カイザー理事があの兵器に乗り込んだ、恐らく直接叩き潰すつもりだろう、普段ならああ言った騎乗出来るロボには興奮するんだけども流石に自重しておこう。
さてと状況を振り返ろうか、相手は切り札である大型の兵器を使用、武装は頭部の大砲と両腕の三連装のガトリング砲、一目でわかる武装はこれくらいか、頭部のそれは威力重視で連射は出来ないと信じたい、となるとメインで使われるのは両腕のガトリング砲だな。
図体上素早い動きや小回りは効かないとみていいだろうけどその分頑丈性とパワーは相応にあるだろう、だけどどんな攻撃も当たらなければ意味は無い、よく観察し事前に皆に知らせれば難なく対処は可能!
そしてこれら全てがブラフである可能性、あらゆる不足の事態を考慮した上でマコラとの特訓の経験から導き出された答えは……
“まさか本来の用途と違う目的で使う事になるとは思わなかったけどね”
とは言え
“ホシノ、負担をかける様で申し訳ないけど……頼めるかい?”
「うん、今の私ならアレに傷をつける事は容易いと思うけど,何か策があるんだね?」
“アレと真正面から叩き合うのは得策じゃ無いからね”
「その言葉、信じるからね」
ホシノはそう言い残し戦線に戻る、まだ取り巻きも残ってる事だし、何よりここで時間を掛かれば掛かるほどマコラの負担が増える、早急な処理が必要だ。
そう、ホシノが格段なパワーアップしたとしても敵が弱くなったわけじゃ無い、寧ろあのデカブツが出てきて勢い付いたのか攻撃がより苛烈になってきている、ここは一度盤面の整理をした方が良いだろう。
“ムツキ、頼む‼︎”
◆
敵に指示内容を悟らせない様名前のみでの指示、本来ならば成立するはずも無い、しかし周りが敵だらけと言う自分達が置かれた状況を俯瞰し更に己の得意の領分を思考に落とし、即座の行動を可能とするならば──。
「──ッ‼︎オッケー!まっかせて!」
──
「マコラちゃんが残して行った爆弾はまだまだ残ってるからね、ドンドン行くよぉ‼︎」
マコラが此処に残して行った物、“脱兎”による爆発物は本来、陽動や足止めの際に本人はよく使う、爆破によるダメージより直接相手を叩いた方が早い為だ、加えてマコラ自身の機動力も合わさる事ながら多数に囲まれた状況でも十分余裕を持って殲滅してしまう、これらの理由からマコラは“脱兎”の使用を陽動兼足止めの戦法として多用していたのだ。
その“脱兎”が──、浅黄ムツキの手によってその戦術価値を大きく飛躍させる。
神将マコラは多数の戦法を持つが為に特に一つの戦法等には拘らない、結果はどうあれ最低限の仕事さえ果たしてくれればそれで構わないと踏んでいる、無論その特性を最大限に活かす使い方はするが。
ならば浅黄ムツキはどうなのか、彼女自身爆弾収集の趣味も相まって爆弾への造詣が深い、どの爆弾をどの様に使えば良いか、最大限効果を発揮できるかを理解している。
「じゃ〜ん!マコラちゃんとムツキちゃんの合作花火〜!」
そう言い放ちムツキは爆弾をばら撒く、しかし無造作にばら撒いた訳では無い、一つ目の爆弾がオートマタ兵にあたり爆発する、その爆風によって二つ目,三つ目の爆弾がより遠くへと飛んでいき敵に当たりまた爆発する、更にその爆風によって更に遠くへと飛んでいく、結果連鎖的爆発によりオートマタ兵の被害はネズミ算式に増えていく事になった。
この結果は偶然による物か?──否、これはムツキの狙い通りである、ムツキは最初にマコラから“脱兎”爆弾を手渡された時に感じたのは異様な程の軽さ、それこそ爆風一つで飛んで行くほどの、その軽さをムツキは最大限活用したのだ、爆破の威力も申し分無い、寧ろ連鎖爆破により想像以上の結果と言える。
「うん、凄く良いねコレ、マコラちゃんに頼んでまた貰おうっと♪」
