転生者と幽霊と   作:霧マッシュ

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あい とは

アイさんの顔が笑顔で凍りついている。私すごい、伝説と言われた無敵のアイドルの表情を凍り付かせるなんて、普通の人には絶対無理でしょ。やったね!

 

・・・もうこんな感じで現実逃避しないとやってられない。この後怒られるの見えてるし。

 

数秒後、ハッと意識を取り戻したアイさんは、私の顔を見ながら躊躇いがちに言葉を口に出す。

 

「うん。サヤ、もう一回さっきのしてみて?」

 

「え?・・・は、はい!」

 

なんでか知らないけどやるしかない!諭吉!お金!いくよ!

 

「えへへ、大好き!」

 

「・・・伝わってくる愛?、恋する顔で、でも私に重ねられてる相手は一万円札。・・・せめて、人じゃなくても、生き物に対してその感情を持って欲しいな・・・」

 

「今のところ、生き物で愛を感じる相手はいないですね・・・」

 

(一番その感情に近いのは、アイさん、なんだけど・・・)

 

両親を除くと、私の中ではアイさんが一番その感情に近い。幽霊だけど。だから本心から、正面から、すり替えているとはいえ気恥ずかしいけど愛してると言えるわけで。なぜかというと、私をドル箱に変貌させてくれる可能性が一番ある人物だからです。でもこの内容を本人に伝えようものならお叱りの追加が目に見えている。お口チャック。

 

「・・・サヤ、座って話しよっか?」

 

「・・・はい、わかりました・・・」

 

アイさんから発される圧力が強い、強すぎる。アイさん1人しかいないのに複数人に囲まれてる気分。実は分身できたりしません?

 

私の体が勝手に正座をし始めたので、筋肉痛ですごい痛い。正座やめませんか?私の体ちゃん?正座しろって言われてないよ?座るだよ?

 

ーーーーーー

そこからアイさんは、私に懇々とそういう感情を持つべきはお金ではない、人にしなさい、という話をし始めるのだった。すごい常識的。私がお金を愛していても、お金は私のことを愛してくれないから。そんな返報性のない愛は、愛ではないらしい。お金が私のことを愛してくれないって、なんだろう、すごい悲しい。アイさんの言っている意味とは違うと思うけど。でもまって、アイさんもどこかで世の中、結局お金だって気づいてなかったっけ?つまり、愛もお金!

 

むむむ、アイさんの話は、前世を含めてもそんな恋愛とかまともにしたことない私には中々難解な内容。でも、人は裏切る可能性もあるけど、お金は裏切りませんよって言いたかったけど、アイさんの顔が大真面目過ぎて何も言えなかった。アイさん的には無機物に愛を抱くって言うのがすでに意味わかんないことなんだと思う。だからたぶん、さっき私の愛?の相手がお金だと知った時、あまりにもアイさんの常識とかけ離れてたから固まったんだ。返報性の原理に反し、絶対に愛を返してくれないものに愛を持つなんて信じられないから。でも愛を返してこない代わりに裏切られもしない。サブにどうでしょう?

 

私は別に、お金に性的興奮を覚えたりは流石にしないけど、でも愛してる・・・?子どもは愛の結晶、とよく言うけれど、それなら確かに私の愛は変だ、子どもを成せないのだから。でも父母から子どもへの愛も子どもは成せない。いや成せるのもあるかもだけど。この時点で愛っていうのは色々な形態があると思う。

 

ただ、アイさんはカミキを愛していたのかな?最初の方は産まれたアクアとルビーの目の色が違うにも関わらず、見分けがつかなかった。最初は興味がなかった?カミキを愛していたなら、その愛の結晶であるアクアとルビーには最初から興味があり、見分けはついたはず。子どもが自分を愛してくれるか、わからなかったから?アイさんがそうだったように。

 

自身の子どもなら愛せると思っていたから、産もうと思ったはず。だってアイさんの行動は、愛を知るための行動だから。疑問なのはここで、先生はどう思う?と聞いた点。アイさんの愛を求める行動を鑑みるなら、ここで聞くのは少し変。別に先生に確認する必要はないよね?社長がやめとけって言ったから、流れで先生にも聞いてみよう的な?なんと言われても愛がわかる可能性があるなら産みそうなものだけど。破滅願望まであるアイさんのことだ、命だって顧みないのでは?

 

アイさんは確か、人の名前、顔などを覚えるのが苦手だった。生前、ほとんど人を名前で呼んだことはないはず。アクアとルビーくらい?佐藤さんはまず名前から違うし。私のことは・・・アイさんが幽霊になってから唯一話せる人だから見分けがつくのかな?顔がアイさんとよく似ているから?それとも幽霊になって記憶力が改善した?アイとは関係あっても愛とは関係なさそうだけど。

 

アイさんは自身の愛に関連し、興味がある人物を見分けられるって感じ?だからほとんどの人を見分けられない?一度愛のようなものを心のどこかで感じたから、カミキは見分けがついている?でもアイさんの口から直接カミキって名前出てないような・・・。名前と顔が一致しなかったらメールやら電話やら、どうやって相手選んでるのって思うけどね。視力が良くて聴力嗅覚が過敏でも、画面の向こうの人のは感じ取れないし。

 

ちなみに私も人の顔と名前を覚えるのは苦手です。でも、私はアイさんほど他人を見分けられないわけではないですよ?私は自身の利益不利益に関連していれば、ある程度見分けはつくのです。えっへん、すごいでしょ!褒めて褒めて!

