IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス   作:yosshy3304

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第十五話

 ワンオフアビリティー『無限帰還』、それは夜桜に登録されている、または夜桜から放たれた物を夜桜へと回収する能力である。何がどうなってそうしているのかは分からないが、どんなに距離が離れても、量子変換出来なくても回収することが出来てしまう。

 

 地上へと落ちた雪片改を回収したのも、投げた雪片改が千冬の手に戻っていたのもこの能力のおかげである。更にとんでもない副作用があった。シールドエネルギーすら回収出来てしまうのだ。シールドエネルギーが減らない。負ける事が無くなったばかりか、シールドエネルギーを攻撃に変える零落白夜と相性が良すぎたのだ。

 

 更に更に、零落白夜の使用時間を伸ばそうと、雪片改に取り付けられた外部エネルギー端末。シールドエネルギーが無くならなくなった上に、余剰に供給してしまう事でビーム状の刀身の先端を飛ばし、千冬の意のままに操れるという副作用を齎した。ただ千冬がこの事を知らず、ただ刀身を飛ばせる事をISに表示されていたから飛ばしたというだけなのである。

 

 「あえて言うのなら、これが私の必殺技パート2。」

 

 辛うじて手甲で斬撃を反らす貴輝。千冬もテンションが上がっているのか、斬撃が止む事が無い。貴輝は両手で飛んでくる斬撃を捌き続けている。

 

 

 

 

 あー、頭いてぇ。如何してこうなったと言いたい。元々こちらの実力を見るだけだっただろうに。何で公式試合じみた全力戦闘になっているんだよ。何とか怪我させずに無力化したと思ったら、セカンドシフトして逆転って、お前は何処のバトルマンガの主人公だ。

 

 貴輝がそう内心で愚痴っている間にも斬撃は前後左右から飛んできており、辛うじて手甲で反らしている。貴輝には戦闘経験がほとんどない。全く無い訳じゃないが、それもACの圧倒的な実力で力ずくのものばかり。

 

 同じように圧倒的な実力で勝利してきた千冬だったが、千冬には非公式試合も含めた膨大な戦闘経験がある。体力と言う面でも、あくまで作り手である貴輝は不利であった。

 

 貴輝も油断はしてはいなかった。ただ殺さないように手加減をしなければならず、更には相手が織斑 千冬である事。それが貴輝の両手を弾く結果へと繋がったのだ。目の前には雪片改を振り上げる千冬。零落白夜の光が貴輝に迫った。

 

 (まずっ!?)

 

 だが、ここで貴輝にも変化が起こる。貴輝は作り手であり、闘う者ではない。ある程度の覚悟は兵器製造に携わる者としてしているが、その程度である。当然刃が眼前に迫り、死を覚悟しなければならない状況に置いては走馬灯を見てしまうのも無理はない。

 

 ガキンと音を立てて雪片改が弾かれる。何が起こったか千冬には判らなかった。雪片改が横から来た何かに押されて弾かれた。

 

 すぐさま距離を離す。弾かれた雪片改は無限帰還で回収済みだ。左右前後を見回しても何もない。ISのハイパーセンサーも何もない事を伝えてくる。何をされたのか分からなくても、この状況、何かをしたのなら目の前の存在しかいなかった。即ち貴輝である。

 

 走馬灯を見てしまう様な状況でも、貴輝は一切目を反らさなかった。いや、貰ったチート能力を無くせば負けると直感で感じていたからだ。そんな貴輝に奇跡が起きた。

 

 (なんだこれ?)

 

 最初は時間の流れがゆっくりと流れるように感じた。次に空気中に真四角や曲線、あえて統一された点を上げるのならば、全て繋がっている事だろうか。それをただ触れただけだった。線は歪み、別の場所まで歪み始める。その歪んだ線が雪片改に触れた時、雪片改が吹き飛んで行った。

 

 その事実に目を見開く貴輝。自分でも何が起きたかは分からなかった。瞬時に離れる千冬。貴輝はそれを呆然と見送った。

 

 貴輝に起きた現象は、ようは火事場の馬鹿力。普段使われていない脳の部分が死の危機に反応し働き始めたのだ。但し貴輝の場合は洒落にならない。

 

 貴輝の貰ったチート能力は普段の働いている脳の部分だけで十全に使えるようになっている。それが火事場の馬鹿力によって神様ですら思いつかない進化をしていた。

 

 ACのAKSシステムによってその能力は補助を受け、更にとんでもない事になっている。物作りの能力を生かす為に、貴輝は物の構造を知る事が出来るのだ。千冬の関節の疲労の度合いを知ったのもこの能力である。

 

 そんな能力が更に向上され、補助を受けて見えたのは大気の構造であった。貴輝が見た線は大気の構造の組み合わさっている部分であり、大気を押し出す事で、別の部分に影響を与えたのだ。

 

 「ふむ、何をやった。」

 

 「俺もわかんねぇ。」

 

 千冬の質問に自身でも存外の事であり、混乱している事を告げる。だが千冬にはそう言ったものの何をどうすればいいかは既に識っていた。

 

 「ならば責め立てるのみ。」

 

 答えが返ってくるとは思ってもいなかった千冬は貴輝が本当に動揺している事を感じ取り、何をされたかは分からないが、それでもこのままではいけないとイグニッションブーストを使って貴輝へと迫る。

 

 不用心だが、何かをするのならば、何をしているのか見極めなければならないし、このまま勝ちに行けるのならば勝ってしまえという考えであった。

 

 だが、貴輝は動かない。いや、手を前へと押し出したのだ。何をしたい?千冬が疑問に思っていると、突如上方から何かに押しつぶされるに下へと押されたのだ。

 

 「押さえつける。」

 

 ぽつりと呟いた貴輝の言葉にゾクリとした。まるで首筋に抜き身の刃を、知らぬ間に当てられているような感覚。すぐさまその場から逃げようと前方へとISを走らせた。

 

 「がっ!?」

 

 だが、地上へと向かって何かに押し出されてしまった。

 

 「がぁ、ぐぅ、ぎっ!?」

 

 それ以降も何かに押されるように、ドンドンと地上に近づく。避けようとするも、その度に横へと振られ、何が起きているか分からない。ただ口から空気が吐き出されていく。

 

 ズンと土煙を上げながら地面へと落ちた。絶対防御のお蔭で怪我どころか全身無事だが、それでも屈辱は残る。上から押さえつけられるような感覚を無視して無理に立ち上がろうとするも、まるで全身に重りを着けているかのようで、すぐに伏せの形で地面に押さえつけられてしまった。

 

 「俺の勝ちで良いですか?」

 

 いつの間にか上空から降りて来たのだろうか。貴輝は静かに千冬に降伏の意思を確かめたのだった。

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