世界征服なんて面白いかもしれないな   作:ふぉふぉ殿

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嵐の前

 

 

 

 

 トリステイン王宮では緊急の御前会議が開かれていた。もちろんアルビオン対策が議題だ。予想される戦争について。

 新女王アンリエッタは、沈痛な面持ちを浮かべていた。ただでさえ大きな外交問題を抱えていたというのに、自分の発言でさらに状況を悪くしてしまったのだから。

 あろうことか、各国代表が集まった戴冠式で、ウェールズへの想いを口にしてしまった事は、失態などという言葉で済むものでない。おかげでゲルマニアから、同盟の話は凍結するという通達があった。完全な白紙という訳ではない点だけが、救いだろう。何にしても、アルビオンへはトリステイン一国で対応しないといけない。

 一方で、テーブルを囲む大臣や有力貴族達の表情も重い。

 つい最近内戦を終えたアルビオンだが、戦争自体はレコン・キスタ側の圧倒的勝利で終わった。軍自体の損耗は大したことがない。むしろ経験を積めたとすら言える。一方のトリステインは、何十年も平和な状態が続いた。国力も小さな領土相応だ。経験も戦力も格上な相手に、どう対応するか。

 しかもそれだけではない。今回の戴冠式で起こった騒動は、あきらかに何者かの謀略だと誰もが確信していた。アンリエッタが自らの戴冠式であのような事を命令する訳がなく、さらにアルビオン使節を刺した衛兵が見つからないのである。あの衛兵は、工作員だったのは間違いない。しかも、その謀略は成功してしまった訳だ。裏で糸を引く者の正体も目的も、全く不明。しかし今の状況では、その者の手の平の上で踊るしかない。ここにいる全員が、悶々としたものを抱えていた。

 ところで警備責任者だったワルドは、懲戒処分としてグリフォン隊隊長解任はもちろん、近衛隊からも除隊となる。そして空軍へと配置転換となった。

 

 重苦しい空気の中、会議は続いた。大臣の一人が口を開く。

 

「最大の問題は、戦力差をどう埋めるかだな」

「地の利を活かしながら、敵の艦隊を水際で阻止するしかあるまい」

「アルビオンは他国に比べ、操船技術が卓越している。数も圧倒されている。それを止められるというのか?」

「できるできないではない。やるしかないだろう」

 

 誰もが胸の内では同じことを考えていたが、その結果もあまり芳しいものに思えなかった。するとグラモン元帥がおもむろに口を開く。ちなみ彼は、あのギーシュの父親だ。

 

「むしろ引き込んで、殲滅してはどうか?」

「引き込む?わざと上陸させるというのか?」

「戦争は最終的に陸軍で勝敗が決まるもの。空軍だけでは決まらない。しかしアルビオンは島国。どうしても艦で兵を運ばねばならん。だが何万もの兵力を艦で一気に運ぶなど、いくらアルビオンでも不可能だろう。あえて先見隊に橋頭堡を作らせ、それを全陸軍で殲滅。また橋頭堡を作らせ、殲滅。それを繰り返す。もちろん輸送中も、空軍による妨害はするが。それにいくらアルビオン軍が経験豊富と言っても、陸地での戦闘経験だ。上陸戦は、ほとんど行ってないだろう」

「なるほど……」

 

 多少なりとも展望が見えたためか、表情が少しばかり明るくなる面々。ここで、宰相のマザリーニ枢機卿から声が上がった。

 

「戦い方はともかく、戦力が劣っているのも事実。私は学生を徴用したいと考えておりますが、いかがか?」

「学生を!?」

「さよう」

「子供を戦争に出すというのか!?」

「子供と言っても、幼子を出すわけではありません。15歳以上のメイジを考えております」

「それでも子供には違いない。足手まといになるだけだ!」

 

