IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
ピンポーンという聞きなれたチャイムが一度だけ鳴らされる。暁美がはーいと言って来客を迎えに行った。俺は今日の為に数日前から寝ておらず、いつものリビングのソファーで横になり目を瞑りながらそれを聞いていた。
廊下からガヤガヤと話し声と足音が響いてくる。声からして、どうやら一夏と箒が来たようだ。束と千冬は遅れてくるという連絡が入っており、教員として働いている千冬はともかくとして、ニートの束が遅れてくるのは珍しいと俺は思った。
「うわっ、なんだこれっ!?」
一夏がリビングに足を踏み入れたのだろう、驚愕の声を上げる。少々寝不足だが、それでも目を開けてソファーから起き上った。
「立体映像だよ、空中に投影するタイプ。」
リビングの彼方此方に白いデフォルメされたマンガやアニメに出てきそうな幽霊が飛んでいた。今一夏の体をすり抜けて、廊下側へとスゥー…と消えて行った。今日の為に、ハロウィンの為に作った立体投射機が確りと仕事をしている。
神様特典のチート能力でも、何もない空中に、ここまではっきりと投射するのは難しかった。薄暗いのならともかく、おもいっきり明かりの点いている部屋に投射をしなければならないのだ。それこそマンガやアニメの世界の話だ。だが、俺は形にした。
「あっ、一夏も箒もいらっしゃい。」
「うおっ、イテッ!?」
「ふんっ!!」
シャルロットがキッチンの方から出てきた。そのシャルロットの格好を一夏は驚きと共にジロジロと見てしまい箒に足を踏まれている。
シャルロットは今、バニーガールの格好をしていた。網タイツにカフスも確りと、蝶ネクタイにバニースーツの上から前の開いた小さ目の燕尾服も着ている。その上からフリフリのエプロンを付けており、そこそこある胸がエプロンに締め付けられている。
「はいはい、箒ちゃんも嫉妬してないで、二人とも着替えた着替えた。」
「嫉妬等してませn、押さないでください。」
このままだと話が進まないと思ったのか、暁美が無理やり箒を連れて行く。箒も暁美の言葉に反論しようとするが、暁美が強引に背中を押していった。
「ほら、一夏はこっちだ。」
「あ、ああ。」
今日は10月31日ハロウィン。性格が似ている暁美と束が企画したコスプレパーティーである。俺は一夏をコスプレ衣装に着替えさす為に、部屋へと案内した。
「こんばんわー、わー皆早いよー。」
あー、間延びした声に、ほんの僅かに混じった鳴き声でやってきたのは束だな。玄関に置いてある靴から誰が来てるか把握したか?
「束、いらっしゃい。」
「おー、あーちゃん似合ってるね。」
「ありがとう、束も赤頭巾ちゃん似合ってるよー。」
箒を部屋にやり戻ってきた暁美が束の相手をする。暁美は髪をピンクに染め、某ToLoveるのお姫様のコスプレをしている。頭には確りとペケも居り、しかもコスチュームロボットとしての機能も付けさせられた。ISの量子変換機能を使えばそれ程難しい事ではなかったが。
束は普通の赤頭巾だ。少しスカートがヒラヒラしているように見えるが可笑しな所はない。手には木の籠を持っており、ナプキンが掛けられている。二人は互いにキャイキャイ褒め合っている。
「えっと、これでいいんですか?」
「おお、箒ちゃん似合ってる。」
「本物だ、本物の愛紗が居る。」
箒は某乙女だらけの三国志の女関羽の格好をして出てきた。上は肩を出した縦縞の、なんだろカッターシャツでも改造したのか?豊満な胸の中心に短めのネクタイ。腰に緑色のヒラヒラを纏って、膝上スカートに絶対領域を残したニーソという格好である。
箒の格好に束と暁美が大興奮。二人して箒をベタベタ触っているが、流石に褒められている事が分かっているのか箒は嫌な顔をしていない。
「おお、箒凄いな。」
「ぶふっ…」
一夏の声がした。そちらを見て、誰が最初に吹いただろう。一夏の格好はタキシードに目元を覆う仮面。シルクハットに赤い薔薇。タキシード仮面が其処にいた。
「酷いぞ。」
「い、イっくん、ちょ、ちょっと古いよ。」
一夏は笑われて少し拗ねている。束が腹を押さえながら何とか言葉に出した。そんなに古いか、美少女戦士?まぁ束が幼稚園の頃にやっていたアニメだから古いか。箒は笑ってしまった事を拗ねている一夏に謝っている。
