IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
結果的に円夏は御咎め無しとなった。IS学園はIS操縦者を育てる場所。ISはスポーツであり、何よりガチンコの勝負事である事。円夏のISが規定に則った物であり、ワンオフアビリティがシールドエネルギーを無視出来る事が知られていない事。何よりラウラの傷を見た保険医が、傷は浅く、切り傷程度であると証言してしまったのだ。
ラウラの治癒能力の高さが仇となってしまったのだ。何より、円夏がラウラの切り裂いてしまったISスーツを弁償すると申し出ており、ラウラが規定違反の軍用兵装を使用したと言うのも不味かった。ラウラに本気の攻撃をしてしまったのは、ラウラが軍用兵装を使ったからだと言う事になってしまった。
一夏が証言しようとしても、一夏の見たラウラの傷は浅く、ラウラが軍用兵装を使おうとしたのは真実で、何より妹相手であり、歯切れが悪くなってしまったのが円夏に咎はなしと決定付けた。
一応千冬に、IS学園側としては罪に問わないが、やり過ぎた感はある為姉として注意する旨連絡が行ったが、公式に罪に問えなくなってしまったのである。その辺は流石ファントムタスクの一員と言えよう。
千冬が頭を抱えて職員室の机に突っ伏している隣で、束と貴輝が話をしていた。貴輝に専用機をと言う声が高まってきたのだ。その理由は、学年別トーナメントの組み合わせ。専用機持ちは直前にパートナーを発表し、戦う事となる。その時組む相手は専用機持ち同士が組む。数が一機合わないのだ。
ちなみに原作ではシャルロットがラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡと言う専用機を持っていたが、貴輝がラファールを使うに当たって改造。あくまでラファールのカスタムの一つとなってしまっていた為、シャルロットは専用機を持っていない。
その為、一年の専用機持ちは7名。このままでは誰か一人が一般生徒と組まなければならず、それが例え貴輝やシャルロットとなっても、不利である事は否めない。
そこで、元々専用機の話が上がっていたが、本人の希望で見送られていた貴輝に白羽の矢が立った。身内贔屓と言われそうだが、其処は開発者である束博士と仲の良さ。更にはACの開発者である事から、問題なしと判断されたのだった。
「でもさ、幾らISが嫌だって言ってもACで出る訳にもいかないじゃん。」
「別にISが嫌だと言ってる訳じゃない。ラファールが良いと言ってるんだ。」
先から同じ問答が続いている。貴輝としてはラファールとの相性が良かったのか、ヒュンケルと同じぐらいに動ける。ならばラファールを作ってしまえばいいと思うが、ラファールはデュノア社の登録商品であり、勝手に作るわけにもいかない。
「でも、それだとシャルが出る事になるよね?」
「うおっ!?」
「あーちゃん、何時の間に…」
そんな問答をする束の後ろから、と言うか後ろは机で、机との間は数センチしかないのにどうやって出てきているのか。それ以前に何処に居たのか。出てきた暁美に思わず驚き、上体を反らす貴輝。束が何処から出て来るのさと言う非難の意味を込めた疑問の声を上げた。
「まぁまぁ。貴ちゃんの説得ならお任せってね。」
「おいっ!!」
「任せたっ!」
何故か暁美が束に代わって、貴輝の説得を始める。流石にネゴシエーション、交渉事のチート能力を使われたら、貴輝には抗う術は無く、溜息を吐いて落ち込む。だがすでに脳内では専用機の設計図が思い浮かべられていた。ACの流用で、それ程時間は必要ないとは言っても、流石は物作りのチート能力という所だろう。
「ISコアの選別は任せて。」
「ああ、そういった所は信用してる。」
途端に束が張り切り出した。貴輝との相性が抜群になるよう、束自らISコアを選択すると言い出したのだ。貴輝も普段は何をやらかすか分からない束であったが、何気に物作りという分野で合ったのか、そういった面は疑っていない。
「はぁ、お前らは気楽でいいな。」
「…つ、疲れ切ってるな!?」
「仕方なかろう。身内が殺人未遂だぞ。しかも被害者も顔見知り…」
隣でワイノワイノやっていたのを見た千冬がポツリと漏らした言葉。その普段とは違って一切の覇気が無い様子に、思わず引く貴輝。理由ももっともであり、しかもあくまで身内として叱らなければならないのだ。
その原因も千冬が円夏に知らせていなかった事が一つの原因でもある。情報流出を防ぐために、IS学園に入ってからラウラに伝えたのが仇となっていた。
「あ、そういえばタッちゃんと打ち合わせがあったんだった。」
いやー、忘れていたよと暁美が後頭部をかきながら退出。貴輝も今の千冬は相手にしたくなかったのか、ISを完成させると言う名目で出て行った。
「ちょ、二人ともっ!?束さんを見捨てるの!?」
「ほぉう、そんなに今の私は相手したくないか?」
「ち、違うよちーちゃん。ね、ね。ちょっと落ち着こうよ。」
思わず手を伸ばしてしまった束をあっさり見捨てる二人。そんな束の様子と言葉に、低い声で千冬が問いかける。まるで幽鬼の様で、しかも束達のオフザケに覇気も戻ってきたようで、後ろに鬼を背負い千冬が束に詰め寄る。
束が何とか千冬を諌めようと奮闘するも、その日の職員室からまるで、幽霊でも見たかのような甲高い叫びがこだました。