IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
12月24日クリスマス・イブである。本番は明日なのだが、一般家庭でクリスマスパーティと言えばこの日が多いのではないだろうか。佐藤工房もその例に漏れず、部屋中を飾り付けている。
「そういえば貴輝はクリスマスプレゼント、何を用意したの?」
「別に今聞かなくても、後数時間で分かるじゃねーか。」
「それもそうだね。」
赤いコートに同じく赤いミニスカ。白いタイツに包まれたスラリとした足。頭には赤い帽子。ミニスカサンタの格好をしたシャルロットがプレゼントの中身を聞いてくるが、ちょっとばかし苦労した物なので、驚かす為に内緒にする。聞かなくてもパーティが後数時間で始まり、すぐに分かるのだが。
「あーちゃん、そろそろ予約の料理を取ってくるね。」
「うん、宜しく。」
クリスマスツリーの着ぐるみと言っていいのだろうか?顔出し着ぐるみ、パジャマとかにしている人がいる、あれである。を着た束が、ミニスカトナカイの格好をした暁美に声を掛けて外に出て行った。暁美も、予約以外の料理の用意で忙しくしており、束に軽く声を掛けるだけだ。
「あ、一夏っ、そこは逆だ!」
「うお、すまん。」
暁美と同じくミニスカサンタの格好をした箒が、短冊切りにした折り紙で作っているリングの、付ける部分を間違えた一夏に注意する。一夏も謝りつつ、二人とも楽しそうだ。
受験勉強追い込みの一夏は今日ぐらいは良いだろうと、息抜きに参加。息抜きになっているようで良かった。
ちなみに男性陣は長袖Tシャツにジーパン。地熱を利用したエアコンのお蔭で部屋の中は温められており、この格好でも僅かに汗を掻く。ただ外は既に10度を下回っているので、このままだと寒いだろう。
束もツリーのフード部分を脱いで、上からコートを羽織り出て行った。ここ一年で一番変わったのは束である。人見知りこそ治ってないものの、前ほど邪見にしなければ今回の様に人と会う事でも進んでやってくれるようになった。
暁美が説得を続けた結果であり、神様特典すげーと思わされた一幕である。
夜も更けてきて、束と千冬も揃った。だが、今だ料理に手を付けてはいない。暁美が後三人ほど呼んだそうだ。ちょっと遅れており、少し待ってほしいと言われたのだ。
更けてきたとは言っても冬であり、まだ食事と言う時間には少し早い事もあって全員簡単に了承する。まぁ、呼んだ三人と言うのはあいつ等だろうし、聞きたい事もあると言う事で、俺は構わなかった。
「こんばんわ。」
玄関から声が掛かり、暁美が迎えに行く。足音が四人分。プラス声が例の三人組である。
「なっ!?」
一番に驚いた声を上げたのは一夏である。千冬も声こそ出してないが驚きを露わにし、その他も声にならないようだ。
「なんで、千冬姉と同じ顔っ!?」
その三人の一人に千冬と同じ顔の者が居り、その所為である。
「あら、言ってなかったのかしら?」
「裏の人間を紹介する事なんて普通ないだろ。」
俺に話しかけてきた長身の女。セレブ然とした抜群の美貌を誇るスコール・ミューゼルは予め説明してなかったのかと何故か俺に問いかけてくる。
「私は姉さんではないぞ。」
「な、なに?」
「私はお前だ。」
俺が説明しようと口を開きかけるも、先に千冬に似た人物、織斑 円夏が一夏に指を突き付けていた。
「まぁ、マドカはいっくんの女性体クローンだしねぇ。」
「束っ!?お前は知ってたのかっ!!」
再度説明しようとすると束が先にネタバラシをしてしまった。束が知っている事に千冬が怒り、何時ものじゃれ合いが始まる。あっちはほっといてもいいだろう。
「へ~、そうなのか?」
「何で知らないんだ。」
「常識だぞ一夏。」
何が起こった!?いつの間にか復帰していた箒と円夏とお喋りに興じている一夏がいる。何時の間に仲良くなった!?それにISの話題で男がついて行く事が出来なくても普通だぞっ!?
