才人とルイズは、タバサの部屋にいた。彼女が連れてきた男性と共に。さっそくタバサが彼を紹介する。
「彼の名は地下水。以前、私の実家で会ったイザベラの護衛」
「え?」
虚無の主従の声が重なった。同時に二人共、彼を凝視。そして眉をひそめてしまう。
イザベラは憶えている。ジョゼフの娘で、ガリアの王女だ。だがタバサの実家で会った彼女の護衛は、メイド姿の女性だった。目の前の男性の見覚えはない。初対面だ。
すると才人の腰辺りから、声が出てきた。デルフリンガーだ。
「こいつ……インテリジェンスソードだぜ」
「マジ?」
「懐かな?そこから気配がする」
男はわずかに頷いた。そしてさやに収まった、ナイフを取り出した。
「そうです。これが私の本体。私は、イザベラ姫殿下に仕えているインテリジェンスナイフです。精神操作を得意としており、オレルアン邸でお会いした時はメイドを操っておりました」
「意思を持つ武器って、デルフ以外にもいたんだな」
感心しつつナイフを好奇心ありそうな目を向ける才人。ユグドラシルには、この手の武器はなかったので。
このインテリジェンスナイフは精神操作の力で、北花壇騎士団の一員として様々な任務をこなしてきたそうだ。
紹介が終わった所で、ルイズが話を進めた。
「それで、イザベラを助けてっていうのはどういう事?」
彼女に答えたのはタバサ。
「ヴェルサルテイル宮殿から私に、サイトを連れてくるよう命令が出た」
「ヴェルサルテイル宮殿からって……つまり……」
「偽ジョゼフ一世からの命令」
淡々と答える雪風のメイジ。話の続きは地下水の方から、出てきた。
「この命を受ける際、イザベラ姫殿下と私はヴェルサルテイル宮殿の本宮殿、グラン・トロワに呼び出されました。そしてイザベラ姫殿下だけが、居残りを命じられたのです」
「居残り?なんで?」
それに地下水は首を振るだけ。理由は不明らしい。ただ一つだけ確かな事があった。腕を組み、難しい顔つきでガンダールヴはポツリと零した。
「なんのつもりか分かんねぇけど、俺たちとジョゼフたちの関係はバレたな」
「なんでよ?」
「俺たちの世界に、精神操作魔法あるの知ってんだろ?ジュリオが使ったチャームパーソンとか。他にもいろんな精神操作魔法があるんだよ。イザベラは多分、それをやられて全部吐かされたと思う」
「もしかして、何かに気づかれて尋問のために捕まったのかしら……」
「たぶんな」
虚無の主従は、口をつぐみ考え込む。
地下水はあらためて依頼を口にした。
「今のグラン・トロワは化物の巣窟となっており、あのような場所に姫殿下を置いておく訳にはいきません。お命すら危ぶまれます。あの化物共は、そっくりな偽物を作り出せるのですから」
「ちょっと待て。化物の巣窟って何だ?」
「本物のジョゼフ陛下が魔導国にヴェルサルテイルを追われて以来、近衛兵や衛兵、使用人すらグラン・トロワから追い出されました。その代わりに入ったのが、巨大な盾を持った巨躯の騎士や、ローブで身を包んだメイジらしき存在などです。しかも皆、仮面を被っており、肌をわずかも見せません。精神操作を得意とする私には、気配で分かるのです。あれは人間ではありません」
「そいつらって、こんな感じか?」
才人は紙に、大雑把な騎士の絵を描いた。それを見て頷く地下水。
「デス・ナイトだ。ローブのヤツはたぶんデス・ウィザードとかエルダーリッチかな。みんなアンデッドだ。魔導国の兵隊だろうな。ラ・ロシェールの戦争でもいたよ」
「……」
息を呑むルイズ。
確かに、ジョゼフが王位を乗っ取られたのは聞いた。だが、周りに覚られないようしているのかと思ったら、露骨に化物の兵隊を入れているとは。この前の尻尾を生やした悪魔といい、ますます化物の国の実感が強くなっていく虚無の担い手。
才人はタバサの方へ顔を向けた。
「タバサ。一応聞くけど、どうしたい?」
「どうしたい……とは?」
首を傾げる青髪の少女。
「ほら、前に聞いたけど、イザベラに嫌がらせいろいろされてたんだろ?命に関わるようなのもあったし。本音じゃ、どうなのかなって」
