世界征服なんて面白いかもしれないな   作:ふぉふぉ殿

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デルフリンガー

 

 

 

 

 トリスタニアの大通りは、休日という事もあって賑わいを見せていた。ちらほらと魔法学院の生徒も見える。休みに羽根を伸ばしているようだ。ルイズはいつも学生の格好。サイトは当然鎧なんて来ていない。ただもしもを考えて、コルベールからナイフを借りてきていた。一応、武器なのでガンダールブの能力は使える。

 ルイズがふとサイトに話しかけた。

 

「サイトって、馬も乗れたのね」

「レベルが低い……弱いときの移動手段に使ってたんだよ。強くなったら、魔法で移動できたから使わなくなったけど」

「移動も魔法でできるのね」

「まあ……な」

 

 才人は言葉を濁す。

 魔法というのはルイズにとって、地雷ワードと認識してしまったので。もちろんハルケギニアの名門貴族のお嬢様が魔法を使えないというのは、気に病むことかもしれないが、そこまで悩むような事なのか。地球では下級国民と揶揄される立場だった彼には、今ひとつ分からない。

 それにしても学院から王都トリスタニアまで、馬で三時間以上かかった。正直、尻が痛かった。

 

「あら珍しいわね。ルイズがトリスタニアに来てるなんて。」

 

 不意に背後から声がした。振り向く二人。見覚えのある姿が二つあった。

 

「キュルケ。とタバサ……よね」

 

 ルイズは確認するように答える。

 才人もこの二人はもちろん知っている。ルイズの同級生という意味で。何せ見た目も使い魔も目立つので、すぐに憶えた。さらにキュルケは何かとルイズに絡んでくるので、余計に印象に残りやすい。

 タバサの方もキュルケとよくつるんでいるので、憶えている。ただ人柄とかの細かい所は知らない。まともに話した事もないので。彼女自身が、無口というのもあるが。

 

 キュルケは誘うような目でサイトを見る。

 

「あら?デートの邪魔しちゃった?」

「使い魔とデートする訳ないじゃないの!」

 

 ムキになって反論するちびっこピンクブロンド。それを面白がる褐色の美少女。無関心の青髪の少女。キュルケがルイズに絡む時に、よく見る光景だ。

 

「でも彼、悪くないじゃないの。あの鎧姿見てたら、少し見惚れてしまったわ」

 

 妖艶な視線をサイトに向けてくるキュルケ。サイトも男だ。少しばかり頬が緩んでしまう。

 すると遮るように間に入るルイズ。

 

「この色ボケ。誰彼構わず、手出すんじゃないわよ!」

「あいかわらずね。あなたは」

「何がよ!」

 

 さらにヒートアップするルイズ。そこで脇から声が入ってくる。タバサだ。

 

「長くなるなら先に行く」

 

 買ったばかりなのか、やけに綺麗な本を手にし、少女はポツリとつぶやいた。キュルケの妖艶な仕草が、急にフランクな態度に変る。露骨な変化に、才人は少し苦手意識を持ってしまう。かなり、したたかな女性らしいと。

 キュルケはタバサの方を向いた。

 

「もう少し休みを楽しみましょうよ。そうだ、あなた達も付き合わない?」

「私たちは用事があるの」

「何の?」

「サイトの武器を買いに来たのよ」

「武器ならあるじゃないの。あの立派な剣が」

「こっちにも都合があるの」

 

 ルイズはぶっきら棒に返した。すると、またタバサが口を開く。

 

「武器屋ならあそこがオススメ」

「……」

 

 意外に思う三人。背丈に届こうかという長い杖を持ち、いかにもメイジという様相の彼女が、武器屋に詳しいとはと。彼女が指さした先には、綺麗な店構えが見えた。周りの店とは段違いだ。正直、高級品でも置いているかのように見える。

 ルイズは怪訝そうな表情。

 

「あそこ、本当に武器屋?っていうかあんな店あったかしら?」

「最近、買収されたそうよ。店長も変わったらしいわ」

 

 キュルケが答える。どうもこの町には慣れているのか、事情通らしい。

 ルイズは魔法関連ならともかく、武器には詳しくないので素直にアドバイスに従った。

 

「とにかく行ってみましょ」

 

 一行は店へと入っていった。

 

「いらっしゃいませ」

 

 ルイズ達には聞き慣れない言葉がかけられる。キョトンとする彼女たち。ただ才人だけは気にもとめなかった。地球では普通の事なので。

 

