IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス   作:yosshy3304

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第六話

 「まだまだ反応が遅いよな。」

 

 ついつい誰もいない男性用更衣室で愚痴を呟いてしまった一夏は、ゴロンと座っていたベンチに寝転がる。見ていた練習風景の動画を消してはぁと溜息を吐いた。

 

 動きが納得いかないのだ。それこそ試験の時に動かした打鉄の様な機体の方が自分に合っていると思う程。例え、イギリス代表候補たるセシリア相手に圧勝して見せても、撮っておいた映像を見る限りは、頭の中にある動きとは精細を欠いているし、何よりあの空を支配しているという全能感が無い。

 

 ファースト・シフトしてはいるし、打鉄の様な否定されるような頭痛もないしと、白式の方がメリットは多いのだが、やはり馴染まないと言うか、仕様がレウスマンとかけ離れているのが原因なのだろう。

 

 「うわっ!?」

 

 これはもう慣れるしかないだろうと憂鬱な気分になっていると、突如視界が塞がれる。手に取ってみるとそれはスポーツタオルであった。

 

 「はい。温いスポーツドリンクで良いのよね。」

 

 「おう。サンキュー鈴。」

 

 隣に腰かけたタオルを投げた犯人。男子更衣室なのに堂々と入ってくる人間。中学校時代は良くつるんでいた為に、こういった行為をする人間である事は分かっていた一夏はお礼を言って、スポーツドリンクのプルタブを開けた。

 

 「ねぇ、知ってる?」

 

 「うん、ああ、一回戦が俺と鈴になった事か?」

 

 鈴音から振ってきた話、その内容の心当たりが一夏には一つしかない。それを告げるとそうだと頷いた。

 

 一夏はクラス代表ではない。だがまだ希少な男子操縦者であり、そのデータが圧倒的に不足していた。だからこそIS学園側は少しでもデータを得る為に、こういった公式試合は強制参加としたのだ。ちなみに貴輝も同じで、本人の要望で専用機こそ用意されないが、クラス対抗戦には出場する事が決まっている。

 

 一夏の場合、クラス代表ではないので勝っても負けても一回戦の一戦だけなのだが、その相手は機体の修理時間、エネルギーの充電時間を考えて一回戦最終戦の相手が選ばれた。

 

 それが機体受理の関係で最終戦に回された鈴音であり、鈴音の相手は貴輝の相手をすることになっている。

 

 鈴音の機体は専用機の為にすでにあるが、曲がりなりにもACを除けば世界最強の兵器にもなってしまうISを、国を跨いで使用しようとすると手続きやら何やらで時間が取られてしまうからだ。

 

 鈴音も今だ練習時間所か、一度もその専用機を起動させていなかった。授業では、専ら授業用のラファールを使っている。まぁ、代表候補だけあって機体が代わっても機動は見事なものだが。

 

 「結局、アンタと直接対決になっちゃったわね。」

 

 「そうだな。でも、俺が勝ったら如何すんだ?」

 

 「別にアンタに負けても、クラス対抗戦に負けた事にはならないし。改めて優勝してから告白するわよ。」

 

 鈴音が起き上った一夏の背中に凭れるようにして座り、結局こうなったと言った。その事に一夏は少し感傷的になっている。曇りガラスの小さな窓から入る光は茜色をしており、何時かの様な雰囲気を醸し出している。

 

 一夏と千冬の戦いの映像を、撮影したものだと言え見ている鈴音は、今の自分では一夏に勝てないと悟っており、と言うか昔から一夏はこういった勝負事には強く、一回も勝ってはいない。ましてやあの千冬と激戦を繰り広げる相手に勝てという方が無理だ。

 

 先まで一夏の相手であった、あのイギリス代表はよく一夏に挑めるなと考えつつ、一夏の質問に恥ずかしさに頬を染めて宣言。

 

 「でも私が勝ったら、そのまま優勝扱いで良いわよね?」

 

 「おっしゃ、いいぜ。そん時は鈴の事しか見ない。」

 

 「な、何を言ってるのよっ!?」

 

 鈴音がベンチから立ち上がり、一夏の方を見ながら下を出し、友達同士の軽いふざけた言い方をすると、一夏もそれを了承。というか告白紛いの事をしてきた。この辺りはまだ鈍感な一夏である。その事に鈴音は照れで真っ赤になっている。

 

 「わ、私だって、そう簡単に負けてやらないからねっ!?」

 

 「おう、全力で来い。全部受け止めてやる。」

 

 「だから、そういう事を言うなっ!!…じゃあねっ!!」

 

 だが、すぐに一夏の真意を悟る。自分には絶対に勝てないと宣言された様なものなのだ。少なくとも一年余りで代表候補まで選ばれる程の才能を有する自分に。心の内でそれは真実だと告げ、惚れ直しているのだが、やはり反発してしまう自分に嫌気がさす。

 

 だけど一夏はそういった事を一切合切無視をして、ただ鈴音との勝負が楽しみでしょうがないと言った雰囲気だ。それどころか、分かって言っているのだろうと言いたくなる様なセリフを真顔で告げられ、鈴音は顔を真っ赤にしながら捨て台詞を残して去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 「やっぱり此処が当たりかしら?」

 

 「少なくとも、私達が歓迎されている雰囲気ではないな。」

 

 スコールの目の前には、自動人形と呼ばれる兵器が無残な姿をさらしていた。四足のローラーで移動する頭頂部の銃器と、センサーだけの侵入者用の迎撃兵器。オータムのACメドーサによって、石化信号を送られたナノマシンがそのままの形に覆ってしまっている物もある。

 

 「だとしたら、私達がその存在を掴めなかったのも分かるわね。」

 

 「各国の元軍人が集まった、組織とは呼べない組織。」

 

 二人が歩く通路は広く整備されている。まるでここで大規模戦闘が行えるように。しかも元軍人の集まりであり、物資も多く残されている元軍事施設。破棄されたわけでは無く、世界から紛争が減って使われなくなった所だ。

 

 あくまで使わなくなっただけであり、維持の為に物資を運び入れるのは不自然ではない。更に裏の人間からすれば情報統制が甘く、逆にそれが特定を困難にしていた。

 

 「っ!?これは…」

 

 「そんな馬鹿な。破棄された筈だろ。」

 

 扉の開けられた部屋がある。深部の一室であり、見る人間が限られているからだろう。不用心に開け放たれた部屋の中には水槽に浮かんだ、織斑 千冬に似た物があった。水槽の上にはMという頭文字と数字でナンバーがふられていた。

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