IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
今回は結構後の話になります。ハロウィンが近いので、原作中の外伝という形で書いてみました。
シャルは貴輝に告白済み。貴輝もそれに答えていると言う状況です。
ハロウィン用外伝 原作二学期の後半の方の話。
十月三十一日ハロウィンである。一年前はまだIS学園に入学していなかった為、佐藤工房、要するに自分家で結構好き勝手した。具体的には一夏達とコスプレパーティをしたのだ。あれから一年かぁと貴輝はIS学園の寮の部屋で考える。
一年とはいえ、結構色々忙しかったこの年は、特に宇宙開発に本格的に乗り出した事もあって、殆ど休んでいない様に思える。必ず何かしら作っている様な、いや量産はフランスの、デュノア社の傍に立てた自社で行う事が出来るのだが、設計は自分がしなければいけない。
それだけ宇宙開発と言うのはまだまだ未知の世界であった。束のすすんでの協力が無ければ、ぶっ倒れていたかもしれない。決済等の書類も、楯無に任せたりしているが、それでも一度は目を通さなければいけなく、とても寝ている暇が無かったのだ。
そんな日々を送っている。当然何回かあった休みは全部、暁美の推薦と説得にあって、シャルとのデートに消えていた。
「今日こそは部屋から一歩も出ないぞ。」
何処かに出かけているシャルが居ない、というかここは男子用の一人部屋であり、居る方がおかしいのだが、ちょくちょく泊まっていくシャルに慣れてしまった。元々同じ家で生活し、同じ部屋で生活し、と名前だけの夫婦でありながら、傍に居るのが当たり前になっていたのだから、この慣れもそんなに不思議に思わない。
一人言葉に出して決意を固め、暁美からの説得を阻止するため、通信端末の電源を切る。ゴロンと一人用にしては大きいベッド、一人部屋なのでベッドは一つだ。に寝転がり、目を閉じた。奇跡的に本日は休みの為、しかも仕事も無い。なので寝る事にしたのだった。
「ね、ねぇ、ねぇ貴輝…」
「…あん?」
微睡の中、自分の名前を呼ぶ声に意識が浮上する。目を開けると、尖りボウシ。魔女を連想させるアレだ。を被ったシャルが居た。うっすらと化粧もしている。
「どした?」
「ごめんね。でももう夕方だよ。」
「あ~、起きるわ。」
流石に寝過ぎだろうと、ベッドから身を起こす。そこではっきりとシャルの姿が目に入った。黒いゴシックドレスに、オレンジのカーティガン。スカート部分も二重になっているのか、内側の同じくオレンジ色のヒラヒラは膝まである。タイツは黒と紫と白の模様。所々に黒い蝙蝠も居る。
「ジャックオーランタンか?」
「うん、カボチャをイメージしてみました。」
見た目の感想の前に、何をモデルにしているか聞く貴輝に、貴輝の性格を知っているシャルは微笑みながら頷く。
だが、ベッドサイドに腰かけた貴輝の膝の上に座り直すシャル。邪険にはしないが、メンドクサイと顔が物語っている貴輝に、シャルは後ろ向きに顔を近づける。
「ねぇ、貴輝?トリックオアトリートだよ。」
目をトロンとさせ、うるませながら小声で囁いた言葉には色気が含まれていた。シャルの要望は悪戯。今の状況では流石の貴輝でもお菓子は容易出来ていないだろうと、身持ちが固い貴輝に迫ったのだ。暁美の入れ知恵である。
「ほらよ。」
「ウムグっ!?」
だが、貴輝は何処からか取り出した飴玉を、シャルのほんの僅かに開いた唇に押し付ける。思わずシャルは目を真ん丸に開いて、驚愕する。
「あ、飴玉?」
「ああ、暁美や束や楯無っつう、油断できない奴ら用だな。」
思わず心の中で暁美に呪詛を吐いてしまうシャル。暁美に今回の作戦を聞いたときはそれだっ!!と思った物だが、蓋を開けてみれば、その暁美のせいで対策を取られてしまっているではないか。
「もう、じゃぁさ、貴輝が言ってよ。」
「どうせ用意してないんだろ?」
だからシャルは貴輝に悪戯をして貰おうと、貴輝からトリックオアトリートを言って貰える様頼み込む。用意などしていないから、確実に悪戯の方になる。
「俺は一応日本人なの。」
「むぅ、私は何時でも良いのに。」
貴輝の言い分に頬を膨らませるシャル。シャルの方から思いは告げてある。返事も、貴輝にとって居心地のいいシャルとの空間は好きで、流石に二年も夫婦ごっこをしていれば、隣に居るのが当たり前になってくる。
だが、貴輝はシャルにIS学園を卒業するまでは手を出さないと宣言していた。シャルはその事に不満と、それだけ愛されている事に嬉しさを感じていた。なので時々こうして誘惑したりするようになっている。
「トリック、オアトリート。ほらどっちだ?」
「ふえ?い、悪戯でっ!?」
「それで我慢しとけ。」
だから貴輝から不意打ちで言われた時は赤面してしまった。だが、すぐに悪戯を選択する辺り、シャルも期待し過ぎである。
そんな事も関係ないと、手に持っていた、今度はクッキーをシャルの開いていた口に放り込んだ貴輝に、思わず拗ねても仕方がないと言える。口の中でクッキーを咀嚼し甘味に頬を緩ませている姿はとてもそうは見えないが。
貴輝の物作りチートは料理にもそのチートっぷりを発揮してしまい、何気にシャルよりも上手かったりする。
「ふぅ、でも貴輝…」
「あん?うむぐっ!?」
「ぷはっ、そんな事で誤魔化されないから。」
口の中のクッキーを飲み込んだシャルは後ろを向いていた貴輝に声を掛ける。振り向いた貴輝の唇に柔らかいものが当たった。シャルの唇である。
油断していた事もあり、返事を返す為に、ほんの僅かに開いていた事もあり、すんなりとシャルの舌は侵入してくる。
驚く貴輝であったが、口を閉じると言う事もせず、舌で押し返すようにして拒否するも、その事を知っているシャルは、少しの間貴輝の舌と戯れる。そしてシャルから離れた。
クッキーなんかで誤魔化されないと言って、腰の後ろで両手を組んで、腰を曲げて上目使いに笑うシャル。そんなシャルに思わず赤くなりそうになり、後ろを向いて誤魔化す。
「なら、クッキーはもういらないな。結構焼いたんだが。」
「えっ、食べるよ。ねぇ、貴輝、何で離れていくの、ねぇ?」
皿一杯に盛った貴輝作のクッキー。それでお茶でもしようかと思ったが、要らないのなら、誰かにやってくると言ってシャルから離れる貴輝。
「貴輝の意地悪っ!!」
「くっくっ…」
シャルから少しの間逃げ回る。だってシャルは悪戯を選んだろ。クツクツ笑う貴輝と半泣きになって追いかけるシャル。少し後には二人の楽しげな笑い声に変わった。