世界征服なんて面白いかもしれないな   作:ふぉふぉ殿

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あの時だな!?

 

 

 

 

 エルフの国、ネフテス。その首都アディールから少し離れた観光都市があった。海に面したその町には別荘がいくつも見える。その一つ。海に枝のように突き出た埋立地に、少々規模の大きい別荘があった。

 外見はただの別荘だが、実は厳重な警戒がほどこされた建物だった。中の出来事が、外に漏れないために。

 別荘の中には会議室があった。中央におかれたテーブルの周りは、全て埋め尽くされている。並ぶ顔は、ネフテスの中でも上位の立場の者達ばかり。その上座に視線の鋭いエルフがいた。名をエスマーイルという。ネフテスの評議会議員であり、鉄血団結党の党首だ。

 『鉄血団結党』とは国を積極的に守るべきという思想で集まった集団だ。要は右派だ。しかし、その歴史は浅い。この党が作られた原因は今という時代にあった。

 

 ハルケギニアの宗教、ブリミル教の聖地は、エルフの領域であるサハラにあった。その聖地を奪還するという名目の元、彼らは数十年に一度くらいの頻度で大軍を擁して攻めに来る。しかし魔法も含め多くの技術に劣る人間達はエルフの相手にはまるでならず、多大な損害を出して引き上げる、というのがこれまでの歴史だった。

 このため西のハルケギニアとは敵対しつつも、本気で警戒しているエルフはさほど多くなかった。むしろ小競り合いの多い、ロバ・アル・カリイエの方が厄介だった。そうは言っても、こちらも大きな脅威ではない。さらにエルフ自身が、積極的に攻勢をかける民族でもなかった。

 

 ところが近年は事情が違う。

 ハルケギニアは例外的に、一点だけ脅威が存在した。それは『シャイターン』。エルフの言葉で悪魔を意味する。もちろん、本当の悪魔という訳ではない。だがそう呼ばれる存在のため、六千年前にエルフは多大な被害にあった。エルフ社会の存亡に関わるほどに。

 しかしシャイターンはその時に消え失せた。もはや歴史の話だ。そのはずだった。ところが、近年復活の兆候があるとの報告が出てきたのだった。

 

 対応は二つに分かれた。積極策と消極策。

 シャイターンが本格的に動き出す前に、ハルケギニアを討ちに行く。シャイターンが身動きできないよう、ハルケギニアを混乱させる。前者を選んだのが鉄血団結党だった。

 

 党首であるエスマーイルが口を開いた。

 

「同志諸君。議会は知っての通り、まるで進展してない。皆、好き勝手なことばかりいっている。時間を浪費してるだけだ」

「全く……!シャイターンが動きだしてからは遅いというのに。党首、どうされます?」

「我々は独自に動く。軍の増強を目指す」

「おお……」

 

 感嘆の声が会議室に溢れる。その決断を待っていたとばかりに。だが一人のエルフから、懸念の声が出てきた。

 

「しかし、どのような名目で軍を増強するのです?軍はあくまで国家のもの。ここにおられる方々には軍人も多いが、だからと言って軍を自由に動かせる訳でもありません」

「……」

 

 一様に難しい顔を並べる党員達。すると一人のエルフが手を上げた。イビンと言う将官だ。エスマーイルが視線を向ける。

 

「イビン将軍。何か案でも?」

「我が要塞を拠点にしてはいかがか」

「あそこか……」

 

 頷くエスマーイル。

 サハラ東部。そこには東の脅威、ロバ・アル・カリイエの人間達に対応するための要とも言える要塞があった。その名はバーハダーラン要塞。イビンはその要塞の司令官だった。つまりネフテス東方方面軍総司令だった。

 彼は話を続ける。

 

「バーハダーランは中央からも離れており、状況を察知されにくい。その上、東の蛮族に対応するためと言えば、軍備増強のための大義名分はいくらでも立ちます」

「だが急に軍備を増強し始めては、疑問を持たれるのではないか?」

「中央へ東方の情報を上げているのは、我々です。内容などいくらでも……」

「なるほどな……」

 

 エスマーイルは口角をわずかに釣り上げた。

 

「よし。決を取る。イビン同志の意見に賛同するものは」

 

 党首の言葉の結果は、すぐさま出た。全員賛成という形で。

 こうしてバーハダーラン要塞は、東の人間達に対抗するためのただの軍事拠点から、将来悪魔と戦うための一大軍事集積地と化すのである。

 ただハルケギニアと違う悪魔が、要塞からそう離れてない場所にいるなど、ここにいる誰もが想像すらしなかった。

 

 

 

 

