撃つ、叩く、蹴る、今やホシノの一挙手一投足でカイザーPMCは壊滅的な被害を受けていた、否、ホシノだけでは無い、他の対策委員会の生徒、便利屋の生徒達も決して少なく無い被害を出している。
──何故こんな事になった?
カイザーPMC理事の脳裏にその言葉が過る、アビドスに金を貸したから?否向こうから貸してくれと頼み込んできたのだ、こちらはそれに応じただけだ、それに先日まではその返済で困窮していたでは無いか。
便利屋を起用したから?これも否、下手なチンピラではアビドスが崩さないから起用しただけで此方に落ち度はない筈。
マコラの存在の認識の有無?これはまぁ、認めよう、逐一状況を確認しなかったこちらの不備だ、私は己の不備を認めない不出来の存在ではない。
まて、そもそも何故便利屋を起用する事になった?下手なチンピラでは歯が立たなかったからだ、何故だ?既にアビドス高校の補給線は断たれていたのだから時間の問題だった筈。
そこまで思い至りカイザーPMC理事は一つの結論に行き着く。
──
あの男が、先生がアビドス側に着いてからケチがつき始めた、先生がアビドス側に着いているから奴等は殆ど詰みの状況から盛り返したのだ‼︎そうだ、よくよく見てみればあの男の指揮がある所為でこちらの兵隊が押し切れずに居る、つまりはあの男が奴らの生命線なのだ‼︎
そう判断した後の理事の行動は早かった。
『総員、
その指示が飛ばされると同時に一斉に先生に向けて銃口が向けられる、カイザーPMCの強み、それは全てがオートマタ兵を起用していると言う事。
生徒という人間ではなくオートマタという機械を主力として扱うからこその指示の伝達の速さ、そして正確無比の狙いによる一斉攻撃、更には──。
「なっ⁉︎コイツら一斉に先生を……‼︎すぐに止めないと……‼︎」
「だけどコイツら皆機械だから、
身体全てが無機物で構成されている故の痛みへの完全耐性、撃てば着弾した際の衝撃で多少ズラす事が出来るもののそれによる動揺は一切ない、此処にきて機械による利点が出てきたのだ。
先生にヘイローはない、そもそもキヴォトスの外の住民なのだからあるはずがない、ヘイローがないという事、つまりは身体が生徒より遥かに脆いという事であり、
──タタタタタン‼︎
「「「先生‼︎」」」
生徒達の悲鳴も虚しく先生の元に凶弾が迫る、その様子を見て理事は己の勝ちを確信した、頭さえ潰してしまえばガタガタになった子供の処理など容易い物、寧ろ今回の被害と合わせてどの様な目に合わせてやろうか、そんな思考を走らせていた。
しかし理事の思いとは裏腹にその弾丸が先生の肉体に命中することは無かった。
弾の軌道が
──馬鹿な、1人2人の射撃が外れるなら兎も角全員分の射撃が外れるとは⁉︎いやいやまず間違いなく当たる軌道だった筈‼︎空中で弾丸が軌道を変わった!そうとしか考えられない‼︎どうやったのだ⁉︎何をしたのだ‼︎解らん‼︎解らねば‼︎でなければ奴を倒すことは出来ない‼︎
その様子を観察していたマコラはカイザー理事に対し嘲りの表情を浮かべる。
「阿呆め、その程度の攻撃が先生に通用するものか、先生を狙うという観点はおかしくない、頭を潰すのは戦の基本だからな、だからこそ
マコラは弾丸の軌道をずらした正体を知っている様に呟く。
「ククッあの様子だとアロナも踏ん張ってる様だな、良い良い、先生も指揮のレベルが格段と上昇している、他の奴も動きが良くなっている事だし、いい相乗作用だ、さて、問題の小鳥遊ホシノは……?」
