IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
貴輝の眼前に雪片擬きが迫ってくる。何時かの様であった。だが、貴輝には目の前に迫るこの攻撃を避ける事も、防ぐ事も出来そうになかった。何時かの様に大気の構成が見えていたとしてもだ。
腕の中にぐったりとしている円夏がいたからだ。斬撃の後は既にない。ISの絶対防御と、搭乗者を保護する機能が働いたからだ。だが、切られた事は本当で、意識がない。
せめてと貴輝はとっさに円夏を下へと落とし、腕を広げて庇うように前へと出た。
「貴輝っ!?」
一夏の叫び声が聞こえる。意識を失いそうになりながらも、痛みに意識を失えない。唐竹割りにされたと思えたが、ラーハルトはその外側に鎧を着ているタイプだ。その鎧が威力を落としてくれていた。
「…大丈夫じゃないな。」
仰向けに倒れた貴輝は自身の容態を見る。傷はそれなりに深いようだ。ラーハルトが防御型ではないと言うのも関係しているのかもしれないが、絶対防御を抜かれた攻撃でも保護機能が働くほどではないし、戦う覚悟を持たない貴輝が起き上れるほど傷も浅くない。
割かし冷静なのは、切られたと言う事実に頭が混乱しているからだ。正中線真っ直ぐに赤い線が入っている状態である。
「…そっちにやるぞ。」
「だ、大丈夫なのか?」
「まぁまぁ、な。」
軽口を叩ける程度には大丈夫だと言う事をアピールして、ダイス上に区切られている大気の一部を手で押した。大気に押し出され、変貌したシュヴァルツェア・レーゲンが一夏の方へと飛ばされていく。
「後は任せたぞ。」
「おう、ラウラは絶対助けるっ!!」
貴輝が後は主人公に任せようと、そう声を出した。一夏は貴輝が割かし無事だった事もあって力強く返事を返してくる。見れば気合を入れなおしていた。
円夏の方も、見て見れば致命的な物は見当たらない。あえて言うのなら意識が戻らない事だろうか。それよりも自身の方がやばいと思える。
今は大丈夫でも、いずれ痛みに呻く事になるだろう。幾つか血管を傷つけており、今すぐ治療をしなければいけない物もあるのが見える。出血多量等と言う事にはならないと思うが。
ふぅ、と息を吐いて貴輝は目を瞑った。
「ぐっ、このっ!!」
一夏は今雪片擬きに苦戦を強いられていた。千冬の鋭い斬撃と、その千冬を追い詰められるほどの近接戦闘。更には連続して行われるイグニッションブースト、リボルバーイグニッションブーストによる高速機動。
耐えられるのは一夏の戦い方にあった。レウスマンの戦い方、相手の攻撃を防御して、相手が隙を見せた瞬間に、一撃必殺を叩きこむと言う戦闘スタイルが、零落白夜と言う諸刃の剣を生かし切っていたのだ。
「ラウラを、貴輝を、円夏を、助けるんだっ!!白式、力を貸してくれっ!!」
それでも不利になった一夏は、せめて気合だけでも負けてたまるかと叫んだ。瞬間、白式と共に光に包まれる一夏。
さて、原作の一夏との差異は何処にあるだろうか。原作より強い?イヤイヤ原作でも一夏は幼い頃は強かったと言う描写はあった。錆びついてしまっただけなのだ。この世界でもそうであったが、貴輝との出会い、正確にはレウスマンとの出会いが、その錆びついた腕を少しでもマシな物にしただけだ。
戦闘狂の気がある?それも最強である姉を守りたいと言う思いから来ている。出会い?朴念仁?それも人とのふれあいで如何にかなるもの。差異があって当然の物だ。
では何か。それは零落白夜の使い方と言うか、白式の受けたダメージ。要は使ったエネルギー量が一番の違いではなかろうか。
一夏の腕、レウスマンの戦い方、上に上げたそれぞれの出会いが、原作とは違う結末へと導いた。
二次移行するための搭乗時間も満たしており、更には白式は使われなかったエネルギーを少しずつ溜めていた。
「こ、これは?」
姿が変わった事に気付いた一夏が疑問の声を上げる。ウイングスラスター部であるアンロックユニットが二つから六つに増え、まるで翼の様。体の部分はより突起が無くなりスマートに。足の部分もより安定感を増している。何より変わったのは腕であろう。自身を覆い隠せるほどに大きな掌と、伸びる鋭い爪。どうやらこの爪は零落白夜で伸ばせるようだ。
「白式・雪解」
雪羅ではない。何より雪羅の遠距離武装である荷電粒子砲がない。雪解の名前の通りに一夏の本来の思いの姿である。雪解水が春を呼び込み、夏へ至り、植物を芽吹かせ育てるのだ。
掌を手刀の形にする。その大きさはレッドウイングに近い。これならやれる。そう確信を持った一夏は、振り下ろされた雪片擬きを弾き返す。
「意味ないぜ、それ。」
連続イグニッションブーストで距離を離そうとしたシュヴァルツェア・レーゲンだったが、速度特化であり、雪解となって増えたウイングスラスターが六回と言う連続イグニッションブーストを可能となっていた白式はあっさりと追いつく。
ラウラを返してもらうぞ。そう叫んだ一夏は掌をシュヴァルツェア・レーゲンに向けて広げ、爪を零落白夜で伸ばし、搭乗者の居る場所に向かって突っ込んだ。
掌の感触でラウラを見つけた一夏はラウラを掴んで引っ張り出す。途端に崩れ落ちるように、いや流れ落ちると言った方が正確だろうか。黒い泥が流れ落ち、ボロボロのシュヴァルツェア・レーゲンがその姿を現したのだった。