世界征服なんて面白いかもしれないな   作:ふぉふぉ殿

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ガリア王との会談

 

 

 

 

 タバサの母親の寝室に一同は戻る。彼女の母親はベッドごとタバサのレビテーションの魔法で戻した。静かな寝息を立てる彼女に、タバサは寄り添っていた。長らく病床にあったため体力を消耗していたので、才人が回復魔法をかけた。聖騎士である彼は、中位の各種回復魔法が使えた。もっとも、ユグドラシル末期の人数不足のため、ヒーラーも兼任しないといけなかったため身に付けたのだが。

 彼の魔法のおかげで、顔色はすっかり見違えるようだ。健常者が寝ているようにしか見えない。ちなみに才人は、全ての装備を解除していた。

 

 一同が落ち着いた所で、ジョゼフが話を始めようとする。しかしそこに、待ったの声がかかった。才人だった。

 

「一人、呼びたいヤツがいるんだけどいいか?」

「今からか?ダメだ。ここで何泊もする気はない」

「いや、すぐ来る。お茶、飲むくらいの時間があれば十分」

「……なるほどな。そういうことか。いいだろう。さっさとしろ」

 

 負けた割にはこの場を仕切っているガリア王に不快感を持つが、ともかく才人は魔法を発動させる。こめかみに指を添えた。

 

「メッセージ」

『ん?え?メッセージ?』

「ジュリオ?俺、才人」

『え?あ、そうか……。すごい久しぶりだ……。メッセージの魔法で会話するの。で、何?』

「新しい、虚無の担い手見つけたぞ」

『マジ!?』

「マジ。目の前にいる。今、ラドグリアン湖って所にいるんだけど、来れるか?」

『行けるけど、ラドグリアン湖のどこにいるんだい?あそこ結構広いぞ』

「合図出すから、着いたら教えてくれ」

『分かった。すぐ行くよ』

 

 メッセージの魔法を切る才人。その様子を一同は不思議そうに見ていた。ルイズが問いかける。彼女たちにはジュリオの声が聞こえていないので、あたかもイマジナリーフレンドと会話しているかのように見えていた。

 

「何、ぶつくさ言ってんの?」

「え?ああ。今の魔法は、遠くにいるヤツと会話する魔法」

「そんな魔法まであるの?あんたたちの世界」

「まあな。これからそいつ、迎えに行ってくる。少し待っててくれ」

 

 才人はそう言って部屋を出ていった。つくづく力の底が見えないと、ここにいる誰もが思っていた。様々な考えを抱きつつ。

 

 ほどなくして、部屋へ戻って来る才人。後に白い神官服に身を包んだオッドアイの青年、ジュリオが続いていた。

 彼を知っているのはルイズだけだ。他の者たちは初対面。各々の視線が彼を見極めるように集まってくる。才人が彼を紹介した。

 

「ロマリアの神官。名前はジュリオ・チェザーレ。俺と同じ、虚無の使い魔で異世界人だ」

「ジュリオ・チェザーレと申します。以後、お見知りおきを」

 

 仰々しい礼をするイケメンの神官。それから才人が、各々を紹介。ここに来る途中、経緯をある程度聞いていたとはいえ、やはりガリア王とエルフがいることに少々、驚いていた。

 一通りの紹介が終わると、ジュリオは才人に、事前に来ていた話の確認を取る。

 

「虚無はガリア王でいいんだよね?」

「ああ」

「あなたが……」

 

 ジョゼフを注視するジュリオ。彼の言葉を鵜呑みにせず、見極めるように目を細める。

 

「確か、王都のリュティスにもガリア王がいらっしゃったはずですが。あなたは何者ですか?」

 

 すると脇から声が挟まれる。イザベラだった。

 

「この方が、本物のガリア王陛下よ!ヴェルサルテイル宮殿にいるのは、父上の姿をした偽物よ!」

「あなたは?」

「この国の王女、イザベラよ。ロマリアの神官」

「……?」

 

 状況が理解できないとでも言いたげなジュリオの顔つき。するとジョゼフが口を開く。

 

「俺が巻き込んだ。ヒラガサイトに接触するのに、シャルロットの助力がどうしても必要だったのでな。北花壇騎士団の騎士団長の力を借りた」

「父上。巻き込んだなどとおっしゃらないでください。私の意思で、来たのです。以前から、ヴェルサルテイルのガリア王が、どうしても父上に思えなかったのです。ですから、父上からの密書を信じたのです」

