生きる化石 猫又擬き   作:.uwEZh]|y

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すまん、どうしても「そこ削れなくね」という話が立て込んでて東方要素が出せん。
そろそろ不味いか。


三話 二度あることは三度目の正直

 時として、人生とは何があるか分からないものである。文字通りに。

 誰かは奇跡としか言いようのない豪運に常に見舞われてるかもしれない、反対に、何をするにも最悪の結果しか帰ってこない不幸な者もいる。

 これらの差には「日頃の行い」だったり「前世に徳を積んでいた」とか言われるが、正直言ってしまえばそんなもの関係無い、ただの偶然の産物に過ぎない。多分。

 恐らく予定調和、全てのプラスとマイナスは総じてゼロになると言う人もいるが、それも言ってしまえば気の所為。きっとその気の所為には大いなるナニカを悟ってしまわないようにするための自衛本能が働いてそうで……、いや、なわけあるか。

 

 世界は白く染め上げられ、私は「ナニカ」した。

 その結果で無事なのかは分からないが、なんだかよく分からない場所にいた。

 

 正面には巨大で赤い両開きの門が荘厳と建てられてある。

 振り返り辺りを見回すと、門の反対側には先が見えないほどの海が、波紋一つ見えずに永遠と思えるほどに広がっていた。その海には幾つか木製の船が浮かんでいた。

 

 ___……ここは、どこだ? それにあの門は、俺のいた世界では見かけなかったよな……

 

 こういったモノは大抵人工物、人の作ったものであると考えられるが、この門には人工物とは思えない、別のナニカを感じる、それだけではなく、空間全てに言葉では表せない、畏怖を感じる。

 

 ___もしかして……あの世? 

 

 意識を失う前の自分の置かれていた状況を考えてみた結論。「死後の世界」であると確信した。勝てるわけないもんね。

 

 であるなら、やはり自分は死んでしまったのだろう、そう思うと、何処か残念にも感じた、だが十分に過ぎるほど長生きしたのだ、悔いは無い。唯一あるとすればあの強靭な家族とまた逢いたいという気持ちがある。

 

「生きてるなんて……あるのか?」

「無いわよ、皆死んだわ、間違いなく」

 

 もしかしたらあるかもしれない、あの家族なら、なんて考えてたら、無慈悲にもその考えはバッサリと切られてしまう。

 

 否それより、今確かに『声』が聞こえた。数百年、下手したら千年、したかった会話が、夢が、念願が、今叶った。

 

「て、うわぁ! 人だ! 人が居る! 言葉が通じる! 会話が出来るぞ!」

 

 久し振りに会話相手が見つかり非常に嬉しいのと同時、家族は死んだと言われ、やるせない気持ちがある。が、寧ろ寿命どうなってるのかという呆れがやや大きい、そもそも自分と同じほど長生きする種族なのか、そこからなのだが。まぁ、皆、何に生まれ変わるのだろうか。

 

「……騒がしいと思ったら、何コイツ、叫ぶと思えば急にしおらしい顔しちゃって、てかほんとアンタなんなのよ」

「ちょっと、思い出に耽ってただけだよ、てか猫にしおらしい顔とかあるんだな、猫好きな人?」

「いや、猫の顔の機微なんて私にはわからんよ」

 

 まるで変態を見るような目で此方を評したかと思ったら、今度はよく分からないことを言い出した、猫に何言ってんだコイツ。

 

「というより、君、意外とちっちゃいんだね、猫と似た高さなんて」

「……噛み合わないと思ったら、アンタ、自分の姿わかってるの?」

 

 チビな私が少し見上げる程の高さの人に、やや失礼ながらチビだなんて告げたら、逆に、「アンタがおかしい」みたいに言われた。自分の姿なんて言われても……。

 

 と、手を見て、指を握っては伸ばし、腕を見る、二足で立つ足元覗いて背中見る。ん? ん?? ん??? 

 

 呼吸の仕方なんて考えたことはあるか、それ程に自然な動きで身体を見たが、可笑しい。全身肌色ではないか、毛がない。

 

「ん? あ……ああああああああぁぁぁ! 人間になってるううぅ!?」

 

「うるさ……」なんて聞こえたか、それどころじゃない、海の方へと向かい自分の姿を確認してみる。

 

 水は波一つ無く澄んでいるので、自分の姿が明瞭に反射する。

 

 髪の色は黒と白色の混じり毛で猫耳が生えており。目は蒼く、やや藤色が靄のようにかかり、光の反射でか、蠢いているように見える、ややつり目だが、丸く幼いように感じる。

 服装はズボンがスカートでぶかぶかな着物っぽいなにかで、黒と白の二色を基調とし、薄く何かの花柄が入ったおかしな服だった。というか人型になっても身長ちっさい、子供体型。

