IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
コトッと小さな音を立ててマグカップを置いた。中身はインスタントのココアだ。牛乳で作らず、沸かしただけのお湯で作ったもの。
「なぁ、逆にして想像してみろよ。」
「えっ?」
お礼を言った後、置かれたマグカップを手に取って口に運ぼうとした金髪外人は俺の言葉にキョトンとした顔を向ける。
あの後玄関のインターホンをならすわ、ドアを叩くわ、終いには泣き叫ぶように開けてと連呼する金髪外人に辟易し、近所迷惑なのも加味してせめて落ち着かせようと家に入れた。
家に引っ張りいれて椅子に座らせ、ココアを出したところ落ち着いたのかホッとした顔になったので今回の事を切り出したのだ。
「行き成りさぁ、知らない外人の男がお婿さんになりに来たつって来たら、自分はどうするよ?」
「あうっ。」
俺の言葉に金髪外人は俯いて小さくなる。マグカップは両手に持ってキープしていた。少しの間、小さくなっていたが、恐る恐るこちらを見、そして口を開いた。
「でも、佐藤工房主の嫁に来ることが今回の援助の条件だったと…」
金髪外人の言葉に思わず頭を抱えてしまう。自分に心当たりが無いにしても、援助と言う言葉で、目の前の人物が何処の人間か理解してしまったし、あいつが関わっているということに気づいてしまった。
佐藤工房主と言うのは俺の事。自宅で世界を引っくり返してしまった兵器を作っているのだ。先程まで睨めっこしていた図面はその兵器の物である。
「たっだいまぁ!!」
不安そうな外人が俺を見上げているが、それ以上に頭が痛く気になどしていられない。そんな時にあいつは暢気な声で帰宅を告げた。
ドカドカと五月蠅く廊下をやってくる。リビングへと続くドアを潜ろうとしたあいつに向かって俺は蹴りを繰り出した。
「がふっ!?」
行き成りの事に構える事も出来なかったのだろう。肺から空気を吐き出しながらもんどりうって転げまわる。
「い、行き成り、何をするのさっ!!」
「ん!!」
痛みが治まってきたのだろう、腹を押さえながら立ち上がり、俺に文句を言ってくる。だが、俺はあいつの抗議を無視して、親指で後方の金髪外人を指差した。
「うん?って…」
金髪外人を見たあいつは茫然として、口を半開きにする。俺はこの後の事を予想して、あいつから少し離れた場所で耳を塞いだ。
「なんでシャルが居んのっ!?」
「うっせぇ!!」
「ぐへっ…」
案の定叫んだあいつの脇腹を回し蹴りで蹴とばした。金髪外人、あいつの言う所のシャルは口に握り拳を当てて、驚いたような呆れたような表情をしていた。
「お前さ、デュノア社でどんな交渉した?」
「え?えっと脅して宥めて、利を諭して…」
俺はそんなシャルを無視してあいつに詰め寄る。自覚はないが睨みつけていたのだろう怯えたようなあいつが喋り出す。
「じゃなくてだな。お前最後にフザケなかったか?」
「流石貴ちゃん、良く知ってんね。」
俺がそう指摘するとあいつは肯定した。これで決まりだ。この騒動は此奴の所為だ。
「で、具体的には?」
予想はついた。あとは証拠が必要だ。俺は呆れたように見せる為、頭を抱えて顔を隠した。
「うん?シャルロットは俺の嫁!!って宣言したよ?」
確信した。予想通り過ぎて笑ってしまった。
「え、えっと?何かまずかった?」
その顔を見られたのだろう、あいつが俺の顔を窺うように見上げてくる。俺もにっこり笑みを返してやり…。
「シ、ネ。」
「グフッ!?」
とりあえずあいつの腹に膝を入れた。くの字に折れたあいつはフローリングの床に沈んだ。ついでに良い所に来たあいつの頭を踏みつける。
「あいたたたたた、ちょ、出る、出ちゃうぅ!?」
「テメェはフランス人が日本語の隠語を!!それもオタク用語を知ってると思ったのかっ!!」
そう此奴が発した俺の嫁にするっ!!という発言をデュノア社は真に受けたのだろう。だが、此奴は女だ。幾らあっちがレズに寛容だからといって、はいそうですかと渡す訳にもいかない。だから女の此奴の嫁じゃなく、俺の嫁に来たのだ。それか最初からそういう意味だと勘違いしたかだ。
「あ、あの、流石に女の子の頭を踏むのはどうかと…」
「ああん?」
「ひっ、ご、ごめんなさい。」
俺の突然の行動を見かねたシャルが声を掛けて来るが、寝不足でイライラしている俺はシャルを睨んで黙らせる。ああ、そういえばやけにあいつが静かだなと視線を下に向ければ。
「あう、もっと…」
恍惚とした表情で涎を垂らしているあいつが居た。俺は思わず表情を強張らせ後ろに飛び退く。シャルも顔を引き攣らせながらこちらを見ていた。