IS 俺とあいつのインフィニット・ストラトス 作:yosshy3304
真っ青な空に流れる白い入道雲。初夏を過ぎ夏真っ盛りなこの時期に、臨海学校は行なわれる。古風な宿に到着したIS学園一行は、女将へと挨拶した後、そのまま部屋へと直行。自由時間を満喫する為に、太陽がサンサンと降り注ぐ外へと飛び出した。
旅館前は道路を挟んで砂浜となっている。ここは毎年IS学園が貸切としている場所であり、その事に慣れている地元住民は旅館の従業員や、海の家の人間以外誰も居ない。車すら通らないのだから、結構徹底されている。
別に嫌ってそれを行っている訳では無く、ISは今はあくまでスポーツの一つとはいえ、元々は最強の兵器として君臨していたものだ。これが学校行事であり、授業の一環として来ている以上、当然実地訓練が存在する。
といってもまだ訓練も十分ではない一年生に無茶な要求等ない。あくまでIS学園外と言う、本来なら整備道具がそろった環境から脱し、実戦に近い満足に整備施設が無い場所での整備訓練や武装チェックといった事を行う。
これには機動訓練も含まれており、元とはいえ兵器のそういった訓練を行う為に、事故があってはいけない為、納得して貰ったうえで簡易封鎖を行っているのだ。ただそれもお願いと言うレベルである為、破ったとしても別に御咎め無であり、教師もつく為に過去に事故を起こしたという事例は無い。
IS自体がまだ若いとはいえ、登場してからもう5年6年経っている。この学校行事も今年で四回目であり、ああ今年もこの季節がやって来たんだなといった感じで地元住民にも受け入れられていた。
そんな砂浜に、IS学園一年生徒の殆どが突撃したのだ。一学年だけとはいえ、砂浜となっている場所はあまり広くなく、すぐに芋洗い状態となってしまう。
「大丈夫かよ。」
「けほ、あーびっくりした。」
「馬鹿者。びっくりしたのはこっちだ。」
そんな砂浜に一夏に背負わた鈴が沖から上がってくる。日焼け止めを塗った後、バスの中で話した通りに一夏との競泳勝負となり、最初は圧勝していたものの、飛ばし過ぎた為か足を攣り、溺れ掛けたのだ。
この勝負に参加していた弾や箒も居たからこそ、溺れ掛けたで済んだが、もし一夏だけであったのなら本気で溺れていたのかもしれない。心配そうに声を掛ける一夏だったが、鈴の暢気そうな感想に、箒が切れかける。一夏がまぁまぁと取り成したが、それでも鈴が溺れかけた事もあり、取り敢えず泳ぐのは一時中断とした。
「って言うか貴輝は如何したんだ?」
「何か持って来たもの用意してくるってさ。ほらよ鈴。」
「ありがとう。」
「何か嫌な予感がするんだが。姉さんも組んでいたようだし。」
「マジか。」
そんな折一夏が周りを見渡して、貴輝が居ない事に気付く。あまり広くない所の為、それこそ離れた場所にある岩浜で釣りでもしているとならない限り、まず見つからないと言う事は無い。
溺れかけた鈴の為に海の家で飲み物を買ってきた弾が一夏の疑問に答えると、箒が束も似たような事を言っていたと思い出したかのように言う。
一夏も箒から齎された情報に嫌な予感がする。唯でさえ世界を引っくり返してしまう程の物を作れる二人が組み、更に束という愉快犯付。貴輝も何気に、物作りに置いてはっちゃける事が多々あり、佐藤工房でお世話になっている箒と、佐藤工房に所属していると言う事になっている一夏はそれを知っていた。
ちなみに鈴の水着は、赤と白のストライプのスポーツタイプ。最初から一夏と遊ぶ事を目的としての水着であり、箒は赤いビキニタイプの物。泳いでいる時は巻いていなかったが、今はパレオを巻いている。
「ってか二人は何してるんだ?」
「むっ、嫁よ。見て分からんか?」
「いや、城だというのは分かるんだが、何でこんなに巨大な物になってるんだよ。」
「…最初はただのトンネル作りだったんだがな。」
