布瑠部の方陣は透き通る世界で循環する   作:Another2

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本誌にて行われた宿儺先生による魔虛羅の適応講座を見た、お前そんなこと出来んの?ってなった、マコラちゃんそんな事出来んの?怖くね?いやこっちのマコラかなり弱体化してるけども、いや十種あるからどっこいどっこいか?


対価

 暫くして再び教室に戻った私たちは今度こそ作戦会議を始める、ホシノ達を見ればどうやら解決した様でスッキリした様な表情になっている、涙の跡が残ってるが指摘するのは、野暮って物だろう。

 

「うへ〜、なんか多大なる迷惑をかけちゃった、ごめんね」

 

“こっちこそごめんね、無理矢理言わせる様なことして”

 

 結果はどうあれ私は生徒に無理矢理辛いことを思い出させた挙句キツイ言葉を投げたのは事実だ、それだけは消えることはない、もし私の両親や先生ならまだマシな言葉を言えたのだろうか……ダメだな負の方向に思考が偏っている、持ち直さないと。

 

「それで?隠し事を明かす気にはなったのか?」

 

「うん、ずっと抱えてても仕方ないし、それに……」

 

「それに?」

 

「可愛い後輩ちゃん達から頼ってって言われたらさ〜、隠し通せないでしょ」

 

「そういうものか」

 

「そう言うものだよ。それでね、今日どこに行ってたかなんだけど……ちょっと取引をしに行ってたんだよ」

 

「取引……ですか?」

 

「そう、カイザーPMCの裏で手を引いてた奴とちょっとね、あぁ皆が思ってる様な事じゃないよ、そいつはもうカイザーとは縁を切るって言ってたし」

 

 滅茶苦茶怪しいな、騙されてないかそれ。

 

「お前はそれを信じたのか?今の今まで搾取されてきた様な奴を?よりによってお前が?」

 

「まさか、そんな訳ないでしょ、今までの分はいつか返すよ、でも今はそれより優先することがあっただけ」

 

“その人の特徴とかあるかい?”

 

「んーっとね、黒いスーツを着ててぇ……顔も身体も真っ黒な奴だったよ、後顔には亀裂みたいなのがあったかな」

 

 クリーチャーかな?明らかに人間の特徴じゃないんだけど、そいつは本当に人間なのだろうか、と言うかマコラが固まってる、知ってるのかな。

 

「成程……お前、“黒服”に会っていたのか、となればお前が例の生徒……」

 

「……知り合い?」

 

「昔一度だけ度顔を合わせて少し話し合っただけだ、黒服と称した様に私はそいつの名前も行方も知らん、それで?奴はなんと?」

 

 そしてホシノは全てを話してくれた、その黒服って奴がカイザーとは縁を切った事、その理由がカイザーがマコラと敵対したからと言う事、そしてホシノに対してあてがわれた【依頼】、デカグラマトンと呼ばれる機械の機能停止、だが一番の懸念点は……

 

“マコラの力に興味がある……ねえ”

 

 これだ、マコラが有する力、それは規格外と言っても差し支えない、頑強な肉体、複数の武器を出す戦法、そして何より、マコラの力の象徴である“方陣”……ホシノ曰く黒服が言うにはその力はマコラに備わってる神秘という奴を制御下に置いたからなんだそうだが……本当にそれだけだろうか、もっとデカい何かが蠢いてる気がしてならないがいかんせんかの分野は私の専門外なので何もかもが推測の域を出ない。

 それにしても長らく眠ってた奴がここ数十年でいきなり活動しだした……か、いや、考えすぎだろう、マコラの年齢を考えれば可能性の一つとしてなくは無いが、あくまでその程度だ、例の髑髏面の事もある、何かを決めつけて視野を狭めるのは悪手だ。

 

