世界征服なんて面白いかもしれないな   作:ふぉふぉ殿

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ガリアの兄弟

 

 

 

 

 双月が上がり始めた黄昏時。一同はオレルアン公夫人を残し、公が葬られている近くの寺院へと向かった。

 

 不名誉印を受けた家ではあるが王族には違いなく、寺院の格は落ちるが粗略な葬られ方をされていなかった。そしてこの寺院の中では、ひときわ立派な墓の前に一同が並ぶ。

 棺を掘り出すのを手伝うのかと誰もが思ったが、ジュリオは首を振った。自分一人で十分と。そして魔法を使用。ドルイドのクラスを持っている彼は、土に関する魔法は得意な分野の一つだ。

 彼が魔法を発動させると、大地が水にでもなったかのように、オレルアン公の棺は地面から浮き上がる。息を呑む音が漏れ聞こえてくる。中はどのような状態になっているのか。

 ただオッドアイの神官は棺の状態を見て、何か確信めいたものを抱いていた。

 

「では開けますよ」

 

 ジュリオは慎重に蓋を開けていく。そして覗き込んだ。

 

「やっぱり……。才人、いけそう?」

「これって……。なんで?」

 

 五年前に埋葬されたにしては、信じがたいほど綺麗な遺体だった。まるで寝ているかのようだ。

 二人の言葉に釣られるように、他の者達も覗き込んだ。全員が驚きを口にする。特にタバサは、信じがたいものを見ているかのように呆然としていた。

 

「父さま……」

「どうなってんのよ……。固定化でもかけたの?」

「それはないはず……」

 

 キュルケの疑問に、タバサはつぶやくように返した。

 ブリミル教は基本的に土葬だが、遺体に魔法をかけるような真似はしない。そんな行為は忌避されている。しかし、こうしてタバサの父親は、生前に近い姿を見せていた。血の気はないが。

 ジュリオが自慢気に話し始めた。

 

「死蝋化さ。まあ、好条件下のミイラみたいなもんかな」

「ミイラ?これが?」

 

 思わず聞き返す才人。

 

「みたいなもんだよ。それで、復活させられそう?」

「ユグドラシルに、死蝋化なんて状態なかったからなぁ。分かんねぇ」

「やってみる価値はあると思うよ。ダメだった場合の許可はもらってるし」

 

 そう言いながらタバサの方を見るジュリオ。

 彼のいう許可とは、アンデッド化してしまった場合に滅ぼしてかまわないかどうかだ。タバサたち母娘は、それを受け入れた。万が一にでも夫や父が戻ってくるなら、異世界人の魔法に賭けてみたいと。

 

 棺の蓋が完全に開けられ、横になっているオレルアン公の全身が見える。才人はウインドウを表示。しばらく使ってなかった復活魔法を確認。

 それからオレルアン公に向かって手を添えた。一つ呼吸を挟み、魔法を発動させる。

 

「『リザレクション』」

 

 すると横になっている公の顔色が、みるみる内によくなっていく。一方でHPを確認する才人とジュリオ。ゼロだったものが増えている。

 だが、これで終わりではない。まだ、確かめなければならないものがある。次の魔法を才人は唱えた。

 

「『ライト・ヒーリング』」

 

 すると、オレルアン公の肌の艶が、わずかによくなっていく様子が見えた。HPも少し増えた。今の魔法は軽い回復魔法だ。もしアンデッド化していたら、ダメージとなる。しかし、そうではなかった。

 

「成功したっぽい」

「さすが僕。読み通り」

 

 満足げに頷くオッドアイのイケメン。そんな彼を他所に。才人は本格的に回復魔法をかけた。本当に寝ているかのような姿となるオレルアン公。呼吸をしている様子も伺える。

 タバサがゆっくりと近づいていった。棺の中を覗き込む。様々な感情が入り混じったような表情で。

 

「父さま……」

「……」

「父さま……」

「う……」

 

 うめき声と共に、オレルアン公の瞼が薄っすらと開く。久しぶりに見た光の中に、ぼんやりとした人影が見えた。

 

「誰……だ?」

「シャ……シャルロットです」

「シャル……ロット?」

 