 15歳以上のメイジとなると、ここにいる貴族の多くの子息子女も含まれる。親としては、避けたかった。しかしここでまたグラモン元帥が、言葉を挟む。

 

「悪くない案だ」

「グラモン伯!」

「貴族たるもの、国の窮地に立たずしてなんの貴族か!」

 

 元帥でもあり、武門で鳴らすグラモン家の家長の一括に、マザリーニの案に不満を持っていた者は黙り込んでしまった。すると、おもむろに手を上げた者が現れる。ヴァリエール公爵だった。本来、国政から引退した彼がこの場にいるのは、国家の危急に武名のある彼も呼ばれたのである。

 

「学生の教練は私がやろう。後方に教官を回せるような余裕は、ないだろうからね。今の私にはかつて程の腕前はないが、戦い方を教えられるだけの経験はあるつもりだよ」

「頼めるか?」

「任せてもらおう」

「すまないな」

 

 グラモンは親友の援護に、感謝の言葉を添えた。

 この二人にカリーヌと仲間たちは、若い頃、ハルケギニアの方々で活躍し名を残した者たちだった。今では演劇の題材となるほど、その物語は知れ渡っている。ある意味、平和なトリステインの中では最も戦慣れした者たちとも言えた。

 

 こうして戦争となった際の方針が決まる。もちろん、交渉という手段を捨てたわけではない。ただ、戦争は結局起こらなかった、などというものが訪れると考える者はここにはいなかった。

 決まった案を承認するアンリエッタ。女王は重い表情で会議の終了を迎える。

 彼女はこの会議に、まともに参加できなかった。頭に何も思い浮かばなかった。大失態の負い目もある。さらに初仕事が戦争では、新女王には荷が重すぎた。そのためか、妙な気負いが彼女の中に生まれつつあった。

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓。玉座の間。一段高い玉座に身を収めているのは、ナザリックの主、アインズ・ウール・ゴウン。その脇には守護者統括アルベドが控えていた。さらにアインズの視線の先には、各階層守護者と、セバス、パンドラズ・アクターが膝をついている。

 会議は、ナザリックの絶対支配者の言葉で始まる。

 

「忙しい所、集まってもらってすまなかったな。急遽、話し合わねばならぬ問題が発生した。ハルケギニアでトラブルだ。セバス、分かっている限りの状況を伝えよ」

「かしこまりました、アインズ様」

 

 ハルケギニア方面の総責任者は、執事らしくすっと立ち上がると話し始める。

 

 トリステイン女王の戴冠式で、前代未聞の事件が発生。儀式の最中にトリステインの衛兵が、女王の命でアルビオン使節団の一人を刺殺したというのである。その衛兵が発した言葉は、女王の命令で彼女が愛するウェールズの仇討ちをした、というものだった。さらに女王は、その場でウェールズへの想い口にしてしまう。

 その後、使節団はアルビオンへ帰還。トリステイン、ゲルマニアの同盟交渉も停止。

 アルビオンでは、あまりの暴挙に開戦も辞さないというという空気になっており、皇帝クロムウェルも乗り気だという。かろうじてシェフィールドが抑えているが、可能な限り早くアインズからの指示をもらいたいとの報告があった。

 対するトリステインも開戦を覚悟しており、準備を進めているという。

 

「以上です」

 

 一通りの説明が終わると、セバスは膝をついた。そしてアインズが言葉を発する。

 

「この問題への対処を決めねばならん。意見のある者は発言せよ」

 

 最初に口を開いたのはシャルティア。

 

「恋人の仇を討ちたいというのは分かりんすけど、自分の戴冠式でやるなんて、頭がおかしいんでありんすかえ?」

「バカだなぁ。そんな訳ないでしょ。陰謀にハメられたんだよ」

 

 それに呆れ顔のアウラが、文字通り小馬鹿にしたように言う。歯ぎしりしながら、不機嫌そうな顔を返すシャルティア。するとデミウルゴスが、正面を向いて話しだした。

 

