転生者と幽霊と   作:霧マッシュ

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準備

明日はデパートに行くことに決定したその日。私はアイさんと、明日何を買おうかな、という話し合いをしていた。

 

「ほんとはフェスの映像とか見て、アイドルっていうのはこんな感じ、このいなくなってるときはこんなことしてる、大変だよ〜みたいなのをしよっかなって考えてたけど、明日買うものを考えるのが先!サヤを女の子にするためだしね!」

 

「あの、すいません。私は今でも女の子なんですけど・・・?」

 

「私からみると、今のサヤは女の子じゃないよ?」

 

「私の周りにいる人ってみんな辛辣ですね。私はなんですか?女の子未満の謎の生き物ってことですか?」

 

「そ!でも大丈夫!明日には女の子になれるよ!」

 

普通に謎の生き物なのを肯定されてしまった。グサッときました、不貞寝しようかな・・・。なんだっけ、人間になりたいーみたいなアニメ?ドラマ?あったよね。私はその状態なんですかね?妖怪か何かなの?

 

「とりあえず明日はー、全身見れる姿見、いやドレッサーが先かな?コスメ置くとこないし。後は、今流行りの・・・。サヤ、念のため聞いてあげるけど、まともな服ある?」

 

「洋服ですか?3、4着はあると思いますけど・・・」

 

「服っていうのは、組み合わせて使うものなんだよ?なんで数えられる程しかないの?コーデ考えたりしない?」

 

「家ではジャージ、外は制服ではダメなんですか?服はたまに友達と遊ぶ時くらいしか・・・」

 

「いいわけないでしょ、はぁ〜。サヤ、私とよく似た顔なんだからちゃんと考えれば人気でるよ?」

 

「アイドルになる前に人気出ても、それはお金に・・・」

 

「はいストップ。その終わってる判断の仕方やめよっか」

 

なんでや!この日本は資本主義国家ですよ!お金こそ正義!今はお金が微笑む時代なんだ!

 

「明日は服とコスメも買おっかー。オシャレなサヤを見れば、親御さんも大満足!私の評価も上がるね!」

 

「アイさん、私の親に認識されてないと思いますけど・・・。しかし、オシャレですか・・・」

 

「この部屋、コスメなんにもないとか、ほんとに女の子の部屋?まだ・・・」

 

部屋の物の話になると、アイさんは口が止まらない。どんだけ文句あるんだろ・・・。アイさんのいう物全部揃えたらとんでもない金額になりそう。

 

今までの私は、オシャレなんて必要としなかった。だって、最低限見られれば格好なんてどうでもよくない?他人を不快にさせない程度の格好。

 

でも、今からの私はアイドルを志す者。流行の最前線だ。オシャレは必須、体の動きだって他人を魅せるものにする必要がある。パリコレでも見て勉強すればいいのかな?もしくは流行りの写真集とか、雑誌とか?一応、学校での話題に薄らのれる程度なら流行やコスメもわかるけどね・・・。

 

コスメ自体を持ってるかって?母が使ってるやつあるから、それを適当に使えばいいのでは?

 

ーーーーーーーー

その夜。もうそろそろおねむの時間。

 

明日はワクワク(アイさんが)デパート行き出発を12時として、午前は朝遅く起きて(10時くらい?)、その後軽くランニングとか。シャワー浴びて朝昼兼用ご飯を食べて、まずはバス、その後は電車に揺られてデパートの予定。電車は乗り継ぎもあるし、私はあまり乗らないしで結構大変な予感がする。しかも、アイさんのワクワクぶりからして、絶対短時間では帰れないだろう。インドア派の私にはしんどい戦いになりそう・・・。

 

(明日は無事に家に帰れますように・・・。あ、そういえば)

 

忘れていた、気になっていたことがあるんだった。

 

「そういえばアイさん」

 

「なぁに?」

 

「どうして、私の愛情の矛先がお金だってわかったんですか?」

 

「あーそれね。はぁ・・・。あのね、サヤ。"人"に恋する乙女っていうのは、相手に自分を好きになってほしいと思っているの。だから自分を磨くし、コーデもコスメもしっかり流行を追ってそれに沿ったものを使う。自分の魅せ方を考えるってこと。サヤの愛は本物、かどうかは怪しいけど、割とそれっぽい。でも変なことに、この部屋には自分を磨くものは無いよね。しかも相手は内緒で目線を逸らそうとしてた。で、今までのサヤを見てると・・・」

 

「お金ってことですか・・・」

 

「私は信じたくないよ、金に愛が向くなんて・・・」

 

「向かないんですか?」

 

「怒るよ?」

 

「ごめんなさい・・・」

 

こればっかりはね、とアイさん。どうして・・・?アイさんもアクアとルビーのため、佐藤さん他のためにマルチタレントとして売れて嬉しそうな顔(表面のみ)してたんじゃないの・・・?あれはお金がいっぱいで嬉しいって顔じゃないですか・・・?

