活用するのはやめていただきたい。アイさんの雰囲気怖すぎて横振り向けなかったよ、顔見てたら漏らしてた可能性まであるよ・・・。つまり、どんな顔してたかは見てないので、実際はすごい楽しそうな顔してた可能性もある。でもやっぱり無理、雰囲気ってすごい。
最初は30分くらいで、もうむりぃとか思ったけど、呪い殺すよ〜と脅されて恐怖で走り出した後。アイさんはその雰囲気を纏ったまま私の背後についてきたのだ。私の背後にヒタヒタと迫るやばくて暗い気配。あ、これ私が速度緩めたら死ぬ・・・。そう感じさせるアイさんは、私を無事(?)に45分間走らせたのだった。その結果、私は家の玄関先で豊洲のマグロめいた状態になってたわけだけど!さらにその後、3分走りましたけど!
ところでなんで幽霊なのに気配があるんですか?これがオーラってやつですか?つまり、アイさんのオーラを感じ取れるようになった私は、壁一枚破ったと言っても過言ではないですね!
アイさん以外の俳優を、アイさんのオーラを感じるようになってから見てないので、他の俳優にもオーラというものがあるなら、感じ取れて損はないはず。アイさんのオーラを覚えれば、アクアとルビーのオーラもたぶん似たようなものだから、オーラを感じて逃げることが可能になる。結果、私がアクアとルビーにネギトロにされる可能性も減らせるし。
アクアとルビーは前世があるけど、オーラがあるなら前世とはあまり関係ないと思う。あの二人は前世の性格とあんまし似ていない。特にアクアなんて、前世はお葬式の写真はたしかダブルピースじゃなかったっけ?違ったかも・・・。遊び人だった、みたいな話もあった気がするけど、なんにせよ性格違いすぎると思う。
今の私の考えとしては、性格、考え方等は体や環境に引っ張られるもの、というもの。どれだけ自分は転生してる、だから負けない!とか考えていても、周りの雰囲気に流される、もしくは順応する。だって、そうしないと社会に混ざれない。人は社会的動物。1回目の人生の人より、2回目の人生を過ごしている人の方が、よくわかるんじゃない?前世で一度味わってるんですし?
つまり、アクアとルビーの性格は体、カミキとアイさんの血が流れていることが要因の一部ではないかと考えている、ということだ。カミキの性格、アイさんの性格、環境。そういったものが影響しているということ。
じゃないとあの二人が復讐にそこまで全力出来ないと思う。カミキの復讐に全力できる才能、アイさんの自分自身にすら嘘を吐いて騙せる、いや嘘で自分の心すら覆い隠し、表に出さない才能。これらを受け継いでいるんだろうと推測している。どれくらい受け継いだのはわからないけど。なお、カミキの才能はテキトーである。これでアイさんに復讐適正ありありだったりしたらガチ泣きする。だってバレた時に復讐に来るのがアクアルビーアイさんの仲良し家族パーティーになるじゃん。3人には勝てませんよ?1人にも勝てませんけど。
(アイさん一家は、やばいぐらいのコンビネーションで襲いかかってきそうだなぁ・・・)
長くなったが、つまるところオーラというものがあるなら、前世に関係なく今世の両親に近いものになる。アクアとルビーのオーラは、アイさん+カミキのオーラになるという予測。カミキのオーラはめっちゃおどろおどろしいんだろうな、近づきたくない・・・。
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カミキとお付き合いしてたアイさんの恋愛観についてまじめに考察すべきか考えていたところで、アイさんが普通に扉をすり抜けて入って来た。
「あ、サヤ。ご飯終わったの?」
「はい、終わりました。アイさんはどこに行ってたんですか?」
「この辺の探索してたの。何もなかったけど」
この辺りは普通の住宅街なので、何かある方が嫌です。お隣さん死んでるよ、とか言われたら卒倒します。
(アイさんの恋愛観、聞いた方がいいかな。私が考えてもどうせ当たらないし?人の心は複雑怪奇。アイさんは幽霊だけど)
いや別に聞いても何かあるわけでもない、なんなら地雷まである、ただの私の興味。どうしてカミキなんて選んだの・・・?あ、でも、アイさんの一番最後の愛してるは本人が嘘じゃないと確信出来たって言ってたので、愛ってどんなものですかって聞いてみるのはいいかも?アイドルは愛してるって言うでしょ、愛ってどんなものですか、私、気になります!って感じで。
「じゃあアイさん、質問があるんですけど!」
「なになに?何を聞きたいの?」
「愛ってなんですか?」
この言葉を言った時、アイさんの目が一瞬光った気がした。いや、お星様は常に光ってますけどそうじゃなくてね?