「アインズ様。一連の騒動が謀略である事は疑いようがありません。そうなると首謀者の正体と、目的が肝要となります。その辺りは、どのようになっているのでしょうか?」

「セバス」

 

 悪魔の質問を執事に投げるアインズ。出てきた答は不明というもの。デミウルゴスは小さく頷いた。

 

「なるほど。となると考えられる首謀者は、第一に逃走中のジョゼフ、第二にアルビオン国内の主戦派」

 

 ここでコキュートスが口を挟んできた。

 

「アルビオンノ、自作自演ノ可能性モ、アルノカ?」

「あまりにレコン・キスタがスムーズに行き過ぎたからね。特にあのクロムウェルとやらは、ただの平民司教。それがわずか数年で皇帝にまで上り詰めたんだ。身の丈に合わない野心を持っても、不思議じゃないさ。似たような考えを持った貴族もいるかもしれない」

「で、ですけど、アインズ様が配下にした女の人が、操ってるんじゃないんですか?」

 

 マーレが素朴な質問をぶつけてきた。クロムウェルは、彼女が作り上げたお飾り皇帝にすぎないのだから。

 

「報告では、あの皇帝は少々図に乗ってきてるようでね。勝手に動いたという可能性も、ないとはいえない。虚無の使い魔と言っても所詮、人間。詰めの甘い所もあるだろうね」

 

 すると一人だけ宙に浮いている守護者、ヴィクティムが話題を変えてきた。

 

「サイショニダサレタ、ジョゼフダトシタラ、モクテキハナンデショウ?」

「ジョゼフは、なかなか興味深い人間でね。例のコピージョゼフで調べたんだが、手段は具体性があるのに対し、目的は曖昧という掴みどころのない人物さ。自分自身でも、行動原理が分かってないんだ」

 

 シェフィールドから借りた、ジョゼフ(スキルニル)に対し、アインズとアルベド、デミウルゴスがいろいろと調査をした。記憶、人物像から虚無の正体まで。しかし、芳しい結果は得られなかった。

 性格は不遜だが、感情は朧気。しかし頭は回る。目的を与えると、すぐ実行するための具体案が出てくる。だが、好きなことをしていいというと、しばらく時間がかかるといった具合だ。彼が行った弟暗殺やアルビオンでの謀略なども、具体的な動機自体は本人もよく分かっていなかった。

 ただこれは、王位を失う前のジョゼフのものだ。今のジョゼフとは違う。人は大きな出来事で、人間性が大きく変わることもある。ナザリックの得た情報は、現状とは異なる点があった。

 

 虚無については、既知のもの以外で分かったのはわずか。本人もどんな条件が揃って虚無に目覚めたかは、分かっていなかった。新たに分かったことと言えば、虚無に目覚めた時に頭に浮かんだ文言だ。ただこれも半ば忘れており、虚無の魔法を見出した者が何を伝えたいのか十分に分からなかった。

 

 ナザリック一の知恵者は少々悩まし気な表情を浮かべつつ、心臓を模したような天使に答える。

 

「だから動機からは読みづらい。ただ、アルビオンとガリアの裏事情を知っている唯一の者で、虚無の担い手だ。我々を標的とするなら、彼ならできるという消極的な理由で名前を出したんだよ」

 

 ここでふとシャルティが疑問を口にした。

 

「そう言えば、デザートエルフを捕まえるという話は、どうなったんでありんす?」

 

 それに答えたのはアルベド。

 

「リュティスには、結局現れなかったわ」

「まだネフテスにいるって事でありんすか?」

 

 疑問の答はパンドラズ・アクターから。

 

「いえ!あのデザートエルフがハルケギニアに向かったのは、この眼にしっっかりと収めております」

「それじゃ、どこに行ったでありんすかえ?」

 

 ここで、デミウルゴスの推察。

 