「あはは、暁美がね…」
「みなまで言うな。だいたい判った。」
隣にいたシャルロットが教えてくれようとしているが、三人の前で撃沈している暁美を見て、暁美が何かしたと言う事は判った。
束がネタバラシしたが、円夏は一夏の女性体クローンだ。千冬がISが世界を引っくり返した白騎士事件の白騎士だと言う事は誰もが知っている。束が極度の人見知りであり、作ったばかりのISを託し、更には白騎士の体型に合致する人間は千冬しかいない。公然の秘密と言う奴だ。
だが束が世界に置いて行ったISの数は少なく、ましてや女性しか動かせないとなると、軍事利用する為には、少数精鋭へと意識が行く。その中で飛びぬけている千冬に焦点を当てられるのは仕方がない事で、その千冬を剣道だけとはいえ圧倒していたまだ幼い一夏に目が向けれるのは当たり前の事であった。
だが、一夏は男であり、ISを動かせない。ならば女性体のクローンを作ってしまえばいいと考えられ、作り出されたのが円夏であった。
だが、世界は再びひっくり返る。ACの登場でISが兵器から転落し、あくまでスポーツの道具となった為に円夏を初めとする、一夏の女性体クローンの計画は破棄される。すでに作り出されていたM000号たる円夏も含めて。
そんな計画を掴んでいた束は暁美に相談し、当時既に世界の裏側を牛耳るファントムタスクと繋がっていた暁美は、ファントムタスクと協力して破棄されるM000号を助け出したのだ。
暁美が女の一夏だから、円夏(マドカ)だね。と命名してしまったのだ。女と言う字を崩して一を足すと円と言う字に見えるから。と言うが見えるか?それ以来、何気に付き合いがある。
「そんで、暁美に言われたから来たんじゃないだろ?」
「ええ、例の事例。こっちから突いてみようか思って。」
「何?」
シャルロットも一夏達の話に交じりに行った。「僕と契約して魔法少女になってよ」とコスプレ衣装をシャルロットに持たせて円夏に言う様強制しようとしていた暁美を潰して、俺はスコールとオータムに話しかける。
暁美に誘われたからと言って裏の、特に情報を重要視するこいつらが、そう人目に晒される場所に出て来るとは思えない。出る時はデータを改竄して自分じゃない誰かになっている。だが今回は本人のままやってきた。余程の重要事項と言う事。
そう聞くと、スコールは周りに聞かれてもいいような言い方で返してくる。例の事例と言うのは裏の情報について知らない事はないと豪語出来るこいつらが出し抜かれた事だ。
第三回モンドグロッソ大会が開かれた時、千冬の三連覇を見る為一夏は会場に居た。そこで誘拐未遂があったのだ。一夏は気付いていなかった。というより気付かせなかったのだが、ファントムタスクに暁美が頼んで、一夏に護衛を付けて貰っていたのだ。目の前の一人。ロングヘアーの女オータムを。
裏のトップが集まって作られた裏を支配する組織『ファントムタスク』の情報網を持ってしても一夏の誘拐の情報は寸前まで手に入れられず、それこそオータムがACを使用しなければいけなくなった程で、しかもそれ以降調べてはいるものの、一向に一夏を誘拐しようとした組織が浮かんでこない。
束の作ったISのコアは番号がふられ、登録制にも関わらず、登録されていない謎のコアが使われたのだ。束に聞いてもそんな物作ってないと言う。暁美の交渉術を使っての自白だからこそ、信頼性は抜群であった。
「大丈夫なのか?」
「『虎穴に入らずんば、虎児を得ず』とも言うじゃない?」
俺がスコールに大丈夫なのか問いかけれると、故事で返された。オータムは隣で頷いているが、何気にアホの子なので本当に意味が分かっているのか如何か。
「それに、何かしらの反応は欲しいのよ。」
手を噛まれるのならば、其処に虎が居る事が分かり、兎ならばそのまま捕まえてくればいい。何も分からないというのが、一番嫌なのだと言う。
「裏の人間にとって裏切りは日常よ。でも獣じゃないわ。誇りある悪人なのよ。」
だから信頼して任された仕事はきっちりとやる。ましてや友人に頼まれた仕事はね。と微笑んで言われた。
「円夏は此処に残すわ。」
「なっ、私も行くぞ!?」
「お前は私の代わりだ。あいつ等の護衛を頼んだ。」
「ぬぅ、むう…」
スコールが円夏を置いて行くと言う。いつの間にか傍にやってきていた円夏は反論するも、オータムに丸め込まれる。護衛というが、態の良い厄介払いというか、安全な場所に居てほしいという姉心か。少なくとも世界相手に出来る人間3人、プラス世界最強が居るここが攻められる事は無いと思うが。
スコールとオータムの二人は、用事があるからと言って先に退出する事を告げる。オータムを残す事も告げて、後ろ手に振りながら退出しようとして束に止められた。
「これ、クーちゃんに渡してね。」
「くすくす、分かったわ。」
クリスマスプレゼントとメッセージカード。それにスコール達もつまめる様にバスケットに入れられた料理達。スコールも笑いながら了承する。
クーちゃんと言うのは本名『クロエ・クロニクル・篠ノ之』束が助けた試験管ベビーと言われているが、その遺伝子は束の物が使われており、束も娘として扱っている。スコール達に協力していて中々忙しく、こちらに顔を出せないのが心配な束の親心が分かっているスコールは、ほんの僅かに笑い、束のお願いを了承。今度こそ出て行った。
「さ、さっそくパーティ始めようか。」
暁美の言葉に周りがオーと声を上げて、それぞれ料理を持つと、佐藤工房の庭に出た。其処には透明な箱と言うか部屋?があり、入口が口を開けていた。寒い寒いと言いながらウキウキと其処に料理を運んで、俺と一夏が外に出る。
「それじゃあ、一夏、頼んだ。」
「おう、任せろ。」
俺はACヒュンケルを、一夏はACレウスマンを纏い、その透明な箱を揺らさない様に持ち上げる。ACのパワーを上げて、宙に浮かんだ。二人掛りでドンドンと上昇。地球の重力を振り切り、宇宙と呼ばれる場所まで来ると、無重力にも拘らず、地球を下にして箱は固定された。
「早速入ろうぜ。」
俺がACの通信とジェスチャーで一夏に伝えると、一夏も頷き、箱の一部が開く。空気は抜けてこない。絶対防御の応用で空気を抜けない様にしたのだ。また宇宙空間にある有害な物もシャットダウンするようにするのは苦労した。全てを弾き出すと、俺達も入れないから。
俺達が入ったのを確認して箱は入口を閉じる。足元に真っ青な地球を見下ろしながらクリスマスパーティが始まった。
来年からは確実に忙しくなるのが分かっている。何が起こるかはまだ分からないが、それでも今のこの時間だけは楽しもうと考えて、俺は頭が痛いのを我慢した。
ちなみにオリ主×シャルロットですが、描写はあまりしない様にしてます。
空気の読めるシャルロットは、貴輝ののんびりな空気が好きだと言う事が分かっているので、あんまりアピールしません。
その代り、一夏×箒の付き合いだしたカップルという空気と対比させるように、貴輝×シャルロットの熟年夫婦という感じで書いてます。
こんな小説ですが、これからも宜しくお願いします。
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