IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス   作:yosshy3304

6 / 84
第二話

 車中の中、足元に視線を向けたままシャルロットは考える。何がいけなかったんだろう。母子家庭で育ち、母親が亡くなって途方に暮れていた時に父親だと名乗る男性がやってきた。その父親に着いて行き、本宅とやらに入れば、行き成り罵しられ叩かれる。

 気持ちが折れそうであったが、生きる為には仕方ないといまだ未成年であったシャルロットは我慢をして生活していた。いつの間にか、流されるようにISのテストパイロットにされ、当時はまだACが無く女尊男卑だった為に男の人の視線が怖かったのを覚えている。

 第三世代の開発に難航して、兵器開発でのし上がったデュノア社が落ちぶれだした時にACが開発されて、そのACのパーツのライン製造をデュノア社が引き受けられるかもしれないという話が持ち上がってきたのだ。

 ただし、その話は自分がACの開発者に嫁ぐのが条件で、そして自分はこうして異国の地にいる。母親との思い出がある地を二度と踏めないかもしれない。日本人って外国旅行を嫌う傾向があると聞かされており、ましてや片田舎等には足を運んでくれないかもしれない。

 自分が逃げ出せば、デュノア社は潰れる。逃げればどうなるか分かっているなと脅されて、車を降りた。

 

 「はは、本当に逃げたいや。」

 

 そんな事は出来ない。目の前の『佐藤工房』と可愛らしい看板が何か恐ろしい物に見えてしまう。後ろで車の発信する音が聞こえた。何も声を掛けてもらえず、自分が物にでもなった気分になる。誰にも必要とされない、ただのゴミ。

 

 「…行こうか。」

 

 思わず涙が出そうになった。俯いていても仕方ないと、顔を上げて、玄関脇にあるチャイムのボタンに指を掛けた。

 

 ピンポーンという間抜けな音が響く。「誰ですかってな…」隣の曇りガラス部分に人影が写り、そんな言葉と共に玄関が開かれた。

 佐藤工房の人間は二人しかいないと聞かされている。そしてその内一人は女性だとも。つまり目の前の人物が自分の夫となる人物であり、思わずマジマジと見つめてしまった。

 

 日本人らしい黒髪黒目のアジア顔。平凡な顔立ちだが、細い切れ目が睨んでいるような印象を抱かせる。ただ瞳に力が籠っており、この人ならなにがあっても大丈夫そうだと思わされた。ツナギ姿の彼も自分の姿を上から下まで見て、誰?という顔をした。

 

 「あー、誰?」

 

 いや、そのまま口に出す。何故かそちらからの要望だろうという感じに腹が立たず、脳内では如何話を持って行こうかとパニックを起こしていた。

 

 「あ、あなたのお嫁さんになりに来ましたっ!!」

 

 口をついて出た言葉は、自分でもそれはありえないだろうというものであり、思わず俯いてしまった顔を上げて弁明しようとする。

 

 「あー、うち、勧誘とかはいいんで…」

 

 だが、無情にも弁明させてもらえず玄関の扉はバタンという音と共に閉められる。

 その後は情けないがチャイムを鳴らしまくり、ドアを叩いて泣き喚いた。色々限界だったのだろうと自分でも思う。

 

 家に入れてもらい、ココアを入れてもらってその暖かさに落ち着いた。まぁ、その後に指摘されたことに吹いてしまい、ココアはあまり味が分からなかった。

 その後来た女の人とのやり取りに驚いて何を考えていたのかわからなくなってしまったが、とりあえずこの家は暖かいのだと思った。

 確かに暴力は反対だし、女性に手を上げるのはどうかと思うが、じゃれ合いなのだろう、相手も笑っている。

 

 「でっ、でっ、シャルちゃんは如何すんの?」

 

 「目をキラキラさせながら迫るな。」

 

 そのあと目をキラキラさせた女性に詰め寄られ、少し怖い思いもしたが、落ち着いて考えると、佐藤工房としても不本意だったのだと分かった。本来の意味は嫁に来いという意味ではなく、友達になりたいだったらしいのだ。

 

 「あ、あの、私、家に帰れないですけど…」

 

 「なら、ここに居ればいい。」

 

 そこでハタっと気付いた。ここを追い出されれば如何すればいいのかわからない。デュノア社と連絡を取ったとしても、そう簡単に迎えが来るとは思えないのだ。

 苦々しい思いで、何とかここに止めてもらえないか、そんな思いで絞り出した言葉にすぐさま男の人が答える。それは泊まっていけという言葉として捕えていいのだろうか?

 ただデュノア社に居た人たちとは違って暖かみがあった。

 

 「へっ?いいの?」

 

 余りに驚愕してしまい思わず聞き返す。女の人も驚いており、その事が男の人には不服であったようだ。空気が凍るとはこういう事を言うのだろうか?男の人から怖い感じを受ける。

 

 「あ、あははは、シャルちゃんの部屋用意するからこっち来て。」

 

 「あ、はい。」

 

 女の人の提案に乗って部屋から逃げ出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。