IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス   作:yosshy3304

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第十話

 三機の無人機の散発する光線の中で、一夏は攻めあぐねていた。後ろから鈴音の甲龍が援護の為に衝撃砲を撃つが、その盾も兼ねているのか、丸太の様な太い腕で防がれ、更には残りの機体が援護に入り近寄らせてくれない。

 

 これが一機だけなら、衝撃砲を防いだ瞬間に、瞬時加速で近づき、零落白夜を発動して切り裂けばよかっただけだが、三機も居ると、その穴も埋められてしまう。

 

 「だぁ、もうウザったい。一夏もさっさと一機でもいいから落としなさいよ。」

 

 「無茶言うなよ。せめて白式があのビームを防げたら良いんだけど…」

 

 「切っちゃえば?零落白夜ってエネルギー体なら切れるでしょ。」

 

 「さっきからやってるって。」

 

 しかも無人機である事から疲れ知らずである。エネルギーの供給が無い事から無限に動く訳ではないだろうが、それでも先に音を上げたのは鈴音であり、そんな二人の会話中をチャンスと考えたのか無人機が光線を撃ってくる。

 

 鈴音が無人機に会話中ぐらい大人しくしていろと叫ぶが、そんな事を聞く理由もなければ聞く訳もなく、一夏がどうしたら良いと頭を働かせていた。

 

 『おーい、一夏。お前の右腕に嵌ってるの何だぁ。』

 

 「はっ?右腕?って、あ…」

 

 放送に乗ってまたも貴輝の声が響いた。一夏も貴輝の声に従い、右腕を見る。白式の腕に隠れて分かり辛いが、其処には見慣れた鍵があった。いつもの癖で着けっ放しにしてしまっていたのだ。

 

 「鈴っ!!少しだけで良いから、あいつ等止められるか?」

 

 「何か思いついたのね。まっかせなさいっ!!」

 

 一夏の言葉に、鈴音はこれでも喰らえーと叫んで龍咆をばら撒く。無人機もハイパーセンサーによるものではなく、視界での認識タイプだったらしく、舞い上がった土煙で姿を消した後、行動を起こさない。

 

 「なっ、何をやってるのよっ、一夏ぁ!!」

 

 突如一夏はISを解いてしまう。その事に驚き、鈴音が叫ぶも、一夏は気にせず頭を下にして落ちていく。

 

 動きを止めてしまった甲龍。土煙が晴れてきており、一夏の姿を認識した無人機はその腕を一夏へと向けた。

 

 一夏に向かって光線が迫る。だが一夏は慌てず騒がず、自身の最も乗り慣れた愛機の名前を呼んだ。

 

 「行くぜっ、レウスマンっ!!」

 

 一夏の姿が、ACを構築する時に発せられるナノマシンの発光の中に消えた。光線がその発光体に迫るも、その光線は防がれる。

 

 斜めに構えられた翼の先端の様な、身を隠せるほどの大きさの大剣に分類されるレッドウイングがその攻撃を完璧に止めていた。

 

 ブオンと風を切って、赤い爬虫類の鱗の様な全身鎧を着た一夏の背中に収められた。

 

 

 

 

 

 

 

 「ACだとっ!?」

 

 「あのバカの近頃の趣味知ってるか?」

 

 朝も開けていない頃にレウスマンで海岸沿いを走り込む事だと。その趣味の所為でいつも手首に着けていられる様に、レウスマンの待機状態を鍵の形にさせられたり、白式の待機状態の傍に止められるよう小物を作らされたりしたのだから。

 

 貴輝の何気ない苦労が報われたと言っても良いかもしれない。

 

 驚く千冬達に自身ありげに貴輝が言った。

 

 「ACとISの戦力比は1対3で効かないぞ。」

 

 デチューンされた機体でもIS三機相手に無双出来てしまう。損害を考えなければ、ただACの武装を積んだタンクと呼ばれる機体でも可能なのだ。

 

 一切デチューンされていない貴輝作のACであるレウスマンが負ける事等万に一つの可能性も無い。

 

 「はぁ、これを知っていたのか?」

 

 「スキャンした時に異物があったからな。」

 