「それはそれ。だからと言って、従姉妹を化物の中に放って置く気はない」
「そっか。分かった。助けに行く」
ガンダールヴの決断に、胸をなでおろす地下水。ここでルイズからの強い声が届いた。強い瞳を、サイトに向けながら。
「私も行くわ」
「ダメに決まってるだろ。俺一人で行く」
「じゃあ、なんのために、虚無の魔法の訓練してたのよ?こういう時のためでしょ?」
「それは……もしものためだ」
「実戦経験しないまま、そのもしもが来たらどうすんのよ。慌ててロクな事にならないわ。それに……サイトの背中守れるくらいにはなりたいし……」
「……」
一応、彼女はフーケ戦やジョゼフの茶番の時など、実戦経験を彼女はいくつか積んでいる。しかし、ユグドラシルの者たちとは戦っていない。いざとなった時、戦えるかは疑問が残る。それに、ルイズと共に戦えるようになるなんて光景も、悪くないなどと思ってしまった。
それから才人は地下水に、グラン・トロワの状態を詳しく聞いた。どうも中位レベル以下のアンデッドばかりらしい。ラ・ロシェールで遭遇したような、カンストレベルの存在はいないようだ。ルイズでもなんとかなるかもしれない。ただそれでも、今のままではダメだ。
才人はジュリオへメッセージを飛ばす。
「ジュリオ?俺、才人」
『ん?何?』
「こっちで厄介事。それで頼みたい事あるんだけど」
『厄介事?何だい?』
事情を話した後、ジュリオに頼んだのはルイズの装備についてだ。ルイズが付けられるような余った装備がないかと。
才人も一応、余っている装備はあるのだが、戦士系である彼の装備を小柄な彼女が付けられるとはとても思えなかった。基本スペック自体が才人たちからすれば、低すぎるので。
ヴィンダールヴからの返答は、貸しても構わないというもの。ただ、マジックキャスター向けとは言ってもそれなりに重量があり、ルイズで装備できるのは、レベルの低いものだけだった。それでも各種バフ系アイテムと併用すれば、なんとかレベル30前後くらいの攻撃には耐えられそうだ。
さらに才人は、もう一つ頼みを口にする。
「ジュリオ。お前も手貸してくれないか?」
『リュティスに付き合うって事?』
「うん」
『……。いや、止めとこう。もしも一網打尽にされたら、洒落にならない。むしろ僕はバックアップに徹して、いつでも助けられるようにした方がいいと思う』
「あ~……。その方がいいか。よし、頼むよ」
『分かった』
メッセージはそこで切れた。
さっそく一同は準備に入る。イザベラ救出に向かうのは、才人、ルイズ、地下水。そしてタバサは学院で留守番。ワルド経由でジョゼフに知らせるかも考えたが、何かと仕切ろうとする彼を入れると混乱する可能性があるので、やめる事にした。
ガリア王国の首都、リュティス。ヴェルサルテイル宮殿自体は、実はリュティス市街の外にあった。城郭都市であるリュティス内に、広大な敷地などないからだ。一応、非常時には王家がリュティスへ避難する事にはなっている。
そんなリュティスの郊外。林の中に三人の姿があった。才人と地下水、そしてユグドラシルの装備をしたルイズだ。彼女の姿は、ドルイド用のものとなっている。ジュリオがプレイ初期の頃、ドルイドクラスをメインにしていた時に使っていたものだ。今の彼はレンジャーがメインなので、装備コンセプトが少し違っていた。
地下水も、才人の武装を借りていた。今は体格のいい男性の姿なので、装備できた。ただこれも低レベルなもの。それでもないよりはマシだ。
不可視化を使い、偵察に出ていた才人が戻ってきた。その彼に、男性姿の地下水が話しかける。
「今から行くのですか?夜を待った方がいいのでは?」
「いや、アンデッドは夜の方が厄介だ。夜目も効くから、暗がりに紛れるなんてできない」
「そうなのですか」
「それと、あんたは絶対戦うなよ。アンデッドに精神操作は効かないし、あんたの武器や魔法じゃ、傷もつかない」
才人から借りた武器は、地下水が今まで見たこともないほどの切れ味があったが、才人はこれから相手にする連中に対しては気休めと言う。どれほど魔導国のアンデッドが強力か、実感してしまう。
