新年が明ける、除夜の鐘こそ聞こえなかったがそれでも年越し蕎麦は食す事が出来た、大変美味であった。
“マコラ、明けまして──”
「その挨拶は
“……?やる事?”
大掃除も終えて新年も無事迎えた、これからやる事といえば……なんだろうか餅の仕入れは終わらせてるしな……
「まあそこまで大袈裟な事じゃない、単に初日の出を見たいだけだ、お前と二人でな」
“……そっか、確かに大事だもんね、それも”
「防寒はしっかりしろよ、この世界で唯一の特等席からの初日の出だからな、生涯忘れられない思い出を確約しよう」
それは楽しみだ、だけど唯一の特等席……?どう言う事だろう?
「ほらほら!急げ急げ、時間は待ってくれないぞぉ!」
“分かった分かった、だから落ち着きなって”
◆
それで厚着のコートを着せられた上で外に出されたんだけど明け方直前とは言えまだ真っ暗だ、街灯が無ければ星明かりが地上を照らしてくれるだろう。
“確かに寒いけどさ、こんなに着込む必要ある?登山に行くみたいになってんだけど”
「アンタにとっちゃ滅茶苦茶寒いだろうからな、3000mの高さは」
“へー、3000……3000m⁉︎”
「おう、しかもただの3000mじゃねえぞ、地上3000mじゃなくて上空の3000mだ、上空3000mまで上昇し雲海を眺めながら日の出を迎える‼︎正にこの世で一つだけの特等席って訳だ!」
“あぁ、だから厳重な防寒体制を……”
「そう言う事だ、ほら掴まれ、飛ぶぞ」
“あぁ、やっぱりその運び方なんだね……
そう言ってマコラは鵺展開して翼を背中から生やした、私が掴まる予定だった所だ
“あの……マコラさん?”
「なんだ」
“何故背中から翼を生やしたのでしょう?掴まれって言ったよね?”
「背中に掴まったら翼を生やさなくなって飛べなくなるだろう、これまで
“じゃあ俺はどこに掴まればいいんだよ真正面から抱きしめんのか?”
「おいおいおい、新手のセクハラか?これでも
“掴まれって言ったのそっちだよね⁉︎”
「流石に冗談だ、抱き抱えてやろう、VIP待遇のお姫様抱っこだ、嬉しかろう?」
“お姫様抱っこて、仮にも現役学生の生徒が成人男性をお姫様抱っこて……”
「……?アンタは軽いが?」
“そうじゃねえんだわ”
「なんだ、他に何か気になることでもあるのか?私としては実に役得な訳だが」
“お前がやりてえだけじゃねえか……安全運転で頼むぞ⁉︎”
「任せろ、世界で一番安全性の高い空間を約束しよう」
そうして私はマコラに抱き抱えられて空への飛翔を始めた、地上の重力から解放された、飛行機もヘリも使わない、個人の能力のみでの飛行を可能とさせる、キヴォトスでも稀有な能力持ちだ。
どんどん高度が上がっていく、私の身体の負担を考慮してか普段の速度に比べれば一目瞭然の速さだが、逆に返って良かったかもしれない、まだ消点前の街並みの明かりが一望できる、街の光がまるで地上にできた星空の様で輝かしい光景だった。
そして空に視線をやらばかなりの高度を上昇したのだろう、満天の星空が私たちを出迎えてくれた、眼下には人間が創り出した人工の端々、天には雄大な宇宙に鎮座する天然の星々、二種の異なる星々に挟まれ俺はいつしか童心に帰っていた。
“マコラ!地上の街の光が星みたいだ!空の星も綺麗で、上と下で星に囲まれてる気分になるよ!”
