大人になった生徒たちが先生の時間を頂く話   作:アラベスク@arabesuque_38

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カフェ店主角楯カリンの歓待

「――……今月は売り上げが厳しいな」

 

 目の前の端末に映った数字を見て眉間に皺が寄る。昔から数字は嫌いだったけれど、最近ではますます嫌いになっていた。

 経営するカフェの売り上げが今月はまだ目標に到達していない。その原因は明らかですぐ近くにできたメイドカフェに客を取られてしまったからだろう。

 露出も多く、男性の目を惹くようなデザイン。こちらのカフェの制服も負けず劣らず可愛らしいデザインなのだけれども、目新しい方に人が流れるのは世の常のことだった。

 別に今すぐ何かが起きるわけでもないけれども、このまま来月もその次も同じような売り上げだった場合はダメージが大きい。

 向こうの人気が一過性のものだと願うのもひとつの手だけれど……。

 

「やはり何かテコ入れが必要だな」

 

 ため息を吐いてコーヒーを啜る。こだわった良い豆を使い、淹れ方もきちんと習得した。鼻腔をくすぐる馥郁とした香り。豊かな味も申し分ない、と思う。常連客の中には、嬉しいことにこれが目当てで通ってくれている人もいた。

 提供している料理も飲み物も、クオリティという面ではうちの店の方がレベルが高い。

 あとは向こうに負けないサービスがあればいいのだけれども。

 

『何か困ったら何でも相談してね』

 

 脳裏に過ぎったのは先生の顔。私がこの店を出すと言った時に、そんな言葉をかけてくれていた。

 学生の時、彼のそばにいるだけで特別な気持ちになった。伝えたい気持ちもできた。私にとってもっとも大事な任務だったそれは、いまだに達成していない。

 

 ────将来の夢、ひとつは叶ったけれど。

 もうひとつの夢には、まだ届いてはいなかった。

 

 この際だ。彼に相談に乗ってもらうことにしよう。いろいろと考えたサービスを彼相手に試してみて、反応を見てからお店に導入するのも悪くはない。

 何より私自身がひさしぶりに彼に会いたいし、私の成長した姿を見てほしかった。

 

 それに────、

 

『先生、少し時間いいだろうか?』

 

 ────たまには息抜きも大事だろう。

 

***

 

「こんにちは、先生。そろそろ来る頃だと思ってた」

 

 相談がある、とカリンから連絡を受けて彼女の店に足を伸ばした。ちょうど近くまで行く用事があったので都合がいい。

 ドアを開けるとカウベルの音が私を出迎えてくれる。定休日の今日、いつも賑やかな店内は閑散としていた。

 店の奥の方に目的の人物が手招きしている────が、様子がいつもと違っていた。

 普段の可愛らしい制服。メイド服を基調としたフリルをふんだんにあしらっている。スカートの丈が長いクラシカルなスタイルの中にフェミニンな魅力が融和していた。

 このカフェの名物でもあり、可愛いものが好きな彼女らしいデザイン。もちろんそれを着こなすカリン自身もこのカフェの看板だった。

 

「どう、だろうか? ひさしぶりに着てみたのだけれども」

 

 そう言う彼女がしきりにおしりを気にしながら私の前でくるりと身体を回す。

 光沢のある黒い布地。最低限身体を覆うだけの衣服からは彼女の褐色の肌が惜しげもなく晒されている。

 C&Cの潜入用衣装、ことバニースーツ。卒業してからも成長し続けた彼女の肉体は窮屈そうに布地の中に押し込められていた。

 ほとんど露出した彼女の胸の北半球。鋭く食い込んだ鼠径部。そして何よりも昔より迫力を増した臀部が存在感を主張している。

 履いた網タイツをみちみちと中から圧迫し、食い込んだタイツの線が煽情的なラインを形成した。

 

「────目の保養になる?」

 

 その姿に見惚れていると、音もなく彼女がすぐ近くまで寄ってきた。漂ってくるのはココナッツの匂い。明るくてフレッシュな甘いフレーバーが優しく鼻腔をくすぐった。

 トロピカルでセクシーな雰囲気の、人を惹き付ける芳香。一瞬意識が奪われてしまいそうになる。

 気を取り直したように咳ばらいをして、近くの椅子に腰を下ろした。

 

「昔からそうだったけど、やっぱり先生はこの衣装が好きなんだな」

 

 くすくす、と楽しげに笑う彼女がそのまま私の膝の上へと腰掛ける。むっちりとしたボリューミーな感触。ぎゅむぎゅむと柔らかく反発する。

 

「────なんだか、いつもよりも興奮してない? こういうサービスの方が、男性は喜ぶのか」

 

 なるほど、となんだか勝手に納得したようにひらりと身を翻す。手元のメモに何かを書き込んで私と視線を合わせた。

 

「……うん、先生に喜んでもらえるなら大丈夫そうだ。それじゃあ、次の衣装を試してみよう」

 

 そう言って彼女がバニースーツに手を掛ける。

 慌てて店の外に出ようとした私の手を彼女が掴み────、

 

「私と先生の間柄なら……別に目の前でも大丈夫、だろう?」

 

 ────艶やかな笑みを浮かべた。

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