 それでいて顔のパーツも、体型も全てがバランスよく、誰が見ても非常に好ましく思える程に美少女、容姿端麗ケモ耳ロリっ子だった。尚精神。

 

「ごっつ美少女やん……えぐぅ」

 

 自分の容姿に唖然としていたら、「もういいかい?」と後ろから声がかかったので、そちらへと戻ることにした。

 

 

 

 

 

「それで、貴女は一体だれなんですか……?」

「急に畏まるな、さっきの見てたら引いちまう」

 

 目の前の鎌を持った少女? にそう尋ねると、なんだか悲しい言葉を貰ってしまった気がする、仕方ないだろ、生涯の悲願だったのだから。

 

「私はあれだね、死神だよ、まぁ知らないあたり、どうやって此処に来たか全く分からないんだけどさ」

 

「誰かに運ばれた訳でもないみたいだし……」とか言ってる。

 その後詳しく聞いてみると、目の前の女性は死神であるらしい、死神といっても人の魂を刈りとるのが仕事では無いらしく、彼女は死人の魂をここまで運ぶ案内人のような人らしい、鎌を持ってるのは何となくだとか、怖いな。

 ここはどうやら地獄で、後ろの広い海が所謂三途の川だと、何処が川なのかと考えてはいけない。

 

「てことは、俺は地獄行きなのか……」

「その姿で『俺』なんて言われたら困っちまうが……まぁ、あれだ、地獄つってもここは死人の魂を裁く場所だから、アンタの想像する地獄とは違うね」

「成程、つまり今から私は裁かれると言うことですね……?」

 

 なんだか微妙な顔つきをされたので、さりげなく一人称を私に変えてみる。

 なら裁かれるのだろうか、と聞けば「そうでもない」と返される、一体どういうことなのだろうか。

 

「つまりあれさ、アンタは招かれざる客元い魂」

「えっとつまり、死んでないってことですか?」

「いや、そうじゃない、アンタは確かに『死んでる』けど、正確には『死んでない』っていうか……私にもよく分からないんだよ。というか、どちらかというとアンタは種族的に畜生界に行くと思うんだけど」

 

「畜生界?」と聞けば、「アンタの居た地上の世界、動物だらけだったろ? その動物が死後行き着く所」と言われた、あれが同じ動物と扱われるのは少々疑問が残る所だが。

 

「まぁ、あの時の地上は能力で暴れる化け物揃いだったし、もしかしたらアンタがおかしいのはその能力のせいなんじゃないかね?」

「能力……か」

 

『歪める』能力はありとあらゆるもの、と言っても過言ではないほど応用が利く、それも屁理屈みたいに。

 能力が原因としたら自分は、『触れてはならない何か』に干渉してしまったのではないかと思えて身震いする。

 

「ま、何にしても私は何も出来ん、取り敢えず門を潜んな、来ちまったものは仕方ない。本来なら裁く魂がないから凍結してたんだけどねぇ」

 

 奥の門をさされて、行くように促される。

 

「わかりました」と頷いたあと、「じゃあな」とだけ返され、そのまま死神の人は何処かへ消えていった。

 

 そういえば、名前聞いてなかったな、と思った、長い間一人で生きてきたことが原因だろう。だが名乗られても名乗る名はないのだが。

 

 

 

 

 

 門は押せば開いた、意外と重さは無かった。

 

「おじゃまします?」

 

 こういう時なんて言えばいいのか、あの世なんて何気に初めて来るのだ、前世の最後の時でさえこういった場所に来たことは無い。

 内装は全体的に紅、壁も天井も。デスクも紅い。

 

「……何者だ、今は忙しい、後にしてくれぬか」

 

 こちらを一瞥することなく、手元の紙を睨み、手を動かし押し付けてを繰り返している。服装は厳かであり、装飾は控えめ、隅には無造作にハンマーが置かれている。

 凍結している割にはなんだか大変そうな書類の山が、机に沢山のしかかっているが、休日出勤なのだろうか。

 

 それよりも、まずは要件を先に済ませようと思い、一歩踏み出す。

 

「すみません、私よく分からずにここに来たんですけど、どうしたらいいんですか」

「先ずは名と所属を言わんか! はぁ、このままだとこれからが……」

 

 呆れたように男は顔を上げたが、不思議や不思議、誰もいないでは無いか。

 やや机からはみ出している獣耳を漸く意識し、書類の山を避けるように横から顔を出せば、そこにちんちくりんな獣耳娘の子供がいた。

 

 

 

 

 

 その後、やや一悶着あったものの、自己紹介するまでには至ることが出来た、どうやらお相手さんは『閻魔』らしい。まーじか。

 その後ここに至るまでの経緯を軽く話してみた、因みに前世の事も話した、向こうも色々と質問をしてくるもんだから流れで話さざるを得なかった。というよりここで嘘ついたら地獄に落とされそうだなぁと思ったからなのだが。

 