マコラは視点をズラしホシノの戦況を確認する、先程の様に前に出過ぎず、かと言って後ろに下がり過ぎない、即座に互いのカバーが届く位置をキープしながらオートマタ兵達をスクラップに変えている、更にはホシノ自身が格段に上がった自信の身体能力に慣れたのか時間を追うごとに動きのキレが上がっている、それこそ三大校の最強クラスの生徒と遜色無い程の身のこなしだった、その様子に満足したのかマコラは獰猛な笑みを浮かべた。
「良い、それで──良い」
マコラがそう呟く中でも戦況は進む、先生を攻撃しても無意味と理解したカイザー理事は最後の切り札を切った。
『ゴリアテを出動させろ‼︎手数で攻めて駄目なら質量で潰すんだ‼︎』
──ゴリアテ、それがカイザーPMCが保有する戦力の中でも最大級の戦力であり、両腕に三連ガトリング砲を装着し頭部に大口径カノン砲を搭載した兵器であり、真正面から戦車と戦っても撃ち勝てる性能をしている。
そんな代物が僅か8人の生徒を一掃する為に起用された、本来ならば過剰戦力だ、蟻を潰すのにミサイルをブチ込む行為に等しい、しかしその判断は決して間違いでは無いのだ、その僅か8人の生徒なら地上の戦力の殆どが壊滅させられているのだからこちらも最終兵器を使わざるを得ない、戦闘ヘリも戦車も使い物にならないのなら最早これしか方法はなかったのだ。
「おぉ?アレはゴリアテか?カイザーめ、中々な玩具を所有してるじゃないか、私が直接叩いても良いが……それはつまらんな、それに……」
マコラはそう言うと北方の方に身体を向ける。
「今は少しでも体力の温存をしていた方が良さそうだ、ケヒッ何処のどいつが何をしでかしたかは知らんが、
マコラは北方から伝わる異様な気配をこの場にいる誰よりも早く察知し最大限警戒し思案する。
──北方から伝わる異様な気配、よもやすると
地上の戦況は苛烈を極めている、既に辺りには数え切れないほどのオートマタ兵の残骸が散開しており流石の生徒達にも疲労の顔が見え隠れしている、しかしそれ以上に闘志が勝っている以上まだまだ彼女達は戦い続けるだろう。
『皆さん‼︎警戒して下さい‼︎カイザーPMCから突出した戦闘エネルギーを感知しました‼︎恐らく向こうの切り札と思われます‼︎』
“形振り構わずって所かな……‼︎”
アヤネの連絡も束の間にソレ──ゴリアテが戦場に姿を現した。
「ん、大きい……‼︎」
「確かに大きいけど……‼︎デカければ良いって物じゃ無いでしょ、見るからに脚部が弱点でしょ、アレは」
“向こうもそれは織り込み済みだろうね、全体重を支える脚部に駆動の要になる関節部分、そこが弱点だろうけど装甲は厚いはず、空からの襲撃がないのが救いだけどもこっちも大火力持ちのマコラを起用できない”
「そういえばその当のマコラちゃんはどうしたの?もうとっくに空の兵力は全滅してるのに一向に戻ってこないじゃん」
“マコラはかなり自分本位だからねえ……多分どっかで戦況を見てるか或いは……”
『失礼だな、ちゃんと仕事をしている』
「うぇ⁉︎マコラちゃん⁉︎いきなり通信とかびっくりするんだけど⁉︎」
“……マコラ、今どこに居るの?既に航空戦力は壊滅させたんだよね?”
『あぁ、そっちは問題ない、無いんだが……新たな問題がもう一つ現れてな』
“もう一つの問題って?”
『単刀直入に言う、一度しか言わんから聞き分けろよ、私の目で
“一人で向かったんだね?”
