かさもってかなきゃ!
宮崎の宿、朝のロビー。
斎藤社長はチェックアウトの手続きを終えて、ソファで一息ついていた。そこに、やけに緊張した様子のアクアが現れる。
「……斎藤社長。少し、お時間よろしいでしょうか」
「……どうしたアクア。語尾に『殿』でもつけそうな勢いだな」
「いや、真面目な話です。僕の“けじめ”として、どうしても伝えたいことがあります」
社長が座り直す。
アクアは深呼吸してから、正座をした。
「斎藤社長──アイを、星野アイを、僕にください!」
「………………ん?」
絶妙な沈黙が流れた。ロビーのBGMがやたら耳につく。
「……ん?何を言った今?」
「アイさんを、ください!」
「やっぱりそう言ったか。いやいやいや待て待て待て。話がいろいろおかしいだろ!?お前5歳児だぞ!?いや!それ以前にお前アイと血が繋がってるんだぞ!?」
「本気です。確かに今世はアイの息子だ。けどそれでも僕は、雨宮吾郎としてアイの夫で居たい!」
「おい、理解が追い付かねぇよ!!?てかもし、それがまかり通ってもアイはアイドルだ週刊誌に見つかれば一発アウトだぞ!?」
「ルビーにはもう正体を明かしました。そして昨夜、アイ本人にも打ち明けました。お互いの想いは確認済みです!」
「待って!?確認済みってどういうこと!?確認って何!?てか話しきけ──」
「ご安心ください。俺たちは“心で繋がった”だけです」
「それもそれで意味がわかんねぇんだよ!!」
社長は頭を抱える。だがアクアの顔は真剣そのものだ。
「俺は、本気でアイを幸せにしたい。前世の俺ができなかったことを、今度こそやり遂げたいんです。だからこそ、アイのマネージャーであり父のようにアイを支えてきたあなたに、正式に許可をいただきに来た次第だ」
「……いや急に真面目になんなよ…はぁ…5歳児がこんなこと言ってもなぁ…絞まらねーっつかまぁ…なんだ」
社長は呆れながらも、目を細める。
「……本当に、君なんだな。吾郎君」
「ええ。目の前の現実からこの五年間逃げ続けた、どうしようもないバカです。…でも今は、ちゃんと覚悟を決めました」
「……アイを泣かせるなよ?」
「もう…死んでも泣かせません」
「……よし。じゃあ“保護者の同意”ってことで、俺が許す。どうせ俺もあの子の父親みたいなもんだからな」
「ありがとうございます、父さん!!」
「やめろやめろやめろやめろ!!今こお前が言うと俺がアイの伴侶みたくなんだろ!!何この地獄図!!」
その直後、ロビーに来たアイとルビーがそのやり取りを聞いていた。
「……え?なにこの修羅場?」
「お兄ちゃん、地獄絵図すぎるよ……」
「ち、違うんだアイ!これはその……儀式というか、決意表明というか──」
「……ふふっ、なんか、いいね。こういうの。ゴローせんせ、ちゃんと成長できたんだね」
「アイ!?なんでここに…いや…。そうだよな…まだ言って、なかったよな…なぁアイ…」
「なぁに…ゴローせんせ」
「結婚してください!!」
「……うんっ。喜んで!」
「──うおおぉい!!!??」
宿のロビーに、朝から絶叫が響いたのだった。
っぱ、ゴロー先生がいちばんちゅき