 ただ……黒服って奴と髑髏面が繋がってるってのは結構ありそうだな、ヒナが言うには髑髏面が砂漠で何かをしていたと言う情報と現に砂漠で何かを探しているらしいカイザー、そしてその砂漠に居るオーパーツの処理を依頼した黒服、三者共に砂漠で事を起こしているこの実情、偶然じゃない、黒服はカイザーを切ったと言った、だからカイザーは都合よく使われているだけだろうからこの二者が仲間なのは無い。

 次にカイザーとは髑髏面が手を組んでる可能性だけど……正直なくは無いレベル。

 最後は黒服と髑髏面が共謀していると言う事、正直言ってこれが一番高いと見てる、この二者が手を組み暗躍し且つ、それを悟らせない為にカイザーと言う巨大企業を使い目眩しって所だろう、一番最悪なのがこの2人が一つの組織として動いていた場合だ、そうなると髑髏面と黒服以外に暗躍に長けた存在が複数いることになる、更に言うならそいつらの目的はマコラだろう、曰くホシノを凌駕すると言う神秘量、この神秘という要素だけが思考のノイズなのだが、要はエネルギーみたいな物だろう。

 そしてマコラと出会ったこのタイミングでの依頼……明らかにマコラを駆り出そうとしている魂胆が明け透けだ、恐らく黒服はそのデカグラマトンとやらの破壊をアビドスの皆だけで出来るとは微塵も思っていないのだろう、しかしその依頼を通した、何故か?マコラがいるからだ、マコラがいるならその機械の破壊も可能と見たわけだ、あわよくば現状のマコラの実力も測りたいって辺りだろうか?

 何にせよ自分達は断れない立場にある、何故ならそのデカグラマトンを処理しなければまた大規模な砂嵐が起こり得るし、何よりその元凶かもしれないとなれば尚更。

 

「まぁ、黒服は私の力に興味はあるだろうな、初対面からそう言った事を隠さなかったし」

 

“……正直今は裏方のことを考えてても仕方ないと思う、今私たちがやらないといけないのは表舞台の掃除、正直他者の欲を満たす為に用意したステージの役者を自分達が演じさせられるのは業腹だけど”

 

 取り敢えずは黒服とデカグラマトンについてはこれくらいでいいかな、まだ実物を見てないし何より情報が何もないからね。

 

「さて、少々話題を逸らすことになるが……一先ずはこれを見て欲しい」

 

 そう言うとマコラは一つの紙を机の上に放り投げる、開かれたそれは地図の様でもあった、これってまさか……

 

「これは……アビドス自治区の【地籍図】ですか?いつの間にこんなものを……」

 

 流石アヤネ、普段からこういったものを調べているからかそちらの頭の回転が早い。

 

「然り、少々気掛かりだったのでな、これだけデカい街だと言うのに、住民の数が少なすぎる、いっそゴーストタウンと言っても差し支えない程にな、それで地籍図(そいつ)を探していたんだが……見てみろ、とんでもない事が記されてるぞ」

 

 マコラの言う通りに私たちはアビドスの地籍図を確かめてみる、そこに記されていたのは……

 

「なっなにこれ⁉︎どう言う事⁉︎」

 

 セリカが突然大声を上げる、しかしその気持ちも理解できる、何故なら地籍図に記されている土地の所有権を有しているのはアビドスではなく、カイザーコンストラクションと呼ばれる、またしてもカイザーの手先の名前だった、唯一残っている土地は本館がある此処とその周辺の極一部、それ以外の全てがカイザーコンストラクションの物になっていた。

 成程ね、此処周辺の土地が全て向こうの物になってるからカイザーはアビドスの土地を自由に扱えるわけか。

 

「どうしてこんなことに?学校の自治区の土地を取引なんて、普通できるはずが……いったい誰が、こんな事を……」

 

「……アビドスの生徒会、でしょ」

 

 ホシノの発言に皆が驚愕する、それはそうだろう、自分達の地域を手放す事になるからだ。

 

“ホシノ、この事については……”

 

「いや〜おじさんも知らなかったよ、アビドスの前の生徒会には入ってたけどさ、その辺の生徒会の先輩たちとは実際に関わりはなくてさ、私が生徒会に入った時には、もう生徒会の人たちはほとんど辞めちゃってたから」

 

「え⁉︎ホシノ先輩前の生徒会の一員だったの⁉︎」

 

「そうだよ〜、黙っててごめんね?それで確かその時にはもう在校生も二桁になってたし、教職員もいない、授業なんてものはとっくの昔に途絶えてたんだよ」

 

“は?授業が途絶えてた?マジに言ってんの?”