「そうか……」

 

 わずかに口元を緩めるジョゼフ。

 ガリア王家父娘の様子に、ジュリオはガリアで大事が起こっているということだけは理解できた。だが今問うべきはそれではない。ジョゼフに尋ねる。

 

「ところで、陛下の使い魔はどこです?ルーンを確かめたいのですが。隣にいるエルフですか?」

「ふざけるな。私がシャイターンの使い魔な訳があるか」

 

 あからさまな不機嫌な声を漏らすビダーシャル。しかしジュリオは無視。再び頭を剃り上げた神官姿のガリア王に尋ねる。

 

「召喚してないのですか?」

「召喚はした。だが、俺の元から去っていった」

「え?使い魔が勝手に去った?もしかして、僕たちと同じ異世界人ですか?」

 

 ユグドラシル出身者なら、自分たちと同じく精神操作阻害をして、使い魔の軛から簡単に逃れられる。しかしガリア王は首を振っていた。

 

「そうは聞いてない。ヒラガサイトのような、妙な力も使っていなかったしな。ただし、ハルケギニアの人間でもない。あいつは、ロバ・アル・カリイエ出身と言っていた」

「……」

 

 人間種には違いないが、それ以上は確認しようがないようだ。ユグドラシルプレイヤーの可能性は残る。

 

 一方で、ガリア王の使い魔についてはともかく、ジュリオは彼の言葉の端々に捉えどころのなさを感じていた。そもそも才人から事前に聞いたが、目的を隠して彼らをここに招いたと言う。どうにも信用し難い。

 ジュリオは、こんな問答が面倒くさくなってきた。

 

「まあ、いいか。誤解だったら、平謝りすれば」

 

 頭を掻きながら独り言を零すオッドアイの青年に、一同は怪訝な視線を向ける。

 すると軽く手をかざすジュリオ。同時に詠唱。

 

「チャームパーソン」

 

 『チャームパーソン』は、相手を親友と誤認させる魔法だ。しかも彼のヴィンダールヴは、精神操作魔法にバフをかける。もっとも、人間種相手にはバフ効果はないのだが。それでも対策を取ってない相手は、この魔法を阻止できない。

 オッドアイの青年神官は、いつも以上の演技めいた態度で親しげに話しかける。

 

「久しぶりだね。さっそくで悪いけど、いろいろと聞きたいことがあるんだよ」

「久しぶり?お前とは初対面だぞ。何を言っている?」

「え?」

 

 唖然とするジュリオ。チャームパーソンの効果がない。

 虚無の魔法の中に、精神操作阻害の魔法があったのか。そうだとしても、事前に彼が精神操作魔法を使うと知っていなければ対策しないはずだ。もしかしたら、精神操作阻害のマジックアイテムがあり、それで対策しているのかもしれない。ただ彼の知識の中には、そんなアイテムはなかった。

 実は、この理由はとても単純だった。ジョゼフには、友人という概念自体がなかったのだ。ならば、親友というものを認識できるわけもない。

 

 ジュリオと同じく驚いている才人が、声をかけた。

 

「どうなってんだよ?」

「知らないよ」

「ドミネートかけてみろ」

 

 『ドミネート』。さらに上位の精神操作魔法だ。強制的に相手を従わせることができる。しかしジュリオはバツが悪そうに返した。

 

「持ってない」

「え?ないの?」

「上位の精神操作魔法はない。君の方は?」

「いや、俺も持ってない。っていうか、精神操作魔法は一つもない」

 

 才人も困ったと言いたげな態度。

 即死や精神操作の魔法は、戦闘やクエスト攻略を容易にしてしまうため、様々な制約があった。効果が限られていたり、MP消費量が異様に多かったり、取得条件が厄介だったり、対策が簡単だったりと。しかも相手のレベルが上がるほど、かなり効きづらくなっていく。そもそもプレイヤーには対しては、精神操作という効果は当然現れない。その代わり一種のデバフがかかるのだが、これが今ひとつ。

 このため、上位の精神操作魔法を取得しようなどと思う者は限られた。さらにジュリオたちのギルドは探索がメインなためそれほど上位のものは必要なかった。ジュリオが精神操作魔法を習得したのも、ギルド拠点内に動物園を作るためで、『チャームビースト』など獣や魔獣用の精神操作魔法があれば十分だった。ちなみにチャームパーソンは、ついでに手にいれただけだった。