拗ねたタキシード仮面に謝る愛紗。なんとも反応に困る組み合わせだ。一夏にこのコスプレをさせたのは俺だが、反省はしていない。後悔もしてない。俺が困らないからだ。
「邪魔するぞ。」
玄関から声が聞こえた。どうやら遅れていた千冬も来たようだ。
「ふむ、土産だ。」
「わー、ありがとうございます。」
千冬は手に持っていた包みをシャルロットに渡す。近くの寿司屋の袋から、どうやら中身は寿司の詰め合わせのようだ。
「…ぶふっ、い、一夏、その格好はな、なんだ?」
目に入ってなかったのか、改めて周りを見回し、弟の姿を見て吹き出した。ムスッとした一夏がソッポを向く。
「ほらほら、チーちゃんもお着替えしましょうねぇ。」
「くふ、ちょ、ちょっと待て、束…」
流石に一夏をからかい過ぎたと思ったのか束が千冬の背中を押していくが、笑い過ぎて上手く歩けないのだろう文句を言う千冬。
「そんなに似合ってないか?これ。」
「変に似合いすぎているからだと思うぞ。」
ムスッとした一夏がそんなに可笑しいかと箒に聞くも、曲がりなりにも恋する乙女。好きな人の事を悪く言うはずもなく、真面目に答える。
「ねぇ、ねぇ、貴ちゃん。知ってる?シャルの尻尾が普通より下だと言う事を。」
箒と一夏がイチャイチャしだしたのを見ていると、暁美がシャルロットの肩を押して連れてきて、そんな事を言い出した。シャルロットもへぇ、そうなんだ。という顔をしている事から暁美が仕組んだことらしい。
「うん、何故ならアナr…ウベゴっ!!」
「言い残すことはそれだけか。」
アホな事を言い出した暁美を踵落としを脳天に決めて鎮める。何を言い出すかと思ったら。
「あ、あのね。貴輝がそういう事をしたかったら、い、いいよ。」
「コイツの妄言に付き合うな。」
シャルロットも顔を真っ赤にして、胸の前で人差し指を突き合わせながら上目使い気味に見てくる。取り敢えず断った。
「そ、そういえば、貴輝のコスプレって何のコスプレ何だ?」
一連の言葉を聞いていたのだろう、顔を真っ赤にした箒が俯きながらチラチラと一夏の方を見ている。その意味を理解して、同じく顔を真っ赤にした一夏が空気を変える為に聞いてきた。
「俺か?鬼灯の冷徹の鬼灯。」
深夜にテレビを点けたらやっていたアニメの主人公。黒中心に端が赤い着物。額には小さな角をくっつけている。五分分けにし、眉毛は剃るわけにもいかないので、ファンデーションを塗ってそれっぽくしている。
「貴ちゃん、切れ目だから目を細めるとそれっぽいよね。」
「ちっ」
「舌打ちっ!?」
結構な威力で沈めた筈なのに、もう復活してきた暁美に舌打ちをする。どうやらペケが絶対防御を発動して暁美を守ったようだ。
「うん、何を騒いでいる。」
ワイワイとやっていると、後ろから千冬の声が聞こえてきた。どうやら着替え終わったようだ。
「ウ、ウワー…」
「に、似合いすぎている。」
そこには女将校の格好に何故か眼帯をした千冬が立っていた。手には馬上鞭が握られている。そういえば、この前までドイツたっての願いでドイツ軍に出向していたな。教官として。その空気が残っているのか、やけに迫力がある。周りも褒めており、千冬はほんの僅かに頬を染めていた。
「あれ、そういえば姉さんは?」
箒が千冬と一緒に行った束の姿が無い事を不思議に思い尋ねた。何故か途端に不機嫌になる千冬。額には怒りの四つ角が表れている。
「ふん。」
反対の手に持っていた鎖着きの取っ手を力付くで引っ張る。
「ちょ、許してちーちゃぁん」
その鎖の先には首輪に繋がっており、その首輪は束がしていた。手は手首で纏められており首輪に括り付けられている。無理やり引っ張った事で廊下を転がる様にして出てきた束に周りと一緒に絶句した。
「な、何をやっているんですかっ!?」
暁美が千冬に食って掛かる。流石に二人の格好的にやばい感じだ。千冬も自分達の格好に気付いたのか、束の奴が飛びかかってくるのでな。と言い訳しながら気まずそうに斜め横を向く。
「私もお願いしますっ!!」
「沈め。」
だがアホな事をのたまい出した暁美を回し蹴りで沈める羽目になった。あー、頭いてぇ。