IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
「今度の学年別トーナメントだがな。急遽タッグマッチに決まった。出場希望者は木曜日までに希望届を出すように。ああ、専用機持ちは当日に抽選での組み合わせになるからな。持ってきても受理せんぞ。」
終わりのホームルームでそう言い放った千冬にクラスが揺れた。ブーイングの嵐である。と言うか、慣れたというか、ノリが良いと言うか。千冬相手によくやるよと貴輝は思う。ただシャルロットも不満そうで、そちらを見ると、貴輝が見ている事に気付いたシャルロットは何?みたいに首を傾げながら満面の笑みを浮かべる。
「静かにせんかっ!!専用機持ちが互いに組んで、ガチガチに練習してしまえば、一般生徒は勝てると思うのかっ!!」
元々ノリだけで騒いでいただけだ。千冬が一喝するだけで騒ぎは収まる。納得の理由に、頷きを返す一同。これにて終わりと、パンと手を鳴らして千冬は教室を出て行った。
ちなみにタッグマッチになった理由と言うのが、どこぞの馬鹿が楽しそうにACで海岸線を走っているのを目撃した二、三年生の希望者が増えたからであった。
名前の通りトーナメント形式でやる学年別トーナメントは搭乗者の成績に響く。それゆえに、まだ整備科に進むのか、搭乗者育成科の方に進むのか決めていない一年生は全員強制参加であった。二、三年生の試合数もさることながら、その膨大さに一日では終わらない。
こういったイベント用の、普段は非稼働のアリーナ全てを使っても、丸々一ヶ月近く使ってしまう。IS競技に時間制限といったものは無く、耐久戦や持久戦になる事もしばしば。元兵器である事から起こる物なのだが、それでも学園側としては頭の痛い事項だ。
その上今回は二、三年生の数が増えて、時間が足りなくなってしまった。急遽タッグマッチとして、試合数を減らしたのだが、それでも例年の試合数と比較出来てしまう程である。
「残念だな。」
「そうだな。弾と組んでみたかった。」
「まだ可能性はあるだろ。」
「まあな。」
その馬鹿の席に集まる男子三人。馬鹿こと一夏は、親友である弾とペアを組んでみたかったと言い、少し離れた女生徒に妄想の元を提供している。
「ちょっといいか?」
「ラウラか。如何した?」
「何、模擬試合の申し込みだ。」
そんな駄弁っている男子三人の中に入ってくるラウラ。ラウラは一夏に模擬戦を申込みに来ていた。アリーナの貸切使用は専用機持ちと言えど、そう易々と行えるものではなく、ましてや学年別トーナメントに忙しいこの時期は尚更でラウラがIS学園に来る前に、敬愛する教官の弟の、元々一夏の実力を見たいとドイツ軍から申請したものが今日やっと受理されたのだった。
実力云々は後の入学試験の映像で知れたが、IS学園に来てから千冬に頼まれた一夏の護衛の為に、今現在の一夏の機動を知りたいが為であった。
「おっ、面白そうだ。良いぜ、やろう。」
「お前、戦闘狂の気があるのか?」
「男が勝負事で燃えねぇ訳ないだろ?」
普通なら相手は軍人で、幾らリミッターを掛けたからといって軍用ISに。それもそれを専属に扱っている特殊部隊の隊長に勝負を仕掛けられて、目をキラキラさせるのが何処に居ると思う。
楽しそうな一夏に、ISをファッションか何かと勘違いしている雰囲気ではない様子に、思わず戦うのが好きなのかと尋ねるラウラ。だが一夏は俺が男だからだと返し、弾と貴輝の苦笑を誘っている。
「早速行こうぜ。」
「まぁ、待て。申請書によると第三アリーナを貸し切ってある。出来れば更衣室まで案内してほしい。」
「ああ、構わないぞ。」
こうしている時間が惜しいと、ラウラを急かす一夏。だが、ラウラはまだIS学園に来たばかりで、主要な場所は覚えたものの、普段は使わないアリーナの場所を案内してほしいと一夏に頼む。別にこれから行く場所で、困っている人が居れば助けてしまう一夏。それにそんな事で一々断ったりしない。
何だかんだと弾も付き合う様で、一緒に出て行った。そんな一夏とラウラにキツイ視線を向ける円夏が居た。
「何なのだ。あのラウラと言う小娘は。」
同い年だろうとも、クローンだから年下だろうとも突っ込みは無い。一人で第三アリーナに向けて足を動かしている円夏が、誰も居ない通路でポツリと心情を溢す。溢さなければ、モヤモヤとした何か。イライラが爆発しそうで、ついつい出てしまった。
誰も居ないのは当たり前で、普段は使わない非稼働のアリーナである事に加え、今ここはラウラが貸し切っているのだ。
「私は、……人形なのか?」
ついつい思い出すのは変わり果てたMシリーズの事。千冬も情報共有の為に無人機のコアの事を話している。Mシリーズは円夏を残して、その計画が破棄された筈なのだが、何が起きたか再びM計画は立ち上がった。
それも量産は既に行われているようで、それがまるで人形を作る様に似ている事が円夏の心を蝕んでいた。脳だけを取り出されたMシリーズの肉体がどうなったかは判らない。そう言った目的の為に使われたかもしれない。
「はぁ…、姉さんにも謝らなければ。」
一つ息を吐いて、少しでもモヤモヤを追い出そうとするも上手く行かない。そんな時に、アリーナの競技場が見渡せる場所に出てしまい、光に目を細める。最初に見たのはラウラの顔。唐突に入り込んだその顔に、怒りが爆発してしまう。其処は私の場所だと。道具風情がと。
「おい、私と勝負しろ。」
気付けば専用機、ISダーク・エッジを展開して、一段高くなっている射出口の部分から、地面に居るラウラに勝負を申し込んでいた。