 ハッキリとしだした視界に、青髪の眼鏡をかけた少女が入ってきた。記憶にある娘に似ているが、明らかに年齢が違うようにも見える。無理もない、五年の歳月が経っているのだ。彼の記憶は、五年前で止まったままなのだから。

 戸惑った声を漏らす公。

 

「私の娘によく似ているが……。あの子はまだまだ子供で……」

「お前の娘で間違ってない」

 

 オレルアン公は、その声に頭を殴られた感覚に襲われる。思わず声の主へと顔を向けた。

 見えた顔は、見覚えのある姿とは違った。髪や髭を剃り上げた神官姿の人物。しかし、顔形は完全に頭の中にあるそれだ。忘れるはずもない。

 

「兄……さん」

「この姿でよく分かったな。そうだ。俺はジョゼフだ。久しぶりだな。シャルル。どうだ?生き返った気分は」

「生き返った?」

「そうだ。異界の魔法でな」

「そんな魔法が……」

 

 兄の言葉を朦朧としている中、聞いていたが、頭がはっきりとしだすと浮かび上がる記憶があった。死の瞬間が。

 思わず棺から半身を起こす。そして身を確かめる。狩の最中に矢で抜かれ、命を落としたはず。その矢の痕を探すが、どこにもない。あの出来事が悪夢にすぎなかったかのように、死の痕跡がまるでない。

 当惑しているオレルアン公の耳に、涙まじりの声が届く。

 

「父さま……。会いたかったです……」

「本当にシャルロットなのか?」

「はい……。あれから五年経ちましたから」

「五年……」

 

 その意味を理解する前に、オレルアン公の胸元に飛び込んできたものがあった。タバサだ。彼の娘だ。その温かみを手が感じる。それが頭の混乱を吹き飛ばした。今はただ、この奇跡のような喜びに浸っていたかった。

 しかしそんな満たされた気分を壊す声が入ってくる。ジョゼフだった。

 

「シャルル。お前を生き返らせたのは、お前たち父娘を再会させるためではない。聞きたいことがあるからだ」

「……。僕にもあります。あの狩の時、矢を放った兄さんですか?」

「そうだ」

「何故?」

「そうだ。その何故だ。その理由を知るために、お前を生き返らせた」

「え?どういう……」

 

 言っている意味が分からない。

 どこか影のようなものを匂わせる人物だったが、今のジョゼフはもはや不可解なという他ない人物に見える。

 一方のジョゼフは困惑した弟を無視して、ジュリオの方へ声をかけた。

 

「ジュリオとか言ったか。シャルルの真意を知りたい。さっきの魔法を使え。お前が言い出したことだからな。やってもらうぞ」

「チャームパーソンを?あの魔法は万能ではありませんよ。陛下。心の奥底を覗くというわけにはまいりません」

「何?」

 

 不機嫌になるジョゼフ。話が違うという具合に。だがそれでも、心を覗ける魔法には違いない。渋々、再度頼もうとした時、ふと鼻を刺激するものがあった。憶えのある香り。あの始祖の香炉の香りだ。同時に、脳裏に飛び込んでくるルーン。新たな虚無の魔法だ。その名は『リコード』、対象の物質に刻まれた記憶を探る魔法だった。

 

「ハッ!一体なんだというのだ。この系統は!しかし、面白い」

 

 空を見上げ、満足げな表情で突然、声を張り上げる神官姿のガリア王。周囲の者たちはその姿に、唖然とするだけ。

 ジョゼフは虚無の系統というものを理解した。新たな魔法を得るには、虚無の秘宝が手元にあること、そして魔法が必要な状況にあること。どうもこの二つの条件を満たす必要があるらしい。

 ともかく、今はその必要なことを求めるだけだ。神官姿のガリア王は、はおもむろに杖を取り出す。すかさずタバサが、オレルアン公の前に入った。同じく杖を構え。

 

「何のつもり!?」

「危害を加えるわけではない。シャルルの頭の中を覗くだけだ」

「え?」

 

