──駆ける、潰す、飛翔する、壊す、五体を振るう、爆散する。
マコラが縦横無尽に空を飛び、起こす何気ない動き一つ一つ、さりとて込められた力は嵐の如し暴威がカイザーPMCの航空戦力を襲う、カイザーPMCのヘリとて産廃ではない、そんじょそこらの攻撃など物としない堅固な装甲を誇っている、しかし此度の相手──
繰り出される拳は戦車砲を彷彿とさせる一撃であり堅牢な装甲の戦闘ヘリを容赦なく大きく凹ませ吹き飛ばす。
その足から繰り出される蹴りは下手な弾道ミサイルより威力があるだろう、それを見舞われたアパッチはまるで子供がサッカーボールを蹴り飛ばしたかの様に飛んでいき、他のヘリと衝突し爆散した。
特筆すべきなのはその機動力、人類が単独の力で空を飛ぶと言うのもおかしな話だが度肝を抜かれるのはその速度、ヘリの全速力など優に超えその速度は姿形も相まって戦闘機の領域に近い。
圧倒的な速度と膂力による蹂躙でカイザーPMCが誇る航空戦力はみるみるうちにその数を減らして行った。
(ふむ、大分数が減ってきてはいるが……まだまだ蛆は湧くか、そろそろ面倒だ、一つ一つプチプチ潰すのも飽いたが……ん?)
無尽蔵にも思えるほどに湧き出てくる敵機にそろそろ憂鬱になってきたマコラだがここで一つ異変を感じ取る、その正体はすぐに明かされた。
(誘導ミサイルか‼︎)
マコラに対しミサイルの発射が行われた、既にロックオンはされておりこのままではマコラはミサイルに直撃してしまう、如何にマコラの機動力を持ってしてもミサイルから逃れるのは容易ではない。
然し彼女の脳内には初めから逃亡など存在しない、向かってくる攻撃は全て防ぐか躱すなりして凌ぐ、それが彼女の信条である、無論彼女自身が己が最強であると言う誇り等は微塵も無いし興味もない、ただの事実であるからだ、自他共に周知の事実を誇る必要はないだろう。
であれば彼女は目の前の事象をどう対処するのか?マコラは鵺として現出させた翼を大きく広げ思い切りミサイルの方に向け羽ばたいて見せた、その際に羽を勢いよく射出、まるで航空機の機関銃の様に発射された羽は凄まじい密度の弾幕を構成しミサイルに襲いかかる、
空を駆けるマコラに向けて放たれたミサイル計六機、その全てがマコラが放った鵺の羽により撃墜、この時点での神将マコラ──未だ無傷。
「さてさて地上の方はどうなったかな」
◆
マコラが飛び立ってから直ぐにヘリの爆破音が響き渡っている、既に空では一方的なドッグファイトが行われているのだろう、正直ちょっと見てみたい気もするけど今は正面に集中しないとね、オートマタは一体ずつだとそこまで脅威ではない、然しいつの時代も物量が物を言った様に向こうは数だけはある、だから罠でその数を潰す、まだ奥に戦車部隊が控えてるんだし此処で無駄な消耗は避けたい。
さっきの遭遇戦で分かったけどオートマタ一体潰すのに大体ARで6〜7発、当たり所によっては10発以上要する、SGで2発、SRで一撃と言った所、ノノミのミニガンで掃射すれば一気に10体以上持っていけるだろうが、リロードの時間や弾薬を考えればできるだけ温存したい、HGはかなり効果が薄い、然し衝撃を殺せる訳でない、ちゃんと出来ることはある。
とは言え罠の設置は粗方済ませてある、あとは向こうの出方次第だが……
「ん、誰か出てきた」
「──ッ‼︎あいつは……」
『侵入者とは聞いていたが……アビドスだったとは、それに…隣にいるのは便利屋か』
随分と偉そうな奴が出てきたな、それにホシノの反応から察するにもしかしてこいつが……?
