IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
(動きは素人なのに、射撃は一流ですって…)
セシリアは今、五反田のむやみやたらと撃ってくる射撃から逃げ回っていた。射撃だけではない。牙と呼ばれるビーム状のブレードが回転しながら自身に迫ってくる。
先に少し掠ったが、それでも首元だけあってシールドエネルギーがごっそり減った。セシリアには傷一つついてはいないが、それでもヒヤッとしたものだ。
(厄介なのは、あのワンオフアビリティー。まだファースト・シフトしただけだっていうのに。)
本来ならセカンド・シフトして初めて発現するものだ。初期化と最適化だけで発現するなんて聞いたこともない。いや、一件だけ前例があった。織斑 千冬の零落白夜だ。暮桜と呼ばれる機体で、ファースト・シフトした同時に発現したと聞いたことがある。
噂の域を出ないものとして考えていたが、果たして真相は如何なのだろう。今現在、目の前にその噂の信憑性を高める材料もある事だし。
(素人に負けるわけにはいきませんわね。)
現実逃避している場合じゃない。思考は明後日の方向を向いていたが、体は染み付いた機動を行っており、今も回避を続けている。
一度息を吐き決意を新たにしたセシリアは、覚悟を決めて、真っ直ぐ黒狼王へと向かっていった。
(まだ未熟な私ではブルーティアーズを操りながら、自身で攻撃と言った器用な真似は出来ませんわ。)
ならば最初から行ってきた、ブルーティアーズを囮にする作戦。そう決めて、四基のブルーティアーズを自身の周りを回る様に配置。ブルーティアーズを脅威と見た狼の子達が寄ってきた瞬間、四散させて、それにつられ射線軸が出来上がる。
「私自身が弾丸となればいいのですわっ!!」
スターライトMKⅡはブルーティアーズに命令を送っており使えない。ならば自身を弾丸として突っ込む。だが、ハロ達もそれを予測していたのか、増えた狼の子達の一部で壁を構成。セシリアを止めに来る。
「ブルーティアーズは六基ありましてよっ!!」
ここでセシリアは切り札を切る。腰の部分に隠されていたミサイル型のブルーティアーズに命令を送って発射。壁は吹き飛ばされ、煙に撒かれる。真っ白な視界を気にせず、ISのハイパーセンサーを頼りに、真っ直ぐ突き抜けた。目の前には狼狽える五反田が居る。
「インターセプターっ!!」
吠える様にして近接武装をコール。手にナイフが握られる。
「ブルー・ティアーズは速度特化。勢いがついたブルー・ティアーズを止められるのならば、止めて見なさい。」
ハロ達が慌てて狼の子達を呼び戻そうとしているが、圧倒的に標的に近い自身の方が有利であった。
「まだまだですわ。」
妖精が近距離に近づいた自身へと銃口を向けて来るが、手に持ったナイフを投擲。妖精が慌てて狼の眼光を弾き、捨てさせた。直後暴発が起こり破壊される。
「なめるなっ!!」
「それはこちらのセリフですわ。」
五反田が咄嗟に近接武装をコール。自分へと迫るが、落ち着いて狙いを定める。
「ブルーティアーズを操作する必要が無いのでしたら、射撃は出来ますのよ。」
手元に呼び出したスターライトMKⅡが火を噴いた。だが、五反田の方も先の自分の様にナイフを投擲しており、それはスターライトMKⅡへと突き刺さっていた。狼の眼光と同じく暴発。砂煙を巻き上げ、二人の姿を覆い隠す。
『シールドエネルギー零。勝者セシリア=オルコット』
だが、ブーと間抜けな終了ブザーが鳴り、勝者の名前が告げられる。自身のシールドエネルギーは残り、相手のエネルギーが先に尽きたのだった。
(勝ったのに、釈然としませんわ。)
セシリアは今シャワーを浴びている。試合中に何度も土煙の中を突き進んだ為に、汚れを落としたかったのもあるが、一番の理由は、この胸につっかえる気分を何とかしたかったから。
試合に勝ったのはセシリアだ。見事な逆転劇と言う人もいるかもしれない。だが、ファースト・シフト前と後で与えたダメージが違い過ぎたのだ。もしあと少し、前半に削りきれていなかったら、無線誘導兵装を戻されて自分が負けていたかもしれない。
何より相手は素人なのだ。ワンオフアビリティーが発現したからと言って、もっと一方的な展開になったとしてもおかしくは無かった。
シャワーから流れ落ちる微温湯が背中を伝っていく。俯いていた顔を上げた。髪を後ろへと掻き揚げるようにして流す。張の良い少し自慢の胸が露わになった。
「ふぅ、何時までもクヨクヨなんかしてられませんわ。全力で戦った相手にも失礼ですもの。私はセシリア=オルコット。それでいいじゃありませんか。」
顔を上げた先にあった鏡に映った、何処か落ち込んでいる自分へと声を掛ける。ヨシッと一つ気合を入れて、セシリアはシャワー室から出た。