 

「大マジ、生徒会室もそうと言われなければただの倉庫にしか見えないところだったし、引継ぎ書類なんて立派なものは一枚もなかった、ちょうど砂漠化を避けようとして,学校の建物を何度も移してた時期だったって事もあってね、そもそも最後の生徒会って言ったって、新任の生徒会長と私の二人だけだったし」

 

 授業が途絶えてて?生徒会が二人しかおらず、且つ学生も二桁ね……なんっつう学生生活送ってんだよこの子は……‼︎

 

「その新任の生徒会長ってのが、さっき言ってた……」

 

「そ、ユメ先輩、その人は無鉄砲で、会長なのに校内でも随一のバカで……私の方だって嫌な性格の新入生でさ、いや〜……何もかもめちゃくちゃだったよ」

 

「校内随一のバカが生徒会長……?何それ、どんな生徒会よ……?」

 

「成績と役回りは別だよ、セリカ」

 

“生徒会長は人望とか、そう言ったところを見られるケースもあるからね”

 

「そもそも、セリカちゃんも成績はそんなに……」

 

「わ、分かってるってば‼︎そんなに言わなくていいじゃん‼︎どうして急に私の成績の話になるわけ⁉︎一応ツッコんでおいただけじゃん⁉︎」

 

「成績云々は置いといて万魔殿(ゲヘナの生徒会)も似た様な物よ?好き勝手学校の法律を作ってるし、何も考えてないのかどうかは知らないし興味もないけどね」

 

「そーそー!まだ風紀委員会の方がちゃんと仕事してるんだよね、私たちにとってはやりにくいけど」

 

「ヒナは……と言うより風紀委員会全体がゲヘナ生徒にあるまじき真面目っぷりだからね」

 

「だから風紀委員会と万魔殿はずっと仲が悪いんです……」

 

 それはそれで終わり過ぎでしょ、暴動とかを鎮圧する側が暴動を起こす側になったら最後だと思う、ゲヘナの生命線は風紀委員会に託されたのか……

 

「まぁゲヘナの事情は知らないけどさ、実際セリカちゃんの言う通りなんだよね、生徒会なんて立派な肩書なんて掲げておきながらその実中身はおバカさん二人が集まっただけだったからね、何の間違いだか生徒会なんかに入っちゃって……いや〜あの時はあちこち行ったり来たりだったねぇ……ほんっとにバカみたいに、なんにも知らないままさ……」

 

 言葉が詰まる、さっきのホシノの激情を見たからこそどれだけ彼女が苦労したか感じ取れたのだろう、でも、今のホシノは昨日までとは違う。

 

「ホシノ先輩が責任を感じることじゃない、昔の事情は知らないけど、実際に生徒会が解散になった後……アビドスに対策委員会ができたのは、間違いなくホシノ先輩のおかげ」

 

「う、うん?」

 

「……ホシノ先輩は怠け者だし、色々とはぐらかしてばっかりだけど、大事な瞬間には絶対に誰よりも前に立ってる」

 

「そうです、セリカちゃんが行方不明になった時、真っ先に先生に助けを求めたのもホシノ先輩でしたし……」

 

“そうだったね、いつも絶対に先陣を切る”

 

「私、それ初耳なんだけど⁉︎何で教えてくれなかったの⁉︎」

 

「ホシノ先輩は色々とダメなところもあるけど、尊敬はしてる」

 

「それって褒め言葉なの?悪口なの……?」

 

“いいじゃないか、完璧な超人より少しダメなところがある方が親しみが湧きやすい”

 

「そう言う物なの?」

 

「ククッ、確かに、一理ある」

 

「ど、どうしたのシロコちゃん⁉︎急にそんな青春っぽい台詞を……おじさんこういう雰囲気ちょっと苦手なんだけど⁉︎」

 

「や、なんとなく、言っておこうかなって思って」

 

「え、えぇ……?」

 

“いいじゃないか、青春っぽくても、学生なんだから青春は目一杯満喫しておかないとね、学生時代の不完全燃焼感は生涯残る物なんだよ?”