 意味を理解いようとしている父娘を無視し、詠唱を開始。そして軽く杖を振った。

 その瞬間、オレルアン公は起こした体を再び棺の中で横になってしまう。それだけではない。魔法を発動させたジョゼフ本人も、倒れ込んだ。

 驚いて二人に近づく一同。タバサたちはオレルアン公を起こそうとし、ビダーシャルはジョゼフに呼びかける。

 ほどなくして、二人共目を覚ました。だがその様子は一変していた。シャルルは落胆した暗い表情を浮かべ、ジョゼフの方は歓喜に湧いた顔つきとなっていた。

 

「シャルル。とんでもない策士だな。お前は。王位を得るためとは言え、何十年もの間、善人を演じ続けるとは」

「……」

「それに、俺を脅威と感じていたとはな。侮っていた訳ではなかったか」

「……。僕を……どうするつもりだい?兄さん」

 

 歯を食いしばり、忌々しげな視線を兄に向けるオレルアン公。その様子を見ていたタバサは、驚いていた。幼かった頃の記憶の中には、優しげな父親像しかなかった。その父がこんな顔をするとはと。

 当のジョゼフの方は、もはやシャルルのことなど、どうでもいいという態度。

 

「何も。お前がつまらぬ人間ではないと分かっただけで、十分だ。今の俺にとって、王位などどうでもいいからな。欲しければやろう。まあ、継ぐべき王位があればだが」

「王位があれば?どういう意味だい?兄さん……」

「その内、分かる。今のガリアを知ればな」

 

 どこか清々しさすら漂わせ、ジョゼフは立ち上がった。

 そんな父を見るイザベラが、護衛のメイド、地下水と呼んでいる者に呆気にとられつつ尋ねる。

 

「地下水……。父上……なんか変わった?」

「ええ。以前の乾いたような気配が、薄らいだ気がします」

「何があったのかしら……」

「では、それを口実にお話になってみては?久しぶりのご対面ですし」

「それは……」

 

 小さく頷くガリア王家の王女だった。 

 そんな弟と娘を気にもとめず、ジョゼフは異世界人の神官へと向き直る。

 

「さてと、ジュリオ・チェザーレとヒラガサイト。礼を言う。お前たちのおかげだ」

「耳にした噂らしからぬ、ずいぶんと殊勝なお言葉で。一つお聞きしたいのですが、記憶を覗く魔法を使ったのです?」

「そうだ。シャルルの真意を見せてもらった」

「そのようなものがあるのに、何故、最初に使わなかったのですか?」

「忘れていた」

「……」

 

 憮然とするジュリオ。とぼけるにしても、言い方というものがあるだろうと。

 それにしても、数々の虚無の魔法を使うジョゼフという男。力の底が見えない。考えも読めない。アインズ・ウール・ゴウンとは別の意味で、警戒感を上げる。

 

 様々な考えを抱く一同を無視し、神官姿のガリア王は話を進めだす。

 

「さて、これで問題はなくなったな。ヒラガサイトにジュリオ・チェザーレ。もう一度言うが、俺と手を組まないか?」

「今まで見て思ったけど……。俺はあんたが信用できない」

 

 才人はハッキリとジョゼフへの印象を口にした。さらにジュリオが続く。

 

「僕もそれは同意見です」

「では、どうする?アインズ・ウール・ゴウンの手が広がっていくのを、眺めているつもりか?」

「信用はできませんが、手を組まないとも言ってませんよ」

「ん?」

「一旦、考えさせてください。いずれにしても、僕だけでは決められないので」

「主に伺いを立てるか」

「そんな所です」

「……」

 

 ジョゼフは黙り込んで顎をいじった。長らく髭を伸ばしていたので、つい癖でその仕草が出た。ただ今は、いじる髭は残っていないが。

 ほどなくして彼は、ジュリオたちの提案を飲む。ただし期限を付けて。その時になったら使者を出すという話となった。

 

 やがて双方は分かれていく。ジョゼフたちは隠れ家へ、イザベラは魔導国に不審に思われないようヴェルサルテイル宮殿の離宮へ。才人たちは一旦、タバサの実家へと向かった。

 

