事は数時間前に戻る、便利屋68がアビドス学区に向かう前──。
『すまないが社長、私は独自に調べ物をさせてもらう故、少々単独行動を取る』
『えぇ⁉︎いきなりそんなこと言われても困るんだけど⁉︎』
マコラは便利屋の皆に調べ物をする為に少し別行動をすると言う、当然それに対して困るのは社長のアルを筆頭にメンバー各員だ、なにせマコラは現状の最高戦力、欠けた分の穴を埋めるのは容易い物ではない。
『案ずるな、決行前には戻る、
『……確かに言えてはいるけど、アンタが居て負けるとも思えないんだけど?』
マコラの発言に対して苦言を申すのはカヨコだ、彼女は持ち前の警戒心の高さでマコラの一挙一動を警戒している、要は単独行動をさせたくないのだ、いついかなる時も目の届く場所に置いておきたい、そんな思惑があった。
『ククッ、確かにな。私が居て負けると言う事はまず有り得ない』
『なら──っ』
『だが‼︎絶対に勝てるとも言い切れない‼︎』
『──ッ‼︎』
『何故か‼︎未知数だからだ‼︎敵方の兵力、兵器の数、弾の数、拠点の数、其れ等を統合した総戦力‼︎そのどれもが不明、未知数、故に調べ尽くすのだ、人数を‼︎個数を‼︎武器の種類や兵器の種類‼︎拠点の位置
酷く真っ当な意見だった、一字一句反論の余地もないほどに。
『……いいか、持てる力を持ったまま振るって敵を蹂躙するのはそりゃ獣にも出来ることだ、獣にもできるが故に私達人間にも出来る、ならば獣に出来ず私たち人間にしか出来ない事……それは──此処だ』トントン
そう言うとマコラは己の頭部を親指でトントンと当てる、それの意味する所を理解できない彼女達ではない。
『頭を使う……もっと言えば知恵を、知略を、作戦を立てて戦うって事ね』
『そうだ、強大な力を持つ獣に対し人間が編み出した力、それは知恵と言う武器‼︎力の限り蹂躙して勝って満足するのは二流だ、最小限の力で最大限の成果をスムーズに熟すのが、一流って物だ』
『……分かったわ、別行動を許可します、その代わり‼︎決行前には絶対に帰ってくるのよ⁉︎貴女が今作戦の主力なんだから‼︎』
『感謝する、それと……無茶を言った礼だ、これで何か食べるといい、アビドスには名物のラーメン屋があるそうだが』
マコラは去り際に食費として金銭を渡してきたのだ、その際にもまた一悶着あったのだが、曰く先行投資として渡された、突き返す前にマコラの姿は消えていた。
そして今──。
便利屋68の四人はラーメンの味を満喫し、その隣に座っていた生徒達ともすっかり打ち解けていた……
「うふふふっ!いいわ、こんなところで気の合う人たちに会えるなんて。これは想定外だけど、こういう予測できない出来事こそ人生の醍醐味じゃないかしら」
と言っているがその談笑しているその相手こそ今回襲撃する学区の生徒達であり、カヨコとムツキはその事に気づいていたのだがムツキの案により敢えて黙秘する事になった。
◆
「それじゃあ、気を付けてね!」
「お仕事、上手くいきますように!」
「あははっ!了解!あなたたちも学校の復興、頑張ってね!私も応援してるから!じゃあね」
……行ってしまった、まさかこの短時間の間で此処まで仲良くなるとは……コミュ力お化けの女子高生は怖いものがあるね。
彼女たちはとある仕事をしており、その仕事内容は様々で今回は仕事で此処まできたらしいのだが……正直な所かなり怪しい、このタイミングで他所の生徒が“仕事を依頼されて”やってくるなんて。
彼女たちは体良く利用されているだけだろう、廃校に追い込んでいる大元には届かない、大凡チンピラや不良グループじゃ太刀打ちできないのを見て同じ生徒を使う事にしたって辺りだろう。
「いい人たちでしたね……ああいう人たちがアビドスに来てくれるというのは嬉しいものがあります……」
“うん、そうだね”
◆
結局最後までアビドス生徒であると知らずに別れたアルだがカヨコとムツキのカミングアウトによりあの心優しい彼女たちが今回襲撃する相手であると知り打ちひしがれている、しかし仕事の時間も迫っているのも確かなので己に喝を入れ気合を入れ直したのだった。
「なんだよ〜、遅かったじゃん」
「少し野暮用よ。準備はできてるわね?」
「もちろん。なんでもいいけど、残業はナシでね、時給も値切られてるし」
今回雇ったバイトの時給を値切る案を出したのはカヨコだった、そもそもうちにはキヴォトス屈指の戦力のマコラがいるのだからバイト傭兵は相手の出方を伺うぐらいの使い方にするべきという発案、アルはそれを快諾し質ではなく量を、しかも短時間の雇用で出費を抑えていた。
「細かいことは今は置いておいて!さあ、行きましょう!アビドスを襲撃するわよ!」
「出動〜!」
「はあ……アンタはその姿のままでいいの?」
「あの姿は目立つのだ、それにキヴォトス全区に知られてる様だしな、まだ素顔の方が隠密性が高い」
「アル様!わっ、私、頑張りますから!ひとり残らず、ぶっ潰しちゃいますっ!」
直前にて合流したマコラと共に便利屋68一行はアビドス学校に向かうのだった。
◆
「校舎より南15km地点付近が大規模な兵力を確認!」
「まさか、ヘルメット団が?」
「ち、違います!ヘルメット団ではありません!……傭兵です!おそらく日雇いの傭兵!」
「へえー、傭兵かあ、結構高いはずだけど」
来たか、思ってたより行動が早いね、この速さは烏合の衆の類では不可能、となれば率いる頭がいる筈、このタイミング……偶然じゃない、間違いなくさっきの子達だろう。
「これ以上接近されるのは危険です!先生、出動命令を!」
“うん、総員、出動‼︎”
◆