 

「先生まで……」

 

“真面目な話ね、人生なんて一回っきり且つ学生で居れる時間は小学生を含めても精々12年余り、大学とかあるならもう少し変わるけどね、それでも数年の違いだ、学生で居られる時間より大人、つまりは社会人だね、そっちで居る時間の方が圧倒的に長いんだよ”

 

“キヴォトスの人間の寿命がどれだけあるかは知らないけどね、外の世界じゃ平均寿命は80年弱、君たちが高校を卒業してそのまま就職活動をするとして大体年齢は18って所かな、そう考えるとほら、後62年も大人として暮らすことになる、60年以上の年月をさ、学生の時にあれをしておけば良かったなとか、あんな事をしたかった、とか思って生きたくないでしょ?”

 

「まぁ……それは、そうだけどさ……」

 

“だから限りある極短い青春の時間は精一杯謳歌するんだよ、それは学生にのみ与えられた特権なんだからさ、誰も文句は言わないし、()が言わせない”

 

「どうして?」

 

“……これは持論だけどね、若人から青春を取り上げるなんてゆるされないんだよ、何人たりとも、どんな形だろうとね”

 

 思い返すは喧嘩をしてそれからもう二度と会えなくなった親友の姿、今でもアイツの姿と声ははっきり覚えてる、俺の記憶の中のアイツとの思い出は今も尚色褪せなく残っている、そして……俺だけが()()になって変わってしまった。

 

“俺はさ、まぁそれなりの中高生活を送った方ではあるんだよ、でもその時期が楽しかったかって言われると微妙なんだよね、楽しむ暇もなく教職に就く為にみんなが遊んでるのを他所に必死に勉強してきたから、まぁ一種の義務感って奴?まぁ俺自身が先生になりたかったから後悔はしてないけどもそれでもどこか心残りはある、モヤっとしてスッキリしない感じ”

 

“それを知ってる自分だからこそ、皆には目一杯青春を謳歌して欲しいんだよね、学生なんてあらゆる事が一番楽しく感じれる時なんだからさ、過去を簡単に切り捨てろとは言わないけど、今ある貴重な青春はしっかり楽しむんだよ”

 

「……うん、分かった、先生がそう言うなら……私もそうする」

 

「えーっと……では、どうして前の生徒会は、カイザーコーポレーションにアビドスの土地を売ったんでしょうか?」

 

“それの答えは単純(シンプル)でしょ”

 

「ほう、答えを知ってるのか先生」

 

“まぁ推察を交えた答えになるけどね……”

 

「どのような答えでも構いません、今は一つでも情報が欲しいです」

 

“まあ単純にお金でしょ、土地って物によっては億単位の取引がされるし”

 

「なるほどね、最初は借金を返そうとして……って感じかな」

 

「借金のために、土地を……?」

 

“土地の価値はそれぞれ有るんだけど、私も詳しいわけじゃないんだけどね、滅茶苦茶大雑把且つ簡単に説明すると、その土地周辺がどれだけ金額が動いてるか、つまりは人の行き交いとか発展とかで地価は大きく変動する、わかりやすく言えば大きく発展して人の行き交いが激しい土地は値段が高いし、廃れて交通網が薄い田舎の土地は安い、もちろん例外はあるけどね”

 

“後は……そうだね土地の上じゃなくて土地の下にある物の価値とか、かな”

 