「愛・・・」
「アイさんは誰かとえっちぃことして子ども作ったんですよね?後、最後にアクアさんととルビーさんに言った、愛してるは嘘じゃないって言ってましたし、よくわかっているのでは?」
「私の愛、それは・・・」
「それは・・・?」
「えへへ、内緒!」
「内緒ですかー!じゃあ仕方ない・・・ってそんなわけないですよ!それじゃ私の今後のアイドル演技、その指導とかに支障が出るんじゃないですか!?」
「じゃあ手本見せてあげる!」
え?という暇すらなく、アイさんの雰囲気が変わる。アイさんを中心に甘い雰囲気が漂い始め、瞳のお星様が輝きを増しながらしっとりと、それでいてしっかりと、私の目を見つめて来る。アイさんから目を逸らせない。オーラがすごい。ドキドキしてきた。やばい、これが・・・愛!?
「サヤ。私はあなたのことを・・・愛してる」
「・・・なるほど。相手を不整脈に陥れるのが、愛・・・」
「違うよ?今の私の演技でどうしてそう思うの?」
アイさんはそのまま、ちなみに、愛っていうのは人と人との信頼の上で成り立ってるんだよ、と続ける。人と人・・・。
違うのはわかってるんですけど、流石は嘘吐きトップアイドル兼主演俳優。この気持ち、間違いなく愛!とか思いそうだった。でもよく考えたらこの人、幽霊じゃんって思ったらスンってなった。でもドキドキした・・・。
この調子だと、アクアとかルビーに演技でも迫られたらやばいのでは・・・?アイさん+カミキの才能の暴力が来たら、勝ち目がない。ナーフしてくれません?私と才能の差ありすぎでは?
「じゃ、次はサヤがやってみて?私が採点してあげる♪」
「はぁ、私がアイさんにですか?」
愛、それがよくわかんないから聞いたのに。やっぱり不整脈?でもアイさん絶対心臓動いてないし、ドキドキしなくないですか?無敵ってそういう?それは不正行為じゃないです?
(でも負けっぱなしは悔しい・・・。相手がいかに私が目指す頂き、トップアイドルだとしても、一矢報いたい!)
私は、アイさんに断ってスマホで検索し始める。
愛 とは ぐーるぐる検索
愛とは、そのものの価値を認め、惹きつけられる気持ち
そのものの価値。惹きつけられる気持ち。あ、なんとなくわかったかも?私が価値を認めている、そして私の気持ちを惹きつける、私の大好きな・・・。アイさんが言っていた人と人との、ってところと真っ向から激突してるけど。これが、この気持ちが・・・愛!?
私は目を閉じて、精神を落ち着ける。目を閉じてるから見えないけど、アイさんが目の前にいるのはわかる。オーラで。
「アイさん」
「サヤ、準備でき・・・!」
私の目の前にいるアイさん。私の中で価値を認めているそれに、アイさんは結構近い。だからアイさんへの認識、感情をすり替えるのはそこまで難しくはない。後は目を開けて、この気持ちを表すだけ!アイさんの、心に届け!
「大好き、愛してます!」
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「愛とは違うような気がしたけど、結構いい感じ!ね、誰への気持ち?誰かを私に重ねてたよね?もしかしたらアイドルより俳優さんの方が向いてるかもよ?」
「なんで重ねてたのわかるんですか?私、そんな素振りしてました?」
「そんなの、目でも表情でも動きでも、何からでもわかるよ!それよりも、相手は誰?同級生?しっかり愛してるって言える相手いるんだ♪」
アイさんは、よかった〜この何もない部屋の住人にも、そういう風に思える人が居るんだ♪みたいな反応をしているのはわかる。これはとてもまずい。相手が人ではないとバレた場合、社会通念上の常識として女子中学生が愛を抱える相手ではないと怒られる気しかしない。ついでにアイさんの恋愛観の常識と全く噛み合ってない気もするし。さっきの人と人とのって話からして。
(一矢報いるために頑張ったけど、この頑張りは失敗でしたね・・・)
というか、最強のアイドルすごすぎない?どんな観察眼してるんですかこの人?そしてそれに気づいてるなら、当然相手のこと聞いて来ますよね、そうですよね。なんとかして誤魔化さないと・・・。さっきのアイさんの真似でもしてみようかな?
「な・・・」
「な?」
「内緒!」
ーーーその刹那、アイさんの眼光が鋭くなる。顔は笑ってるけど、瞳のお星様がやばい。ビームが出そうなレベルだし、色も少し黒くなってきてません?確実にこちらの事を探っている瞳ですよね?そんな恐ろしい瞳で私を見るのやめませんか?こんなところに全力出すのやめてもらっていいですか?もっと違うところにその全力使いませんか?
(ひっ、ひえぇ・・・こわぃよぅ・・・)
ゆっくりと、アイさん曰く必須のものが何もない部屋を見回し、笑顔のアイさんがこちらを向いて、怯える私のことを上から下まで観察している。もはやお星様が真っ黒です。土下座したい。筋肉痛で脚痛いから出来ないけど!なんでなのかわかんないけどこれ絶対バレてる!
「・・・サヤ。もしかして・・・」
「ち、違います、本当に違いますアイさんの勘違いです相手は人間ですごめんなさい許してください!」
「・・・人、なんだよね?まさか、給料、じゃないよね?」
「違います諭吉です」
「ゆきち・・・?」
「1万円札・・・」
あっ