 

 ジュリオはこの不可解な状況に首を傾げつつも、今度はエルフに向かってチャームパーソンを発動。するとビダーシャルは驚きの表情を浮かべていた。

 

「き、君は……。何故ここにいる?」

「あなたと同じ理由ですよ。ただ、詳細は直接聞いてくれと言われたので、伺いたいのですが。だいたい何故、虚無……シャイターンと共にいるのです?」

「そうか……。知っての通り、私はハルケギニアの分断工作のために来たのだが、今はそれどころではない問題が発生している。そのため、本来の任務を一時停止しているのだ」

「それどころではない問題とは?」

「ジョゼフ……この男に聞いた方が早いだろう」

「……」

 

 結局、ガリア王に話を聞かないといけないらしい。魔法を解除する。再び驚きを口にするビダーシャル。自分の心を操られたと知って。チャーム系の魔法は、操られたという記憶を残してしまうのが欠点の一つだった。

 そんなエルフには構わず、感想をこぼす才人。

 

「効いてるじゃん」

「効いてるね。どういうことだ?まあいいか。後で考えよう」

 

 ビダーシャルとジュリオのやり取りを見ていたジョゼフは、楽しげに口元を緩めていた。

 

「心を操る……ギアスの魔法か。本当に多芸だな、お前たちは。もっとも俺には効かなかったようだが」

「何かしたのですか?」

「いや、何も」

「……」

 

 とりあえずこの場ではジョゼフと呼ばれたこの男を、虚無として認めて話を進めることにした。

 

「話を戻しますが、あなたの娘、イザベラ王女姫殿下はあなたのことを本当のガリア王と言った。そうなるとリュティスにいるガリア王は何者です?」

「そうだな。本題に入るのに、そこから始めた方がいいだろう」

 

 ジョゼフは真っ直ぐにサイトたちを見る。彼らの反応を期待するかのように。

 

「リュティスにいるのは、アインズ・ウール・ゴウン配下の者だ」

「な!?」

 

 思わず目を見開き、前のめりになってしまう二人。

その様子を見てジョゼフは笑みを零す。

 

「やはり知っていたか。あの化物と同郷の者なのだな。お前たちは」

「化物?」

 

 今度は眉をひそめる才人たち。ガンダールヴは尋ねた。

 

「化物っていうのは、アインズ・ウール・ゴウンのことか?」

「そうだが?ヤツはロバ・アル・カリイエの支配者、アインズ・ウール・ゴウン魔導国の国王、アインズ・ウール・ゴウン魔導王と名乗っていたぞ」

「?」

 

 不思議そうな顔で、才人とジュリオは顔を見合う。想定と違う反応に、わずかに顔をしかめるジョゼフ。今度はヴィンダールヴが話しかけた。

 

「僕たちが知っているアインズ・ウール・ゴウンは、組織名で個人名ではないのですが」

「組織名?直に会ったが、自分の名として言っていたぞ」

「直に会った?どんな姿をしていました?」

「魔王のような意匠の豪華なローブを着込んでいたが、中身は白骨そのものだ。ただ頭蓋は人間と違い、いかめしい形をしていた。それと腹に何やら赤い玉を収めていた」

 

 ジュリオは、再び才人の方を向く。

 

「オーバーロードだ」

「だよな。けど、赤い玉ってなんだ?」

「確か、ワールドアイテムにそういうのがあった」

「アインズ・ウール・ゴウンって、ワールドアイテム結構持ってなかったっけ?」

「うん。あちこち喧嘩ふっかけてたからなぁ。そん時、取ってったんだろうけど……」

「けど、オーバーロードか……。アインズ・ウール・ゴウンのオーバーロードって誰?」

「知らない。あそこの上位ランカーなら何人か知ってるけど、その中にオーバーロードはいなかったし」

「そっか……。でもなんで、ギルド名で名乗ってんだ?」

 

 腕を組んで考える才人。自分なら絶対しない。それに他のメンバーは、それを認めていることになる。どうにも腑に落ちない。

 すると同じく考え込んでいたジュリオが、何かを思いついたかのように顔を上げた。

 