「これはこれは……。貴族のご令嬢の方々が、このような店にいらっしゃるとは。何か特別なご要件でも?」

「え、ええ……」

 

 少々面食らうルイズ。あまりに武器屋の店主らしくなくて。貴族の執事のような清潔感すらある。

 さらにここは、本当に武器屋と思ってしまうほど、違和感があった。だがそうではない事を、周囲の武器が告げている。ただしその様子はかなり変わっていたが。各武器が整理され、種類別に棚や頑丈な箱に入れられていた。しかもそれぞれ札がくくりつけられていた。

 貴族相手の杖を売る店でも、雑然と置かれている感じがあるのに。ここの武器屋は、実は貴族向けなのではとすら思うほど整理されている。だが、それほど装飾のしっかりした剣は見当たらない。やはり平民向けの武器屋なのか。今ひとつ違和感を拭えないルイズ。

 

 ルイズが何気なく、結び付けられている札を手にした。数字が書いてあった。

 

「何?これ?」

「商品のお値段です」

 

 店主が答える。

 

「え?」

 

 首を傾げるルイズ。意味がわからない。

 ハルケギニアの一般的な店は商品に値段など書いてない。店主に値段を聞き、交渉して値段が決まる。逆に言えば、値段が決まってないのだから書いてもしようがない。ますます違和感を強くするルイズ。ともかく用件を済ますことにした。

 

「剣を見せてもらいたいんだけど」

「どなたがお使いになるのでしょうか?そちらの従者の方ですか?」

「そうよ」

「どのような目的でお使いになるのでしょうか?」

「目的?」

 

 首を撚る使い魔の主。当然、戦うために使うのだが、武器に詳しくない彼女では上手く説明できそうになかった。

 

 一方の才人は並んでいる剣を一通り眺めていた。この手の武器屋はユグドラシルで経験済みだ。もちろん店構えなど見かけは違うが、置いてある商品には見当がつく。ナイフ、レイピア、ショートソードにロングソード。ショートスピア、ロングスピア。

 どうも全般的に扱いやすい武器が多い。要は売れ線を並べている訳だ。店なのだから当然と言えば当然。だが才人が欲しいのは、愛用の大剣と釣り合う代物だ。あまり軽いと重心が歪む。しかし重そうな武器は数が少なかった。バトルアックスなどはあったが、今ひとつしっくりこない。

 考え事に夢中になっている彼の耳に、主の声が入ってくる。

 

「ねぇ、サイト」

「え?」

「何に使うのかって」

「ん?いや、買うのもう決まってんだよ」

 

 そう言って、店主に尋ねた。

 

「大剣って見かけないんだけど、ここは置いてないんです?」

「なくはないですが、その……お客様の体格だと、まだショートソードのような使いやすい品をお勧めします」

「大丈夫ですって。大剣は使い慣れてるんで」

「……。確かに大剣は見栄えはいいですが、扱いはかなり難しいですよ。それに若い時に重い剣を使うと、構えが悪くなってしまいます。さらに……」

 

 店主はまるでスポーツトレーナーのように忠告してくるが、才人の目的とはまるでズレているので、彼はひたすら大剣を要求した。ついには店主が折れる。そして奥から、樽を持ち出してきた。そこには雑多な剣が入っていた。

 刃の欠けたもの、曲がったものなど。その中にサビだらけの大剣があった。

 

「あ……」

 

 何故だかわからないが、そのサビだらけの剣に直感が走る。これだと言う具合に。

 

「これいくらです?」

「値段は大したことありませんが、ご覧の通りサビだらけです。研代の方がはるかに高くつきますが……。よろしいのですか?」

 

 店主のその問に、才人はルイズの方へ視線を向けた。買ってくれと言わんばかりの熱い瞳を。子供が親にねだるが如く。ルイズはため息を一つ零す。

 

「分かったわよ。買うわ」

 

 そして才人はサビだらけの大剣を手に入れた。左手で掴んだその剣は、何故かしっくり来る。そして重さもちょうどいい。愛用の大剣、ソード・オブ・テュールとのバランスも丁度いい。

 やがて一同は、店を出ていった。サイトは満足げだったが、ルイズはこのサビだらけの大剣を何故気に入ったのかさっぱり分からなかった。

 

 

 

 

 しばらく四人は連れ立って歩く。ふとキュルケが口を開いた。

 

