IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
「おお、貴輝もバイクの免許取る気なのか?」
受験勉強の合間に、俺が出していたバイクの情報誌を手に取った一夏がそう聞いてきた。箒は姉の束の影響もありIS学園への入学が決まっていたが、一夏は当然の様に受験があり、受験生である。今年になってそこそこと手を付けていたが、夏休みは少し遊び過ぎたと慌てて勉強していた。
俺や箒、意外に暁美も出来る。と教えられる人間が居る佐藤工房へと勉強しに来ており、その小休憩での話である。
「俺にはACがあるしな。」
バイクの情報誌は、今作っているACのモデルの為に見ているのであって、バイクの免許を取る気が無いと話すと、ただ一言そうかと言う返事が返ってきた。少し寂しそうな感じで。
「今作っているACな。お前用だぞ。」
「へっ?」
なのでネタバラシをしてしまう。だからこそ原作を知っている暁美に聞いて、一夏の好きな物を調べていたのだから。今作っているACは初の変形型である。
デュノア社が世に送り出すAC擬き、というか元々ACと呼ばれるものに近いのはこっち。タンクがそれなりに世界中へと配備される中、俺や暁美といったチート能力持ちは兎も角、佐藤工房と付き合いのある中で箒も束の妹という事で手を出し辛いが、あくまで金メダリストの弟でしかない一夏は身を守る術がない。
今までは何気に暁美の知り合いが一夏を守ってきたが、それでも本人にも何かしら防衛手段を持たせろとはその知り合いの言葉だ。
俺と言えばACであり、普通に日常で使える様な機体へと仕上げるために、ここ数日奮闘していた。一応形にはなったので、今日試運転を一夏にしてもらうつもりだったので、別にネタバラシをしてしまっても良かったのだ。
「で、でもACって特殊車両だよな。俺免許とか持ってねぇぞ!?」
「乗り回さなければ、免許持ってなくても所持は許されている。それに此処なら免許無くても乗り回せるだろう。」
今だACを対象とした法律の不備を突いたものだが、法律的には何も問題が無い事を告げる。それに佐藤工房は治外法権でここなら法は適用されないしな。
「動かせるか判らないだろう。」
「なんでISやACが世界を相手に勝てたか忘れたか?」
本人は嫌がっているような言葉を口にしているが、目がキラキラ輝いている。体もウズウズとした様子であり、興味津々である事が分かり易い。
一夏のようなまったくACに触れていない人間でも乗りこなせるよう、ISやACには搭乗者のイメージそのままの機動をする仕掛けがある。この仕掛けが世界に勝てた秘訣でもある以上、一夏が乗りこなせないという心配は無かった。まぁ、慣れる必要はあるが。
「とりあえず、今から動かしてみるか?」
「おうっ!」
俺の試運転の誘いに一も二もなく頷いた一夏であった。
「これが俺のAC…」
一夏の目の前にある真っ赤なスポーツタイプのバイク。フロントタイヤは蝙蝠の羽の様な物で覆われており一部しか見えない。リアタイヤは三本の鉤爪の様な物で支えられ、後方へと同じく爪の様なマフラーが流れている。表面部分に所々鱗の様な装飾がされており、それを眩しそうに見ている一夏。
「ACレウスマン。俺が作った初の可変型ACだ。」
特徴としてバイクの免許を取った後は、公道をバイクとして走らせることが出来る。高速飛行型と防御主体の一撃必殺型に変形可能である点だ。
「乗ってみてもいいか?」
「いいが、この試運転用の広場から出るなよ。」
「おうっ!!」
一夏の言葉に、一年ぐらい前に千冬とマジバトルした広場から出るのは禁止だぞと言って管制室に向かった。一夏は早速レウスマンにまたがり、いろいろ弄っている。起動したようで、一夏の姿が光に包まれ、赤い爬虫類の頭を模したヘルメット、黒いライダースーツの様な姿に変わる。
ACである以上、搭乗者を守るバリアはあるので、多少どころか無茶をやっても身の安全は万全である。一夏は最初はゆっくりと、だんだんと速度を出して走り出した。
「おーい、今から戦闘機動調べるから、高速飛行形態に移行してくれ。」
『分かった。これだな。』
一夏の乗っていたバイクがパックリと割れ、一夏の姿を隠す。瞬間、空へと舞いあがったその姿は翼竜。モンスターハンターというゲームから参照したリオレウスと言うモンスターの姿である。
「変形は上手くいってるな。」
『これ凄いな。飛びたい方向を思うだけで飛べる。』
「そういうものだ。すまんが、もう少し速度を出してくれ。」
『分かった。』
通信から興奮した一夏の声が聞こえてくる。最初の数回だけ姿勢制御の為にバッサバッサと羽ばたくが、すぐに滑空の様な飛行へと移る。だがまだまだ速度は出せるはずだ。データ収集も兼ての試運転であった為に一夏へともう少し速度を出すよう指示を出した。慣れ始めているのか一夏は簡単に了承してくる。
「もういいぞ。」
『えっ、もういいのか?』
「あー、なら戦闘データも欲しいから模擬戦でもやるか?」
『やるっ!!』
ある程度データが集まった所で一夏に降りてくるよう指示をした。元々受験勉強の合間の事なのだ。そんなにガッツリやるものじゃない。だが、一夏の声色は落胆したものになった。慣れ始め楽しくなってきた所なのだ。
何となくその気持ちが分かる俺は、後日別の奴に頼もうと思っていた、戦闘データ収集の為の模擬戦を提案した。一夏は即答する。
「あー、今から的出すから飛行型から戦闘型になってくれ。」
『えー…と、これか?』
一夏の姿が騎士の様な姿に変わった。赤と銀と黒の鋭角的で、爬虫類を思わす鱗の鎧。背中には腕の一部の様な巨大な大剣を背負っている。
「そいつはデュノア社の新作で、耐久データが欲しいから、ぶっ壊しても構わない奴だから。」
『分かった。行くぜっ!!』
俺は的としてデュノア社から送られてきた新作のタンク。フロート型と呼ばれる疑似反重力を用いて常に浮いているタイプだ。浮いているから、ブレーキに難が有り、更に鋭角起動が出来ないという欠点がある。但し、その速度は俺の作ったACとすら並ぶほどであり、良く一年でここまで成長したなと思わされる一品である。
外では慣れないACの戦闘機動に四苦八苦しながら一夏が戦っている。負ける事は無いだろうが、もう少し何とかならないだろうか。
「それにしても、あいつ等、結構有能なんだな。」
データ収集さえできればいいや。と椅子にの背もたれに凭れこみ、今まで一夏の事を影ながら守ってきた連中の事を思う。
暁美が説得して味方に引き込んだと言っていた連中で、一夏が俺らの所に入り浸ってると言う事を一年近く裏の連中に隠し通した連中でもある。そんな奴らが注意してきたのだ。どうも裏がキナ臭くなっていると。一夏にも自身を守る術を渡すべきだと。
「あー、ほんとに。静かにしてられないのだろうか…」
腕で目元を隠し、愚痴が口をついて出る。少なくとも来年までは何とかしてみせる、と言っていたから来年までは平穏だろうが、それってそれ以降は知らないと言う事だろ。
「あー、頭いてぇ…」
何時もの口癖が出た所で、一夏がタンクを真っ二つにしていた。