「そうかそうか、その感想を聞けただけでも空に連れ出した甲斐があったと言うものだ」
一生涯を賭けても見れるかどうかと言う景色に興奮が収まらない、しかしその興奮も束の間一気に冷え込んだ空気に包まれる。
当然か、何せ俺たちの現在高度は1000mを超えてるんだ、防寒着は万全とはいえ流石に寒い、とは言え分かり切っていた事だ、それに備えての準備も整えてある。
“マコラ、ちょっと動くね、確か魔法瓶に温めておいたココアが入ってるから、それを飲もう”
「ほう、用意がいいな、しっかり寒さ対策はしている訳だ」
“マコラ、口開けて、飲ませるから”
「いや、そんなことしなくても飲めるが……」
“私は今君に抱き抱えられてる訳だから今君が手を使う普通に私の身が危ないんだよ”
流石に高度数千メートルの高さからのダイブは二度も経験したくない、本当に寿命が縮む。
「んむ、……悪いな」
“どういたしまして”
◆
冷えこんだ身体にあったかいココアが染み渡る、冷えた身体に一気にあったかい飲み物を摂取したのだから身体が赤いのは自然なことなのだ、そうに違いない。
──少しずつ空に明かりが灯されていく、地上の星は白いベールに包まれ消えてしまった、今自分達を照らすのは遥か天上の星々のみ。
──先生、あれを見てみろ。
シャーレの専属生徒である彼女が目線で私の視線を誘導する、ただそれだけの仕草に、私は胸打たれたのだ、こんなにちょろいつもりはなかったのだが。
遥か地平線の向こうから日が登ってくるのが実感する、今この地に新年の光が来ようとしている、そんな出来事に胸をときめかせていたその瞬間、急激な浮遊感が私を襲った、まず間違いなく私たちは落下している、何故か、答えは簡単だ、彼女が鵺を解除したからだ。
──さて先生!私たちの初日の出はここからが本番だぞ‼︎
件の彼女は軽快に笑い飛ばしながら私の手を離さず共に落ちていく、大きな声で叫ぶ私を他所に彼女は心の底からとても楽しそうに笑うのだ、それは以前の彼女からしたら信じられぬ事ではあった、こんな事で発揮して欲しくなかったが、でもその全ての感情を吹き飛ばすほどに──。
──見ろ先生!日の出が始まったぞ‼︎雲海と合わさって絶景だ!
日の出の光と雲海によって反射された光に照らされた彼女の屈託なき笑顔は何よりも、美しかった。
成程、確かにこれは世界で唯一の特等席な初日の出と断言できるだろう、初日の出を背景に無邪気に笑う彼女を見ると今が落下中であると言うのを忘れてしまう、それ程の絶景だったのだ、こんなの忘れたくても忘れようが無い、本当に彼女は──。
──先生!私はアンタとこの景色を見ることが出来て本当に良かった!
本当に、ズルい生徒だと思う、だってそんな事を言われたら怒るに怒れないじゃないか。
いつかの時の月見もそうだったが、今回のこれはダメだ、俺は、彼女に完全に恋をしてしまったのだ、生徒としてでは無い、個人として神将マコラという人物をどうしようもなく好きになってしまったのだ。
“あのさ、マコラ……”
──どうした?先生。
彼女はとても優しい笑顔と声色で返事をしてくれた、俺は──。
──悪い先生!そろそろ翼を展開しないと速度を殺さねえ!
そう言ってマコラは鵺を再び展開した落下速度を軽減する、その勢いで正気に戻る、俺はその場の勢いに任せてとんでもない事を口に仕掛けてしまった、猛省しなくてはならないだろう。
──それで?何かあったのか?
こっちのそんな気も知らずに声を掛けてくるこの子に対して初めて憎いと思った、でも返って良かったのかもしれない、この気持ちはまだ、胸に閉まっておくべきなのだろう。
“いやなに、今日はありがとうってね、言おうとしたんだ、こんな初日の出は初めて見たからさ”
彼女はそうかそれは良かったとまた笑顔を浮かべて返事をした、本当にこの子ときたら……ズルい子だ。
◆
「ふう、数十分振りの地上だな、どうだった?フリー落下しながら見る初日の出は」
“何度も言ったけど最高だったよ、進んでやりたいとは思わないけどね”
「そうかそうか、身体を張った甲斐があったと言う物だ、さて先生、明けましておめでとうございます……だ」
“今年もよろしくお願いします、マコラ”
──さて、新年も気合い入れて励むとしようか。
年明け前の21時に描き始めてこの時間までに完成が遅れる遅筆っぷり
というわけで新年あけましておめでとうございます、本年も励ませて頂きます
【最終決定】IF世界線のマコラ
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