IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
どうしてこうなったと一夏は頭を抱える。親友の弾は知り合いを見つけたと言って早々にこの場を離れている。自分はちょうど挟まれる様に座っていた為逃げられない。箒と鈴。自分の知り合いであり幼馴染の二人は、笑顔を浮かべたまま握手をしている。
「一夏の彼女の篠ノ之 箒だ。」
ビシッと石化したかのような音が響く。改めて箒が鈴音に自己紹介する時に、一部を態と強調して言い放った言葉だ。一夏はあれ?付き合っていたっけ?と首を傾げているが、箒は気にしてない。
「一夏の婚約者の鳳 鈴音よ。」
再びビシッと石化した様な音が響く。箒の一部を強調した言葉に、鈴音もまた態と一部を強調して言い放つ。確かに勘違いしていたのだが、本来の意味としてならそういう事になってしまう。
「宜しくたのむぞ。」
「こちらこそ宜しくね。」
んふふふと怪しく笑いながら互いに握手している。握っている場所からギシギシ、ギリギリ音が鳴っていても、まるで自然に感じてしまう笑みだ。
笑顔と言うのは本来攻撃的な物で、威嚇する為の物だと何かで聞いたことがある。だが一夏はそれが眉唾だと思っていた。一夏の見る笑顔は、嬉しそうに笑っている人の物ばかりで、こういった笑みは見た事が無い。近いのは千冬の戦っている時に浮かべている物。だが、それも嬉しいという感情が溢れてなったものだ。
「な、なぁ、二人とも…」
「一夏は黙ってて。」
「うむ。一夏は何も悪くはないからな。言い訳の必要はないぞ。」
「あら、その点は一致しているのね。」
何とか一夏が勇気を振り絞り、二人に声を掛けるも一周される。あれ?仲が良い?と思ったのもつかの間、二人は相手の手を握りつぶそうと腕に血管が浮かび上がる程に力を込めだす。
二人は一夏が悪いとは思ってはいない。一夏の性格は熟知しているし、女性側が騒ぐのも分かる。そして一夏の、病気ではないかと思えるほどの鈍感さも知っている。鈍感であっても好きな物は好きなのだ。
優柔不断の前に気付いてすらいない場合が当たり前の一夏が、狙って二股等しないのは分かりきっている。ならば一夏の優しさに付け込んでいると鈴音は考えていたし、一夏の勘違いを利用しているだけだと箒も考えていた。
鈴音も、わざわざ一部を強調しながら箒が言わなければ、何気にヘタレな自分な事。『そんな訳ないでしょ、奢るって意味よ。』とでも言い訳していそうだ。そう考えられる。
「どうあっても退かないのね。」
「そちらこそ、彼女の居る男に恋慕するのは如何かと思うぞ。」
「言ってくれるわね。」
二人は大声で言い争う様な真似をしない。だが普通に喋っている様な感じで互いに乏しめあっている。一夏は如何してこうなったともう一度頭を抱えた。
箒とは明確に一夏から付き合ってくれと言った覚えもないし、言われた覚えもない。いや言われたが、ゲームの勝敗で告白なんかするもんじゃないと一夏は考えているし、勝敗が流れたからこそデートと言うのか?買い物で済ましたのだから。
鈴音の方はそもそも気づいてすらいなかった。思い出さなければ良かったと思うも後の祭りである。なのに箒に対抗してか婚約者等と言い出す。いや確かに頷いたがと一夏は思うも、それで一生を左右するような事を決めるなよとも思う。
「クラス対抗戦、勝った組が一夏に改めて告白すると言うのは如何?」
「ふむ、いいだろう。一夏も勘違いしているようだしな。」
いや、何故か俺が景品みたいになっているんだろうと一夏は、ああ俺が悪いのかとその通りの様な現実逃避を始めた。
「うおっ!?」
「ど、如何しました、弾君!?」
「えっ、あっ、いやなんでもないです。」
あの席を離れて正解だったと弾は、今背中がゾクッとして震わせた体の心配をしている虚の様子に内心思う。なんでもないと言いつつ、やはりあなたは俺の女神です。と拝む。
虚の姿を見つけて、気まずい空気を何とかしたかった弾は、昼食を取りに来た虚を見つけて相席いいかと尋ねたのだ。虚の方も何とかしたかったらしく、頬を染めて頷く。嬉しく思いながら開いていた目の前に座ったのだ。
「もしかして一口欲しいですか?」
「へ?あっ、はい。」
「そうですか。はいどうぞ。」
「え゛っ」
「えっ?あっ…」
弾の様子に、虚は自分が食べているの物が欲しいのかと勘違いする。そう尋ねてきた。弾も別の女性陣の事を考えていたとは言えず、咄嗟に頷いた。
虚は何も考えていないのか、それともテンパったのか箸で少し掬って弾に差し出してきた。所謂あーんであり、その事に弾が驚いていると、何をしたのか気付いた虚が顔を赤くして俯いた。
だけどそれも物の数秒。二人して赤い顔を見つめ合い、どちらとともなく笑い出したのだった。
後にこれが会長と弾のクラスメートであり、虚の妹に見つかりそれぞれからからかわれるのは定められた未来のお話である。