IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス   作:yosshy3304

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第十二話

 「ちーちゃんっ!!」

 

 「如何したっ!?」

 

 管制室で束が突如叫んだ。またぞろ何か問題が起きたのかと訊ねる千冬であったが、束の手は忙しく動いており、あの束が本気で何かを入力している姿なぞ早々見ない。

 

 「ハッキングされてる…」

 

 「そんな馬鹿な。お前と佐藤がファイヤーウォールを構築したのではないのか?」

 

 クラス対抗戦の時に束はしてやられていた。その時の教訓を生かす為、束は今回、最初からハッキング対策の為に目を光らせていた。その上で、物作りチートを持つ貴輝に新規にファイヤーウォールを作って貰っていた。これを超えてIS学園に早々ハッキング等出来ない筈であった。

 

 「違う、正規のルートで…、対象は、あのラウラって子のISだよっ」

 

 だが、今回は正規のルートを通ってクラッキングされてしまったのだ。その事に気付いて束が叫んだ瞬間、ラウラの悲鳴の様なものが聞こえてきた。

 

 『ああああああ、嫌、嫌だ、嫌ぁー…』

 

 必死で抵抗しているのか、手を前へと伸ばすように、誰かに助けを求めるように、だがその手を掴む者は居ない。一夏と貴輝は呆然と見ているだけで、円夏の方は、それまでのラウラの猛攻に膝をついていた。

 

 まるで黒い泥の様な物がラウラを覆い隠す。音声が一夏のラウラを呼ぶ声を拾った。

 

 

 

 

 「な、何だよ、ありゃ…」

 

 「VTシステム。過去のモンドグロッソ優勝者の動きをトレースする為に開発された物だ。」

 

 「それって…」

 

 「ああ、ここからは千冬が相手だと言う事だっ!!」

 

 一夏の質問に、貴輝が変貌したラウラから目を逸らさず答える。一夏はその答えに、誰の動きがインプットされたか悟る。伊達や酔狂でモンドグロッソを優勝できるほど甘くはない。そして三連覇までも成し遂げた女傑が身内に居るのだ。

 

 その事に思い浮かんだ瞬間、貴輝が横に跳ぶ。一夏の横に黒い泥で覆われたシュヴァルツェア・レーゲンが一夏の方を向いた。

 

 「ぐっ…」

 

 振るわれた雪片擬きを辛うじて、雪片弐型で受け止めるも、そのまま吹き飛ばされてしまう。膝をついて、手のひらを地面について無理やり止まる。

 

 「ラウラはどうなった?」

 

 「搭乗者のバイタルデータは無事を知らせているけど…」

 

 一夏の隣に並んだ貴輝に、一夏はラウラがどうなったか聞く。貴輝はラーハルトでラウラのバイタルデータから生きている事を告げた。

 

 「なら、レウスマンでっ!!」

 

 「それは無理だな。」

 

 「何でっ!!」

 

 そこで一夏が、何時かの様な失敗。レウスマンを持ち込んでいた事に気付き、レウスマンであの泥を吹き飛ばす事を提案。だが、貴輝に却下された。

 

 「威力が強すぎる。中の、ラウラごと切り裂いてしまうぞ。」

 

 「っ!!」

 

 貴輝の告げた事実。ACはIS三機分と、誇張無くそれだけの威力を誇る。もし搭乗者が居る中でそんな物を振るえば、確実に搭乗者を殺してしまう事になる。

 

 先程までは動きを止めていた、シュヴァルツェア・レーゲンが二人に向かって動き出した

 

 「おおおおお、それは姉さんの物だぁっ!!」

 

 叫び声をあげて円夏がシュヴァルツェア・レーゲンに向かって飛び出す。

 

 「とっとと朽ち果てろ道具ぅっ!!」

 

 振るわれた雪片擬きを、手に持ったダークエッジで弾き返し、懐に潜り込んでいく。腕を伸ばせば、ラウラの居た所に到達するという所で、円夏が刺突の構えを取る。雪片擬きは既に弾いており、遮るものは何もない。

 

 「円夏っ、それは駄目だっ!!」

 

 一夏が叫ぶも円夏は止まらない。ダークエッジを突き刺そうとした瞬間、シュヴァルツェア・レーゲンの動きが代わった。

 

 「な、なにっ、ぐわっ!?」

 

 まるで自分から体当たりするように前へと踏み込んできた。体を捻り、泥の一部を削られながらも、ダークエッジを回避する。それどころか、ロールした勢いを利用し、円夏が手に持つダークエッジを雪片擬きで弾いてしまう。

 

 「危ねぇっ!!」

 

 「なっ、がはっ!!」

 

 それどころか空中を蹴る様にして方向を変えたシュヴァルツェア・レーゲンは振りかぶった雪片擬きを円夏に向かって、右上から左下へと振るった。

 

 一夏の叫びも空しく、血飛沫が舞う。倒れ伏す円夏。その円夏に止めを刺そうとしたのか、雪片擬きを上から突き刺そうと振り下ろして、地面に突き刺さった。

 

 「た、貴輝?」

 

 「間に合った…」

 

 一夏と対称の場所に円夏を抱えたラーハルトが居り、貴輝が円夏を助けたのだった。ホッと胸を撫で下ろすが、それどころではない事を思い出す。

 

 雪片弐型を正眼に構えて、一夏はシュヴァルツェア・レーゲンを見た。

 

 シュヴァルツェア・レーゲンが見せたあの動きは、千冬の物ではない。だが、一夏はあの動きに見覚えがあった。千冬の決勝での対戦相手の動き。

 

 千冬が二連覇を掛けた時に会場まで応援に行っていた一夏は、千冬と対等にやり合えている相手の動きを覚えていた。

 

 リボルバー・イグニッションブーストを使いこなし、千冬に向かって超近接戦闘を挑んだ相手。ダークエッジの突きを避けた時に見せた動きで、千冬に一矢報いたのだ。善戦したもののその後零落白夜で削り切られていたが。

 

 まさしくその動きである。だとしたら、あの動きには続きがあったはずだ。途中から千冬の動きに戻っていたが、それでもあの千冬が押し込まれた事がある相手。

 

 「貴輝、まだだっ!!」

 

 貴輝に注意を促すも、すでにシュヴァルツェア・レーゲンは動き出していた。

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