IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
それからは円夏とラウラの間に、暁美や、千冬等二人を止められる人間が必ず間に入る様に、授業等が行われた。寮でも千冬が一年の寮監だと言う事がちょうど良かったのだ。
何だかんだと行われた実技授業、量産型のISである打鉄同士を戦わせる内容のもの。実技授業は既に数回行われており、学年別トーナメントに向けて、特訓している生徒が多い為、滞りなく行われた。
専用機持ちが班のリーダになって指導するのだが、男三人の所に殆どの生徒が集まると言うハプニングこそ、何時もの風景であったが、ラウラも何気に指導が上手く、セシリアの理論的、箒や鈴音の擬音での指導よりも分かり易いと評判であった程だ。
そんなこんなで月日は流れる。外の気温は徐々に高くなっており、汗ばむ陽気が増えてきた。季節は春から夏に向かっている最中であり、そんな中学年別トーナメントは始まったのである。
貴賓席。要は政府の高官達が見る一層高くなっている場所は、入口にISを纏った鎮圧部隊が陣取り、表向きは護衛という名目であったが、クラス対抗戦の時の様な失態を起こさせない為であるのは誰が見ても明らかであった。
男子の試合もある為、何気に満員の様子を見せている貴賓席。何かが起こるとは知らせは無いが、何かが起こってからは遅いのである。
「おっ、それが貴輝のISか?」
「ああ、ISラーハルトだ。それより組み合わせが発表されるぞ。」
そんな中、まずは一年だけの競技であるが、もっとも数が多いだけに、選手控室は溢れかえっている。女子の格好は水着よりも際どいISスーツ姿であり、気まずげに三人は壁際のベンチに座っていた。
目敏く一夏が貴輝の指に嵌っている指輪を見つける。ISの待機形態はアクセサリー型が多いのと、貴輝が今までつけていなかった物なだけに、それが本邦初公開の貴輝の専用機である事に思い至る。
詳しく聞きたそうにしている一夏。別に有利になろうとしてのものではない事は、一夏の様子、目を見れば分かる。どちらかと言うと、強いのか?強いのか?である。そんな一夏をめんどくさそうに、あしらいながら貴輝は目の前の掲示板。『抽選中』となっていた映像が、NOW LOADINGになっている事を告げた。
「おっ、一回戦の相手が…、良いのかよこれ…」
「束かな?思い切ったことすんなぁ。」
ワクワクとしている一夏の目の前で掲示板に相方と、相手が表示された。その組み合わせに思わず冷や汗を掻いてしまう。貴輝もその組み合わせに、ラウラと円夏を思いっきり戦わせると言う目的がある事を知っていたが、その大胆な組み合わせに、ハッキングしたであろう人物、束の大胆さに驚いている。
『一回戦 織斑(一夏)&ボーデヴィッヒ 対 佐藤(貴輝)&織斑(円夏)』
と掲示板に表示されていた。ちなみに弾はセシリアと組んで、鈴音と簪ペアと二回戦を行う予定である。専用機持ちが最初に戦わされるのは、殆どの人間がその目的を判っている。専用機の特性を理解し、一般生徒との溝を無くす為であった。
「にしても、嵌れば強力過ぎる組み合わせだな。」
「だな。」
貴輝の呟きを聞きとった一夏も同意する。まるで一般生徒の事を考えていないような組み合わせなのだ。
ラウラのISシュヴァルツェア・レーゲンにはAIC、慣性停止結界と呼ばれる物がある。ISの基本システムであり、これで浮遊、加減速を行う。それを相手に使い、相手の動きを止めてしまう。そこに一撃必殺の零落白夜を持つ白式と組ませるという一般生徒には辛い組み合わせであろう事は間違いない。
それこそ貴輝の所は貴輝のIS次第であるが、その他も凶暴と言ってもいい組み合わせなのだ。弾セシリアペアでは遠隔無線誘導兵装で攻撃、防御、攪乱を行われて近付けない。しかも二機とも遠距離速度型である。雨霰とビームを撃たれて終わる可能性が高い。
鈴音と簪ペアも似た様な物。簪のIS打鉄弐式のマルチロックオンシステムを積んだミサイルと、二門の連射型荷電粒子砲と、鈴音のIS甲龍の見えない衝撃砲による過剰砲撃。空中に足を止めての全方位への撃ち合いで勝てる気がしない。しかも近付けば、重い双天月牙と超振動薙刀の迎撃が待っていると。
「いいのかよ、これ…」
「自身無くしたか?」
「まさか。俺はやる気出たぞ。」
「俺も勝ち上がらねば…」
思わず、ガックシと肩を落とした一夏に、貴輝が聞くと、強敵である事に闘志が燃えてきたと言う一夏。一夏は一般生徒の事も考えていただけであり、千冬と束の教育理論が破綻していると思っただけなのだ。
そんな一夏の隣で、緊張からか俯いていた弾が顔を上げて、決意した様な顔を見せる。何があったと思う貴輝であったが、そういえば変な噂が流れていた事を思い出す。
なんでも男子の誰かが優勝すると、女子一人に告白をすると言う物。捻じれ曲がって、IS学園の女子は優勝した男子と付き合わなければならないと言った物に変わっており、ピリピリした空気が選手控室に流れているのはその為だ。
「よし、決勝で会おうぜ。」
「おう。」
一夏と弾が拳を合わせる。もし戦うのならばリーグが違う事もあり、互いに勝ち上がるしか無いのだ。すでに勝った気でいる一夏に溜息を吐いて貴輝は、二人が会う様な事態になってしまえば、それは男子が優勝してしまう事に繋がる事に気付いた選手の発するピリピリした空気が高まった様な、そんな場に頭を抱えた。