IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス   作:yosshy3304

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第十四話

 ラウラは自身が気絶している事に気付いていた。何せ、ISの共鳴現象と呼べる物を体験しているのだから、意識があってはおかしい。

 

 (私は、教官の、道具?)

 

 いや、それすらも失格だろう。無理に動かされる肉体。限界を超えた動きに、体の節々が悲鳴を上げている。あがらってはいるものの守る対象を傷つけようとしているのだから。

 

 『そんなわけねえだろっ!!』

 

 声が聞こえた。敬愛する教官の弟で守る対象である存在の声が。自分が道具ではないかと思う度に否定の言葉を叫んでくる。うっとおしくなって叫び返す。

 

 (だが、私は試験管で生まれたのだぞ。)

 

 『関係無いっ!!傷つけば真っ赤な血が流れるだろ。』

 

 (その傷だって簡単に治ってしまうのだぞ。)

 

 『それこそ病院行けば誰だってそうだろ。』

 

 (私は…軍属なのだぞ。)

 

 『千冬姉をなめるなっ!!』

 

 そんな問答を繰り返す。次第に心が痛くなってくる。手を伸ばし、それでも誰にもその手を取って貰えないと思っていた。だが…

 

 「ラウラっ!!今助けるっ!!」

 

 そうはっきりと声が聞こえた。ほんの僅かに目を開けば、一夏の、白式の大きな手が迫ってくる。メカメカしい、所々に突起物があるのが見えるが、何故か安心してしまう。

 

 「私は、…」

 

 「ラウラっ!!」

 

 IS白式・雪解(ゆきどけ)の腕に抱いた小さな体。ナノマシンの体が最もいい状態を維持する機能で、成長不全を起こしているラウラが、ぐったりとしているが、確りと息をしている。

 

 「なぁ、そろそろ医務室連れてってくれねぇ?」

 

 「あ、す、すまん。」

 

 ホッと息を吐いている一夏に声が掛かった。貴輝や円夏の事をすっかり忘れていた一夏であった。

 

 

 

 

 「貴輝っ!!」

 

 シャルロットが、担架で運ばれてくる貴輝を見つけて駆け寄ってくる。涙目になって、心配そうな雰囲気、いや心配を掛けてしまっているのだろう。

 

 「誰だよ…」

 

 「はーい、私でーす。」

 

 「暁美ぃ…」

 

 「ほらほら、安静にしていないといけないよぉ。」

 

 誰がシャルロットに連絡を入れたのかと問いかける、少し弱っている貴輝。自分が連絡を入れたと暁美が白状した。

 

 「ねぇ、大丈夫なの?体の前側真っ赤だよっ!?」

 

 「あ~、心配ねぇよ。今夜にも糸は取れる。」

 

 「い、糸ぉお、縫うほどだったの?そんなに早く取れるの?」

 

 「落ち着け、てか暁美も笑ってないで押さえろ。」

 

 後ろで爆笑していた暁美にそう睨みつけながら命令する。お願いではない所が貴輝である所以。

 

 「はいはい、落ち着こうね。」

 

 「で、でも…」

 

 「ほれ、俺の物作りが凄いのはシャルロットも知ってるだろ。自分の傷を塞ぐ時にそう作ったから。」

 

 医務室で保険医に見て貰った時、保険医が顔を真っ青にした。傷が浅いと思っていたが、人の大事な部分が集まる正中線を真っ直ぐ切られたのだ。幾つか大きな血管を傷つけていたらしい。今すぐ大きい病院に行って手術をしなければいけない程だった。

 

 だがそこで待ったを掛けた。折角宇宙開発の基盤が出来始めた所なのだ。入院して穴をあける事は出来ないと考えた貴輝は、保険医に傷口を縫う針と糸が無いか聞く。

 

 IS学園の保健室には大き目な傷を縫う事もあり、少しだが常備していると。保険医も縫う事は出来るが、血管は無理だと話す。だがそこで貴輝は自分でやると言い出した。

 

 麻酔をかけてしまえば、縫う事が出来なくなるため、麻酔無で挑む。保険医を説き伏せたのは暁美。この事に束も千冬も反対に回ったのだが、貴輝の物作りチートを知っている暁美がまたも二人を説得。

 

 その間に縫合用の糸と針を受け取った貴輝は、物の作りを見る事の出来る目で何処が傷ついているのか確認し、痛みの無い場所を選んで、手際良く縫い合わせていく。

 

 「あれは芸術の域だった。」

 

 と後に大学病院で手術を手伝う事もある保険医は語る。貴輝の物作りの実力に、改めて驚かされた束と千冬は絶句していた。

 

 暁美だけが、貴ちゃんって何処のブラックジャックだよと語っていた。

 

 「そ、そんな事したのっ!?」

 

 「それが一番手っ取り早かったんだよ。」

 

 「貴輝ぃ…」

 

 「うっ、…すまん」

 

 そう話すと、シャルロットが驚き睨んでくる。免許の無い人間が、専門の知識の無い人間が無謀したのを怒っているのだろう。それも心配しての物。貴輝もバツが悪くなり、顔を反らす。

 

 「でも、良かったよぉ。」

 

 「…すまん。」

 

 心配し過ぎで顔を青くしていたシャルロットであったが、貴輝の言葉を信じるのなら明日にも完治してしまう。貴輝の物作りがとんでもない所に居るのを知っているシャルロットは安心した反動で貴輝に縋り付いて泣いてしまった。

 

 その事に再び謝る。

 

 「ねぇねぇ、何か二人仲良くなってない?」

 

 「うえっ!?」

 

 そんな二人の様子を観察していた束が、二人の仲が何だか深まってない?と言葉に出した。その事にシャルロットが変な声を出す。

 

 「えっ、二人ともまさか?ヤッチャッタ?」

 

 「そ、そんな訳無いよ。」

 

 「アヤシイぃ…」

 

 そんなシャルロットの様子に暁美がフザケだし、シャルロットの否定の言葉も疑い詰め寄ってくる。

 

 「ほれ、一応俺は夫だ。大怪我したと聞いたら心配するだろ。」

 

 「本当に、それだけ?」

 

 「蹴り飛ばすぞ。」

 

 「ごめんなさい。」

 

 そんな風にワイワイやっていたら、案の定保険医に追い出されてしまったのだった。

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