「建造物を建てる為ではなく土地の下にある物の価値……地下資源‼︎」

 

“そう、石炭や鉄なんかの資源は勿論、石油やレアメタルなんかが埋蔵されていたら、まぁこの世界ではかなりの価格になるだろうね、武器や兵器は勿論、日用品に加工できる原材料が取れるんだから、実際外の世界では石油産業で大儲けした国があるくらいだし”

 

「でもその土地を売っても借金が残ってるってことは……」

 

“まぁ、そう言う事だろうね”

 

 実際地下資源の有無は人が住む前に念入りに調査をするのが基本だ、そこに資源が埋蔵されているならそこは工業特区になってる筈、でもそうじゃないってことは少なくとも現アビドスにはそう言ったものはないってことだ、ただそうなると砂漠での作業が気にかかるんだよな……アイツら何探してんだ?

 

「それで繰り返し土地を売ってしまう負の循環に……ということでしょうか」

 

「何それ、なんかおかしくない?最初からどうしようもないって言うか……」

 

「そう言う手口もあるって事だろ、裏の世界じゃ良くある手法だ、忌々しい事に、な」

 

“マコラの言う通りかな、アビドスはさ、悪質な罠に嵌められたんだよ”

 

「……まって、今最悪のイメージが浮かんだんだけど、まさかそう言う事なの?」

 

“そう言う事だと思うよ、此処まで状況的証拠が集まってるんだし、ほぼ確定みたいな物だよ”

 

「……ごめん先生、私たちにも分かるように説明してくれると助かる」

 

 そうだね、一応余所者の便利屋の皆の為にも、復習を兼ねていたから説明しようかな。

 

“んー……事の発端は大砂嵐によるアビドス地区の埋没、これは異常気象とも取れるし例のデカグラマトンの所為とも取れる、だけど今これは問題じゃない、問題は此処からだよ”

 

「うん、そこまでは分かってる、続けて」

 

“この大砂嵐によって自治区の大半の機能が停止、早急に立て直さないといけなかったんだけど、その為には多大な金額が必要だった、その為に何度も投資したけど復帰は見込めず、結果融資してくれる所は無くなった……此処までは合ってるよね?”

 

「はい……仰る通りです」

 

"で、その際、こっちから頼ったのか向こうから声を掛けてきたかはこの際置いておこう、不毛だから、とにかくアビドスはカイザーローンからお金を借りた、勿論法外な利息を込みでね、此処で動いたのがカイザーPMCだったんじゃないかな、自分たちがやったとバレないように不良やヘルメット団を使ってそちらへの対処を追わせて返済できないようにした、そして利息が膨れ上がり借金の金額が増大していった、此処まで大丈夫?”

 

「ええ、大丈夫よ」

 

“それである程度の金額……つまりバイトや指名手配犯を捕まえるだけじゃ全然足りない金額まで膨れ上がったのを見計らって次に動いたのがカイザーコンストラクションだよ、さっきも言ったけど土地ってさ物によっては物凄く高く売れるんだよ、取引の際も現金じゃなく小切手のサインとかでされるからね、だけどアビドスの土地は高値では売れなかった、借金自体を減らすに至らない程度にね、するとどうなると思う?”

 

「カイザーはアビドスの土地だけを手にしている……?」

 

“正解、本っ当に性質が悪いよね、お金を貸したのもカイザー、借金を返済できないように仕向けてたのもカイザー、そして安値で土地を回収したのもカイザーだ、土地を売る際に少しでも借金返済を促すような言葉を投げ掛ければすぐだよ、人間ってのは単純でさ、近道があるなら迷わずそれを選んじゃうから、それが罠だとしてもね”

 

「学生の弱みに漬け込んだえげつない手法ね……大人は皆こんな方法で子供から搾取するの?」

 

“……否定はしないよアル、社会に出て知識を得た大人は無知な子供を利用しがちだ、自分の利益の為にね、だってそれが一番簡単だから、どれだけその子が苦しもうが関係ない、だって自分の子供じゃない、赤の他人だからね”