「おそらくは、ジョゼフが先に接触したのだろうね。その後、同行したのかは微妙な所だが、少なくとも現状のガリアは組むに値しないと判断したんだろう」

「あれ?マズイんじゃないの?あの人間から、私達のこと聞いちゃったんじゃない?」

 

 アウラが気がかりを口にした。ただデミウルゴスは、大して気にしてないかのよう。

 

「ジョゼフは手配犯な上、我々の存在を証明しようがない。彼の話を信じた可能性は低いだろう」

 

 デミウルゴスを含めたナザリックの面々は、ロバ・アル・カリイエの隠蔽工作が一部破られた事をまだ知らなかった。そのため、ビダーシャルが魔導国の話を受け入れる可能性を、かなり低く見積もっていた。

 

 ここでマーレが、論議を整えるかのように言う。

 

「じゃ、じゃぁ、そのジョゼフって人と、アルビオンの誰かのどちらかが犯人……でいいんでしょうか?」

「他にも可能性はあるわよ」

 

 アインズの脇から、アルベドの一言が添えられる。

 

 それから、考えられる首謀者がいくつも上がった。

 まず、シェフィールドが裏切った可能性。彼女には、精神操作などがされていない。自由に動こうと思えば動ける。ただアインズ自らが勧誘したと受け止められているので、この可能性はほぼないと皆は思っていた。

 次にゲルマニア。女王と皇帝の国の同盟では、対等な関係になってしまう。戦争を起こし、トリステインが不利になった時点で、ゲルマニア有利の秘密同盟を結ぶ。その後、トリステインに集中しているアルビオンの隙を付き、戦争に勝利する。場合によっては、支援の名目でトリステインに駐留、やがて併合という可能性もありうる。

 さらにエルフ達も候補に上がった。ガリアと手切れになったので、自ら動いた可能性だ。他にもいくつか名が上がる。

 

 玉座で黙って聞いていたアインズ。次から次へと出てくる名前の整理で、精一杯だった。

 

(容疑者多すぎ。つまり、犯人は分からないって事だよな。でも、なんかこれ……。どっかで見たような……。全員怪しいって展開……)

 

 アインズがなんとか頭を回していると、脇の腹心から声がかかった。

 

「……ですので、アインズ様。今回の件、無視するのはいかがでしょうか?」

 

 途中から話を聞いていなかった至高の御方は、少々慌てつつもそれっぽい態度をすぐに作る。

 

「無視か……」

「はい。謀略という点だけは確かなのですから、相手の策に踊らされるのは避けるべきかと。あのシェフィールドという者は、精神操作のマジックアイテムを手にしてます。それを使えば、アルビオンの人間共を黙らせるは容易いでしょう。劣勢のトリステインが、攻めてくる可能性は低いでしょうし」

「ふむ……」

 

 顎をかかえ考え込むアインズ。

 

(まあ、今戦争しても、厄介事が増えるだけだしなぁ。多分書類も。何も起こさないで済むなら、そっちの方がいいか)

 

 そんな感想を頭に浮かべていると、ふとさっき思い出そうとした事が、脳裏に現れた。

 

(そうそう。ミステリーでこんな流れの始まり見たことある。作品名忘れたけど。トータルで被害者いっぱい出たのに、何故か主人公は名探偵あつかいされてたのはツッコミたかったっけ。あれって犯人は結局……)

 

 また黙り込んだ崇めるべき主に、配下の者たちは自分たちでは思いもよらない策を巡らし始めたと思い込んでいた。

 そんな彼らの態度に気づかず、アインズはポツリと零す。

 

「連続犯行でのミス……」

「連続!?」

 

 慌てたようにデミウルゴスが口を開く。思わず彼の方へ視線を向ける、ナザリックの絶対支配者。

 

「え?」

「なるほど、アインズ様は、これを一連の謀略の端緒に過ぎないと考えられておられるのですね」

「あ……え……そ、そうだな」

「そのような捉え方も、確かにありえます」

「あ……ああ……」

 