さて、どう出るかな……通常戦いに於いて不利なのは防衛側だ、限られた資源で向こうの戦力を減らし戦意を削がなくてはならない、しかしそれは資源が困窮してる場合に限る、今は私が補給線を担ってるのもあり弾薬の類は潤沢だ、驕るわけではないが私の指揮とこの子達の強さがあればそれなりの人数不利は解消される、不安材料は……。
“向こうの切り札の存在……かな”
「先生?ッ!前方に傭兵を率いている集団を確認!」
「あれ……ラーメン屋さんの……?」
「ぐ、ぐぐっ……」
見るからに動揺している……あの子、悪ぶってるけど性根はかなり善良な子なのだろう、
「誰かと思えばあんたたちだったのね‼︎折角友達になれると思ったのに、このひとでなし‼︎」
「あははは、その件はありがと。それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ」
「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと、受けた仕事はきっちりこなす」
「……なるほど、その仕事っていうのが便利屋だったんだ」
「もう!学生なら、他にもっと健全なアルバイトがあるでしょう?それなのに便利屋なんて!」
“いや、その考えは少し違うかな”
「え?」
“便利屋だからこそ出来る仕事と言うのもあるでしょ、世の中には非健全な仕事でしか生きていけない子供もいる、それだけの事だよ”
「そっそうなんですか?」
「そう!れっきとしたビジネスなのよ!ちゃんと肩書だってあるんだから!私が社長!あっちが室長で、こっちが課長……」
「はあ……社長、ここでそういう風に言っちゃうと、余計薄っぺらさが際立つ」(課長)
さてはあの子、相当面白い子だな?振り回し振り回されての姿が想像に容易い、あの子が頭として……あの課長の子がブレーンかな?室長の子は場を掻き回す雰囲気あるし、警戒はあの子だな。
「誰の差し金?……いや、答えるわけないか、力尽くで口を割らせるしか」
「ふふふ、それはもちろん企業秘密よ?総員!攻撃!」
“皆‼︎来るよ‼︎戦闘態勢‼︎”
彼女の合図と共に後ろの奴らが攻撃してきた!特訓の時に比べたら練度は低いけどそれでも数が多い!数の利はそのまま戦況の有利不利に直結する!
“ホシノ!前に出過ぎちゃダメだ!3歩右後ろに下がって!十字砲火を喰らう!”
「っととぉ、それは遠慮願いたいねえ!」
“シロコ!セリカ!カバー!ノノミは空いた左射線の掃討!”
「「「了解‼︎」」」
一先ずはこれで余裕は出来る…けどコイツらは恐らく“削り”だ……奥の子たちが本命だな。
「へえー中々やるじゃん、向こうも」
「あの大人がかなり優秀な指揮能力を持ってるみたいだね、攻めるに攻めきれない、どうするの?」
「どうもしなくていい、あれは相手の実力の測りと消耗を誘う為の削りでしかない、本命は我々なのだから何も不安がらずドンと構えておけばいい」
「ふふふ……そういう事よ」
敵の増援!戦況は……ホシノが少し喰らってる、なら此処は…
“アヤネ!ホシノに回復!その間シロコとセリカで戦線維持!”
「状況を把握しました!行きます!」
「うへ、ありがと〜助かる〜」
押し込んでくる数が多いな……だが一塊になっている、それは悪手でしょ。
“ノノミ!前の塊に一斉掃射!”
「はーい!お仕置きの時間ですよー!」ズダダダダダッ‼︎
傭兵達の一掃は完了、あとはあの
「あらら、バイトの皆倒されちゃった、どうするのアルちゃん?」
「慌てる必要ないでしょ、元々織り込み済みだった訳だし。……誰一人欠けてないのはちょっと予想外だったけど」
「えぇ!以前問題ないわ!さあ行くわよ!ほらあなたもいつまでも腰を下ろしてないで立ちなさい!仕事よ仕事!」
“いよいよ本命って訳だね”
「関係ない、アビドスを危険に晒す奴はみんな倒す」
「当然でしょ!タダじゃおかないわ!」
「うへー、皆やる気満々だねえ、でもまぁ今回はみんなと同じ意見かなー」
「でも皆さん見てください、ラーメン屋では居なかった子が居ますよ?」
「誰であろうとぶっ倒すだけよ!関係ないわ!」
「ンン……随分と、威勢の良い奴がいるな、もとより退屈な気配はなかったがこれは予想以上に楽しめそうだ」
…ッ!この、声、は!まさかッ!
「ククッ元より寄せ集めの集団に期待はしていなかった故にこの結果に思う事はない……だがッ‼︎まさかこんな所でアンタと再会できようとは‼︎」
シャーレに配属されたその翌日、脳裏に刻まれたその声とその圧力!そしてこの目で見たその実力!知りすぎるほど知っている!そいつの強さ!事強さと言う一点において彼女以上はないと言い切れるある種の信頼!そんな彼女がまさか……まさかこんなところにいるだなんて!
「共に再会を分かち合おうじゃないか、先生」
“私は今この状況では最も君には会いたくなかったよ…!マコラ‼︎”
予告と大分変わったな…なんだこの登場の仕方は…ラスボスかテメーは
【最終決定】IF世界線のマコラ
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アビドスIF
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ゲヘナIF
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トリニティIF
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ミレニアムIF
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アリウスIF
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ゲマトリアIF