 アインズは自室のベッドに寝転がり、資料を手にしていた。

 

「ふ~ん……。ハルケギニアってのは、よくある中世ファンタジー風な世界か。この系統魔法って、なかなか面白そうだ。属性を組み合わせて魔法を構築か。ユグドラシルとは魔法の仕組みが違うのかな?ただロバ・アル・カリイエみたいに、マジックアイテム頼りって訳じゃないのは同じか」

 

 彼が手にしている資料は、セバス、パンドラズ・アクター両チームが集めたハルケギニアとエルフ達の情報だ。ただその量は膨大だったので、正直、読む気がしなかった。

 すると名案をひらめくアインズ。ナザリック内で情報共有するためとかいう理由をつけて、アルベドとデミウルゴスに非常に分かりやすくまとめるよう指示したのだった。そして出来たのがこれだ。その分量は1/5になっていた。人任せにする方法を次々と思いつく、至高の御方だった。

 

「デザートエルフの精霊の力は、これだけじゃ、ちょっとよく分からないな。ユグドラシルの精霊召喚とは大分違うようだし。まだまだ調査が必要かもしれない。それにしても町がすごいな。高層ビルとかエレベーターとかあるし。しかも議会制民主主義って、もう日本みたいじゃん。この世界の国って差がありすぎだろ。どうなってんだ?」

 

 独り言をいろいろと並べつつも、資料を読む手が止まらない。最初、調査報告書なんて読む気がしなかったアインズだったが、今では観光地ガイドでも呼んでいるような気分になっていた。

 もっともこれも、アルベドとデミウルゴスのまとめ方が上手かったからだろうが。

 

「モモンになって、今度はデザートエルフんとこ行ってみようかなぁ。いや、絶対止められる。最初にここの戦争に参加するって言ったら、アルベドに止められそうになったし。なのに、不十分な情報のままエルフの町に行くなんて言ったら、もう大反対されるに決まってる」

 

 冒険心が少々うずいたが諦めるアインズ。ともかく資料を読み終わってない。せっかく作ってくれたのだ。全部、目を通すくらいはしないといけないだろう。

 

 

 

 

 アインズ達が最初に訪れた村、ムルヤール村。村で一番大きい建物、倉庫を仮の会議室に仕立て上げ、そこに各地の村長達が集まっていた。国に秘密裏に。

 この場所を選んだのは、開拓村で注目を集めないのもあったが、ビャールナン王が東の諸藩王国との戦に夢中で西に意識が行ってないというのも理由だった。

 

 村長であるラームが、口を開く。

 

「そちらの村はどうだ?」

「もう限界だ。若い連中が戻ってきても、すぐ次の戦だ。畑の世話をしてる暇がない」

 

 他の村長が愚痴を零す。さらに別の村長が続く。

 

「戦の度に、蓄えが持ってかれる。これじゃ次の収穫の前に干上がっちまう」

「戦は勝ってるって話だけどな」

 

 まだ若輩の村長が言葉を挟んだ。それに怒鳴るように返す中年の村長。

 

「勝って得するのは神官階層と戦士階層だけだ!俺たちには関係ねぇ!」

 

 実際、勝って富を得られるのは上位階層の者だけだった。ここにいる村人たちにとって戦の勝敗は、単に税を収める先が変わるだけだ。

 すると言われた若い村長が呆れたように言う。

 

「じゃあ、どうするって言うんだ?戦に、村の者も食いもんも出さねぇとでも言うのか?」

「そ、それは……」

 

 誰もその問に答を出せなかった。

 

 ここに彼らが集まったのは、あまりにも多い戦に、どう対処するかを話し合うためだった。

 確かに勝ち戦が続いているので死んだ村人は少ない。しかし耕作のための人手を頻繁に取られ、次の収穫までの蓄えまでもが、戦の兵糧として持っていかれる。これでは村が立ち行かない。どこの村も同じ問題を抱えていた。

 

 するとふと若い村長が零す。

 

「それとも……ビャールナン王を殺しちまうか」

「「!」」

 

 全員が一斉に彼に厳しい視線を向ける。

 

「な、何てことを!」

「正直になろうぜ。あの王になってからロクな事がねぇ」

「だからと言って、ビャールナン王がいなくなっても……次の王が……」

 

 彼らのような階層の者は王にはなれない。王は戦士階層の誰かに任せるしかないの。それがロバ・アル・カリイエのあり様だ。そして次の王が、名君か暗君かはもはや博打だ。

 

「だったらアインズ様に相談してはどうっすか?」

 

 不意に明るい声が飛び込んできた。一斉に声の主へと振り向く村長達。

 そこにはにこやかな笑顔と仏頂面の二人の美女がいた。誰だという疑問が全員に浮かんだ。この村の村長、ラームを除いて。彼が声をかける。

 

