二人だけの百鬼夜行   作:魔王ヘカーテ

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ピアニストと少年

 ここはいわゆる、大聖堂というやつだ。洋式をベースに和の装飾を少しばかり散りばめてある建築は素晴らしく、螺旋状のデザインのステンドグラスをじっくりと眺めていたいくらいである。この空間に奏でられているピアノの曲名を僕は知っている。

 

「やあ、久しぶり。逢魔が時は過ぎてしまったけど、ここから出してくれないかな?」

 

僕はピアノを弾いている智美に挨拶を交わす。僕と彼女の仲ならみんなを許してくれるという期待は幻想であったと思い知らされる。

 

「こっちに入って来たからよ。自業自得。そう言うルールなの。諦めなさい。そんな事より、私とまた組みましょう?あっちに貴方は勿体無いわ。ねぇ、今度は何処にも行かないでしょ?」

 

彼女は演奏の手を止めて、僕を優しく抱きしめる。その腕は次第に増え、ついには彼女の腕は六本となった。彼女は当たりを見回し、皆んなを見てこう言った。

 

「ほら見てみなさい。どうせ水子の井戸に触れたのだろう?それに神社には鳥居の真ん中を潜っている。あらまぁ、神域を汚し、来たのか。全く、あんな欲と共感でしか価値判断の出来ない哀れな連中とは縁を切れって言ったでしょう?もう、しょうがない子だね。」

 

そう言って彼女は僕の頭を優しく撫でる。困った。向こうの生活はとても楽しいが、こっちを全うしてからでも間に合っている。やっぱり「肝試し」はろくな事がない。

 

「みんな、涎を垂らしているし、虚ろな目をしているんだ。もう、養分になっちゃうの?」

 

「そんなにあの腐れ供が気になるの?言ったでしょう、自業自得。養分になっているし散々に苦しむ事が鉄則なのよ。」

 

彼女の腕が八本になった。彼女みたいな怪異は婿を精一杯の腕で抱きしめるのがルールだ。さらに僕は困った。目の前にはどうしようも無い問題が二つもある。

 

「さて、縁はもう結んであるし、へその緒は預けている。あとはみんなの前で式を挙げるだけね。」

 

彼女は情けなく締まりのない顔を見せて、涎を垂らしている。彼女との結婚は決定事項なのだと理解できた。ならばせめて、彼らを安楽死させてあげる事が最優先だ。

 

「僕は君と組むことに大いに賛成だよ。」

 

「ほ、本当に!貴方の脳をついばむ手間が省けるわ!とっても嬉しい!なんて良い日でしょう!」

 

「ただ、僕もいきなり君とのコンサートを成功させられるかはわからないからここで本番を予行演習しておこう。」

 

「もちろん!喜んでやるわ!それに忌々しい人間供を消せるんだから。」

 

彼女の演奏は人間向きではない。故に大抵の人間がこれを聴くと発狂し、液状化する。故に彼らの違反に対する処理を肩代わりし、安らぎを与えられるのだ。

 

「さぁさぁ、ご来場の皆様。お次は智美の演奏となります。人間のお方がおられましたら、退場か支配者に脳を捧げるか、拳銃自殺をし、発狂されないようご注意下さい。」

 

僕は懐かしい台詞を高らかに叫ぶ。正直、自分でもこの長ったらしい台詞をすらすらと言えたことに違和感を覚えた。

 

「もしかして、僕の脳みそいじってるでしょ?あー!ほら!君の指が頭に入ってる!まったく、心配性なんだから。」

 

「ごめんなさい。とっても嬉しくて…つい。」

 

向き直れば、発狂した人間は消え失せて、代わりに魑魅魍魎が行儀良く座っていた。これで僕は悟った。

 

「仕組んでた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リアルに発狂した文章になってしまった。テヘペロ。
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