 驚愕していた千冬が、一つ溜息を吐いて、貴輝に落ち着いていた理由はこれかと聞いた。貴輝は席で機体データを取っており、白式に異物がある事に気付いて、それを調べていた。それが一夏が何時もの癖で、白式のバックルに着けていたレウスマンだと気付いてからは、一夏達のピンチ等無いとヤル気を無くしたのだった。

 

 実際画面上では、じっくりと相手の攻撃を回避、防ぎ、納刀状態のレッドウイングを一閃。一機を唐竹割りにし、そのまま光線を避けながら横に一回転。大剣の峰の部分に手を添えており、勢いのまま一機を胴部分で真っ二つにした。

 

 残り一機も今までの憂さ晴らしか、鈴音が龍咆を乱射しながら近づき、大型の青龍刀、双天牙月で切り裂いてしまった。

 

 「油断か。」

 

 「問題ないだろう。ダメージなんか通らないんだから。」

 

 「今後の課題だな。」

 

 三機ともが地に伏して油断したのだろう。一夏に向かって片腕を上げ光線を放つ。放たれた光線はレウスマンの背中に直撃した。

 

 千冬も貴輝も悠長に会話しているのは、ACの防御力はISでは突破出来るものではないと知っているから。ましてや、納刀状態であれば背中側が最も防御が高いレウスマン。ダメージは無しとスキャン結果は言っており、実際何もなかったかのように近づいて切り捨てている。

 

 「あれ?箒ちゃん?」

 

 「は?」

 

 一夏の悪癖について頭を悩ませている千冬に、終わったと伸びをしている貴輝のもとに、束の困惑した声が届く。画面を見ると箒が解放された発射口の縁に立ち、親指を上げている。どうやら逸早く一夏を褒め称えに行ったらしい。

 

 試合とはいえ恋人がその他の女性と戯れているのを、離れて見ているのが嫌だったのだろう。

 

 「危ないっ!!」

 

 だが、迂闊過ぎたと言えるかもしれない。胴を切られても動いていた無人機である。半分にされて動いたとしても不思議ではない。

 

 唐竹割りにされた機体が左右の発射口を箒に向けていた。

 

 咄嗟に一夏は攻撃を防ぐのは間に合わないと、箒の方へと飛び出す。光線が放たれるも、その背で受けた。

 

 「えっ?こんなタイミングでっ!?」

 

 束が混乱するのも無理はないかもしれない。束に絡め取られていたハッキングが再開。IS発射口のシャッターが下りてしまったのだ。それだけなら問題ないが、無事だった無人機の光線の発射口から、一夏に向かって放たれる光線がその姿を太くさせる。まるでエネルギーが尽きる前に全部出しておくと言わんばかりに。

 

 『ぐっ、ぐ…』

 

 レウスマンのパワーを持ってしても、不利な体勢で受けている為弾き返せないどころか、壁へと押し込まれてしまう。このままでは箒を潰してしまうと判断した一夏は、シャッターへと両手を伸ばして耐えていた。

 

 だが、次の瞬間、レウスマンの背後。頭頂部の一部が弾け飛んだと思ったら、一夏の叫びが響く。

 

 「やべっ、エネルギー固定システムを破壊されたっ!!」

 

 ACがIS以上とされた最たる物の一つに、エネルギー固定システムがある。余剰分の放出されたエネルギーを固定してシールドとする物であり、レウスマンの場合は頭頂部の後ろに流れている尻尾の様な部分がそれに当たる。

 

 そこが破壊されて、光線を諸に受けてしまっているのだ。だが一夏は叫びながらも、箒を押しつぶさない様に、その両手に力を込めていた。

 

 破壊された理由は、後ろからの攻撃を防ぎ、その勢いを殺す為に一夏が両手をついて耐えていた為。この行為が意外に重く、負担となっていた為。様々な理由があるが、ようは思いがけない負荷が掛かりエネルギー固定システム部分が耐えられなかったと言うもの。

 

 一夏の叫びに鈴音が龍咆を放つ速度を上げて、アリーナの反対側。しかも右左と離れた場所に転がっていた無人機の左右を破壊する。

 

 「衛生班を早く回せっ!!」

 

 画面の中ではグッタリとする一夏が箒に抱えられていた。

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