『まさかここに来るとは思っていなかったが……まぁ良い、勝手に人の私有地に入り、暴れた事によるこれらの被害額、君たちの学校の借金に加えても良いのだが、まあ。大して額は変わらないな……』
それにしても……なんだろうね、同じ機械音声の筈なのにどうもこう、不快感は此方が上回るのだろうか、大丈夫かな私、今平常の顔を維持できてるよね?ちょっと不安なんだけど。
『そこに居るのは確か……例のゲマトリアが狙っていた生徒会長……いや、副会長だったか?……ふむ、面白いアイディアが浮かんだ、役に立たない便利屋やヘルメット団を雇うよりも良さそうだ』
ステイステイ、落ち着いて落ち着いて、まだだ、まだだ、ちょっと口閉じてくれねえかなぁ!便利屋のヘイトゲージがえらい事になってるんだけどぉ‼︎
「……あなたたちは、誰ですか?」
『……まさか私のことを知らないとは、アビドス、君たちならよく知っている相手だと思うがね、私は、カイザーコーポレーションの理事を務めている者だ、そして君たち、アビドス高等学校が借金をしている相手でもある』
ヨシ、証言確保、アイツが大元だな、あと自信満々に名乗るんじゃないよ、後ろ見ろ後ろ、ヘリがどんどん潰れてってるから!見えてねえのか、節穴かこいつ?
『では、古くから続くこの借金について、話し合いでもするとしようか』
「アビドスが、借金をしている相手……」
「か、カイザーコーポレーションの……」
『正確に紹介すると、カイザーコーポレーション、カイザーローン、そして、カイザーコンストラクションの理事だ、今は、カイザーPMCの代表取締役も勤めている』
あー、いるよねこう言う奴、自分が持ってる肩書きを列挙して如何に自分が優れてるかを自慢してくる奴、こう言うやつって友達少ないんだよね、ていうか兼任しすぎだろ、属性過剰とか言うレベルじゃないんだけど。
“聞いてもないのに態々紹介ありがとさん、よほど自慢したいんだな”
『……あなたがシャーレの先生か、お会いできて光栄だよ、なに、これらの肩書を得る為に相応の努力をした、この苦労を誰かと分かち合いたくてね、つい喋ってしまうのだよ』
おっとつい本音がポロリ、それにしてもお会いできて光栄……ねえ?よく言うよ思ってもないことをベラベラと、見た目に反して口早く回る様だな。
『あなたが聡明な大人と見込んで提案があるのだが、私たちカイザーグループの下で働いてみないか?その様な……不法侵入を行い数多さえ善良な我が社員に対しての暴行を犯した生徒達の肩を持つことはあるまい?』
“なんで?”
『何故とはこれはまた珍妙な……よく考えてもみたまえ、不都合に陥ればこの様にすぐさま暴力に走る哀れな子供達の為に、あなたの様な稀有な才能を埋没させるのは余りにも惜しい、これは社会の、否、世界的な大損失と言えよう、違うかな?』
“はぁ……”
『だが我々は違う!私たちは決してそんな事はさせない!世界各地に眠る稀有な才能な持ち主を社会の為に活かすこと!それが我等の本分であり使命なのだ!さあ先生!私の手を取りたまえ、その様な
“でさー、その時の駄菓子屋の親父がね……”
『……聞いていたかな?』
“あ、終わった?いやー、余りにも退屈なもんでつい話し込んじゃったよ、ごめんなさいね、思ってないけどさ”
『なんだと?』
“それで、えーっとなんの話だっけ……世界的に優秀で稀有な才能を腐らせる御社の自己紹介の話……だったっけ?”