 オレルアン公夫婦の歓喜に溢れた再会を見届けた後、ルイズたちは学院へ戻ろうとする。すでに深夜に差し掛かろうとしていた。

 できればタバサも家族と共にいたかっただろうが、もらった休暇は一日だけだ。さらにアインズ・ウール・ゴウン魔導国がハルケギニアで暗躍している中、死んだはずのオレルアン公が生き返ったという難題が発生している。目をつけられるようなことは、避けねばならない。

 

 オレルアン邸を出た一同。いろいろとイベント盛りだくさんの一日に、各々が様々な感想を口にしていた。その時、ふとルイズがサイトの方へ向き、疑問を口にする。

 

「あれ?えっと、アインズ……アインズ……」

「アインズ・ウール・ゴウンだよ」

 

 才人がフルネームを教えた。

 

「そうそう。そのアインズ・ウール・ゴウンだけど、あんたたちと同じ異世界人なのよね」

「まあな。人間じゃないけど」

「じゃあ、虚無の使い魔なのかしら?」

「え?」

「だって、サイトもジュリオも虚無の使い魔でしょ?同じ異世界人ならそうかなって」

「……」

 

 才人とジュリオは息を呑む。その考えは思いつかなかった。だが可能性は高い。

 オッドアイの青年神官は、難しい顔で腕を組んだ。

 

「となると、召喚主がいたはず。その人物は、最後に残った虚無の担い手ってことになる……か」

「主はロバ・アル・カリイエにいるのかしら?アインズってそこの王様やってるようだし」

「どうかな?死んじゃってるかも」

「殺されちゃったって言うの!?」

「いや、ナザリック地下大墳墓……ギルド拠点ごと召喚されたとなると、押しつぶされちゃったんじゃないかなって。街が、まるごと現れるようなもんだしね」

「街ごと!?そんなに大きの?あんたたちの家、っていうかギルド拠点とかいうの」

「まあね」

「だとしたら……それは、あるかもしれないわね」

 

 ルイズは召喚したとき、サイトは目の前に現れた。あれが街だったら、自分どころか学院すら跡形もなくなっている。

 ここで才人が疑問を挟む。

 

「ちょっと待てよ。じゃぁ、最後の虚無の担い手は、もういないってことか?」

「そうじゃないらしいよ。ヴィットーリオの話だと。虚無の担い手が死んでも、別の人物が虚無に目覚めるらしい」

「じゃあ、必ず四人揃ってるはずって訳か」

「聞いた話ではね」

 

 今度はキュルケが口を挟んできた。

 

「じゃあ、そのアインズ・ウール・ゴウンってのは使い魔の契約はしてないってことになるけど、その場合はどうなるのかしら?」

「どうもならない。そもそも主が死んだなら、使い魔契約は解除される。使い魔が獣なら知能が落ちて、ただの獣になるだけ。そのアインズ・ウール・ゴウンとかいうのも、異世界での状態のままだと思う」

 

 キュルケの問に答えたのはタバサだった。つまりは才人たちのように虚無の使い魔としての力は、持っていないことになる。

 それから、キュルケはサイトが異世界人であることを隠し続けてきたことに、文句をぶつけてきた。それを、なんとかいなそうとするガンダールヴの主従。

 

 一方、ジュリオは彼女たちのじゃれ合いに目もくれず、考えを巡らせていた。いくつも浮かぶ疑問に。

 もしロバ・アル・カリイエに虚無の担い手がいる可能性があるなら、ヴィットーリオはそこへも探索の指示を出したはずだ。しかし、探索対象はハルケギニア内のみ。他の場所には、虚無の担い手はいないことが分かっているかのように。ただそうなると、ロバ・アル・カリイエをアインズ・ウール・ゴウンが支配している理由が分からない。もしハルケギニア内に召喚されていたなら、はるか彼方の土地を支配しようと考えたことになるが、その理由がまるで想像つかない。

 疑問はこれだけではない。まず、虚無の担い手と使い魔には不自然な所が多々ある。だいたい始祖ブリミルは一人なのに、何故虚無の担い手が四人もいるのか。ジョゼフが複数の虚無の魔法を使えているのに、ルイズとヴィットーリオは一つしか使えないのか。そもそもただの人間である才人が、何故、ユグドラシルの力を使えているのか。

