IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
第一話
テレビを見ていて、いきなり変わった画面に向かって、飲んでいたお茶を吹いた。其処には告白紛いの、いや本気で言ったのだがあの朴念仁は気付いていないだろうし、何より国を跨いで引っ越すと言う事で、下手をすれば一生会えなくなる可能性があった為に、いろいろすっ飛ばした告白をした朴念仁のあいつが映っていた。
「はぁ、何をやってるのよ一夏は。」
思わず額に手を当てて溜息を吐いてしまう。正義感が強く、それに助けられた身としては文句は言えないのだが、それでも無茶ばかりしていた時期がある。親友と言っていい二人と共に無理に止めていた時期だ。
その親友二人に言わせれば、自分も止めなければいけなかったらしいが、一体何のことやら?
「でも、IS学園に行ければ…また会えるのよね。」
偶然にも自分はIS適正が高かったらしく、祖国中国にあるIS操縦者育成所に通っている。明後日に行われる代表候補選抜試験で勝ち上がればIS学園への切符を手にすることが出来る。
自分ならやれる。そう意気こんで、取り敢えずTV画面に吹いてしまったお茶をふき取るのであった。数日後に同じ事をやらかし、祖国製のテレビは画面を映さなくなるのだった。
「ああ、もう。異国に少女一人置き去りにするなんて政府は何を考えているのかしら。と言うか迎えも無い訳っ!!」
鳳 鈴音はIS学園の門を潜った場所で叫んでいた。目の前の案内板と手にしたメモ用紙を見比べ、総合事務所と呼ばれる場所を探していたのだ。所謂迷子である。
鈴音が叫んだ内容の内、前半はまぁ役所仕事と言うか、上司の怠慢ではあるのだが、後半はIS学園はあくまで体育学校であり、スポーツ選手を育成する所であり、更には多国籍の人間も数多く受け入れている。その性質上、幾ら他国の人間だからと言って一人一人に案内を付けたりはしないのだ。
だからこそ案内板があちらこちらにあるし、十ヶ国語以上の言語で書かれている。ただ、IS学園の性質上広大であり、今自分が何処に居るのかが分からなくなる事も度々あるので、鈴音が叫んだ内容もあながち間違いではない。
「誰かに聞きたくても、誰も居ないし。」
時間的にはもう夜と言っても差し支えは無い。太陽がIS学園の正面にある海の向こうに沈んでいる。後数十分もすれば完全に夜の帳が降りるだろう。案内板も見やすくするため、下からライトアップされている。
「どうしようかしら。まさか、学校内で野宿とか嫌よ。」
転入手続は流石に明日で良いとして、寮の場所も、今日の寝床も分からないのだ。こうなっては着の身着のまま外で寝る事になってしまう。目の前にある大きな建物は校舎のようで、案内板にもそう書かれている。閉まっているから無意味であるが。
そんな時、案内板の下の方に『困ったら此処を押せ。佐藤工房主』と日本語で書かれた文字とスイッチを発見した。
「佐藤工房ってあの佐藤工房?」
鈴音すら知っている超有名な兵器開発している所だ。と言うか今世界の主要兵器はその佐藤工房が開発したパワード・スーツである。何でIS学園にそんな大物の名前が出て来るんだ。とか、何で日本語だけなのか。とか言いたい事はいくらでもあるが、鈴音は今困っている訳だし、あくまでここはIS学園。行き成り爆発したりしないだろうと思い、そのボタンを押した。
貴輝としては、クラスメイトに頼まれた物を学園側に許可を取って取り付けたに過ぎない。IS学園が広すぎて、一度迷うと一日を台無しにしてしまうと言う苦情もあったIS学園側は貴輝の申し入れを心良く快諾。貴輝もこの程度に賃金を取ったりせず、学園にある案内板の三つに一つを改造したのだ。
日本語だけなのは、ここIS学園の公用語は日本語であるから。世界の公用語は英語であるのだが、ISは日本語入力で動かす。ISの開発者、篠ノ之 束博士がISに設定したのは日本語だけであり、IS搭乗者は日本語の習得が必須であった為、IS学園に通う様なIS搭乗者は全員日本語を扱えるから、日本語以外の記載が必要なかったのだ。
ならば何故IS学園の案内版にはその他の国の言語でも書かれているかと言うと、IS学園には外の人間がやってくるイベントが満載であるからだ。クラス対抗戦では二、三年中心ではあるが政府高官や、スカウトの人間。夏休み中には新規開発した武装のチェックに各技術者が。学園祭では大々的に外の一般客すらやってくる。そういう人達向けであるのだ。
貴輝はあくまでクラスメイトの要望だし、賃金も貰ってないからと日本語だけ。他の言語を入れるのならIS学園がやってくれと、案内板に取り付けた装置の説明書をIS学園側に渡していた。
鈴音がポチと押したボタンは正確にその機能を発揮する。案内板の画面が手前に浮かび上がり、『今現在は此処です。』と言う文字と共に学園の地図上に青いマーカーが出現。
「何これ?」
『学園案内ナビです。』と鈴音の声に反応したのか、画面の文字が変わった。その事に驚いていると、『目的地を入力、または発音して下さい。』と表記された。
「あー、総合事務所って分かる?」
『検索完了。矢印に着いて行ってください。』鈴音の声にまたも反応し、文字を変えて表記。矢印?と鈴音が頭を掲げていると、青白く光る発行体が出現。それは案内板前、鈴音の真横に宙を浮く様にしてあった。
「…矢印ね。これに着いて行けばいいのね?」
『おーいえす』
「なんでそこは似非外国人風なのよっ!!」
それは見紛う事無く矢印であり、鈴音が一歩進むと矢印も進む。別に後ろに下がっても矢印は着いてこなかった。其処に留まっている。
IS学園ってすごい所ねと、呆れるやら、世の科学の発展に驚くやら。鈴音が思わず案内板に問うと、其処には平仮名で英語が表記される。日本に住んでいた時はボケるより突っ込む事が多かった鈴音は思わず突っ込んでしまうが、そういえばこれは案内板だったなと思い出し、何をやってるんだろうと落ち込む。
『ゲンキダシナー!!』
「やかましっ!!」
案内版に励まされ、と言うか馬鹿にされている様な気分になる。鈴音が案内板に突っ込みを入れている間、さびしそうに矢印は少し離れた場所で留まっていた。