 

「そんな事って……‼︎」

 

“人間の善意には必ず限りがある、でもね、人間の悪意に底なんて存在しない、人間はさ、自分の欲求を満たす為なら何処までも悪辣に,下劣に、外道になれる、なれてしまうんだ、悲しい事にね”

 

「……そう言う先生はどうなの?先生もその“大人”の1人じゃん、先生も皆を利用してるんじゃないの?」

 

“……痛い所を突くねカヨコは、その事については否定はしないよ、しないけど……”

 

「しないけど……なに?」

 

 緊迫した空気が流れる、皆私の発言を気にかけている、特にアビドスの子達は顕著だ、また裏切られるんじゃないかって表情が表に出ている、ごめんね、でも私はこう言う方法しか知らないからさ。

 

“皆を自分の為に利用してるって所は否定しない、でも人間関係ってそう言う物だと思うんだ、誰かを頼るにせよ頼られるにせよ、利用し利用されると言う結果に変わりはない、そもそもの話アビドスの子達も現状じゃどうにもならないから私を頼った、これも見方を変えれば私を利用してる事になる”

 

「……続けて」

 

“私は特に捻くれてるからさ、無償の奉仕とか出来ないししたくないんだよ、これは皆同意見だと思うけど、あらゆる仕事には対価が絶対に必要だと思ってる、対価ゼロでことを済ませようとするのは余りにも虫が良すぎるでしょ?だから私もこの子達から対価をもらう為に利用している、そうやって初めて信用・信頼関係が結べると思うんだよ、尤も私は金銭や肉体的な対価は求める気はさらさらないけどね”

 

「じゃあ何を求めて今回の仕事を引き受けたの?」

 

 そんなのはこの仕事を、この職業を選んだあの時から決まってる。

 

“それはさっき言ったよ、皆に貴重な青春を無駄に過ごしてほしくないんだよ、一番楽しい学生の時期を暗い雰囲気で暮らしたくはないでしょ、だから精一杯青春を楽しんで幸せを味わって、悔いのない学生生活を送ってくれるのが皆が支払う対価……かな”

 

「……そんなの、アンタが何も得してないじゃん……」

 

“いいや?人の不幸は蜜の味って言うでしょ?だったら私はこう読み取る、人の幸福も蜜の味ってね、生徒が幸福を感じ取れているなら先生としてこれ以上の幸福はないよ、何せ職務を全う出来てるわけだからね”

 

「なにそれ……意味分かんない……」

 

“今は分からなくてもいい、そのうちきっと分かる日が来るさ、必ずね”

 

「ごめんね?先生、カヨコちゃんって私たちの中じゃ最年長だからさ、こう言った話とかには結構敏感なんだよ」

 

「先生、その……ごめん、話の腰を折っちゃって」

 

“いいよ、気にしないで、必要なことだったと思うしね”

 

「言っとくが先生、生徒を幸福に導くのはアンタの仕事だ、しかし他者を重んじるばかりで自分を疎かにしてはいかんぞ」

 

“分かってるさ、自分の事は自分がよく分かってる、少なくとも皆が大人になるまでは死ぬつもりはないよ”

 

「……その言葉、忘れるなよ……絶対に」

 

 マコラの忠告も貰ったところで話を戻さないとね、余りにも話が脱線し過ぎた、何処まで話したっけな……

 

“えーっと……それで何処まで話したかな……”

 

「カイザーにアビドスの土地だけが流れている所まで済みましたよ⭐︎」

 

“ありがとう、ごめんね、なんか難しい話を延々と聞かせちゃって”

 

「ううん、お陰で先生の事をよく知れたし、何より先生は信用していい大人の人だって分かったから、気にしなくてもいいよ」

 

“……今のカヨコもそうだけど、人は疑心暗鬼に陥ったり切羽詰まったりすると視野が狭まるんだよ、極限状態の人間はそれこそ何でもやっちゃうんだよ……

 