「ルプスレギナ様、ナーベラル様。いつの間にいらしたのです?」

「え?ずっといたっすよ」

「ずっと?」

 

 首をかしげるラーム。この倉庫で、一度も彼女たちの姿を見た覚えがなかった。

 彼女が言っている事は間違ってない。ただし不可視化を使っての話。ちなみに彼女たちはアインズの弟子のメイジという肩書で、この村に時々姿を見せていた。

 

 やがてラームの方は、諦めたため息を漏らす。この二人が得体のしれないのは、今に始まった事ではないのは経験済み。

 というよりも魔法を分かってない村人達は、彼女たちが理解不能な事をやっても魔法なのだから仕方がないと勝手に納得していた。

 

 ラームはあらためて、ルプスレギナに尋ねる。

 

「アインズ様に相談とは、何についてでしょう?」

「だから、王を倒すって話っすよね?それっすよ」

「え!?いや……しかし……」

「次の王様誰にするかも、相談してみたらどうっすか?」

「ま、まさか……アインズ様が王に?いや、そこまでは、いくらなんでも……」

 

 躊躇する村長。アインズにはエルフから村を守ってもらうだけではなく、ときどき頼みを聞いてもらってもいた。

 そんな大恩のある存在な上、旅人であるアインズにこの地に留まって王になってくれなどと言うのは、さすがに厚かましすぎるように思えた。

 すると隣に立っているナーベラルが、呆れたように口を開いた。

 

「全く……これだから人間共は……。何度も同じことを言わせないで。全てアインズ様にお任せすればいいのよ」

「は、はぁ……」

 

 頷くしかないラーム。彼らの様子を見ると、二人は出て行った。

 やがて村長達は決を取る。その結果は、アインズに全てを託すというものだった。

 

 

 

 

 アインズは相変わらず、ハルケギニアとサハラの資料を読み漁っていた。最初こそ面倒だと思っていた作業に、ハマっていた。自称"支配者への道"という自己啓発のためではなく、単純に好奇心から読み進めているのは久しぶりのような気がする。今では、まとめる前の資料にまで手を出していた。

 

「シャルティアに魔法効かなかったんだ。でも相手の強さが分かんないから、なんとも言えないなぁ。あぁ……そう言えば、あいつの罰考えないといけなかった。憂鬱だ……」

 

 休日、何もかも忘れてゲームにハマっている時に、仕事を思い出した気分に襲われるアインズ。

 その時、ふとアルベドの声が扉からした。

 

「アインズ様。よろしいでしょうか」

 

 体を起こし、立ち上がるアインズ。支配者の立ち姿を作り出す。これも練習の成果だ。

 

「よい」

「失礼します」

 

 入ってきたアルベドは、すぐにベッドの上に散らばっている資料の山を目にした。

 

「今後の計画を、吟味されておられたのですね。お邪魔をして申し訳ございません」

「いや、別にかまわない」

 

 鷹揚に答えるアインズ。もっとも当人には、今後の計画とはなんの話だったか、思い出そうとしていたが。

 アルベドは姿勢をあらためると、話し始めた。

 

「情報収集も一旦目処がつきました。ついては今後の方針を決めたいのですが」

「分かった。全階層守護者、領域守護者、その他主要な者達を集めておいてくれ」

「畏まりました」

 

 守護者統括の悪魔は深い礼をすると、部屋を後にする。

 姿が消えたのを確認すると、アインズは一人ごちる。

 

「今後の計画って、そういう意味か。確かに、考えないといけないよな」

 

 天井を仰ぎつつ、思案を巡らせるアインズ。

 

「まずナザリックの存続だよな。それと仲間がいるか調べないと。逆に、敵対するプレイヤーがいるかも調べないといけないな。後は……そうだ。ユグドラシル金貨、増やしておきたい。確かエクスチェンジ・ボックスで増やせたっけ。そうそう、スクロールの件はどうなんたんだろう?ついでに聞いてみるか」

 

 アインズなりの方針を考えた所で、またノックがする。アルベドが玉座の間に、一同が集まった事を伝えた。

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓の最下層、第十階層。玉座の間。

 数段上がった場所にある玉座に、ナザリックの絶対支配者アインズ・ウール・ゴウンが身を収めていた。眼前に並ぶのは、配下の者達。皆、畏まり頭を下げていた。そして彼の右には、守護者統括のアルベドが立っていた。

 

「面をあげよ」

 