「ふむ、恐らく貴様は輪廻の環から何かしらの理由で外れてしまい、べつの環へと辿り着いてしまったのかもしれぬな」

「輪廻の環……? そこから外れたって一体どういうことですか」

 

 あまりこう言う事は聞いてはいけない___知っては行けないあれみたいな気はするが___ことかも知れないが、気になったものは仕方ない。

 

 どうやら、神秘的なナニカが原因で、詳しくは分からないとの事。つまり何もわからん。

 もっと噛み砕いて言うと、魂そのものが原因、若しくは神の御業。つまり何もわからん。

 

「うーん、自分は全てにおいてのはぐれ者……ってコト?!」

「ふむ、そういう訳ではないと思うぞ、だが、なんにせよ確かな事はある」

「確かな事?」

「嗚呼、輪廻の環とは生と死であり、魂の循環することそのもの。その環から外れた貴様はいづれにせよ、二度とそこの『環』に戻る事は出来ん。そして貴様は『こちら』の『環』に入ることも出来ぬ」

 

 つまり、俺は前世___人間時代___の世界の輪廻転生の環から外れ、こちらの世界に飛んできた。

 だがこちらの世界に来たからと言ってこっちの輪廻転生の環に入ることは出来ない、つまり、転生ができない俺が今ここで死ねば……。

 

「……もし俺が死ねば、どうなるんですか」

「無へ帰すであろう、『世界そのもの』が創造されるよりも前の様に、な」

 

 この言葉を聞いた途端全身が身震いした、死ねば、『無』へ行くんだ、何も見えない 聞こえない 感じない。無へと。

 全身から力が抜けるような気がした。呼吸も心做しか早い。

 

「あぁ、はは……つまり俺はこれから無へと行くんですね……」

 

 もう自分は死んだ、いつのまにかそう決めつけ、どうなるのか縋るように聞いてみる。

 

「そんな事は無い、そも、魂そのものが『無』へ帰るのは非常に稀有なこと、案ずることは無い」

「……本当ですか?」

 

 その一言だけで非常に気分が良くなる、依然不安要素は消えた訳では無いのだが。

 

「輪廻の環から外れることは『無』へと帰る事では無い。故に貴様が『無』に帰ることは無い。そも、輪廻の環から外れることは悲嘆すべきことでは無いはずだ」

「なんだ……そうなのか、良かった……」

 

 無へは行かない、それだけが地獄の閻魔から聞けて全身が脱力する、みっともないが閻魔の前で床に寝っ転がる、それ程怖かったのだ、何も無く、感じられない無が。

 

「と、一安心して脱力したいけど、俺は聞きたいことがある」

「貴様の今の状態に関してだったな」

 

 そもそも忙しそうだったのにこんなに時間を取ってくれて、閻魔はすっごい優しいと思う、失礼だが、どうしても厳つく恐ろしいイメージがあったもので。

 ふむ、一息つき、語ってくれた。

 

「貴様の魂は歪、生死の境や存在さえ見分けのつかぬ常態へ、魂そのものが変わり果てておる」

「多分、これは俺の能力によるものなんじゃないかと……」

「元来如何なる能力であったとしても、魂そのものに触れることは疎か、干渉することなど不可能、それが出来るのは神のみだろう」

 

 大分とスケールの大きい話になってきた、いや自分のせいだと言うことは分かってるんだけど。自分の理解できないスケールの話は傍観してるに限るよ本当、当事者は辛い。

 

「よもや、貴様は___「閻魔様! 閻魔様が呼んでおられます!」ふむ、時間のようだな」

 

 呼びに来たであろう従者か死神に対し「今行く」と閻魔は返し、席を立ち上がる。というか閻魔が閻魔に呼ばれるとはどういう状況なのだろう、パラレル閻魔? 

 疑問に思ってると「皆閻魔と名乗っておるのだよ」とかなんとか、大変そうだな。

 

「えぇっと、俺は一体どうすれば……?」

「好きにすると良い、貴様がまだ()()()()()()と思うのならそうすれば良い」

「えぇ……なんなんですかそれ」

「生きるのなら徳を積んでおくことだな」

 

 そういい閻魔は踵を返し奥の部屋へと消えていく。

 まだ疑問は残るが閻魔の姿が見えなくなるまで感謝の意を込め頭を下げた。

 

 

 

 

 

「で、俺はどうすればいいんだ」

 

 現在閻魔の居た空間に私は一人、「自由にすればいい」と言われ、私は生きることにしたのだが、だからと言って一体何をすればいいんだ……? 

 

「あれかな、テレポートみたいに、行きたい場所を思い浮かべてー……てすれば、とべ___」

 

 その瞬間視界は白く変わり、見知らぬ場所へと降り立った。

 跳べたけどなんで?




因みに悪いことばっかりしてたらちゃんと地獄に落ちます。
自由とは全ての行動の責任を自分が負うということなので。
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