そんな四人の傍には誰も近寄ってこない。正確には四人の横で作られている壮大な砂の城が原因であり、それを作り上げているラウラと円夏。思わず泳ぎもせずに何をしているんだと一夏が聞くも、ラウラが黒のヒラヒラが付いたワンピースタイプの水着に包まれた胸を張ってまるで子供の様に誇らしげにする。
黒いビキニに包まれた円夏は、一夏達の何とも言えない視線に耐えられなかったのか、言い訳しながら目を逸らした。
最初はただ海に来て、どうやって遊べばいいのか分からないと質問してきたラウラに答えようとし、自身もそういった経験が無い為、答えようがなく、偶々前日に見た砂で遊ぶ事を提案。ただ砂を盛り、水を掛けて固めた後、穴を掘ってトンネルにして遊んでいたのだが、ふとラウラが指摘した、トンネルを抜けた後の防備施設の貧弱さという議題で盛り上がってしまったのだ。
軍の人間と裏の暗殺者というのが本業の人間が、マジになって議論し、更にはこういった設備がここにあったのならと仮定して作っていく内に、日本式の城に近い物となって行って、しかもそれを止める人間も居ない為、此処まで巨大となっていったのだった。
「あははは、ちょ、暁美さんは、あはは、何処を触って、居るんですかっ!!」
「まぁまぁ、セッシーのお肌すべすべだねェ。」
「ちょ、いひひ、いい加減に、うひゃぁ、してくださいっ!!」
少し離れた場所で、パラソルを開いてその下に寝そべり、日焼け止めを塗られていたセシリアだったが、暁美がそれ以外の場所を触りだし、笑い声が木霊するようになっていった。最終的に喘ぎ声が混じり出すほどに悪戯されたセシリアが怒り、逃げる暁美を追いかけ回し、海へと入って行った。
「いや、あの二人も元気だねェ。」
「ねぇ、ダダンダン。」
「あん?ってノホホンさん?それ水着か?」
「水着だよ。って写真撮らないの?」
「あっ、そういえばそうだった。ワリィちょっと行ってくるわ。」
ほのぼのと暁美とセシリアの追いかけっこを見ていた弾にノホホンさんが声を掛けてくる。声が掛けられた方を向いた弾が思わず頭を抱えた。
ノホホンさんの格好はまるで着ぐるみパジャマの様な、ダボダボのキツネ。弾の疑問に立派な水着だと答えたノホホンさんだったが、そこで本来の用件を思い出し弾に告げた。
学校行事では大切な思い出の写真を写さなければならない。これはクラス代表の仕事であり、それを忘れていた弾にノホホンさんが声を掛けて来たのだ。
別に遊ぶなとも言われていないが、それでも全ての時間を遊びにあてる訳にもいかない。一夏達に声を掛けて詫び、鞄の置いてあるパラソルの場所まで駆けて行った。
「…ねぇ、あれ何?」
「うん?…バナナだな。」
「うん、そうだな。ワニやシャチも居るな。」
弾が駆けていくのを見送っていた一夏であったが、鈴の言葉に正面を向く。そこには海の上を爆走するビニールのバナナボートがあり、その後ろをワニボートとシャチボートが追いかける。
浮き輪の一種で掴まったり、寝転んだり、またがったりしてノンビリするのに使うものであるが、まるで水上バイクの様に爆走する物ではなかったはずだ。
「んで、何なのよあれ。」
「浮き輪型のISだよ。」
「ハァアアアア!?」
その有り得ない光景に、何をやらかしたのかと鈴が問い詰める様に言葉を発した。いつの間にかやって来たのか、貴輝が其処におり、とんでもない事を抜かしてくれやがりました。
束と共同で作ったISの一種であり、武装も出来ず絶対防御もないがPICで動く浮き輪。しかも思考制御だそうだ。
「何を作ってるのよ。何をっ!?」
「仕方ないだろう。幾らIS学園の生徒だからって、水上バイク扱いの物を無免許で扱わせるのは。」
鈴のツッコみに今更感が強い常識で返してくる貴輝。確かにISであるのならば、それを専門に勉強している生徒達にも乗せる事が出来る。一夏達は何とも言えない顔で、それで遊んでいる生徒を眺めていたのだった。