 この悪魔の頭の中に何があるのか分からないが、とりあえずうなずいておく。

 するとアルベドも納得顔で話し始めた。

 

「しかも、あえて謀略を続けさせる事で、ミスを誘おうとお考えなのですね」

「ん?ま、まあな……」

 

 なんの話だと思いながらも、流れにまかせるアインズ。

 

「となると、今回は無視するよりも、あえて相手の策に乗ると」

「逆に動きを見せることで、首謀者をあぶり出す訳ですか。しかし、そうなるとなかなか難しい舵取りを必要としますね。我々の存在を隠しつつ、相手の動きを掴まねばなりません」

 

 眉間にシワを寄せ、考え込むデミウルゴス。

 対して、話を十分把握できてないアインズ。ただ、あの知恵の悪魔が難しいなどと言うのだ。厄介な話になっているのは分かる。さっきの独り言で、こうなったらしい。申し訳ない気分になってきた。

 

「難しそうか。ならば……」

「いえ!このデミウルゴス。アインズ様のお考え、必ずや実現してみせます。ですが、この場で軽々に考えの述べるわけにもまいりません。お時間をいただけないでしょうか?」

「わ、分かった。十分に思案してくれ」

「はい」

 

 悪魔は深く礼をする。

 それからしばらくして、この会議は終わる。アインズが、会議の内容を半端にしか理解できていないまま。

 

 翌日、デミウルゴス達から計画案が出された。目的は陰謀の首謀者と、その目的の割り出し。さらに追加で、新設した空軍の実戦運用試験。目的達成と今後の事を考え、ハルケギニアへ増員をする。セバスには、ルプスレギナとナーベラルを。シェフィールドにはシズを。諜報のためのモンスターも派遣。そして空軍の運用は、コキュートスに任せる。空軍は全てアンデッドだが、ハルケギニアの魔法人形、ガーゴイルに偽装し運用する事となった。試験なので派遣する部隊は少数。ナザリックの面々は、直接戦争には参加しない。

 計画書の内容を読んだ至高の御方。なんとなくそんな気はしていたが、戦争する事になったのかと、今になって理解したのだった。書類がまた増えそうだとも。

 

 

 

 

 トリステイン魔法学院。学生寮で才人はルイズと向き合っていた。そしてアダプターを付け、ユグドラシルの能力を起動。アイテムボックに手を入れる。そこから、指輪やペンダントをいくつか取り出した。その様子をルイズは、怪訝そうな表情で見ていた。

 

「何やってんのよ?」

「これ全部、ルイズに渡す物」

「えっ!?プ、プレゼント!?」

 

 目の前に並べられる細工の凝った装飾品が、自分のために用意されていると知って、ルイズは急に気恥ずかしくなってくる。

 

「わ、私たちはそういう関係じゃないの!使い魔と主よ!そ、それに今日は、誕生日でもなんでもないし」

「ん?何言ってんだ?」

 

 顔を赤くしているルイズに対し、才人のリアクションは淡々としたもの。少しばかり不機嫌になるピンクブロンドの女の子。

 

「何よ?これって、プレゼントじゃないの?」

「プレゼント?違うぜ。とりあえず、貸すだけだ」

「はぁ!?」

 

 だんだんと怒りが湧き始めた。理由はよく分からないが。

 

「な、何なのよ!思わせぶりな事して!」

「ちょ、ちょっと待てって。何、怒ってんだよ。これ、お前を守るためのもんなんだよ」

「守る?守るって何よ?」

 

 怒りの代わりに、戸惑いが浮かんでくるルイズ。少年聖騎士は、慎重に話を始めた。

 

「三年前のアカデミー襲撃事件。あの犯人、多分俺と同じ異世界人だ」

「えっ!?なんで分かったの!?」

「分かったっていうか、予想だけどな。俺がハルケギニアにいるんだ。他の異世界人がいても、不思議じゃない。だいたい、あんな強いお前の母さんが逃げるしかなかったのって、それくらいしか思い付かないだろ?」