『……ッ‼︎すまんな、だがアレはお前達の手に余りすぎる、ので私が単独で全力で闘うべきと判断した』
「そんな言い方だとさ、私たちが足手纏いみたいじゃない、そんな信用無い?」
『そうは言ってないが……いや、そう捉えられても仕方ないな、先に謝罪を述べておこう、すまない』
「ふざけないで‼︎あなたは今便利屋68のアルバイト!つまり私の会社の一員よ‼︎社長である私の許可なしに勝手な行動は許されないのよ‼︎」
『その声は……社長か、だが報告しても許可しないだろう、アンタ』
「当たり前でしょ‼︎そんな危険な場所一人だけで行かせる訳ないじゃない‼︎いい⁉︎この際もう起こった事に対して責める気は無いけどもせめて私たちがそこに着くまで無事でいるのよ⁉︎勝手に死んだら許さないから‼︎」
“……だってさマコラ、追い付いたら後でお説教だよ、絶対逃さないからね”
『……はぁ、分かった、甘んじて受け入れよう、尤も負ける気も死ぬ気も更々無いが、まぁ期待して待つとしよう』
マコラとの通信が切れる、兎にも角にも急がねばならない理由が出来た、マコラの言い分は正しいのだろう、今この状況で未だ未知数のデカグラマトンまで乱入してきたらそれだけで壊滅的な被害を被るだろう、故にマコラがデカグラマトンの足止めを買って出るのはありがたい、だが幾らマコラが最強と言えど単独で勝てるのかは怪しい、ならば即座にあのデカブツを処理しなくてはならない。
“全く、問題児の世話がこんなにキツイ物だったとはね……つくづく先生には尊敬の念を抱かざるを得ないよ”
『何をごちゃごちゃと……‼︎貴様等全員、生きて此処から帰れると思うな‼︎』
◆
マコラは様々な思いを耽らせて飛翔していた、彼女人生、未だ18年しか生きていないとは言え
否、確かに今まで心配はされて来たのだろう、だが聞く耳を持たなかっただけだ、彼女は強い、それは自他共に認めている周知の事実だ、故に誰も彼女の──特に戦闘に関しての心配などしなかった、する必要がなかった為にだ。
──いや、そう言えばたった1人だけ居たな、私の事を純粋に心配してたお節介な女が……
脳裏に過るのは淡い青色に薄い桃色をした長髪の女だ、彼女のみがマコラを純粋に案じていたのだ。
──思えば誰かに我が身を案じられたのはあの女以来か……奇妙な事もある物だ、かつてはあの女に我が身を案じられ、そして今あの女が選抜した男に我が身を案じられている……ククッこれもまた運命か
「悪いが、図らずとも我が身を案じられているのでな、負けてやることは出来ん、悪く思え」
唸る様なら重低音が辺り一面に響き渡る、
──自分が起動したのは目の前のコイツを殺す為なのだと。
「何だ?睨めっこでもしたいのか?生憎私はその手の遊びに疎くてな、あの女にも言われたよ、もう少し──」
ギュイン‼︎
マコラが言い終わるより先にビナーは動く、口に当たる部分から放たれたレーザー光線、其れはアビドス砂漠の地面を降り積もった砂ごと削り取り遥か先まで飛来する、まともに喰らえば消し炭になる事待ったなしの威力を誇る、その攻撃をマコラは正面から受けてしまった。
「カカッ‼︎慌てん坊め、そう焦らずともお前の相手はしてやるとも、もう少し心の余裕を持ち合わせた方が良いぞ?尤も機械のお前に言った所に意味はないが」
煙が晴れ姿を表すマコラだがその身体には多少の焦げ目がついた程度で特に目立った損傷は無い、この時点でビナーとマコラは互いの戦力の指標を計り終わる。
「コレがホシノが黒服から聞いたとされるデカグラマトンの一体か……久方振りの大捕物だな」
◆
2つの決算が始まった傍らでその戦況を観察する者が居た、言わずもがな黒服とロストマンである、二人は遠方からビナーとマコラの戦闘を観察していたのだ。
「黒服よぉ、マコラの事を俺がよく知る様に、アレはアンタの専門だろう?必要があったから起動させたが……実際問題あれは何なんだ」
【……あなたそれを知らずに起動させたのですか?何処までも自分本位な……】
「……説教はもうお腹いっぱいなんだがな」