想像以上の結果に浅黄ムツキはフルスロットルを迎える、恐らく今ならどんな風に攻撃しても最大限の効果を発揮するだろう、こうなったムツキは誰にも止められない──。
◆
想像以上に数が減ったな……それならこの隙に一気にデカブツを攻め立てる‼︎
“総員‼︎今だ‼︎”
どんな姿形をしていようと思慮できるだけの頭脳があるのなら突如な出来事に混乱するのは必然と言える、向こうの態勢が整う前に一気呵成に攻め立て追い立てる、それが勝利への最短ルート‼︎
〔グヌッ……‼︎おのれ、何処までも目障りな‼︎〕
理事が搭乗したロボの両腕で一斉掃射を行うけど個人個人を狙うのならそれは悪手だ、皆は基本身体能力が高い、あの風紀委員長レベルならともかくコイツの粗雑な狙いの射撃等当たる道理は無い。
恐らくだがあのロボはAIによる自動操作でこそ真価を発揮するのでは無いだろうか、それを無理矢理手動操作ができる様に改造したのだろう、操作主がプロレベルの腕前ならばその運用は間違ってない、然しコイツはさっきも自慢してた様に様々な肩書きを得るために様々な努力をしていたらしい、それはどこまで行っても勉学の方であり、書類仕事の要素が近いだろう、オートマタ兵や傭兵の様に実際に戦地に足を運んだ事は少ないのだろう、従って実践経験も少ない、精々素人に毛が生えたレベルだ。
ならばそんな奴が操作する兵器なんて恐るるに足らない、寧ろ初期型より弱体化してるとさえ言える、現に皆の動きに翻弄されている、明らかに戦闘経験不足だ。
〔ちょこまかと……‼︎ならばこの主砲で貴様等諸共消し飛ばしてくれる‼︎〕
そしてこう言う奴は勝負を焦り大技を勝手に切ってくる、相手が警戒に徹してる際に放たれる大技は大技に足りえない、ましてやあそこまであからさまに見せびらかしていては警戒してくれと言っている様な物だ。
背中の主砲から砲弾が放たれる、私は即座に退避指示を出し生徒達を下がらせ安全を確保させる、私の側には警護も兼ねたアルが居たのだが無問題、シッテムの箱による防護はもう1人位の余裕はある、その分アロナには負担が掛かっちゃうけどね……終わったらいっぱい労ってあげないとな。
〔フー!フー!……ククッ流石の奴らも唯では済むまい‼︎〕
こう言った大技はその影響で周りが見えなくなることが多数だ、奴はまるで自分が皆を仕留めた様に言葉を発している、そんなでは煙の中に紛れた意味がない、自分の位置を知らせているだけだ、そんなんだから──。
「当たればね」
〔は──?〕
──無様に攻撃を受ける事になるんだよ。
◆
ホシノの煙に紛れての攻撃はそれはもう見事に命中した、覚醒により威力が上がったSGの弾丸はゴリアテの装甲と言えど容易く傷をつけ左胸部分と右膝部分に穴を開ける、さりとてこの程度で機能不全になるほどゴリアテは脆くは無い、操作主がコレでも耐久性は確かに向上しているのだ。
然し小鳥遊ホシノは、それでも己の役目を全うした。
「先生ッ‼︎」
“アヤネ‼︎アル‼︎”
『はい‼︎お任せください‼︎』
「ええ‼︎華麗に撃ち落として見せるわ‼︎」
アヤネの援護ドローンがゴリアテに向かって飛んでいく、中身が不明の箱を搭載して、それがゴリアテの真上まで来たあたりでアルがドローンの箱の部分だけを華麗に撃ち抜いた、そうすると自然と箱の中身はゴリアテにぶち撒けられる。
〔何だ……これは?何の真似だ⁉︎〕
“機械で出来たアンタらなら詳しいと思うんだけどね、今ぶち撒けたそれはさ──食塩水、詰まる所は塩水だよ”
〔なっ──〕
理事が声を上げるより先に塩水をぶちまけられた結果が起こった。
──子供の頃の興味心から時計とかの機械に水を掛けた事がある、アイツも乗り気で即座に実行した、結果は勿論故障だ、その時に学んだ、機械に水を掛けると故障すると。