「もしかして……。こっちに来てるプレイヤーって、そのオーバーロードだけじゃないのかな?」

「いや、前に話したろ。ラ・ロシェールで、別のプレイヤーと戦ったって」

「でも、ずっとロールプレイしてた、ふざけたヤツとか言ってなかった?」

「そうだけど……、それが何?」

「もしかしてさ。そいつNPCじゃないのか?」

「NPCは話せないし、ギルド拠点から出れないぞ」

「ユグドラシルではね。けどここはユグドラシルじゃない。だいたい君みたいな本当の人間が、魔法使えてるんだぜ。NPCが意思を持った可能性もある。だとすると、ロールプレイに思えた態度も、NPCの設定がそのまま性格になったんじゃないのかな。忠誠心高そうに見えたのも、NPCはプレイヤーの指示通り動く存在だからじゃないの?」

「……」

 

 才人には、ジュリオの説得力のある言葉に返すものがない。

 

「だったら、何でNPCがいるんだ?俺達はいないぞ?」

「才人はサービス終了の時、何してた?」

「仲間とPvP」

「僕は、ダンジョン巡りしてた。つまりお互い、拠点にいなかった。多分だけどさ。アインズ・ウール・ゴウンっていうプレイヤーは、ギルド最後に残ったメンバーで、拠点に一人でいたんだと思う」

「どういうことだ?」

「だから、ギルド拠点もNPCも、そのオーバーロードの所有物ってことになったんじゃないのかな。僕たちだって、サービス終了時のアイテムはこっちに持ってこれてるだろ?」

「あ」

 

 確かにそうだ。もし対象だけが召喚されるのなら、裸でこの世界に出現したはずだ。しかしそうではない。

 だがこれは驚愕の予想を導きだしていた。つまりギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の拠点、『ナザリック地下大墳墓』がこの世界にあることを意味している。その中にいる数々のNPCやモンスターたちも。そして拠点攻略特典の、規格外スペックを持った攻城用巨大ゴーレムまでいるはずだ。

 

 ここでいきなり、驚きの叫びが飛び込んできた。デルフリンガーだった。

 

「お!そうだ!言い忘れてた。相棒!」

「どうしたんだよ。急に」

 

 才人は腰のナイフに尋ねる。

 

「初めて会った時、セバスチャン商会の商会長が化物って話しただろ」

「そうだっけ?」

「そうなんだよ。でだな、その気配がラ・ロシェールで戦った連中にそっくりなんだよ。あの商会長、アインズ・ウール・ゴウンの仲間に違いねぇ」

 

 次に聞こえたのは、半ば呆れたジュリオの声。

 

「待ってくれよ。セバスチャン商会って言ったら、ハルケギニアでかなり手広く商売やってるぞ。それが、アインズ・ウール・ゴウンの配下とか。しかもリュティスのガリア王もだし」

 

 さらに別の人物、ビダーシャルの言葉が入る。

 

「それだけではない。アルビオンの実質的な指導者も、アインズ・ウール・ゴウンの配下の者だ。正確に言えば、ジョゼフの使い魔だが。それが魔導国に寝返った」

「……!?」

 

 口を半開きにさせたまま、言葉のない才人とジュリオ。

 一方、ここまで話を黙って聞いていたルイズ。部屋を包む不穏な空気に流されつつも、今ひとつ理解できていなかった。

 

「ちょっと、才人。結局、どういうことなのよ?」

「つまりさ。俺たちと同じ異世界の化物がこっちに来てて、王を名乗ってロバ・アル・カリイエを支配してるらしい。それだけじゃなくって、ハルケギニアの半分も支配したっぽい。知らない内にさ」

「は、半分!?とんでもないじゃないの!」

「ああ。とんでもねぇ……」

 

 ルイズに説明しつつも、悪寒のようなものを感じる才人。ジュリオも厳しい表情をしていた。いくら虚無の使い魔としてのバフがかかると言っても、こちらは二人だけなのだから。

 

 ここでジョゼフが、二人の会話が終わるのを待っていたかのように、話しかけてくる。

 

「アインズ・ウール・ゴウンが何者か、だいたい分かったらしいな」

「ええ」

 

 オッドアイの青年神官が返す。落ち着きを取り戻しつつ。対するジョゼフの気配も、真剣なものへと変わった。

 

「そこで提案だ。俺たちと手を組まないか?」

「それが、この茶番の目的ですか。理由は?」

「俺はこのままでは、身を隠し続けねばならんからな。俺への手配書が出回ってることくらい、知ってるだろう?ビダーシャルは祖国の隣に化物の国があっては、虚無どころではない。お前たちも、ハルケギニアに化物の手が伸びていくのを、放っておく訳にはいかんだろう」