だが正面から当たることだけが、何も戦いではない。インテリジェンスナイフは返す。
「それでも、隙を作り出す事くらいはできるでしょう」
「それならいけるか……。ならそん時は、頼む」
地下水は水系統の系統魔法が使えた。攻撃だけではなく、治療や霧を出したりと、土系統並に用途の広い魔法だ。攻撃以外にも使い道はある。
事前にイザベラがどの部屋にいるかは、見当を付けていた。地下水は、彼女を客間に案内するという話を耳にしていたからだ。もっとも、そこから移された可能性を、否定はできないが。
才人は武装を装備。いつもの純白の聖騎士姿となる。さらに各種支援魔法を発動。ルイズと地下水にもかけた。
「んじゃ、行くぜ。気を引き締めろよ」
強く、頷く虚無の担い手とインテリジェンスナイフ。そして転移魔法が発動された。
グラン・トロワ内は予想通り、アンデッドしかいなかった。もっとも、満ち溢れているというほどでもなく、たまに見かける程度だったが。人間の役割が、アンデッドに代わっただけのようだ。
地下水の案内によって、目的の客間に近づいていく。先を進むインテリジェンスナイフに、才人たちは感心していた。見事に警備のアンデッドを避けていくのだ。レンジャーかニンジャのクラスを習得しているかのようだ。
「すごいな、あんた」
「なんとなくですが、気配で分かるのです。潜入任務を、多くこなしてきた経験もありますし」
「へー」
納得の頷きをする才人。
やがて三人は、一つの立派な両開きの扉のある部屋の前で足を止めた。地下水が、部屋を指差す。それに頷く才人とルイズ。
地下水はしゃがみ込み、鍵穴から中を覗いた。するとイザベラの姿が目に入る。
「!」
落ち着いた態度で、サイトへ合図送った。うなずく純白の聖騎士。同じく鍵穴を覗いた。そして魔法を発動。
「テレポーテーション」
三人は、一瞬で部屋の中に転移。イザベラの前に立つ。驚きの表情を浮かべるガリアの王女。すぐさま地下水は声をかけた。
「イザベラ姫殿下。助けに参りました。ただちに、ここから脱出します」
直後、背後から声がかかった。初めて聞いた声。凶暴さを潜めた艶めかしい女性の声が。
「地下水……だったかしら。サイト・ヒラガを連れてこいとは命じたけど、客人としてって言われなかった?それとも、これがあなたの客人の招き方とでも?」
驚きと共に、声の方へ振り返る才人たち。そこにはソファーにゆったりと腰掛けた、黒いフルプレートの人物がいた。兜には角が生えており、腰からは黒い羽が伸びていた。脇には、これまた黒いバルディッシュが立てかけられている。さきほどの声と姿から、女性のように思えた。
瞬時に二本の大剣を抜く、純白の聖騎士。
「ルイズ!地下水!俺の後ろに隠れろ!」
ルイズは杖を構え、地下水はイザベラをかかえ、才人の背後へ回った。
それに対し黒いフルプレートの女性はバルディッシュを手にし、ゆっくりと立ち上がる。
「安心なさい。イザベラ王女は、こちらで丁重にもてなしてるわ」
「?」
言っている意味が分からず、困惑する三人。手元にイザベラはいるのだから。
すると地下水の脇から、意外な声が耳に届く。それはジョゼフの声だった。
「アルベド様のおっしゃる通りだ。なんの危害も加えていない」
イザベラがジョゼフの声で話していた。
唖然とする地下水の隙をつくように、彼女がスライムに姿を変え、フルプレートの女性の側へと滑るように近づいた。そして姿を再び変える。今度はかつての髭を生やしたジョゼフ一世の姿に。
才人は漏らすように口にする。
「ドッペルゲンガー……」
「その通りだ」
口元を緩めるグレータードッペルゲンガー。
才人は警戒感を上げつつ、女性に話しかけた。
「イザベラを開放してくれないか?」
「フッ……。あなたとジョゼフは手を結んでないでしょ?その娘がどうなろうとも、関係ないんじゃない?それともシャルロットの従姉妹だから助けたいの?一応、知人らしいし」
「お前……」
イザベラの記憶は、すでに覗かれてたようだ。オレルアン邸での会合の内容も、参加者の立場も筒抜けだ。