“いくらそれが強力な兵器と言ってもさ、精密機械である事に変わりはないだろ?普通の水でも良かったんだけど電気の通りをよくする為に塩水にしてみた訳、効果覿面だったね”
ホシノが開けた穴から塩水が入り込み中の電子系列に掛かったのだろう、見事に回路がショートしゴリアテからプスプスと嫌な音を立てて煙を吐き出す、見事なまでの危険信号だが戦闘能力がない己が外に出ようものならどうなるかは目に見えている、ならばと部下のオートマタ兵を頼りに周りを見るがセリカ、シロコ、ノノミ、ムツキ、カヨコ、ハルカの6人が懸命に足止めをしている為に誰一人として近づけずにいた。
即ちこの瞬間、ゴリアテは理事を守り敵を殲滅する兵器としての機能を失い、理事を閉じ込める棺桶と化したのだ、そんな棺桶と化したゴリアテにホシノが近づく。
〔ま、待て!私を殺す気か⁉︎そんな事をしても誰も得はしないぞ⁉︎お前達も‼︎私たちもだ‼︎此処は穏便に──ガァン‼︎ヒィ⁉︎〕
「うるさいなぁ、もうそう言うレベルの話じゃないんだって……正直いうとさ、ずっとお前をこうしてやりたかったんだよね、私は間に合わなかったけど実際的にはユメ先輩を殺したのはお前達みたいな物だしさ」
〔だ、だから私を殺すのか⁉︎それは逆恨みと言われる物だ‼︎そんな物で動いても誰も救われないだろう⁉︎生徒たちも、そのユメ先輩と呼ばれる奴も──〕
「煩い、お前がユメ先輩や皆を語るな、お前が助かる道はたった一つ、私の条件を呑むこと、それだけ呑んでくれればお前の命までは取らない」
〔
「言ったね?ならアビドス区域から手を引け、土地の所有権も元に戻すんだ」
〔な、そんなことをしたら私の立場が……‼︎ましてや私の独断では……〕
「今の状況分かってる?其方命は私が握ってるんだよ、立場云々より今ある命でしょ?立場とか独断とかで出来る出来ないの問題じゃない、
〔ウ……グ〕
(どうする⁉︎此処で頷いたら私の本社での立場が全て無くなる‼︎だが此処で拒否しても私の命は無い‼︎どうする、どうすれば──)
「早く答えて、今此処で頭をぶち抜いたって構わないんだ」
〔子供に屈する様で不愉快だが一旦の我慢だ、一度了承し、そのことが本社に伝わる前にこのガキどもを殺す、そうすれば何も問題はない‼︎これがこの場のベスト‼︎)
〔分かった……私とて命は惜しい、此処は敗北を認めるとしよう〕
「なら宣誓して、私達はアビドスから手を引き、またアビドスの所有権をアビドス地区に手渡し、金輪際アビドス区域に関わりを持たないと」
(グヌヌ……‼︎このガキめ‼︎後に目に物を言わせてくれる‼︎)
〔分かった、私達カイザーグループは、アビドスから手を引き、またアビドスの所有権をアビドス地域に手渡し、金輪際アビドス区に関わりを持たない事を此処に宣誓する〕
(多少のケチは付くがその程度だ、コイツら全員を潰しアビドス地区を改めて懐に入れれば十分にお釣りは来る‼︎)
「……オッケー、聞き届けたよ、
〔──は?録れたって、何の話だ、──ッ‼︎いやまさか貴様⁉︎どこから録っていた⁉︎その録音は、一体どこから記録していたのかと聞いているんだ‼︎〕
「んーと、宣誓部分の最初から?」
〔きさ、ま‼︎最初からそのつもりで……‼︎だがいい、本社に送られなければ何も問題はない‼︎〕
「うん、そう言うだろうね、だからもう送っておいた、すぐに本社の方から連絡が来るんじゃない?」
〔なっそんな、馬鹿な……〕
既に本社グループに録音データは送ってあると述べるホシノだが無論そんなことはしてない、念の為録音だけはしているがそれも取引に使うつもりもない、そもそもとしてカイザーコーポレーションと正面切って政治戦争になったら100%此方が敗北するのだ、だから殺すつもりもなかった。
