IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス   作:yosshy3304

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第十六話

 ベッドに寝転んだ。シャワーを浴び終わって、赤いロン毛をバスタオルで巻いただけ。確りと乾かしていないが、別に痛んでも問題はない。

 

 「弾君。」

 

 少し心配そうな声色で、自分の名前を呼んでくる愛しい人に心配掛けまいと微笑んでみるも、やはり心の内は晴れなかった。悪友に勝ってくるとカッコ付け、ISにもお膳立てされ、手助けまで受けたのに結局は負けたのだ。

 

 「相手は代表候補ですよ。」

 

 何とか慰めようとしているのだろう。今はその心遣いが痛い。相手は代表候補。そう言ってしまえばそれまでだが、それでもあと一歩まで追い詰めてはいるのだ。

 

 佐藤工房の主、自身と同じ年齢でありながら世界を相手取り勝ってしまった兵器の製作者。そんな存在が、初心者でも代表候補に勝てる機体と銘打って渡された機体で敗北したのだ。

 

 何だかんだと異性ばかりの教室で、席が近い同性の相手である。よく話す事もあり、一夏程ではないが、それでも親しい相手だ。そんな奴の顔に泥を塗ってしまった。試合が終わった直後に一言二言声を掛けられたが、すぐに一夏を連れて何処かに行ってしまった。

 

 失望されただろうか。話している限りそんな奴ではないし、一夏の機体を見てくるとも言っていたからそんな訳がないだろうが、それでも心の内には悔しさが滲み出てくる。

 

 俺らしくない。ついつい天井を見上げながら、そんな事を思った。俺らしくとはなんだ?そう自問自答するが、自虐的になっている今、答えなど出る訳が無かった。

 

 「弾君。こっち向いてください。」

 

 「あ、あの虚さん?」

 

 寝転んでいるベッドに彼女が腰かけてきたのが分かった。いや、腰かけたのではない。深く沈み込む感触に、どうやらベッドの上へと登って来たようだ。ついつい名前を読んでそちらを向こうとしたら、痺れを切らしたのか頭を抱えられ、頭の下に柔らかい感触が。

 

 これはあれだろうか。所謂膝枕と言う奴ではないだろうか。その事実に気付いた瞬間、顔に熱がこもる。

 

 「な、何をするんですか!?」

 

 「じ、じっとしててください。危ないですから。」

 

 「は、はい。」

 

 思わず何をするのかと問いながら起き上ろうとすると、軽く両手で頭を押さえられ、危ないからジッとする様注意を受けた。ついつい素直に頷いてしまい、そうじゃないと思い直した瞬間、頭に巻いていたタオルを除けられ耳がスースーするようになった。棒状の何かを耳に入れられ、カリカリと内側を擦る。

 

 「あ、あの、何をしてらっしゃるんですか?」

 

 「耳かきです。私の話が聞こえていない様でしたので。」

 

 「…強引ですね。」

 

 何をしているのかと尋ねたら、思った通りの答えが返された。と言うか理由までは判らなかったが、別に無視をしたわけでは無いのだが、それでもそうなっていたらしい。不覚である。

 

 「相手は代表候補です。それだけの努力も、経験も積んできている相手です。どうやったって、弾君が勝てる相手ではないのですよ。それを、あそこまで追い詰めたんです。健闘賞ものではないですか。」

 

 「それでも、俺は…」

 

 「ならこれから更に努力すればいいだけでしょう。弾君なら出来ますよ。」

 

 勝ちたかった。そう言おうとして、言葉にならない。そんな俺に彼女はこれから勝てるようになればいいと言ってきた。俺なら出来ると。

 

 不思議なと言うか、現金な奴というか、彼女に言われただけで元気を取り戻す。先までのネガティブな思考は何処に行ったのやら。明日からは如何訓練すればいいだろうかと考える自分が居た。

 

 「ふー…」

 

 「うひゃい…」

 

 だがその思考は耳に吹きかけられた彼女の息で中断される。思わず変な声を出してしまい、笑われるかと彼女の顔を見ると、口元を押さえ真っ赤になる彼女が居た。笑っているわけでは無く、ついつい何時もの様に息を吹きかけてしまったらしい。

 

 「あ、あの、すみません。」

 

 「いえいえ、普通の事だと思いますから。」

 

 彼女が謝ってくるが、俺も変な回答を返してしまった。

 

 「次は、反対側ですっ!!」

 

 「えっ!?…えっ、えっと…」

 

 「っ!?」

 

 彼女もこの気まずい空気を何とかしたかったのか、恥ずかしいのを我慢するように反対側をすると宣言。だが、そこで俺は気付いてしまった。反対側を向くと言う事は、彼女のあの部分に顔を埋めると言う事で、その事に気付いたのか彼女も真っ赤になってしまった。

 

 「う、虚さん?」

 

 「恥ずかしいの、我慢しますから。」

 

 肩を掴まれ、無理やり反対を向かされた俺は彼女の膝の上に頭を置かれ、目の前に彼女の閉じた股間部分が目に入る。ゴクリと喉がなった。好きな人の、それも意識してしまっている人の股間部分のドアップに生唾を飲み込んでしまったのだ。

 

 その事に気付かれたのだろう。彼女は無言で耳かきだけをコリコリ動かす。意識しない、意識しないと目を瞑った。

 

 「虚さんっていい香りしますよね。」

 

 「っ!!!!?」

 

 「……あははは、俺って何を言ってんだろ?」

 

 目を瞑ったのは良いのだが、他の感覚が鋭くなり、ついつい彼女からいい香りがしてくる事を指摘してしまった。空気を変えようと、話題を変えようとして言ってしまった言葉であり、言ってから逆効果だと気付いて言い訳じみた言葉が飛び出してくる。

 

 恥ずかしさの余りに無言となった彼女であったが、それでも耳かきは動く。もうヤケクソなのか再び息を吹きかけられ、やや速足でベッドを降りて行ってしまった。別に隣のベッドなのだから声を掛ければいいだけなのだが、恥ずかしく声を掛けられない。

 

 早めに消灯となったのだが、悶々とした夜を過ごす事になったのだった。

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