 

「私って常識には疎い方だと思ってたけど、サヤほどじゃないって自信がついたよ」

 

「え?私は常識ある方ですよ?」

 

「・・・。この世界の常識じゃないっぽいけど?」 

 

「もういいですふーんだアイさんなんか知らないもんおやすみなさいっ」

 

「はいはい、おやすみー」

 

もう怒った。この怒りは有頂天超えてますよ?明日の朝、私が起きるまで口聞かないもん。アイさんは、明日の朝まで寂しい気持ちを抱えて過ごせばいいんですよつーんだ。

 

ベッドに入ったままチラリとアイさんの様子を伺う。アイさんは窓から空を見てる?割と空を見てることが多い気がする。何もすることがないから、空をみてるのかな。今度、私の部屋にテレビ買ってくれるように親に言ってみようかな・・・。電源つけとけば、アイさんの暇つぶしになってくれると期待して。それとも、パソコンで動画流しておけばいいのかな?てか寝れるんだから寝たらどうでしょう?

 

寝てるとこ見かけたら、スケッチしてやりますけどね!私の味わった恥ずかしさ、アイさんも味わうといいですよ!

 

 

ーーーーーー

 

アイさん一家が勢揃い(3人)。家族団欒しているところに、私が近づいていくと、アクアとルビーが何かに弾かれたように遠くに行ってしまった。残ったのは、呆然とした私と、困ったような怒ったような、不思議な顔のアイさんだけ。胸がギュッってなる・・・。嫌だよ・・・。

 

ーーーーーー

 

朝!ちょい遅め!

 

夢っぽいものを見た気がするけど、よく覚えていない。でもなぜか心が痛い・・・。ちょっと無理にでも声を出して、元気出さないと・・・。

 

「あったらしいー朝!おはようございます!」

 

「おはよー。今日はサヤが女の子になる記念日☆」

 

「いきなりまだ女の子じゃないねって心抉るのはやめませんかアイさん。お布団に戻りたくなります」

 

ここほれワンチャン?みたいな番組でアクアが人の心を感じない一言がどうとか言われてたけど、絶対遺伝だよ・・・。だって今のアイさんの言葉には人の心なるものを一切感じないもん・・・。幽霊だから?よく考えなくてもカミキにも人の心とかなさそう。アイさんカミキアクア、ルビーも闇堕ち時は人の心とかなさそうだったよね。人の心をどっかに捨てるのって、もしかして今の流行り?流行り廃りで、人の心、みんな捨てちゃうの?なら私も捨てようかな・・・。捨てたら、罪悪感とか心の痛みとか無くなるのかな・・・?

 

「とりま着替えて、ランニング行こー!」

 

「はい、そうですね・・・」

 

 

ーーーーーー

ランニングは特に何もなし。25分くらいでした。別に脅されてないよ?

 

「そいえば。今日、サヤの金ではないけど、家の金を結構使うと思うけどいいの?」

 

「え?別にいいのでは?」

 

「守銭奴心が黙ってないかなって」

 

「フッ。これだから素人は・・・。いいですかアイさん。これは初期投資!イニシャルコストとも言われます。事業を始めるためには、まず最初に・・・」

 

「あーうん。いいならいいよ」

 

「まだ私が話してますよ!?」

 

ひどい。珍しく私が語れそうだと思ったのに即カットだなんて・・・。

 

「それより、もっとやーなことに気がついちゃって」

 

「何かあります?別に思いつきませんけど」

 

「私、バスとか電車とか乗れないんだよね〜。乗り物だけ走ってくんだ〜」

 

「なんですと?あ、なるほど・・・。え?じゃあどうするんですか今日?」

 

家自体は移動していない。だから別に干渉できなくても関係ないけど、乗り物は違う。干渉できないからエネルギーが来ないので、そのまますり抜けて乗り物だけ行っちゃうんだ・・・。詰んだ?

