IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
「すみません、部屋に荷物置かせて貰って。」
「いえいえ、虚さんにお願いされたら断りませんよ。それに俺だって生徒会メンバーなんですから。」
今弾の部屋はダンボールの山で半分ほど占拠されていた。白いIS学園の制服に、中ほどから折れ曲がっている魔女の帽子を被った虚が申し訳なさそうに謝っているが、弾にとっては、付き合いだした彼女にそんな顔をしてほしくない。
元々、一年生用のハロウィンの飾り付けグッズは一先ず弾の部屋に置かれ、後で数人の女子生徒が取りに来るまでの話である。部屋を移りあまり会わなくなってしまった虚との時間を取りたいが為に生徒会に入った弾である。監督役が必要との事で、虚が一年生の監督役に収まった為に、一時の置き場所を提供していたのだ。謝られる理由が無い。
弾の言葉に、やはり付き合いだした為だろうか。好きな人が輝いて見える虚は、そんな弾の紳士的な言葉に頬を染める。
「…キスしてもいいですか?」
「…はい」
そんな頬を染めて、とろけた様な視線で見上げてくる彼女に影響を受け、弾までも虚に見惚れぼんやりとしてしまう。自然と顔が近づき、それでも愛しい人の事を思って口に出す。拒否する理由もなく、只々言葉を発しているだけ。そんな状態で二人は顔を近づけ。
『一夏ぁ、まだ寝てんのっ!!起きなさいよっ!!』
隣の部屋の扉を叩く音で我に返る。もう少しでくっつきそうになっていた所でこれだ。文句の一つも言ってもいいかもしれないが、二人は顔を見合わせ苦笑するだけ。
「…雰囲気無くなっちゃいましたね。」
「…ですね。」
流石にもうキスをする雰囲気ではなくなった上、どうやら荷物を持ちに数人の生徒が来る時間になってしまったようだ。二人は抱き合っていた体勢から自然と離れ、少し残念そうに笑いあう。
「それじゃあ、また後で。」
「そうですね。」
二人が言葉を交わし、虚が部屋を出ようとした瞬間である。
『幾らなんでもその格好は止めなさいっ!!』
またも鈴音の声が響く。それはたまたまだったのだろう。運んだ時に重さを考えずに運んだ、すぐに持ち出すからと扉の近くに置いた、出来るだけ邪魔にならない様に積んでしまった。等偶然が重なった所為であろう。
虚に向かってダンボールの山が崩れてきたのだ。咄嗟に弾は虚を床に覆いかぶさる様にして、落ちてくるそれなりの重さのダンボールから身を挺して庇う。
「だ、大丈夫ですか!?」
「いっつつ、ええ、俺は平気ですよ。ただ…」
どうやら壁際に積んであった物だけではなく、崩れた拍子に別の場所に積んであったダンボールも崩れてきたようだ。しかも何処かに引っかかっているらしく、力を入れても箱が凹むだけ。しかも中に入っている飾りで痛い。
「えっ、えっと…」
「すみません。少しの間我慢して貰えますか?」
仰向けに寝転んだ虚の目の前に弾の顔がある。弾は腕立ての様な体制で虚に笑いかけた。先程の音を聞いて隣の親友が駆けつけてくるはずだ。
「え、ええ。でも…、辛かったら顔を下してもいいですよ。」
すぐに助かると言う事が分かっている弾と違い、どうやら今の状況にテンパっている虚は顔を下してもいいと、顔を真っ赤にして告げる。腕立ての様な体制を解くには肘を曲げる必要があり、そうするとちょうど、それなりにある胸に顔を埋める事になってしまう。
「い、いえ、すぐに一夏の奴がやってくると思うので…」
「あっ、わ、忘れて下さい。」
顔を赤くしながら、考えていた事を告げると、虚も気付いたのだろう、顔を赤くしながら手で覆うってしまった。
「…虚さん?」
「不謹慎ですが…」
そんな虚の事を可愛いなぁと思いながら眺める弾であったが、不意に虚が真面目な顔をして見つめてくる。弾は思わず名前を呼んで、その真意を探ろうとするが、不謹慎ですがと前置きをして。
「トリックオアトリートです。」
「いや、虚さん。分かってて言ってるでしょ。」
ハロウィンの定番の言葉を口にした。どんな思惑で、こんな状態でその言葉を口にしたのか判らないが、幾らなんでもお菓子を持っては居ない。用意はしてあるが、それでもまずは脱出が先だろう。
「じゃ、じゃあ、悪戯とお菓子、両方貰いますね。」
「い、いや、両方って「んむっ」…」
そんな弾の言葉を遮り、虚は両方貰いますと弾に告げた。いや流石に欲張りすぎなんじゃと言う思いを込めた言葉を途中で遮られた。少し頭を浮かした虚の唇が自分の唇とくっついている。
すぐに柔らかい物が口内に侵入してきた。それが目の前の彼女の舌だと理解した時、弾は自身の舌で、その侵入者を弄び始める。
虚の舌もそれに呼応するようにヌルヌルと動き、時には自分の口内へと誘導した。
「ふっ、うむ…」
「あふ、ふむ…」
いつの間にか、やけに情熱的になっているが、誰にも見られる訳がないしと思い始めた二人であったが、扉を叩く音で我に返った。
『弾っ!!大丈夫かっ!!』
「………」
「………」
一夏の声に思わず顔を見合わせ、どちらとともなくクスッと笑い合った。
「おーい、一夏っ、助けてくれっ、鍵は開いてるからっ!!」
『お、おうっ!?』
何時までもこの状況に居る訳にもいかず、親友に助けを求める。部屋の鍵は初めから閉めては居ない。荷物を運び出すにも、鍵を掛けていては煩わしいからだ。
少しどころではないが、背中の重さが無くなるごとに名残惜しさが込み上げてくる。だが、荷物が退けられ、差し込んだ光に照らされた彼女は神々しく、弾は思わず微笑んだ。