では何故此処まで大事にしたのか?それは勿論ホシノ自身の憂さ晴らしもあっただろうが事実は──。
『相手と取引をする場合はな主導権を決して離さないことだ、相手の最大のウィークポイント、つまりは急所だな、そこを突いてやれば相手は面白い様に自分の思い通りに動いてくれる』
移動中のマコラの証言である。
尤も──この事が知らされていなくともこの様な事態に陥らせたカイザーPMC理事の現況は本社の方に既に知らされておりカイザーコーポレーションの【プレジデント】の耳に入っている、すぐにPMC理事の後任が据えられる事になり既にカイザーグループはPMC理事を切ったのだ。
そんな事など知らずに理事は怒りのあまり震えだす、そしてホシノに襲い掛かろうとするが──。
“ホシノ‼︎後ろに飛べ‼︎、何か来る‼︎
先生の指示により即座に退避した、その直後にカイザー理事ごとゴリアテが何かによって回収、否取り込まれていく様に砂の中に姿を消していく、周りのオートマタ兵も同様だ、全てが砂中に呑まれていき姿を消した。
残されたのは対策委員会と便利屋の生徒と先生のみ、騒乱としていた戦場が一変して静寂に呑まれた。
「……一体何が起こったの?みんな消えちゃったけど……」
“アヤネ、サーチ頼めるかい?”
『はい、既に範囲を広げています……‼︎出ました!場所は……そこから北方‼︎マコラさんとデカグラマトンが戦闘を行っている場所です‼︎』
「……まさか今の機械達全部」
“マコラの戦場に送り込まれたと見て良いね、駒としてかパーツとしてかは知らないけど……急ごう、マコラが負けるとは思わないけど最悪の場合手遅れになるかも知れない”
「ん、だったらあの施設から車とかないか探った方が良さそうだね、徒歩で行くには時間と労力がかかり過ぎるから」
「でもそんなことしてる内にマコラが負けちゃったら……‼︎」
“落ち着いて、焦る気持ちも分かる、だからこそ冷静にならないとダメだ、シロコの言う通り徒歩で砂漠越えはかなり疲労にくる、体力温存も兼ねて車両を探す、オッケー?”
「……うん、分かった」
そうしてカイザーPMC基地前の決戦はアビドス側の勝利に終わった、然しそれ以上に不安だけが皆の胸の中に残ったのだった。
次回は少々時間を戻してマコラvsビナーの開戦直後からとなります、明らかにこっちの方が長くなると思うので…
漸くアビドス編の終わりが見えてきたよ……長かった、全体的にみたら序盤も序盤なんだけどねこれ。
Q.結局強化型ゴリアテの強さってどれくらいなんよ
A.理事が乗り込んでなければもうちょっと踏ん張ってた、一応AIによる最適化された動きを取るのでその法則を先生が見抜いてホシノ塩水コンボで故障させてからぶち壊す手順でした、だけど馬鹿が乗り込んだから動きは単調だわ主砲の使い所はミスるわ挙げ句の果てに態々自分の居場所を知らせるわ…なので結局壊れるのが遅いか早いかの違いでしかない。
Q.脱兎爆弾の使い方について
A.どちらも正しい、マコラの使い方が牽制も兼ねた小パンならムツキは状況を左右するゲージ技みたいな使い方、マコラの使い方も戦法としてみるなら正しいけどムツキは脱兎爆弾をちゃんと“爆弾”と一種の兵器として見てる、その辺の違い、因みに今回の芸当はムツキだからこそ可能、マコラはそんな事するぐらいなら直接殴りに行く、その方が早いし。
Q.カイザー本当にアビドスから手を引いたん?
A.あのカイザーがその程度で手を引くと思う?俺は思わない
【最終決定】IF世界線のマコラ
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ミレニアムIF
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