【まあ良いでしょう……遠い昔、キヴォトスの端、誰も足を踏み入れない旧都心のとある廃墟で奇妙な研究が進められていました、神を研究し、その存在を証明できれば、その構造を分析し、再現できるだろう、すなわちこれは、新たな神を創り出す方法であると】
「神を創り出す……ねぇ、何とも荒唐無稽な話だな、それなら超兵器を作るってのがまだ現実味がある」
【御尤もです、現に誰もが嘲笑う滑稽な仮説でしたが、そんな理論に興味を示した者たちがいたのです、それが私たちの組織名にもなった“ゲマトリア”と呼ばれる者たち、その者たちが研究を支援し、莫大な資金と時間が費やされ神の存在を証明するための超人工知能が作られたのです】
「成程ねぇ……神って奴を観測するなら人間の力じゃ到底及ばない、なら人類の叡智を総結集させたコンピュータに観測させる事にしたのか」
【えぇ、神という存在に関する情報を収集、分析、研究し、それを証明する
「……の割にはアレは呑気に寝てたがな」
【えぇ仰る通りです、月日は流れ、都市は破壊され、研究所も水の底に沈みました、そのような研究が行われていたという事実すら忘れ去られるほどの時間が過ぎたにも関わらず、このAIは、己の任務を遂行し続けました、そしてついに、AIの宣言が、廃墟に声高らかに鳴り響いたのです、“Q.E.D”、と】
「Q.E.D……証明完了って事ね……それで?」
【これは証明され、分析され、再現された新たな神の到来です、“音のならない聖なる十の言葉”、と己を称する新たな神、それこそが
「なんでぇ、結局はお前も詳しいことはわからないんじゃねえか」
【クックック……尤もな意見をどうもありがとうございます、ただ、彼の者自身の神性を証明する過程であるそれは、間違いなく真理の摂理に至る道、“セフィラ”と呼んでも、遜色はないでしょう、そしてアレはセフィラの最上位に位置する天上の三角形の一角、そのパスは理解を通じた結合、“違いを痛感する静観の理解者”の異名を待ちます、それこそが“ビナー”です】
「ふむ、だからこそのセフィラ・ビナーって訳か……」
【デカグラマトンの預言者を相手に、彼の“神将マコラ”は何処まで耐えられるのでしょうか?或いは打ち倒すのでしょうか?彼女の神秘は、新たな神の神秘に比肩しうるのでしょうか?それとも新たな神の神秘をも彼女の神秘は乗り越えてしまうでしょうか?今や私の興味はそれに尽きます】
「何にせよだ、俺たちが巻き込まれたら間違いなく消し炭になる、此処でもかなりギリギリだからな、大人しく観察しておこうぜ、回収の手筈は済んでるんだしな」
マコラによる単騎ビナー決戦スタート、最後の黒服のビナー解説はどうしても入れたかった、後悔はしてない。
Q.強化型ゴリアテってなんぞや
A.カイザーが改良した特殊なゴリアテ、ミッションで戦う奴より結構強い、後描写してないけど更に理事が乗り込んだ。
Q.マコラと連邦生徒会長の関係って?
A.小出しはするけどその内マコラの過去編やるからそこまで待って。
Q.マコラ割と普通にビナービーム耐えたな?
A.色彩化してるとは言え本編で喰らったホシノがなかなか痛い程度で済ませてるので、【ノーダメージだぜぇ‼︎(ピュー)】って訳じゃないけど、そこまで気にするダメージでもないけど流石に最大出力をモロに喰らったらちと不味い。
【最終決定】IF世界線のマコラ
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アビドスIF
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ゲヘナIF
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トリニティIF
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ミレニアムIF
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アリウスIF
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ゲマトリアIF