IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス   作:yosshy3304

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第十四話

 更識 簪は所謂ヒーローオタクだ。まだ幼い頃に姉に拒否された事にショックを受け、活発だった性格がなりを潜めた。所か他人が怖く感じる対人恐怖症に一時期陥ってしまう。なんとか持ち直したものの、根暗な、ネガティブな思考は止められず、休みの日の趣味が布団に潜り込んでの特撮鑑賞と言うのだから根本的な物は治ってはいない。

 

 誰かに外に連れ出してほしい。勇気を分けてほしいと言う思いが、映像の中のヒーロー像へと向けられていた。そんな状態でありながら、国家代表候補を獲得できてしまう程にISの才能もある事が窺える。

 

 姉の更識 楯無は妹である自分の贔屓目で見ても完璧な存在であった。身体能力は裏稼業を生業とする実家の当主をすでに継いでいると言う事を考えれば、このIS学園でも織斑先生を除けば最強であると言う事を考えれば分かり易い。頭脳面でも優秀で、エリート校のIS学園でも常にトップに輝いている。ましてやISを一から作り出してしまったと話に聞いた。

 

 そんな姉に何一つ勝てない自分の事で劣等コンプレックスを感じており、それが引き籠る最大の理由でもあった。

 

 (ど、どうしよう…)

 

 そんな簪は今、最大の危機に直面していると言っていい。他人恐怖症は治ったものの、人見知りする性格で、他人と目を見て話すのが苦手。そんな簪に、ましてや異性に話しかける勇気等ない。

 

 換気も兼て扉を開けていたのがいけないのか、男子生徒達が自身の専用機を見ようと思ったのだろう。入って来たのだった。本来は注意しなければいけないのだが、思わず取った行動は壁際で息を潜める事。別に隠れている訳では無いから、こちらを向けば見つかる。時間の問題なのだが、簪にはどうする事も出来なかった。

 

 「やっぱり打鉄系統だな。特徴が一緒だ。」

 

 「でも今まで授業で見た事ないぜ?」

 

 「日本代表候補の専用機じゃないか?打鉄は純日本国産だしな。」

 

 「なるほど。」

 

 目の前で交わされる会話。こっちに気付かないで。早く出て行って。と祈る事しか簪には出来ない。

 

 「ん?わりっ、居たのに気付かなかった。」

 

 だが現実は無常。ISスーツを着た方の男子生徒が簪に気付き、気付かなかった事を謝ってきた。息を潜めたのは簪で、先程まで気付かれない事を祈っていたのだが、いざ気付かれなかったら、そんなに存在感が無いのかとショックを受けてしまう。

 

 「居たのなら、声を掛けてくれればいいのに。」

 

 「あ、あの、すみません。」

 

 制服の着た方の男子生徒が呟くように言った言葉に、何とか言い返そうとするも言葉が出ず、謝る事しか出来なかった。目付きがきつく、怖いと印象を抱かせる事も簪から言葉を奪ってしまう。

 

 「まぁまぁ、貴輝もそんなつもりで言ったんじゃないから。そんなに謝んなくたって大丈夫だぜ。」

 

 ペコペコ頭を下げている簪を不憫に思ったのか、ISスーツを着た方の男子生徒が、もう一人の男子生徒との間に入って視界に入らない様に隠すと同時に簪を慰めてくる。

 

 「俺は織斑 一夏。宜しくな。」

 

 「あっ、私は更識 簪です。…織斑?」

 

 「ああ。千冬姉は俺の姉貴だよ。」

 

 更には自己紹介もしてくる。根が素直な簪は、名前を告げられ、咄嗟に名前を返していた。そこでハタッと気付く。この学園にはもう一人、織斑と言う珍しい苗字がある事に。簪が聞き返す前に一夏は姉である事を明かしてくる。

 

 一夏の性格は真っ直ぐな熱血漢。少年の様な純粋さも持ち合わせており、簪の憧れたヒーローそのものと言ってもいい。簪も一夏のIS学園入試、織斑 千冬との模擬戦を見に行った一人であり、その格上相手に諦めない戦いをした人物に尊敬の念を抱いていた。

 

 「そんで、こっちは佐藤 貴輝。」

 

 「ひっ…すみません。」

 

 「構わん。どうせ目付きがキツイ事は生まれた時から付き合いだ。」

 

 そんな一夏を見つめていると、一夏は一歩横にずれて、もう一人の男子生徒を紹介する。行き成り怖いと思った異性が現れた事に小さく悲鳴を上げてしまう。その事に失礼であったと謝った。

 

 その男子生徒、紹介によると佐藤 貴輝と言うらしい。その人も目付きがキツイ事は自覚しているのか直ぐに許してくれた。根はやさしいらしい。

 

 実は目付きがキツイ事を貴輝は何気に気にしており、このIS学園ではまだ誰にも怖がられて居ない為、気を良くしていた。簪に怖がられた事は本気でショックだったのである。

 

 「なぁなぁ、これって強いのか?」

 

 「えっ、あっ、それは…」

 

 だがそんな空気を気にせず、何気に戦闘狂の気があるのか、一夏は目をキラキラさせながら無邪気に簪に尋ねた。

 

 「どうした?」

 

 まだ完成すらしていない。その言葉が出てこず、言い淀む簪に貴輝がどうしたのかと聞いてくる。本来ならその性能を言わなくても問題ないが、一夏の聞いた事柄は曖昧なもので、曖昧に返すだけでも問題ないものである。

 

 だが、簪は目の前で簪の答えを待っている憧れの人物に嘘を吐きたくは無かった。

 

 「じ、実は、まだ未完成なんです。」

 

 「何?」

 

 だから簪は数秒掛けて、本当の事を言った。その事に貴輝が驚きの声を上げて、目を見開き固まる。分からなくもないが、そこまで驚かなくてもいいだろう。本来ならそう怒らなくてはいけない簪は、あっ、この人結構可愛い所あるかも。と別の事を考えていた。

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