ガンダールヴは背後の二人に、重い口調で言う。
「逃げるぞ」
「し、しかし……」
「地下水、諦めろ。無理だ」
そんな彼らに、アルベドと呼ばれた女性は余裕の態度を見せた。
「転移はできないわよ。転移阻害をかけさせてもらったわ」
「チッ……」
舌を打つ才人。
上手く忍び込んだと思っていたが、どうやらバレていたようだ。もはや強行突破しかない。だがはるかにスペックの落ちる二人を、守りながら囲いを突破できるのか。
目の前のアルベドと呼ばれた女性は、しっかりと情報隠蔽をしていた。以前、戦ったコキュートスとは違う。一筋縄ではいかないだろう。さらに彼女の他に、どれだけのモンスターやNPCがいるかも分からない。
だが選択肢などはない。才人は後ろの二人に、バフをかけた。
「俺が先頭で逃げ道を作る!地下水!ルイズを抱えてくれ。がんばって俺について来てくれよ。それとルイズ。邪魔なアンデッドは、滅ぼして構わねぇ」
「わかりました」
「分かったわ!」
地下水はルイズを抱える。水系統の系統魔法で、身体能力をあげた上、バフでさらに能力は向上。ルイズは、いつでもエクスプロージョンを放てるように準備。そして純白の聖騎士は、両大剣を握る手に力を込めた。
対するアルベド。兜の中で口元を緩める。
アインズからは、サイトを客人として招くように言われている。一方で、コキュートスをも圧倒したその力を実感したかった。守護者統括でありタンク職でもある彼女は、余計に知りたかった。今後、この人物とナザリックがどのような関係になるかによっては、その経験が生きてくるはずだ。
ただ客人である以上、こちらから手は出せない。だが向こうから手を出したなら、話は違う。
3Fという名称のバルディッシュを弄びながら、誘うように会話を続ける守護者統括。
「さっきも言ったけど、あなたを客人と招いたのよ。帰す訳にはいかないわ」
「ふざけろ!」
その一言と同時に、純白の聖騎士が突進してきた。同時に振り下ろされる右手の黒い大剣。なんとか3Fで受け止めた。しかし、その衝撃で吹き飛ばされ、部屋の壁をぶち抜き外へと追い出される。
タンク特化と言ってもいい構成の彼女は、ナザリック随一の防御力を誇る。その力も、敵の攻撃を耐えるためにトップクラスのもの。そんな彼女が、吹き飛ばされた。しかも、かの聖騎士の攻撃は、大剣にもかかわらず速度はシャルティアに匹敵するのではと思えるほど。
「なんと言う……。想像以上だわ」
これなら、コキュートスが圧倒されたのも納得してしまった。だがダメージは受けていない。すかさず反転、サイトの方へ向かう。
彼は開いた穴から飛び出し、アルベドと反対側へと走り出す。その後に、二人の人間も続いた。ただ人間に合わせるためか、それほど速くは走っていない。アルベドは前に立ちふさがった。
「どけ!」
「言ったでしょ?客人として迎えるって」
「うるせぇ!」
すかさず二本の大剣を振るってくる聖騎士。それをなんとかバルディッシュで裁こうとする。
「くっ……。これは……」
大剣が二本。しかも、流星かのような速度に、剣捌きもかなりのもの、それを一本のバルディッシュだけで抑えるには限度があった。何撃かは鎧に直撃。だがこの鎧も、尋常ではない硬さを誇る。ダメージを最小限に抑え込んだ。しかし聖騎士の攻撃は止まらない。
「比良弾き!」
何かのスキルが発動された。3Fで防ぐアルベド。しかし何故か、吹き飛ばされた。攻撃力が、わずかにもかかわらず。
「しまった!」
距離を稼ぐためのスキルと気付いたのは、着地した後。気づくと、才人たちとは大分離れてしまった。しかも、もう走り出している。
そんな彼らの前に、黒い影が現れる。
「チッ!」
舌を打つ才人。彼らを遮るようにデス・ナイトたちが並ぶ。ところが、突然、彼らが爆発した。
眉をひそめる守護者統括。妙な違和感が走る。どんな状況でも、攻撃の一発目は耐えるデス・ナイトが一発で消え失せた。
「魔法?いえ、スキルかしら?」