 アインズ・ウール・ゴウン魔導国という脅威が、この世界の方々に手を伸ばしている。この世界の問題はそれだけではない気がしていた。

 

 様々な考えを巡らす各々。ただかなりの難題を抱えたとは言え、今日に限ればうまく事が収まった。それどころか、タバサたちにとっては災い転じて福となると言ってもいいほどだ。オレルアン公が生き返り、ガリア王家兄弟の誤解も解けたのだから。

 全員が、とりあえず今日はぐっすり眠れる、そんなことを考えていた。この月夜の下、それぞれの帰るべき場所に大きな災いが訪れているとは知らず。

 

 

 

 

 星空の下のロマリア連合皇国首都は今、大混乱の最中にあった。雲一つに空へは、黒々した煙が上がっていた。方々で火の手が上がっていたのだ。そして、その原因は分かっていた。突如、現れたエルフの一団によるものだった。

 当然、ロマリアの聖堂騎士団は対応したのだが、相手は人間の十倍は強いと言われるエルフ。首都は聖堂騎士団の本拠地であるため兵士数は圧倒していたが、夜な上、雑多な町中では数の有利も上手く生かせなかった。

 

 教皇ヴィットーリオは首都の中心、フォルサテ大聖堂の会議室で次々と入る報告を受ける。それは、あまり芳しくないものだった。

 それにしてもエルフが直接、ブリミル教の中心地を襲うなど想定外だ。元々エルフは、あまり好戦的な種族ではない。過去、人間が聖戦と称してサハラへ攻め込んだ歴史が幾度もあるが、彼らから侵攻してきたという歴史はない。それが今になって、手を出してきた。

 もっとも理由はいくつか想像できる。おそらく虚無の出現を察知したのだろう。その対策のため先手を打ってきた可能性がある。今、行われている放火工作は、侵攻のための事前準備ではないだろうか。ヴィットーリオはそう考え始めていた。

 それにしても最悪のタイミングだ。今、彼を守るべき使い魔が側にいない。ジュリオは新たに発見した虚無の担い手に会いに、出かけてしまった。しかも、こちらからは連絡の手段がない。戻るのはそれほど先ではないだろうが、今すぐという訳にはいかないだろう。

 

 考えを巡らせる教皇に、聖堂騎士団の団長が厳しい顔つきを向けてくる。

 

「聖下。ここは一旦、首都を離れてはいかがでしょうか。御身だけは守らねばなりません」

「それはできません。彼らの狙いが不明である以上、下手に動けば相手の思惑通りになる可能性あります」

「それは……」

「さらに私がここを去るということは、エルフによる聖都陥落をハルケギニア中に宣伝するようなものです。どのような影響が出るか、想像もつきません。あまりいいものではないのは、確かでしょうが」

「なるほど……」

 

 小さく頷く騎士団長。すかさず枢機卿の一人が提案を口にする。

 

「ならば、地下聖堂に避難されてはどうでしょう?今は地下墓所となっていますが、頑丈ではありますし、この神殿で最も安全な場所かと」

「……。分かりました。今後はそこで指揮を取ります」

「では、準備を始めます」

「お願いします」

 

 枢機卿は神官の一人に命じ、地下聖堂が指揮所となるよう準備を命じた。

 それからしばらく待ったが、準備が終わったという知らせがなかなか来ない。枢機卿が、文句を零す。

 

「一体何をやっているのだ。この緊急時に」

 

 席を立ち、様子を見にこうとした彼。すると会議室の扉の方が先に開いた。一瞬、準備完了の報告が来たかと思ったが、部屋に入ってきたのは神官ではなかった。それはエルフの一団だった。

 顔色が蒼白となる聖堂騎士や枢機卿たち。それはヴィットーリオも同じ。ジュリオのいない今、エルフと対峙して勝つ見込みなど万に一つもなかった。虚無の担い手である彼であっても。

 

 

 

 

 

 




構成ミスでイザベラのシーンが抜けていました。追加しました。
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