「あそこに入ってる所、かなりいい店だけと、妙な噂も多いのよね」

「そう言えば……、聞いたことない店名だったわよね。セバスチャン商会だったっけ?」

 

 ルイズは店頭の看板に書かれていた店名を思い出す。すると、そこにタバサの修正が入った。

 

「違う。セバスチャン商会所属マルセル武器屋」

「所属?」

「トリスタニアでは、いくつかの店がセバスチャン商会に買収されてる。あそこも元は個人商店の武器屋。私の買った本もセバスチャン商会所属の店」

「へー。そんなに手広くやってたんだ」

 

 ルイズは何の気なしに口にしたが、それに飛びついたのがキュルケ。

 

「セバスチャン商会ってゲルマニアの商業組合に所属してんだけど、できたの三年前くらいって聞いたわ。それが今じゃゲルマニア、ガリア、そしてトリステインでも手広げ始めてるのよ」

「たった三年で!?」

「そうよ。たった三年で。怪しいと思わない?」

「すごい商売上手なのかしら……」

「ロバ・アル・カリイエの商品を結構あつかってるから、それが理由の一つなんだろうけど」

「ロバ・アル・カリイエの商品?東の果てじゃないの。どっから手に入れてんのよ」

「そこまでは、さすがに知らないわ」

 

 横で聞いていた才人は少しばかり凍りつく。自分はロバ・アル・カリイエ出身という話になっているからだ。ロバ・アル・カリイエの品物について聞かれたら、嘘がバレてしまう。こっちに話を振るなと願いながら気配を殺した。

 だがそれは杞憂だった。キュルケはオカルト話でもするかのように、セバスチャン商会についての言葉を続けた。

 

「しかも、これだけ急に手を広げたでしょ?元々いた商店はいい顔しないわ」

「まあ、そうなるでしょうね」

「それでトリスタニアの商業組合の一つが、いやがらせしたんだって」

「何よそれ。同じ商人なら正々堂々と、商売で競いなさいよ」

「お子様ね。世の中そんな単純じゃないわよ」

「なんですって!」

 

 ルイズがキュルケにつっかかる。またもよく見る光景。そこに静止が入った。タバサだった。

 

「キュルケ。その先を聞きたい」

 

 青髪の小さな少女の意外な食いつきに、ルイズとキュルケは少々驚いていた。学院でも、我関せずという態度が多い彼女が珍しい。

 キュルケは話を続けた。

 

「えっと……。それで、その商業組合はチンピラを雇ったのよ。チンピラにセバスチャン商会所属の店で暴れさせたって訳」

「は?なにそれ、衛兵は?警察は何してたの?」

 

 ルイズに義憤を漏らす。

 ハルケギニアには警察組織一応あるが、地球からすればまだまだ未熟だ。このため基本的に治安はあまり良くはない。しかしトリスタニアは王都。言わば王国の顔。そのため比較的治安のいい町だった。チンピラが店頭で暴れるなんて事件が起これば、警察がすぐ出てきてもおかしくなかった。

 

「一応来たけど、随分後だったそうよ。私は警察もグルだったって思ってるけどね」

「腐ってるわ!」

「で、それからなんだけど。二、三日したら、チンピラの嫌がらせがピタって止まったのよ」

「警察が捕まえたの?」

「違うわ。そのチンピラ達、いなくなっちゃったのよ。一人残らず。どこに行ったのか、誰も知らないそうよ」

「町から出ていったのかしら?でもなんで?」

 

 ルイズは首を撚るしかない。キュルケは話を続ける。

 

「それだけじゃないわ。商業組合からの圧力も急になくなったらしいわよ」

「確かに……なんか変ね」

 

 タバサがここで口を開いた。

 

「セバスチャン商会がチンピラ達を始末、そして商業組合も裏で脅した。とキュルケは考えてる?」

 

 またも少しばかり驚く二人。物騒な事を当たり前のように言うタバサに。もっとも、赤髪のわがままボディはその通りと思っていたが。

 

「まあ、そうね」

「怪しすぎる商会ね。注意しとこうかしら」

 

 ルイズが難しい顔をしていた。タバサがそれに答える。

 

「でも、店員の対応も商品も質はいい」

「それも確かね」

 

 キュルケはうなずいていた。

 そして一行は、トリステイン出口にまで来ていた。そしてタバサとキュルケは、少し離れている場所に待たせているタバサの風竜、シルフィードの元へ、ルイズとサイトは馬を預けている場所へと向かうのだった。