『……正確な判断をしてもらいたい物だね先生、誤った判断は後悔につながる、そしてその後悔はずっと身を引く物だ、もう一度聞く、此方側に着く気は?』
“ねーよハゲ、耳がついてねーのかそれとも機能してないのか?人工知能を兼ね備えたロボットらしいけど思考能力はお粗末だな、そんな下手糞な交渉で俺が首を縦に振ると思ってんのかよ、一から学習し直して来い”
『貴様……‼︎此方が下手に出ていれば良い気になりおって……‼︎』
“そもそもお前の声が受け付けないんだよね、同じ機械音声でもアヤネとお前とじゃ天と地以上の差があるよ、正直聞くに耐えないよね”
「分かる〜、アヤネちゃんの声に癒し効果がある事は私が実証済みだもんね〜」
「ん、正直比べるのも烏滸がましいレベル」
『あ、あの……そこまで言わなくても良いのでは……』
「いえ⭐︎この際だから言わせてもらいますけどアヤネちゃんは自分にもっと自信を持った方がいいと思います⭐︎」
「そうそう、これまで何度もアヤネに助けられてる所あるしね」
『私を虚仮にしているのか?貴様等は……』
“事実を述べてるだけだよ、アンタが聞いてもないのにベラベラと明かしてくれた肩書と同じ様に此方も事実を述べただけ、良かったなまた一つ賢くなれたじゃないか、聞いてもない事をベラベラと喋ってるのを聞くと不快になるってさ、次に活かすといいよ、次があればだけど”
『此方につく気はないと……よく分かったよシャーレの先生、それがそちらの意思なら此方も相応の対応をするまでだ……‼︎』
“それよりさぁ……後ろみたほうがいいよ、あんた、えらい事になってるから”
『何だと?フンッ何を言い出すかと思えば後ろを振り向いた瞬間に撃ち抜くつもりだろう?そんな古典的な方法に引っかかる程間抜けじゃない』
「いや本当に後ろみて状況を見たほうがいいよ、フリじゃなくてマジに」
『……おい、警戒は解くな、妙な動きをしたら即座に撃て』
そう言って奴は漸く後ろを振り向いた、私達はずっとそれを見せられていた訳なんだけど……
『な、なんだこれは⁉︎どう言う訳だ⁉︎何故‼︎何故我がカイザーPMCが誇る精鋭の航空部隊が悉く沈められているのだ‼︎』
奴の誇る精鋭がマコラの手によってスクラップに変えられていく光景なんて口で言っても信じちゃくれんって、絶対。
『貴様等……この為に態々時間を稼いだのか‼︎言え!一体何をした!どんな罠を仕掛けたと言うんだ!』
“(其方には)何もしてねえよ、そっちの不備をこっちに振るなよ、大人だろ?”
『ヌグ……‼︎何故そこまでそいつ等に肩入れする⁉︎砂漠化が進み!借金塗れになって何も生産性が無い学校だぞ⁉︎』
“おいおい、脳みそが間抜けか?俺は先生だよ?生徒が助け求めてそれに応えるのに理由がいるのかよ”
『──ッ‼︎貴様もあの女と同じクチか‼︎』
“あの女って?”
『決まってるだろう‼︎何もできず、何も成せず!その癖夢見る事は人一倍なあの全くもってバカな生徒会長に決まってるだろう‼︎』
おいおいおい、そりゃ地雷だぜ、超弩級のな。
“あー……えー……っと、その、なんだ……”
『何だ⁉︎私はただ事実を述べただけだ‼︎』
“お前さ、本ッ当に馬鹿なんだな、地雷を踏み抜くのが趣味なのかい?まぁ何でもいいや、こっからは言葉を選べよ、今際の際だぞ、いやマジで”
『──は?何を言って──』
「それは、ユメ先輩の事を言ってるの?」
やっべ
『だったらなんだと──』
「そっか……じゃあ、殺す」
◆
『神秘について何か知ってるか、だと?』
“そう、黒服ってのはキヴォトスでも屈指の神秘を誇るマコラとホシノを狙ってたらしいからマコラなら何か知ってるんじゃないかって、マコラは完全に制御下に置いてるらしいからね”
『あ、それ私も気になる〜、ずっと心残りだったんだよねえ』
移動中、私はマコラから神秘について書き出していた、それを聞きつけたのかホシノも前のめりになって聞いてきている、おそらく他のみんなも聞き耳を立てているだろう。
『ふーむ、と言ってもなぁ……私も多くは知らんし覚醒させた手順も能力かなり特殊で……あまり参考にならんぞ?』
『いいからいいから』
『はあ……先ず神秘ってのは私達生徒の身体の中に込められてる、まぁ大雑把言えばエネルギーの様な物でな、それが分かり易く反映されてるのが頭に浮かんでいるヘイローだ、生徒達が通常人より頑強なのもこれの影響が大きい』
『神秘は生徒の戦闘能力に大きく関わってるとされている、各校の猛者どもは大概な神秘量を有してる事が多いが、まぁあくまで関わってるってだけで直結する訳じゃ無い、中には神秘量はそんなにでもアホみたいに強い奴もいる、逆も然りな』
『はいはーい、マコちゃんにしつもーん!マコちゃんが武器出したりするのもその神秘?って奴なの?』
『その通りだムツキ嬢、俺が武器を現出させているのは神秘由来だ』
“じゃあ誰でもに同じ事ができるのかい?”
