IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス   作:yosshy3304

36 / 84
第十二話

 (動きは素人なのに、射撃は一流ですって…)

 

 セシリアは今、五反田のむやみやたらと撃ってくる射撃から逃げ回っていた。射撃だけではない。牙と呼ばれるビーム状のブレードが回転しながら自身に迫ってくる。

 

 先に少し掠ったが、それでも首元だけあってシールドエネルギーがごっそり減った。セシリアには傷一つついてはいないが、それでもヒヤッとしたものだ。

 

 (厄介なのは、あのワンオフアビリティー。まだファースト・シフトしただけだっていうのに。)

 

 本来ならセカンド・シフトして初めて発現するものだ。初期化と最適化だけで発現するなんて聞いたこともない。いや、一件だけ前例があった。織斑 千冬の零落白夜だ。暮桜と呼ばれる機体で、ファースト・シフトした同時に発現したと聞いたことがある。

 

 噂の域を出ないものとして考えていたが、果たして真相は如何なのだろう。今現在、目の前にその噂の信憑性を高める材料もある事だし。

 

 (素人に負けるわけにはいきませんわね。)

 

 現実逃避している場合じゃない。思考は明後日の方向を向いていたが、体は染み付いた機動を行っており、今も回避を続けている。

 

 一度息を吐き決意を新たにしたセシリアは、覚悟を決めて、真っ直ぐ黒狼王へと向かっていった。

 

 (まだ未熟な私ではブルーティアーズを操りながら、自身で攻撃と言った器用な真似は出来ませんわ。)

 

 ならば最初から行ってきた、ブルーティアーズを囮にする作戦。そう決めて、四基のブルーティアーズを自身の周りを回る様に配置。ブルーティアーズを脅威と見た狼の子達が寄ってきた瞬間、四散させて、それにつられ射線軸が出来上がる。

 

 「私自身が弾丸となればいいのですわっ!!」

 

 スターライトMKⅡはブルーティアーズに命令を送っており使えない。ならば自身を弾丸として突っ込む。だが、ハロ達もそれを予測していたのか、増えた狼の子達の一部で壁を構成。セシリアを止めに来る。

 

 「ブルーティアーズは六基ありましてよっ!!」

 

 ここでセシリアは切り札を切る。腰の部分に隠されていたミサイル型のブルーティアーズに命令を送って発射。壁は吹き飛ばされ、煙に撒かれる。真っ白な視界を気にせず、ISのハイパーセンサーを頼りに、真っ直ぐ突き抜けた。目の前には狼狽える五反田が居る。

 

 「インターセプターっ!!」

 

 吠える様にして近接武装をコール。手にナイフが握られる。

 

 「ブルー・ティアーズは速度特化。勢いがついたブルー・ティアーズを止められるのならば、止めて見なさい。」

 

 ハロ達が慌てて狼の子達を呼び戻そうとしているが、圧倒的に標的に近い自身の方が有利であった。

 

 「まだまだですわ。」

 

 妖精が近距離に近づいた自身へと銃口を向けて来るが、手に持ったナイフを投擲。妖精が慌てて狼の眼光を弾き、捨てさせた。直後暴発が起こり破壊される。

 

 「なめるなっ!!」

 

 「それはこちらのセリフですわ。」

 

 五反田が咄嗟に近接武装をコール。自分へと迫るが、落ち着いて狙いを定める。

 

 「ブルーティアーズを操作する必要が無いのでしたら、射撃は出来ますのよ。」

 

 手元に呼び出したスターライトMKⅡが火を噴いた。だが、五反田の方も先の自分の様にナイフを投擲しており、それはスターライトMKⅡへと突き刺さっていた。狼の眼光と同じく暴発。砂煙を巻き上げ、二人の姿を覆い隠す。

 

 『シールドエネルギー零。勝者セシリア=オルコット』

 

 だが、ブーと間抜けな終了ブザーが鳴り、勝者の名前が告げられる。自身のシールドエネルギーは残り、相手のエネルギーが先に尽きたのだった。

 

 

 

 

 

 (勝ったのに、釈然としませんわ。)

 

 セシリアは今シャワーを浴びている。試合中に何度も土煙の中を突き進んだ為に、汚れを落としたかったのもあるが、一番の理由は、この胸につっかえる気分を何とかしたかったから。

 

 試合に勝ったのはセシリアだ。見事な逆転劇と言う人もいるかもしれない。だが、ファースト・シフト前と後で与えたダメージが違い過ぎたのだ。もしあと少し、前半に削りきれていなかったら、無線誘導兵装を戻されて自分が負けていたかもしれない。

 

 何より相手は素人なのだ。ワンオフアビリティーが発現したからと言って、もっと一方的な展開になったとしてもおかしくは無かった。

 

 シャワーから流れ落ちる微温湯が背中を伝っていく。俯いていた顔を上げた。髪を後ろへと掻き揚げるようにして流す。張の良い少し自慢の胸が露わになった。

 

 「ふぅ、何時までもクヨクヨなんかしてられませんわ。全力で戦った相手にも失礼ですもの。私はセシリア=オルコット。それでいいじゃありませんか。」

 

 顔を上げた先にあった鏡に映った、何処か落ち込んでいる自分へと声を掛ける。ヨシッと一つ気合を入れて、セシリアはシャワー室から出た。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。