皆様は、アイドルはトイレに行かないとよく言われるのを知っていますか?これを検証するために、私サヤは最強で無敵のアイさんの観察記録をつけて行こうと思います。私?私はまだアイドルじゃないからセーフ。まず一日目、てか皆様って誰・・・
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目が覚める。
うとうとしている時の方が夢を見やすいと思う(私の個人的感想)。と言っても毎回見るわけじゃないけどね、お昼寝とかだと見やすく感じる。だから今回もなにか夢を見たような気がするけど、内容をほとんど思い出せない。夢の内容自体もめっちゃ薄っぺらかった気がする。気にするほどのものでもない?
(わー寝落ちした時に抱えてた心理学の本にシワがついてる〜、伸ばしてっと・・・)
上半身を起こして部屋の中心に目を向けると、アイさんが帰ってきていて、こっちを向いていた。軽く手を振ってみる。
「おはよーサヤ、もう夜だし、こんばんはー?」
「私は今起きたのでおはようございます?おはよう、ではないですけど」
「ぐっすり寝てたね、寝顔可愛かったよ?」
「ガッツリ走らされましたので・・・」
私の顔もアイさんの顔も似たようなものなのに。これが溢れる自信ってやつ?幽霊も眠れるらしいから、どこかで寝てるとこ見つけて寝顔しっかり観察してスケッチ描いてやる・・・。前世で一時期お絵描きにハマってた、この私の腕前見せてやるぞふへへ。おそれおののけ〜。
そんなことを考えていると、アイさんは何かを思い出す仕草。
「あ!そういえば、親御さん帰ってきたっぽい?」
「!」ガタッ
ついにきたか・・・。私がアイドルを目指す時の第一難問、親の許可。自分の子どもがアイドルやらユーチューバーやらの不安定な職、悪く言ってしまえば見せ物になりたいと言い出して、はいどうぞ、という親はそんなにいないと思う。親自身が俳優などの場合を除く。だいたいの親は、自分の子どもには安定した普通の職業について欲しいと考えるものなのだ。たぶん。私は親になったことないから知らんけど。
「アイさん。私は負けません。必ず勝ち取ってきます。だから・・・待ってて、くれませんか?」
「なんでそんな雰囲気なの?親御さんと仲悪いの?」
「いえ別に悪くはないと思います。なんていうか、演技の練習も含めて?」
私の演技の反応としては、アイさんはすごい微妙な顔してました。ついた評定としては、素人ならこんなもんみたいな?畜生、いつか吠え面かかせてやるぅぅ!
演技法としては、メソッド?没入型?っていうのと俯瞰型?っていうのがあるんだっけ?他にも色々あると思うけど、私にはどれが向いてるんだろう。そもそもアイドルに演技法とか関係あるんだろうか?ありそう、歌唱の感情表現とかに使いそう・・・。
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親との対決が終わって部屋に帰還。私の顔を見たアイさんの一言。
「すっごい複雑そうな顔してる」
「そうですね、複雑です。まさか両親が私のことをあんな風に思っていたなんて・・・」
「すでに予想つくけど、なんて言われたの?」
「お金第一主義兼ニート予備軍」
「予想よりさらに下・・・。アイドルの許可はどう?」
「普通に、いや普通ではなかったかもしれないけど貰えました・・・」
「貰えたならいいじゃん♪」
「そう、でしょうか・・・?」
私はアイさんに、下での会話を一部切り取って伝えるのだった。
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一階に降りた時、ちょうど母がご飯だと私を呼ぼうとしていたようだった。リビングに入り、元々座っていた父、横に母が座ったところで、私は話を切り出した。
「お父さんお帰り〜。晩御飯いただきます。ご飯食べながら私の話、2人に聞いて欲しいんだけど」
「サヤから話?珍しいな、初めてじゃないか?」
「まあ、何かしら?」
一息入れる。落ち着いて、落ち着いて・・・。
「私、夢が出来たの。アイドルになりたい」
この言葉を出した瞬間、父は茶碗、母は湯呑みが手から滑り落ちた。驚いた顔でこちらを見る2人。直後2人は顔を見合わせ、しばらく間があって、父が優しく諭すように言ってくる。
「サヤ、知らないと思うから教えてあげよう。アイドルっていうのは、ドル紙幣をアイする職業って意味じゃないんだぞ?」
「知ってるよ!?お父さんは私のことをなんだと思ってるの!?」
「金や為替レートに異様に詳しい、俺の娘?」
「前半は要らない!可愛いにでも変えといて!」