 アインズのその言葉と共に、一斉に顔を上げる。最前列には階層守護者が、その後ろにはパンドラズ・アクターを含めた各領域守護者。その後ろにモンスター達が続く。プレアデスの面々もここにはおり、柱の脇に控えていた。

 ナザリックの主は、鷹揚に話を始めた。まずは調査チームへの労いの言葉と、それに対する褒美の話。さらにスクロール量産を可能にしたデミウルゴスへも労いと褒美について口にした。最後は、シャルティアの不始末についてだった。

 

「シャルティア。今回の失態の意味を理解しているな」

「は、はい……」

 

 階層守護者最強と呼ばれる彼女が、小さな身をさらに小さくしている。

 一方のアインズはこの後に及んで、どうしようとか考えていた。土壇場になっても決めてない。そして別の意味で決心した。先延ばしすると。

 

「お前のへの罰は追って伝える。今は重要な課題が控えているからな」

「はい……」

 

 小さな声で答えるシャルティア。

 そんな彼女を見て、ない胃が痛む至高の御方。

 

(NPCが集まってる所で、これやっちゃマズかったかな?なんか晒し者にものにしたみたいで、気分悪い。あ~失敗した……)

 

 沈静化が入るほどのものでもないので、少しばかり落ち込むアインズ。支配者への道はまだまだ遠い。

 

「あ~…。シャルティア。今回の会議で、よい意見があれば、私はそれを成果と見なす。それをもって罰を帳消しにしよう。だから、そこまでかしこまる事はないぞ」

「は、はい!」

 

 シャルティアは、今度はやけに気合を入れ始めた。これでフォローになったのか。不安のアインズだった。

 すると隣のアルベドから声がかかった。

 

「アインズ様。そろそろ本題に入られては」

「そうだな。ではまずナザリックの置かれてる現状と、周囲の状況を簡潔に説明してもらおう。デミウルゴス」

 

 階層守護者の列に並んでいるスーツを着込んだ悪魔が立ち上がる。そして一方前に出て、NPC達の方を向いた。それからこの世界のあり様、周辺国の概要、ナザリックの置かれている状況を説明が始まった。

 一通り説明が終わると、デミウルゴスがアインズの方へ振り向き、礼をした。

 

「ごくろうだった。では今後のナザリックの方針を決める。その案だが……えっと……、まずはお前たちの考えを聞きたい。意見のあるものは立ち上がるがよい」

 

 一瞬、アインズが考えた案を言いそうになったが、失望されてはたまらない。頭の出来がたかが知れているのは、自分が一番分かっているので。なので先に意見を聞いておいて、後出しジャンケンをする事にした。

 するとデミウルゴスが、アインズの考えていた斜め上のものを口にする。

 

「我々の案などと、アインズ様の御心に従うまでです。世界征服というお望みに」

「は……?」

 

 一瞬、脳が停止する至高の御方。脳はないが。

 しかも全てのNPCがそれに大きくうなずいていた。すでに全NPCの共通認識らしい。

 

(せ、世界征服?なんでそんな話になってんだ?なんか口を滑らせたか?)

 

 この所、面倒な事はNPCまかせにしようと口からでまかせを言っていたので、その中に世界征服なんて言葉があったのかもしれない。しかし空っぽの脳の中に、そんな記憶は見つけられなかった。

 当惑するだけの至高の御方。すぐに沈静化が入る。

 

 落ち着いた所で、ふと違う考えが浮かんだ。この世界には仲間がいるかもしれない。敵対するプレイヤーがいるかもしれない。どちらに対応するにしても世界に勢力を広げるという手は、悪くないように思われた。それに、未踏破の地域を知るという意味もある。

 

(あれ?結構、悪くないアイデアか?)

 

 気づくと、デミウルゴスがどこか嬉しそうな表情を向けていた。

 

「憶えていたのか」

「もちろんです。アインズ様のお言葉、忘れるはずもございません」

「あ、あの時の話…だな?」

「はい!」

「あの時の話だな!?」

「はい!!」

 

 元気のいい返事があるだけ。いつの話が聞きたかったが、分かって貰えなかった。

 

「そ、そうか……。感謝しているぞ。デミウルゴス」

 

 デミウルゴスの嬉しそうな表情が目に入る。激しい尻尾の動きも。

 

「せ、世界征服か……。まずはその……最初の一歩が肝心……だな」

「はい。その一歩は、アインズ様のお考え通り進み始めました」

「え……」

 

 口を半開きにしたまま停止する至高の御方。

 

(世界征服って、もう進み始めてんの?何が起こってんだよ!?訳分からん!)