実はルイズのエクスプロージョンだ。逃げている最中に、詠唱をしており、近くにいるアンデッドを皆ロックしていた。そして障害となるものだけに、発動したのだった。虚無の実態を知らないナザリックの者たちには、今の現象が理解できない。
ともかく囲いは破られた。再び足を進めようとする才人たち。そんな彼らへ、爆煙の向こうから声が届く。
「マタ、会ッタナ。今回ハ遅レヲ取ラン」
「お前……」
聖騎士は足を止めた。姿を現したのは、青白い直立した大柄な甲虫。四本の手に武器を持ち、仁王のごとく立ちふさがっている。ラ・ロシェールで戦ったコキュートスだ。
「クソ……」
才人は神経を張り詰める。目の前のコキュートスもこの前とは違う。情報隠蔽を行っていた。以前のようにはいかなそうだ。さらに、まだ他にもカンストレベルの者がいる可能性がある。
ジュリオに支援要請するか。だが、転移阻害をされている中で、どこまで支援ができるのか。
考えを巡らせている内に、ぞろぞろとアンデッドたちが現れた。不安に駆られたのか、ルイズの怯えたような視線を向けてくる。
「サ、サイト……」
「……」
兜の中で、歯ぎしりをする純白の聖騎士。まさしく窮地。どうやれば脱出できるのか。するとそんな緊迫した空気へ、不機嫌そうな声が割って入る。またも聞き覚えのない声が。
「アルベド。これはどういう状況だ?」
「アインズ様……」
慌ててかしずく守護者統括。同じく第五階層守護者も。一瞬で空気が変わった。躍動から、静寂へと。
一方、その名を耳にした才人たちは確信した。現れた存在。豪奢だが禍々しいローブに身を包んだ、異形の頭蓋のアンデッド。オーバーロード。この存在こそが、アインズ・ウール・ゴウン魔導王に違いない。息を呑む三人。
やがて才人は口を開く。
「あんたが、アインズ・ウール・ゴウンか?」
「その通りだ。私がアインズ・ウール・ゴウン魔導王だ。君がサイト・ヒラガでいいのかね?」
「……そうだ」
「まずは詫びを入れておこう。部下が無礼を働いた。私は君と敵対するつもりはない。今回は、君を客人として招いたつもりだ」
「……」
才人はどう答えるべきか迷っていた。言葉を素直に受け取るべきかどうか。
そんな彼にかまわず、アインズは腹心の方へ顔を向ける。
「アルベド。説明してもらおう。客人への無礼の理由を」
「はい。サイト・ヒラガ様は、イザベラ救出が目的で来たようです」
「では地下水が、命令を履行しなかったという事か」
「はい」
魔導王の言葉に、身が震えるような感覚に襲われる地下水。インテリジェンスナイフにもかかわらず。怯えというものを、はじめて体験したかもしれない。
当のアインズは、そんな事には気づきもしない。
「それで?」
「イザベラがこの場にいないと知ると、罠と思われたのか、この場から去ろうとなされたのでお止めしたのです」
「それで戦いになったと?」
「はい」
「……。分かった。イザベラの件は、最終的に私が決めたことだ。今回は不問とする。だが客人への無礼は、今後は許さん」
「申し訳……ございません」
姿勢を正し、深く頭を下げるアルベド。
アインズはわずかにため息を零すと、顔をサイトたちへと戻す。
「さて、君を招いたのは話しをするためだ。同郷の者としてな。とても宴とは呼べないが、一応、席を用意してある。ついてきてくれないか?連れの者たちも招待しよう」
「……。分かったよ」
二本の大剣を背負い、才人は闘志を抑える。するとルイズが不安そうに尋ねてきた。
「サイト……。いいの?」
「腹くくるしかねぇよ。どっちにしても、ここから脱出するの厳しいし」
「……そう」
ルイズはうつむいた。
おそらく、サイトだけなら逃げるのは簡単だっただろう。無理を言って付いてきてしまったせいで、こうなってしまった。自分の不甲斐なさに、打ちのめされる虚無の担い手。
やがて三人は、ユグドラシルの異形の者たちに囲まれながら、超越者の気配を漂わせる魔導王の後に、言われるままについていった。
デス・ナイトは、どんな攻撃でも一度目は耐えるというアンデッドですが、今回一発で滅んだのにはゼロ魔側の理由があります。