「可愛い俺、の娘?」
「なんで区切るとこ変えた?」
「ま、別にいいんじゃないか?アイドル。サヤが自分から何かしたいって言い出すのは初めてだしな」
父の許可は得た・・・?母の方を見ると、ハラハラと涙を流していた。
「お母さん・・・」
やっぱりダメなのかな。母が泣いてるの見ると私も泣きそうだよ・・・。でも、でも・・・。アイさんのためにも、私、諦めたくな・・・。
「・・・ファッションも化粧も上部だけ。お金にしか興味がないこの子が、まさかアイドルを目標を選ぶなんて!お母さん嬉しいわ!」
「それ嬉し涙なの!?」
「お母さんは大賛成!この子に女の子としての常識を学ばせるチャンスはこれが絶対最後だわ!アイドルのお勉強で少しでもまともな女の子になってちょうだい!」
「ああ、うん・・・。ありがとう?2人ともすぐに賛成してくれて・・・?」
「サヤは興味があること以外、すぐに飽きがくるからなぁ。ま、サヤがアイドル諦めてニートになっても、大丈夫な程度には財産はあるつもりだ。好きに生きなさい」
「そうね。サヤが女の子らしさを手に入れるなら、この際ニートになってもお母さん、構わないわよ」
「ニートになる予定はないよぉ・・・。なんでそんなこと言うの・・・」
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実際はこの後にまだいくつか繋がる話があるのだが、アイさんに話しても意味ないのでカット。この話を聞いていたアイさんの表情は苦笑いである。あれ?いつもの輝く笑顔はどちらへ?
「どう思いますかアイさん。私の親、酷くないですか?」
「私はまだサヤに会って一日だけど、そうだね。親御さんの味方。サヤの親御さんが思ったよりまともそうでビックリ」
「私の味方じゃないんですか?というか、私の親をなんだと思ってるんですか・・・?」
「一日しか見てないけど、親御さんの言ってることは私もその通りだと思うし?サヤ、このまま成長したら金を求めて詐欺で何人もハメたり、他人の臓器売り飛ばしたりしそうだし。後、サヤ見てると親御さんもこんな感じかな〜って?」
「えーん、みんなして私をいじめるー。・・・いやまって、私、将来詐欺働く人間に見えるんですか!?他人の臓器売り飛ばすって何!?私は普通の女の子ですけど!?私を見て想像できる親はどんな感じなんですか!?」
どうして!?私はまともな女の子じゃないってこと!?みんなどこに目をつけてるの!?アイさんのその、サヤは倫理観欠如してるから、みたいな前提はどこから!?私、そんな文明滅んだ後の宗教観みたいなの持ってないよ!
「普通の女の子は、最低限他の人に見られても大丈夫かどうか確認する姿見くらいは置いてあるよ?ファッション雑誌よりサヤの持ってる辞書?みたいな本が多かったりもしないし。あとは・・・」
またアイさんがダメ出しモードに・・・。おかしいな、私はごく普通だと思ってたんだけど。別に私はお金のためになんでもするわけではない。私にだって感情はあるんだよ?ただ、自分の感情に値札をつけて、それを損得に入れて行動してるだけで。当然、みんなやってるでしょ?
「それ以外にも・・・」
「あーあーあー!わかりました!わかりました!親からアイドルの、というか普通の女の子?になるためなら、ある程度好きにお小遣い使っていいって言われたので、明日デパートにでも買いに行きましょう!と言っても、一度にたくさんは買えませんけど!」
このままでは寝るまでアイさんのお小言を聞き続けることになる。やだ!だからさっさと切り札、貰う予定のお小遣いを使用!お小言をシャットアウト!このお金の出どころは我が家の予算!
なんですか、サヤが普通の女の子になるため予算って!そんな予算を家計簿につける家なんて、世界広しといえど、この家しかないよ!
デパート行きましょうって言ったけど、行くのはいつぶりかなぁ。最近行ったのは、近くのスーパーにお買い物のお手伝いに行くくらい。スーパーも大概混んでるけど、デパートはその比じゃない、人がもうてんこ盛りって感じ。しかし、前世でオリンピック観戦やらなんやらで人の隙間をすり抜けるスキルを取得した私には効かないよ。効かないけど人混みは嫌いだよ。めんどくさいから。
「さすがサヤの親御さん。金を目の前に垂らせば、サヤは走り出すってわかってるね♪」
それはいったいどういう意味ですか?私がお金を求めて走り回る馬だとでも言いたいんですか?もしかして喧嘩うってます?いいでしょう受けて立ちません!私は自分の利益にならないことはしないので!何?お金になる?ふぅん・・・。詳しいお話を・・・。