 

 

 

 

 少し時間は遡り、ルイズ達が店を出た直後。入れ替わるように一人の人物が『セバスチャン商会所属マルセル武器屋』に入ってきた。メイドの姿をした女性が。わずかな隙も感じさせない振る舞いの、眼鏡をかけた黒髪の美女が。

 メイド姿の彼女だが、セバスチャン商会の副商会長という立場だ。だがその正体はナザリック地下大墳墓のプレアデス副リーダー、ユリ・アルファ。チームリーダーであるセバスと共に、ハルケギニア方面の情報収集を担当していた。

 

 店長が挨拶をする。

 

「これはこれは、ミス・アルファ。遠い所からお疲れ様です。それにしてもワザワザ、副商会長が直接いらっしゃらなくてもよろしいのでは?」

「いえ、これも仕事ですから」

 

 淡白に返すユリ。店に入ると、話しかけてくる。

 

「先程のお客様は?」

「はい。貴族のご令嬢と従者の様で。従者の剣をご所望でした」

「それであの大剣を?」

「はい。私としては、十分成長してきってない体で大剣を手にするのは、後々困ると思ったのですが。どうしても言われまして、やむを得ず」

「そうでしょうか?」

「と言われますと?」

「先程、歩いてる姿を見ましたが、大剣を使い慣れてるような姿勢でしたよ」

「これは……。副商会長は剣技にも、通じておられるのですか?」

「嗜み程度ですが」

 

 ユリはプレアデスの中でも接近戦に特化した戦闘メイドだ。近接武器の扱いを分かっていなければ、対応も十分にはできない。

 すると店長は疑問を表情に浮かべる。

 

「それにしても……あの若さで、大剣を扱い慣れてるとは……。何が事情でもあったのでしょうか?」

「さあ、どうでしょう?それでは帳簿の方お願いします」

「はい。只今」

 

 店長は奥の方へと引っ込んだ。

 彼が帳簿を持ってくる間に、ふとさっきの言葉を考えていた。確かに、まだ十代後半くらいにしか見えない人間が、大剣を使い慣れるようになっているのは珍しい。どんな理由があったのか。興味がない訳ではないが、ワザワザ調べる必要もない。

 すぐに気持ちを切り替えると、セバスチャン商会、副商会長に徹する事にした。

 

 

 

 

 トリステイン魔法学院へ向かうルイズと才人。買った大剣は馬に結び付けられている。もうトリスタニアの町は見えなくなっていた。

 これからまた三時間ほど馬に揺られるわけだ。才人は転移系の魔法を使いたくなったが、こんな所でアダプターのバッテリーを無駄にする訳にはいかない。

 

「そろそろいいか」

 

 不意に、そんな声が才人の耳に入った。隣を進むルイズに尋ねる。

 

「何がだよ」

「何って何?」

「いや、そろそろいいかって」

「何の話?」

 

 怪訝に眉をひそめるルイズ。

 

「その嬢ちゃんじゃねぇよ。俺だよ、俺」

「え?」

 

 その声はルイズにも聞こえた。サイトでないのは確実だ。誰かがいる。並走している。しかし姿は見えない。幽霊とでもいうのか。こんな日の出ている内から。

 

「ど、どこよ!?」

「見えるだろ」

 

 声の主はそういう。辺りを見回す二人。やはり誰もいない。そして馬を止め、ルイズは杖を、才人はナイフを構えた。

 ガンダールヴは主の側に寄ると、警戒感を強くする。

 

「出てこい!」

「いや、もう出てるって。お前の後ろだ。後ろ」

「え?」

 

 サイトは振り返るが、やはりいない。すると脇から声が驚きの声が届いた。ルイズの声が。

 

「サ、サイト!剣よ!剣!」

「剣が何?」

「剣がしゃべってんの!」

「え!?」

 

 馬に結びつけているサビだらけの大剣を見る。

 

「ようやく気づいたか」

「ほ、本当だ。剣が話してる」

 

 息を呑む二人。

 ルイズが剣に話しかけた。

 

「あんたもしかして……インテリジェンスソード?」

「そんな名前じゃねぇよ」

「名前じゃなくって、そういう種類の武器かって事」

「種類なんてどうでもいいじゃねぇか。俺はデルフリンガーって言うんだ」

「デルフリンガーね」

 

