IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
金有スポーツ。ISが兵器であった頃は政府から開発援助金が出ており、その援助金を使って優秀な機体を開発していた日本企業の倉持技研の開発部門であった。
ACに兵器の立場を追われスポーツ用品となってからは、政府からの援助金が激減した為にIS業界から足を洗った倉持技研から独立した会社である。
おもにISの付属品や細々とISの武装等を開発、販売している会社である。開発部門であった頃はデュノア社と世界を二分するとまで言われた程で、量産型の打鉄はデュノア社のラファール・リヴァイブと同様にIS学園でも教材として使われるほど。
そんな金有スポーツであったが、かつての繁栄は今では見る影もない。デュノア社もISに固執していたのなら、こうなってしまっていたかもしれないと思われるが、今は置いておこう。
そんな落ち目の金有スポーツに、IS競技が世界で人気を博したと同時に政府から機体の開発依頼が入った。倉持技研の開発部門であった頃に優秀な機体を排出していた事を評価されての事だったが、当時の技術者が全員移った訳ではなく、機体構成は出来ているものの、武装とのマッチングに失敗してしまっている。
終いには専用機を受け取るはずの代表候補に無理やり機体を持って行かれた程だ。だが、それが功を制した。機体そのものを作るには専門の技術者が足りない。だが武装面であるのなら、そもそも金有スポーツは得意分野である。
あっさりと向こうの要望に応えられるものを用意して、この事項から金有スポーツは手を引いた。機体の構成を向こうの責任で負うという文章を持っていたからだ。
流石に、武装が出来たから『はいどうぞ』では技術者として後味が悪かったが、それでも従業員を食わして行かなければならず、完成まで付き合うという訳には行かなかったのだ。
では、代表候補に持って行かれた機体が完成しているかと言うと、まだ完成していない。外から歓声が聞こえる中、日本代表候補である更識 簪は壁際でデータを入力している。
(……なんで受け入れてくれないの?)
先程から何度もやりなしては、新たに構築したデータでもって試しているが、一向にISが武装を受け入れてくれないのだ。
外装は出来ている。武装も出来ている。だがISの設定はまだだし、武装の方も何が悪いのかパススロットに入る所か使えもしない。何度目かになるのか忘れた程に見慣れたエラーの文字。一つ溜息を吐いて、天井を見上げた。
「おお、これが俺のISかぁ。」
「機体名は『白式』。千冬の暮桜や夜桜と同じ構成の機体だな。」
「千冬姉と同じ…」
何か声が聞こえた。今簪が居るのはIS管理室の一室だ。ISは名実ともにスポーツとして確立されたものの、その技術は国が威信を掛けて行っており、そう簡単に他人に見せてもいいものではない。例外がここIS学園であるが、だからと言ってそう簡単に見られる訳では無く、ISの管理は開発や整備を行うために、それなりに広い倉庫の様な場所を一室丸々借りて行う。
ちょうど簪の居る場所の反対側に、例の男子生徒が入って行った。先程何やら慌ただしかったのは、どうやら男子生徒の専用機が届いたかららしかった。
専用機、その言葉に思わず憂鬱な気分がぶり返してくる。はぁ、とまたも溜息一つ。簪は自身の機体を完成させるべく指を動かし始めた。
一夏は白式を何やら感慨深く見ている。まぁ、千冬と同じ機体構成だと聞かされて感じ入っているだけだと思うが、何時までも見ているだけでは先に進めない。
「ほら、機動させろ。初期化が出来ないだろ。」
「あ、ああ。すまん。」
だから声を掛けて意識を現実に向けさせた。一夏も悪いと思ったのか、一言謝り、白式に背を預けるようにして機動させた。
「あれ?」
「どうした?」
「いや、なんでもない。」
一夏が短く疑問の声を上げた。何かあったのかと初期化中の手を止めて一夏の方を見るが、不思議そうにしているが問題はなさそうだ。一夏もなんでもないと返してくる。
この時は疑問に思わず初期化を進めたが、後で聞いたら初めてISを起動させた時の様な頭痛がせず驚いたと言っていた。専用機だからと思い込み、勝手に納得していたと言う。
「ほら、初期化は終わったぞ。後は最適化だな。」
「最適化って何だ?」
一夏が疑問の声を上げた時以外には問題が起こらず、短時間で初期化が終わる。後は最適化が終わればファースト・シフトは終わる。その事を一夏に告げると、一夏の奴は最適化ってなんだと聞いてきた。
「字面で判んだろうが。要は搭乗者の癖をISが覚えて、最適な動きになる様に機体構成が出来上がんだよ。」
「へ~。どれ位で終わんだ?」
「人それぞれだな。」
五反田は結局15時間掛かっていた。ちなみにこれは平均である。速い人は1時間掛からず最適化されるし、掛かる人は最長100時間が記録にあるそうだ。
「ちなみに最速は?」
「15分。」
「速っ!?」
ちなみにその記録を出したのは、何を隠そう織斑 千冬である。
「千冬姉が!?」
「本当、どこまでもぶっ飛んでんな、あの人。」
そう一夏に教えてやると本気で驚いていた。まぁ非公開だと言え、ISに乗り始めたのは間違いなく世界中で一番早いのだ。束がサポートに付いていただろうし、あの二人相手だとこの記録も不思議でなくなる。
「あれ?…打鉄?じゃないよな。」
「あん?」
「ほら、前、前。」
一夏が前を向いて、頭を掲げた。一番近い形状の物を上げて、違うと言う。俺にも見る様促してきて、俺は反対方向を向いた。
半開きになった扉の向こう。向こう側も半開きになっており、幾らなんでも不用心だと思いつつ、更に奥に鎮座するISを見た。そこには打鉄とは違う形状の、だが打鉄の面影を残した打鉄よりもスリムな機体があった。