「まあね〜よくある話、ただそれだけだと思うよ、私は」

 

 さて、長々と話したけどそろそろ纏めようか。

 

「学校の借金、このアビドスが陥ってる状況、そして私たちや先生、便利屋の皆さんが見つけ出した幾つかの糸口、全てが少しずつ、繋がり始めている気がします、カイザーコーポレーションはアビドスの生徒会が消えてしまってから土地を購入する方法が無くなり……まだ手に入れていない【最後の土地】であるこの学校を奪うために、ヘルメット団を雇用していた……!」

 

「その過程で私たち便利屋68に声が掛かってきたってわけね、はじめはまさかこんな大事になるなんて思ってなかったけど……」

 

「はい、そして先ほどの先生の推察や証拠を鑑みるにカイザーコーポレーションの狙いはお金ではなく土地だった、という結論でいいと思います、残りの土地がこの周辺である事から既に最終段階に入っていると見て間違い無いでしょう、ですが……‼︎」

 

「最後の最後でカイザーの思惑を超えたイレギュラーが混じってしまった」

 

「それが先生とマコラさんですね⭐︎」

 

「うん、うちとしてもマコラちゃんの加入は予想外だったからさー、向こうも読めてないと思うよ、読めてたらあの時襲撃してこなかっただろうし」

 

「そうなると、次の疑問ですが……どうして土地なんでしょうか?」

 

“それが唯一の謎なんだよねぇ……砂漠で何かしてる、探してるってのは分かるんだけど……その“何か”が分からないんだよ、此処までカイザーのトータルは正直言って大赤、採算が取れてないんだ、それを覆す程の物があの砂漠にあるとして……その為に何十年も時間を掛けてさらに労力を割けるかなって思うんだよね”

 

「ああもう、そんな難しいことを考えるより、先にやることがあるでしょ!」

 

“やる事?”

 

「そう!アビドスの砂漠はうちの自治区なんだから!実際に行ってみればいいじゃん!何が何だか分からないけど、この目で直接確かめた方が早いって!」

 

“え、いや、今砂漠の方の土地の所有権も向こうに渡っててだね……”

 

「ククッ、そりゃあいい!それが手っ取り早いナイスな手段だ‼︎そうだ、そうだとも、何故私ともあろうものが砂漠に何かあると分かりながら打って出なかったのか‼︎不覚をとった!」

 

“えぇ⁉︎行くの⁉︎今から⁉︎”

 

「善は急げだ!」

 

「……ん、確かにそれはそうだね」

 

「ほらほら先生〜、私たち今は“先生”の“生徒”だからさ〜先生の号令が欲しいな〜、なんて」

 

“はあ……分かったよ、準備ができたら行こうか、アビドスの砂漠へ”

 

『はい‼︎』

 

 取り敢えず水はいっぱい持っていかないとな…。




描写されて無いですけど前回と今回の間でホシノは例の退部届を破り去ってます、ちゃんとみんなの前でね、ホシノはみんなと乗り越える覚悟を決めましたので。

Q.初期プロットのメンタルブレイク喰らったホシノに喝を入れるマコラ何処行ったの?このままだとホシノメンタル壊れないよ?

A.その案は荼毘に付した、思ったより先生がちゃんと先生してくれた、なんなら作者が一番驚いてる。そもそも決め手となる黒服はこの件から殆ど手を引いてるから…

Q.土地云々の説明あれで合ってるのか

A.この世界ではそう言う物だと認識してください

Q.カヨコやけに刺々しいね?

A.組織のトップでは無いにせよ一応最年長(18)ですよこの子、ゲヘナの生徒では珍しく、と言うか他の三人が色々アレなので必然としっかりする側に回らざるを得ない、後先生自体出会ってそんな時間経ってないしその先生が結構暗いこといいだしたからね、割と自業自得よ

【最終決定】IF世界線のマコラ

  • アビドスIF
  • ゲヘナIF
  • トリニティIF
  • ミレニアムIF
  • アリウスIF
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