 

でも後になって、アイさんはアクアとルビーは判別ができるようになった、つまり愛の結晶ではなく、結晶を愛したことになる。アクアとルビーが、頑張ってサイリウム振り回してるのを見ていた時の笑顔が、作り物(嘘)ではなく自然だと指摘され、アクアとルビーが自分を愛し、自分がアクアとルビーを愛してると一瞬認識した?だからその後、アイさんの大ファンだったリョースケさんのことも覚えていた?アイさんの大ファンだったのだ、それはもう頑張って真正面でサイリウムを振っていたことだろう。となると、アイさんの愛の判別法は自分との物理的距離とサイリウムだったりして?

 

(そんなネタみたいな判別法なわけないですよね〜)

 

しかし死ぬ間際までアクアとルビーに愛してるとは言えなかった。自分の心を嘘で覆い尽くした結果、本物が残っているとは思わなかったから?アクアとルビーに向けていた愛すら、複製コピーしてアイドルに転用した結果?ライブでうちの子きゃわ〜と思った時点ですら、その認識した気持ちが本物かどうかわからず、愛してると言えなかった?

 

アイさんがこれまで被ってきた嘘を、自身の愛を覆っていたそれを、壊すほどの威力がある、自身に迫ってきた死。どれほどの衝撃を受ければ、アイさんの嘘を壊すことができるのかはわからない。死は人間にとって絶対、その後はない。転生と幽霊?なんのこと?

 

ただ、愛を自覚するために自身に迫る絶対の死と同じ衝撃が必要ならば、アイさんの死を回避した場合、次に愛を自覚する可能性があるのは、アイさんが愛している誰かが死んだ時になる。

 

(・・・自分で考えてて嫌になるね。アイさんが愛を自覚するためには、誰かが死ぬしかないって?このこと考えるのはやめて、他のことを考えよ・・・)

 

カミキは愛してくれなかったから、愛を返さなかった?その逆?だから別れたってこと?でも電話して住所を伝えてるんだよね。母親である自分が愛を子どもに抱いたから、父親も子どもを見れば自分と同じように愛を抱くと期待したってこと?アクアとルビーが母親の自分に表現しているような愛を父親に示せば、父親であるカミキも返報性の原理からアクアとルビーを愛すると思った・・・?

 

 

(うーん、よくわかんない!この辺はアイさん、全然教えてくれないし!アイさん!えへへ内緒!じゃないよ!忘れてた原作知識を、嫌だったけど無理やり思い出してまで考えてるのにさっぱりわかんないよ!何この知識、なんも役にもたたないじゃん!罪悪感はばっちり生み出すくせに!)

 

 

アイさんにお叱りを受けてしまったので、愛について色々考えていたけど、たぶん考えただけ無駄だった気がする。なぜかって?

 

頭よわよわな私が色々考えても、つまるところ何をどうしたらいいかわかんないからです!

 

アイさんにとっての愛ってなんですか!?

 

ついでに私にとっての愛もなんですか!?

 

ぐーるぐる検索で出てきた愛とは違うものなのですか!?

 

 

ーーーーーー

一通りアイさんのお叱りが終わった後、私がほとんど理解できす混乱していることに、アイさんがなんとも言えない顔。こちらに手を伸ばしてきて、触れないながらも頭を撫でようとしてきてくれた。嬉しい。

 

「サヤにはまだ早かったかな・・・。でも、愛の先がお金はヤバいと思って少し怒っちゃった、ごめんね?普通の恋愛しよう?」

 

すみません、人生2回目のくせに精神年齢がまんま中学生で・・・。そういったことにはほとんど興味なかったもので・・・。人が愛するのは人、というアイさんの言いたいことは、至極真っ当であるとは私も思う。思うのと、実際にできるかどうかは別なんですけどね?

 

ところで普通の恋愛とは・・・?同級生とおてて繋ぐやつ?

 

というか、アイさんも普通の恋愛してなくないですか・・・?ワークショップでのカミキとの爛れた生活は、まず間違いなく普通の恋愛とは言えないような・・・?いえ、実際はこの2人の間に甘酸っぱいやりとりがあり、誠実なお付き合いをして、結果として子どもができて、でも音楽性の違い(?)から別れたっていう可能性もあるけど・・・。

 

(命の重みとかいう意味不明なものを感じる人と、そんな仲睦まじいやりとりしてるアイさんを想像するのは嫌ですね・・・。どんな会話になるのかな。あの人の命、重そうですね。つまんで行きますか?きゃっ、いいですね、とか・・・?ダメだ目眩がしてきた、やめとこう・・・)

 

 

ーーーーーー

あの後、アイさんは難しい顔をしながら何処かへ行ってしまった。たぶん愛の説明の方法を変えるか、もしくはアイドル指導の方法でも考えてるんだと思う。私のためにごめんなさい。

 

私としては体は筋肉痛でガタガタ、頭はお叱りでボロボロと、内外どこをとっても重傷。足は湿布でいいけれど、頭に付ける薬はないのかな?できれば頭も良くなるやつだと嬉しいなって。

 

(うーんやばい。まだ起きてから5時間くらいなのに超眠い。ご飯食べてすぐだから寝ちゃだめなんだけど、ベッドのお布団様が私を呼んでいる気がする・・・。でも暇なんだし、心理学の本読まないと・・・)

 

本棚から心理学の本をなんとか一冊取り出し、フラフラとベッドに吸い寄せられ、布団の間に滑り込む。本を開こうとするが、体がついていかない。やっと開いた一ページ、そこにある前書きの文字を見た瞬間、そのまま眠ってしまった。やっぱり文字いっぱいの本を読むっていうのは辛い、特に私みたいなアウトドア派(?)には。

 

(まえ、が・・・わ、わたし、ねて・・・)zzz

 

 




アイドルって儲からないんですか!?
おかしい、グーグルせんせは年収6000万以上あるぞって教えてくれたのに
もし儲からないのが正しい場合、拙作は土台から崩壊します
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