 今度は才人が質問をした。ただしルイズに。

 

「なあ、インテリジェンスソードってなんだ?」

「知恵ある武器だそうよ。けど、実際どんなものか聞いた事ないんだけど」

「それじゃ、初めて見る実物って訳か。それって、かなりレア……珍しい武器だよな」

「そうね」

 

 才人はレアな武器と聞いて、少々心躍っていた。やはりここはユグドラシルプレイヤーか。さっそく能力を気になった。

 

「なあ、デルフリンガーだっけ。何ができるんだ?」

「何って……。何かな?」

「なんだよ。言っちゃいけねぇの?」

「っていうか、忘れちまっててさ。記憶がぼやけてるっていうか……」

「ホントかよ?」

 

 才人は疑問の視線を向けるが、表情のない剣が相手では嘘かどうかも分からない。

 ともかく、こんな道端でやるような話ではない。詳しいことは帰ってからだと、馬を再び走らせた。学院に向かう。

 その最中、ふとデルフリンガーが才人に話しかけてきた。

 

「そういやぁ、お前使い手だったな。俺、掴んだ時わかったぜ」

「なんだよ?使い手って」

「俺を使いこなせるヤツって事だ」

「せっかく買ってもらったんだから、使いこなすに決まってんだろ」

「そうじゃなくって、本当に使いこなせる資格があるって意味だよ」

「なんだそれ……。もしかして俺がガンダールヴだからか?」

「ガンダールヴ!そうだ思い出した!俺、ガンダールヴに使われてたんだよ!」

 

 その言葉にルイズは思わず感想を零す。

 

「何よそれ。どんな偶然よ」

 

 たまたま寄った店で、普通なら見ることもない奥に仕舞われていた剣が、実はインテリジェンスソードで、しかもかつてのガンダールヴが使っていたとは。

 明るい声を返すデルフリンガー。

 

「だよな。奇跡だぜ。それにしても助かった。あんたらに買われて」

「助かったって?」

「いや、化物から離れられたからさ」

 

 ルイズと才人はお互いの顔を見やる。才人が尋ねた。

 

「化物って?あの店長が?」

「いや、あれは普通の人間だぜ。そうじゃなくって本店の連中がさ。なんかおっかねぇんだよ」

「セバスチャン商会の?」

「そうそう。そのセバスチャン商会の。今でも憶えてるけど、あの店買収しに入って来た時は、ドラゴンでも来たのかと思ったぜ」

「買収されたんだっけな。そう言えば、元の店長は?」

「商会長と折り合いが悪くて、首になった。まあ、結構金はもらったらしいから、円満退職だな。前の店長とは喧嘩もしたけど、仲は悪くなかったんだけどなぁ」

 

 懐かしげに言うデルフリンガー。

 

「けど、俺は残されちまった。次の店長はただの人間だったけどさ。たまに連中が来るんだよ」

「本店の連中がか」

「ああ。特に怖えのが商会長とか副商会長。ありゃ、なんだったんだろうな?ドラゴンどころじゃねぇかもしれねぇ」

 

 ルイズ達は少しばかり目を見開く。

 

「……人間じゃないの?」

「たぶんな。逆に人間だとしたら、何やったらあれほど怖くなれんのか想像もつかん」

「例えば吸血鬼とか?」

「それなら昼に出歩けねぇだろ?だいたい、そんな弱っちくは思えなかったしな」

 

 吸血鬼はハルケギニアでは恐るべき妖魔だ。それが弱いとは。ルイズの背筋に若干の寒気が漂う。

 もっとも吸血鬼が恐れられる理由は、先ず人間と見分けがつきにくい。さらに人間を積極的に襲う上に社会に潜り込む技に長けているという理由からだ。単純な戦闘力では、それほど強くはない。

 

「それじゃ、どんな化物って言うのよ」

「分かんねぇよ。まあ、確かめようとも思わなかったしな」

「…………」

「それからは素性がバレねぇようにって、黙り込んで気配を殺しまくってたよ。そんな訳で、あそこから出られて助かったって話よ」

 

 デルフリンガーの話を聞いて口を噤む二人。キュルケの話を事前に聞いていたのでなおさらだ。

 セバスチャン商会。聞けば聞くほど得体のしれない商会だ。しかもそれが様々な国々に急速に手を広げつつあるという。何か嫌な予感が走る二人だった。

 

 

 

 

 

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