IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス   作:yosshy3304

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第十二話

 千冬は目の前の存在にやり辛さを感じていた。ISとAC。隔絶する自力等、経験で引っくり返せると思っていたが、考えを改めなければならない。

 

 (これがACの実力、いや佐藤の実力か。)

 

 自身の乗るISは最新機。しかもコアは自身が世界最強の座に二度座った物だ。相性は良い筈で、機体構成も強力になったもの。完璧に扱えると自惚れていたわけでは無いが、それでも何処か心の中で慢心があったのかもしれない。改めて相対するのは、最強だったISを地に落としたACだと言う事を認識したのだった。

 

 (だが、何をやりたい?)

 

 千冬は相対する佐藤 貴輝の機動に疑問を抱く。初心者という訳では無いだろうに、やけに大振りに回避行動を取る。雪片改の零落白夜を警戒しているとしても回避行動がやけにお粗末なものなのだ。

 

 (…作り手という訳か?)

 

 少なくともISの生みの親である篠ノ之 束はもっと手強い。いや、実力が隔絶した千冬がそう感じるだけあって、他の人間が束と相対した時は絶望感すらあるだろうが。それゆえに貴輝の機動はそこそこ止まり。ACの性能は恐ろしいが、作り手だからだろうか、貴輝の機動に恐ろしさを感じない。

 

 「むっ…」

 

 流石に考えに耽っていたのは拙かっただろうか、開幕の焼き回しの様に目の前のACが結構な速度で迫ってくる。

 

 「ぎっ、な、なに?」

 

 千冬はもう貴輝の機動に慣れてしまい、迎撃する為に雪片改を振るおうと腕に力を入れた瞬間、手首に痛みが走り、思わず呻き声を上げてしまった。雪片改が手を離れ地上へと落ちていく。

 

 

 

 

 「分かったっ!!」

 

 貴輝が千冬へと突撃する瞬間、暁美が大声を上げた。その事に束、一夏、箒は顔を暁美へと向ける。

 

 「貴ちゃんがやろうとしてる事。」

 

 それは関節部への疲労攻撃である。人も含めて節足動物は関節から動いている。関節以外が動いたらそれは折れていると言う事。タコの様な軟体動物は骨が無いから関節もないが、それでも千冬は軟体動物ではない事から関節はある。

 

 この関節、動く範囲が決まっており、無理に動かすことは出来ない。当然無理に動かせば折れる。だが、関節部には筋が通っており、この筋が柔らかい人間ほど関節部は良く動く。

 

 千冬は昔からしている剣道のお蔭で、この筋が柔らかくなっており、多少の無茶はきいても多少である。それを貴輝に狙われた。貴輝はチート能力のオマケで物の構造が分かる様になっており、その能力を使って千冬の関節がどれだけ疲労しているか知ったのだった。

 

 貴輝が大振りに回避したのも、この関節を無理な方向へと動かさせるのが目的であり、試合とは呼べないまでも戦いの興奮で関節に無理がかかっていると気付かせなかったのだ。

 

 スコーンという音がして四人の目の前に雪片改が突き刺さった。

 

 

 

 

 それはまるで羽に触られたかのような、まさにソフトタッチと言える攻撃である。

 

 「ぐっ」

 

 だが体中が悲鳴を上げている千冬には、苦悶の声を上げさせるのに十分な威力を誇っていた。触れているかどうか判らない様な攻撃であるが、それでも高速で迫る相手の攻撃故に思わず回避行動を取ってしまい、更に体から悲鳴が上がるのだ。

 

 「く、こんな攻撃があるなんて…」

 

 「傷つけずに倒すには、これが一番だと思ったので。」

 

 「しれっと言ってくれる!!」

 

 千冬の言葉に、貴輝が淡々と返してきた。その事に激怒しかけるが、それこそ相手の思うツボだろうと言葉に出して無理やり冷静になる。

 何もなくなった右手を思わず見てしまう。慣れた雪片の感触を確かめる為に思わず開いたり閉じたりしてしまう。そこに何もないのに。

 

 (雪片を落としてしまったのは痛い。)

 

 せめて雪片があればまだ何とかなると言いたいが、それでもキツイ事には変わらない。だがと地上の雪片を目で追ってしまう。

 

 (雪片改は外部ユニットの所為で量子変換出来ない。)

 

 取りには行かせて貰えないと思った方がいい。戦いながら上へと上へと上がってきており、地上までかなりの距離がある。それだけの距離があるのならば追いつくことも容易であろう。

 

 何より、他の装備であるのならば、どれだけ距離が離れていようと量子変換で一度しまってからもう一度取り出せばいいが、雪片改は零落白夜のエネルギー問題を解決する為に取り付けられたイコライザが邪魔をする。しまえない訳ではなかったが、それでももっと近づかなければならなかった。

 

 (くそ、始めてか?こんなにISで苦戦したのは。)

 

 苦戦しているというのに、千冬の顔には笑みが浮かべられていた。

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