 

ーーーーーー

兼用ご飯を食べながら親にお金を無心する。いくらくらい貰えるのかな?と思ってたら15万。

 

「めっちゃ多くない?」

 

「サヤは知らないと思うけど、女の子ってお金がかかるのよ?化粧品だって安くはないし、何種類も買おうと思ったらそれぐらいは余裕でいくわよ」

 

さらっと今は女の子ではない、と言われているようなやりとりをしつつ、次はアイさんの問題。パソコンとスマホはあるから、なんかのアプリで繋げればいけるかな?移動しなくても見るだけならそれで十分だよね、便利〜。でも幽霊ってカメラ、というかアプリに映るのかな?

 

 

連絡用のアプリで実験。パソコンの前にいるアイさんのお星様がスマホにも映っている。相変わらずお綺麗な瞳ですね。ちょっとそのまま話できるか実験したりしてたけど、これ、他の人が見たら誰もいない部屋とアプリで会話をしてる超やばいやつじゃん・・・。画面は出来るだけ、自分だけに見えるようにしないと・・・。

 

ーーーーーー

アイさんと親に行ってきますして、徒歩でバス停へ。私の今の格好は数少ないお洋服。ちなみにアイさんの格好は、アイさんが生前馴染みのあった格好なら好きになれるらしい。今はパソコンの前だけどお忍びで街へ繰り出すときの格好。オープニングでみたような?格好を変える時に裸になるシーンとかあればよかったのに。あ、やっぱりいいです。お腹に傷とかあろうものなら、罪悪感で倒れます。

 

電車を乗り換え、デパートに向かう途中。ふと思うのは、二日前にアイさんに会った後はほぼずっと一緒にいたってこと。アイさんが意思疎通がとれるのが私しかいないからだけど。今はスマホ越しにはいるとはいえ、近くにはいない。

 

(アイさん、私じゃなくてアクアやルビーと話をしたかったりしないかな・・・。どうだろ、ワターシはイターコとモーシマス。アイさんのレイをオろしてミせましょう、でどうかな?ダメだよねぇ・・・)

 

あの2人に冗談でもそんなことを言おうものなら、バレるどころの騒ぎじゃない。バレてなくても東京湾に沈められる。殺意高すぎ問題。

 

アクアとルビーに会いたいわけではない。むしろ会いたくない。罪悪感で体調悪くなるし、あと怖いし。なんかバレて捕まったら魚の餌待ったなしだ。アイさんですら、見慣れた気がしててもどこか本調子にはなれない。素知らぬ顔で誤魔化すけど。前世の仕事で、自分の今の状態を悟られぬ表情だけは上手くなった。相手はプロなので、見抜かれてるかもだけど。

 

でもアイさんは、絶対あの2人と話をしたいはずだ。なんてったって、初めて自分が愛した、愛を自覚した、自分の子どもなのだから。もっともっと、愛を自覚した後なら話したいこと山ほどあると思う。

 

・・・このまま私はアイさんに。ついでにアクア、ルビーに。自分を隠して、嘘をついて、生きていくのだろうか。それは・・・。

 

(私、嘘つくのニガテなんだよね・・・。嘘は絶対どこかでバレるもの、と思っておかないとリスク管理できないから、あまりつきたくない。しょぼい嘘はつけるけど。だって、何からバレるかわからない。壁にミアリー障子にメアリーってやつ。リスクをわざわざ背負う必要はない。アイさんだって、いつか必ず代償が訪れるってわかってて嘘ついてたわけだし・・・)

 

アイドル。偶像。愛される、愛を振りまく、愛を売る存在。愛はお金になる。ここまではいい。でも感情なんていう目に見えない曖昧なものは、すぐに変化する。ルビーは、アイドルが恋愛したら殺されても仕方ないのってキレていたけど、殺されて仕方ないわけない。でも愛を、感情を売り物にしているという恐ろしさは、それが変化した時に味わうことになる。だって、人間は感情の生き物。自分からの愛、自分への愛が裏切られたと知ってアイドルへの深い愛が変化したら、どんな感情になるのか。それによってどんな代償が訪れるかなんて、想像しなくても分かりそうじゃない?

 

 

つまり、私のアイドル生活はどんなものになるか、もうわかる。売れるだけ売って、十分稼いだら嘘がバレる前に逃げる・・・!必ずバレると思ってはいるけど、バレるまでにかかる時間は不明。バレた時にはもうすでに私はいない!あばよー!

 

 




デパートで売ってるコスメって高いんですね。
プチプラしか知らないから、こんな高いとは思ってなかった・・・。
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