「……。分かったわ。それで、サイト以外の異世界人と、この指輪とかペンダントがなんの関係があるの?」

 

 ルイズは、神妙な顔つきへと変わっていた。続きを話す才人。

 

「俺たちの世界じゃ、精神操作、時間操作、即死とかやばい能力が当たり前にあるんだよ」

「な、何よそれ!?」

「ルイズ達からすれば、チート……とんでも能力だけどな。だから、この手の能力を使われると、この世界の人間じゃ勝負にすらならない」

「じゃぁ、どうするのよ。っていうか、あんた達はどうしてたの?」

「それを防ぐ方法があるんだ。それが今並べてるこれ」

 

 そう言って、才人は指輪の一つを手に取った。

 

「これは精神操作を防ぐマジックアイテム。他のは、時間操作阻害、即死阻害、毒耐性とか、そういう防御効果があるアイテムだ。これを、いつも身につけてくれ」

「いつも?でも、こんな目立つ指輪つけたら、先生方に注意されちゃうわよ」

「俺が学院長を説得して、許可もらっておく」

 

 その時、ルイズは気づいた。サイトも指輪やペンダントをぶら下げている事に。どうも彼は、本気で同じ異世界人を警戒しているらしい。

 サイトの強さは、直に見ているだけに彼女は実感していた。そのサイトが警戒するのだ。異世界人は英雄と呼ばれた母を、凌駕するほどの強さを持つのだろう。そんな存在が三年前の、凄惨な事件を起こした。息を呑むルイズ。

 ここで、一つの懸念が彼女の脳裏に浮かぶ。

 

「サイト……。その……他の人の分は?」

「悪いけど、俺とルイズの分くらいしかない。残りはもしものために、取っとこうと思ってる」

「そう……」

 

 こんな特殊なマジックアイテムが、大量にある訳がない。ルイズはしかたなく受け入れた。

 

 もちろん、異世界人の存在を確認できた訳ではない。実は、サイト以外の異世界人はいなかった、などという結果になるかもしれない。ただ、直感に過ぎないが、そうはならない気がしていた。

 ならば自分たちが、その異世界人をなんとかするしかない。もしかしたら、目の前の異世界人を召喚できたのは、それが理由かもしれない。ルイズはそんな事を考える。

 同時に思った。何度か出てきた、自分が虚無の担い手かもしれないという話。やはり、なんとかして確認したかった。

 

 考えを巡らせてるルイズに、ふと才人が訪ねてきた。

 

「そう言えば、ルイズもちょっと前から指輪嵌めてるよな。後、いつもぶら下げてる小さなカバン。それ何?」

「ああ、これね。始祖の秘宝なのよ」

「始祖の秘宝!?ルイズ、虚無関係のアイテム持ってたのか?」

「違うわ。姫さま……陛下から頼まれたの。巫女になってくれって。トリステインの王族は結婚する時、巫女が詔を告げるの。その時まで、巫女はずっと始祖の秘宝を身に着けてないといけないのよ」

「えっ!?王女……じゃなかった、女王様結婚するの?」

「この前の事件が起きなければね。あれから結婚がどうなるかは、まだ聞いてないけど。でも、やるかもしれないし。念のため、身につけてるのよ」

 

 ルイズは戴冠式での事件を目の前で見ていたが、その後の会議の結果などは聞いていない。なので、預かったままとなっている。

 

 何にしても、平穏な生活が終わるような予感がルイズにはあった。あの戴冠式での事件にせよ、今のサイトの話にせよ。そして虚無の使い魔の主である自分たちは、これから起こるであろう出来事の中心に飛び込む事になるかもしれない。そんな予感が、彼女にはあった。

 

 

 

 

 

 

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