『似た様な事なら出来るだろうがな、全く同じと言うのは……少なくとも私は知らん、それに私の場合は神秘の能力を“覚醒”させた側だ、あまり参考にならんだろう』
『覚醒って?』
『文字通りだ、神秘とは即ち潜在能力を意味する、身体に眠る潜在能力を覚醒させる事で新たな力を得る事もある、私の場合は偶々武器の現出だったと言うだけで、本来神秘の覚醒を得ても私の様な能力を得られる事は滅多だ、私は超特殊例だからな』
『そっかー、残念』
“覚醒させて何か他に恩恵はないの?”
『神秘を覚醒させたら基本的に身体能力や攻撃力が格段に上がる、最低でも以前の自分の2倍は下らん、その辺は神秘量が関わってくるかもな』
『覚醒させるための条件は?まさか戦い続ければいいって訳じゃ無いよね』
『幾つかパターンがあるが……一つ目が激しい怒りや悲しみによって覚醒するパターン、こっちはやや暴走気味になるのが欠点だがそれでも慣らせばいい、冷静になってもその感覚は体がよく覚えてる物だ、そして……もう一つだが、私はこれによって覚醒した』
『……その方法は?』
『死の間際で神秘という概念の核心を掴むことだ、要は死にかけろって事』
『無理でしょ‼︎私たちがどれだけ頑丈か知ってるでしょ⁉︎っていうかそんな荒療治で覚醒させたわけ⁉︎』
『そもそもマコラさんを死に掛けに出来るほどの存在があるのですか……?』
『まぁそいつはその後切り刻んでやったから問題ないが……覚えておけ、覚醒したから最強という訳じゃ無い、あくまで強くなるきっかけを得るだけ、どれだけ強力な武器をもらっても扱い方を知らねば宝の持ち腐れだからな』
◆
マコラが言ってた通り……‼︎ホシノは今ユメ先輩って子が侮辱されたから激情に呑まれた……‼︎その結果神秘が覚醒したのか……⁉︎何にせよこれは……
“大分、いやかなり不味いだろ……‼︎
「ユメ先輩に苦労を掛けた奴が、ユメ先輩を追い詰めた張本人が……よくそんなことを言えた物だね……楽に死ねると思うなよ」
最悪ホシノを止めなければならないね……こいつ等がどうなろうと知ったことじゃ無いけど、恐らく相当無理をする予感がする、私は皆にいつでも動ける様指示を出し様子を窺う事にする。
ホシノ、覚醒──!
Q.今のホシノって?
A.おじさん時代じゃなくて暁のホルス時代に戻ってる、何なら技量とか現代の方まんまなんで一番やばい。
Q.ホシノに能力生えるの?
A.それは無い、覚醒させたと言っても兆しがあるだけ、能力開花させるならこっから死の間際行かないとダメ、でも身体能力向上の恩恵はある、マコラとの接近戦が成立するくらいには向上した。
Q.先生めっちゃ煽るな?
A.嫌いな奴には生徒の前だろうと問答無用で煽るよ、多分今全力で中指立ててる、尚途中から理事は眼中に無くてホシノの心配に気が行った模様
【最終決定】IF世界線のマコラ
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