 

 アインズは半ばヤケクソになって、尋ねた。

 

「デミウルゴス。進捗状況を皆に説明せよ」

「畏まりました。ルプスレギナ。村での出来事を報告してくれたまえ」

「はい」

 

 何故、ここでルプスレギナが?という疑問がアインズに浮かぶ。ナーベラルと共に、ムルヤール村を守る単なる護衛程度にしか考えてなかったので。

 赤毛の三つ編みツインテールの人狼は、スッと立ち上がった。

 

「ムルヤール村に集まったマガーハ藩王国の各村長は、アインズ様にこの国を治めて欲しいと望んでいます」

「…………」

 

 言葉のないアインズ。混乱が頭を包む。頭の整理がつかない。

 

(俺が王様?なんでそんな話に?だ、誰だそんなもん仕組んだのは?アルベド?デミウルゴス?いや、いや、そんなのどうでもいい!どうすんだ俺!?)

 

 もはや何回目か。またも精神の沈静化が入った。とりあえず混乱から脱した至高の御方。

 

(いや、世界征服するなら、いつか王やら皇帝やらにならないといけないか。時間の問題って言ったらそうだけどさ。いきなりはないだろ。事前に教えてくれよ)

 

 教えてくれる者などいるはずもない。

 とりあえず、もっともらしく鷹揚に答えるアインズ。

 

「そうか」

 

 するとアルベドが嬉しそうに声をかける。

 

「全ては、アインズ様のご計画通りですね。何故、御自ら危険を犯してまで、モモンと名乗り、下等な人間共の戦争に参加されるのかと思いましたが、このようなお考えがあったとは。アインズ様を止めようとした浅慮を、お許しください」

「いや、別に謝るような話ではないぞ。アルベド。お前が私を心配する気持ちは十分伝わった」

「そうですか!アインズ様!」

「あ……ああ……」

 

 アルベドの腰の羽の動きがやけに激しい。表情は恍惚としていた。

 対するアインズはモモンというキーワードが出てきた意味が分からない。というか話の流れがまるで分からない。

 

 別の意味で、他のNPC達も疑問を脳裏に浮かべていた。代表してかアウラが口を開く。

 

「人間の戦争に手を貸したって、どういう意味でしょうか?」

 

 アルベドとデミウルゴスが笑みを零す。一方のアインズは、もう考えるのを諦めた。全部、頭のいい人にやってもらおうと決めた。

 

「デミウルゴス。お前の理解したものを話すがよい」

「はい。かしこまりました」

 

 それから悪魔の説明が始まった。

 この国、マガーハ藩王国の国王ビャールナンは、愚鈍な上権威欲だけは人並み以上と愚者を絵に書いたような人物だ。アインズはそんな人物に、モモンとなって勝利という餌をばらまいた。

 単純なビャールナンは国力を考えず戦争を続け、勝利しているにもかかわらず国を疲弊させ、民の不満を増大させた。

 そして民自らがアインズの元に跪き、主として頂く行動に出たという訳だ。

 

 話が終わると、すぐに疑問が出る。シャルティアからだった。

 

「何故、人間共が動くように仕向けたのでありんす?ナザリック全軍を動かせば、征服など簡単でありんしょ?」

「アインズ様は、この世界を宝石箱とおっしゃった。アインズ様は手にする宝石を、できるかぎり傷つけたくないとのお考えなのだよ」

 

 デミウルゴスはわけ知り気味に答える。そしてアインズ方を向いた。そんな話をしたかは憶えてないが、肯定の以外の言葉が出せるわけがない。

 

「よ、よく憶えていたな。デミウルゴス」

「あの場にいた者として、忘れるなどありえません」

「そ……そうか」

 

 あの場とはどこのことか考えようとしたナザリックの主だが、すぐやめた。

 それに、あながち間違っているとも言えない。この世界をいろいろと見てみたいのも確かだった。

 

 するとアルベドが口を開く。

 

「これで我々は、この国を手に入れる事になるわ」

 

 NPC達に宣言するように言う守護者統括。そして姿勢をあらため、アインズの方を向いた。

 

「アインズ様。そこで、一つ決めねばならない事があります」

「なんだ?」

「国名と、アインズ様の敬称です。ただの王ではあまりに不敬です。王など、雑草のごとくありふれていますから」

「お前たちの好きに決めてよい。案のあるものは立つがいい」

 

 こうして様々な名前が、次から次へと出てくる。しかも今、玉座の間にいるNPC達全員が案を口にしていた。

 おかげで今回の会議では、国名とアインズの敬称を決めるという議題が一番時間がかかったという羽目に。

 そして決まった国名は、『アインズ・ウール・ゴウン魔導国』。アインズの敬称は『魔導王』となったのだった。

 

 

 

 

 

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