「立場は違えど、目的は同じという訳ですか」

「対アインズ・ウール・ゴウン魔導国という意味でな」

「……」

 

 渋い顔の才人とジュリオ。

 理屈は通っているが、このジョゼフという人物はどうにも胡散臭い。しかも、何故か精神操作魔法が効かないので、真意が掴めない。

 ジュリオは保留にしようと口を開きかけた。するとどこからか、落ち着きつつも怒りを孕んだ声が耳に入った。

 

「あなたのような邪悪な人間と手を結ぶなど、破滅に向かうようなものです」

 

 驚いて一同は一斉に、声の主へと顔を向けた。その人物は、タバサの母親だった。タバサ自身も話に集中していたいのか、今、母親が起きたと気付いたようだ。

 ベッドから半身を起こし、ジョゼフを睨みつけるタバサの母親。

 

「久しぶりだな。それにしても見違えるようだ。つい先程までは、干からびたかのようにやせ細っていたのだがな」

「お黙りなさい!あなたには聞きたいことが、山ほどあります。何故、夫を手にかけたのです!」

「その話か。そうだな、簡単に言えばシャルルのヤツが、いつまでも俺を幼子かのように侮っていたからからだな」

「な……!妄言を!あの人は、いつもあなたのことを心から考えていたのですよ!」

「では、お前の目が節穴だったのだな」

「……!」

 

 怒りのあまり、ジョゼフへ飛びかかりかねないかのような態度を見せる。慌てて止めるタバサ。しかし別の怒りの声がガリア王に向けられた。才人だった。

 

「おい、言いすぎだろ」

「そうだな。言葉選びを間違った」

「お前……」

 

 一発殴ってやろうかというような気配が、才人から発せられる。そんなことをすれば、ジョゼフは木っ端微塵になってしまうが。ガンダールヴの能力を使わずとも。

 そこで止めに入る人物が一人。ジュリオだった。

 

「才人。抑えなよ」

「だけどさ……」

「僕に任せてくれ」

「……分かった」

 

 渋々、怒りを抑え込むガンダールヴ。

 ジュリオは作ったかのような神官の態度で話し出す。

 

「ジョゼフ一世陛下。先ほどの件ですが、まずはお二方のわだかまりを解消してからにしたいのですが。手を組むにせよ、厄介事の芽は摘んでおきたいので」

「どうやるというのだ?神官らしく、懺悔でも聞いて収めるとでも言うのか?」

「オレルアン公、ご本人に聞いてみれば良いのです」

「何?」

 

 一瞬何を言われたのか分からない一同。しかしそんな空気を無視して、オッドアイの神官は隣の少年聖騎士に尋ねる。

 

「才人、復活できるよな?ヒーラーやってたんだし」

「できるけど……。俺が持ってんの中位のヤツだぞ」

「なら、可能性はあるさ」

 

 理解しがたい二人の会話に、割って入るルイズ。

 

「復活って何よ」

「死者を蘇らせるのさ」

「し、死者を蘇らせる!?サ、サイトってそんなことまでできるの!?」

「一応な」

「……」

 

 驚きのあまり、身を固まらせまま言葉もないルイズ。キュルケにいたっては驚きを通り越して、呆れるしかない。

 

「何でもありなのねぇ。あんたたちの世界って」

「何でもってわけじゃない。本人の元々の強さや、遺体の状態による」

「強さが必要ってのはなんとなく分かるけど、遺体の状態って何?」

「可能な限り、生前に近いほうがいい。そうじゃないと、失敗の可能性が高くなる。上手くいってもアンデッド……化物として復活しちまう」

「ダメも同然じゃないの!オルレアン公が亡くなったの四、五年前よ!」

 

 誰もが彼女と同じことを考えた。遺体がまともな状態なはずがないと。ところが、ジュリオだけは平然した様子。

 

「そうとは限らないさ。それで、どうされます?お二方」

 

 ジョゼフとオレルアン公夫人の両方へ、色違いの視線を送る青年神官。それにジョゼフは、好きにしろとの返答。オレルアン公夫人とタバサは少しばかりの会話の後、ジュリオの提案に頷いた。

 日差しはすでに傾き、夜の帳が降りようとしていた。

 

 

 

 

 

 




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